実践的ソフトウェア工学における 産学協力 井上克郎 大阪大学大学院基礎工学研究科
ソフトウェア工学 高品質のソフトウェアを効率よく作るための諸技術 30年に渡って、いろいろな技法、システム、ツールなどの提案がされてきた あまりにも、言いっぱなしの提案が多い 評価するために手間暇かかる -> 歴史で評価 (ICSE n-10) 現実に役立つものかどうかを、その場で評価する必要 他の科学技術分野では、必ず新しい技術が出てきた場合、その評価が伴う
Zelkowitz-Wallaceの分析 ソフトウェア工学において用いられる評価方法の分類 観測型(Observational) 実際に行われているプロジェクトを横から観測して評価 履歴型(Historical) 過去に行われたプロジェクトのデータや発表された論文に基づいて評価 制御型(Controlled) 目的とするデータを得るために環境を整えてプロジェクトを行い評価する
観測型評価 プロジェクトモニタ 事例研究 アサーション 野外調査(Field Study) 対象を漠然と観察。目標不明確な場合も。簡単 対象をより深く解析。まだ、変動要素の制御が不十分だが、比較的簡便 アサーション 主張がなりたつことを簡単なプロジェクトで実証。厳密な評価としては不十分。 野外調査(Field Study) いろいろなプロジェクトを見て回る。条件を揃えるのが困難だが追証しやすい。
履歴型 文献調査 事例調査 経験 (静的解析) 過去発表された論文を探す。条件や視点の統一不可能。簡単 過去のプロジェクトデータをひっくりかえす。条件不統一でデータ限られている 経験 過去のプロジェクトの定性的なデータを調べる。定性的な議論できない。やりやすくて簡単に傾向がわかる (静的解析) 作ったプロダクトの解析をする。方法には適用できない。評価の自動化できるかもしれない。
制御型 繰返し 実験室 (動的解析) (シミュレーション) 条件を揃えていくつものプロジェクトで繰り返す。高価。 条件を揃えて実験室で繰り返す。スケーラビリティ。条件を制御しやすく比較的安価。 (動的解析) プロダクトの効率を実行させて計測。方法には適用できない。 (シミュレーション) 仮想データで実行。
発表された論文の分類(他の科学) 方法\論文種類 デバイス 物理 臨床医学 人類学 評価なし 16% 58% 6% 31% 方法\論文種類 デバイス 物理 臨床医学 人類学 評価なし 16% 58% 6% 31% プロジェクトモニタ 事例評価 40% 16% 6% 8% アサーション 8% 4% 8% 野外調査 18% 文献調査 4% 11% 24% 23% 事例調査 6% 23% 経験 5% 8% 静的解析 繰返し 5% 12% 実験室 29% 動的解析 32% 5% シミュレーション
ソフトウェア工学の論文が使っている評価法 実験なし プロジェクトモニタ 事例研究 アサーション 野外調査 文献調査 評価法 1985 事例調査 1990 -ICSE -TSE -IEEE Software 1995 経験 静的解析 繰返し 実験室 動的解析 シミュレーション 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 論文の割合
実践的ソフトウェア工学 定量的なデータに基づいてソフトウェア工学におけるいろいろな手法、技術、ツールなどの評価を行う 大学だけでは、限界がある 実データを集めることができる産業界との協力が必須
大学病院モデル 医学研究・治療のための協力方式 大学 大学病院 社会 患者 治療費提供 研修者 人材、知恵の提供 新しい治療・薬の評価 研究費獲得 新しい発見 現場のスキル 病気治療 新しい知識の発信 人材育成 大学 大学病院 社会
実践的ソフトウェア工学のための産学協力方式 大学工房モデル 実践的ソフトウェア工学のための産学協力方式 人材派遣 問題提供 予算提供 人材派遣 新しい技術 問題解決 ノウハウ吸収 人材育成 技術の評価結果 研究資金 新しいテーマの発見 大学 大学工房 産業界
Fraunhofer IESE Model 大学工房モデル Fraunhofer財団(政府系研究支援) Institute for Experimental Software Engineering Kaiserslautern大学を基礎 大学から車で10分
Dr.Dieter Rombach Prof. of U. Kaiserslautern Executive Director of Fraunhofer IESE
Fraunhofer Institute for Experimental Software Engineering
IESEの収入推移 10DM:約5億円
IESEの支出推移 10DM:約5億円
IESEの構成員推移
IESEの仕事 ソフトウェア開発に関わる技術評価 ソフトウェア品質向上システムの設計 品質規格認証への支援 ソフトウェア技術者教育の支援 ソフトウェア購入・発注・開発管理の支援
IESEの組織概要 Quality Software Development Software Product Lines Quality and Process Engineering Systematic Learning and Improvement Continuing Education and Training Maryland USA: Center for Experimental SE Basili & Zelkowitz
顧客 BASF Daimler Chrysler Deutsche Bank Ericsson Motorola Nokia Q-Lab Siemens Thomson-CSF VTT Electronics その他 大中小いろいろな企業
IESEのポリシー 請け負いコンサルタントではない ソフトウェア技術者の技術交流の拠点を目指す 共同で問題発見、解決を目指す。解決できない時もある 学術論文を書く(ICSE, PROFES等多数) ソフトウェア技術者の技術交流の拠点を目指す 大学 → IESE → 産業界 産業界 → IESE → 産業界 産業界:スタートアップも含む IESE出身の技術者の評価
日本で大学工房モデルは可能か? 制度上 需要 人 独立行政法人化、自主運営 ソフトウェア開発に関わる問題解決や技術移転の要求は、今後とも増える 人 企業は人を長期間出せるか