非エルミート 量子力学と局在現象 羽田野 直道 D.R. Nelson (Harvard)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
Advertisements

QCD Sum rule による中性子電気双極子 モーメントの再評価 永田 夏海(名古屋大学) 2012 年 3 月 27 日 日本物理学会第 67 回年次大会 共同研究者:久野純治,李廷容,清水康弘 関西学院大学.
超伝導磁束量子ビットにおける エンタングルメント 栗原研究室 修士 2 年 齋藤 有平. 超伝導磁束量子ビット(3接合超伝導リング) 実験 結果 ラビ振動を確認 Casper H.van der Wal et al, Science 290,773 (2000) マクロ変数 → 電流の向き、 貫く磁束.
相対論的場の理論における 散逸モードの微視的同定 斎藤陽平( KEK ) 共同研究者:藤井宏次、板倉数記、森松治.
電磁気学C Electromagnetics C 7/27講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
Orbifold Family Unification in SO(2N) Gauge Theory
第1回「アインシュタインの物理」でリンクする研究・教育拠点研究会 2008年10月11日 (土) 高エネルギー物理学研究室 清矢良浩
第2回応用物理学科セミナー 日時: 6月 2日(月) 16:00 – 17:00 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
東京工業大学 機械制御システム専攻 山北 昌毅
クラスター変分法による 超新星爆発用 核物質状態方程式の作成
第1回応用物理学科セミナー 日時: 5月19日(月) 15:00ー 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室 Speaker:鹿野豊氏
クラスター変分法と確率的情報処理 --Belief Propagation と画像処理アルゴリズム--
はじめに m 長さスケール 固体、液体、気体 マクロスコピックな 金属、絶縁体、超伝導体 世界
羽田野研究室 大学院進学ガイダンス 羽田野研究室 統計物理学 自然現象や社会現象を数学で表現 特に、多粒子で初めて起こる現象.
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
現実の有限密度QCDの定性的な振る舞いに
課題研究 Q11 凝縮系の理論  教授  川上則雄 講師 R. Peters 准教授 池田隆介  助教 手塚真樹  准教授 柳瀬陽一.
1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展
原子核物理学 第8講 核力.
正規分布における ベーテ近似の解析解と数値解 東京工業大学総合理工学研究科 知能システム科学専攻 渡辺研究室    西山 悠, 渡辺澄夫.
物理学者でない人 のための統計力学 東京工業大学 渡辺澄夫 DEX-SMI 1/1/2019.
Notes on Voronoi Diagrams for Pure Quantum States
非局所クォーク模型Gaussianバリオン間相互作用とその応用
Wan Kyu Park et al. cond-mat/ (2005)
古典論 マクロな世界 Newtonの運動方程式 量子論 ミクロな世界 極低温 Schrodinger方程式 ..
確率伝搬法と量子系の平均場理論 田中和之 東北大学大学院情報科学研究科
Ⅴ 古典スピン系の秩序状態と分子場理論 1.古典スピン系の秩序状態 2.ハイゼンベルグ・モデルの分子場理論 3.異方的交換相互作用.
量子凝縮物性 課題研究 Q3 量子力学的多体効果により実現される新しい凝縮状態 非従来型超伝導、量子スピン液体、etc.
1次元量子系の超伝導・ 絶縁転移 栗原研究室 G99M0483 B4 山口正人 1.1次元量子系のSI転移 2.目標とする系
担当: 松田祐司 教授, 笠原裕一 准教授, 笠原成 助教
電磁気学C Electromagnetics C 7/17講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
研究課題名 研究背景・目的 有機エレクトロニクス材料物質の基礎電子物性の理解 2. 理論 3. 計算方法、プログラムの現状
逐次伝達法による 散乱波の解析 G05MM050 本多哲也.
量子系における 確率推論の平均場理論 田中和之 東北大学大学院情報科学研究科
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
物性物理学で対象となる 強相関フェルミ粒子系とボーズ粒子系
変換されても変換されない頑固ベクトル どうしたら頑固になれるか 頑固なベクトルは何に使える?
2次元系における超伝導と電荷密度波の共存 Ⅰ.Introduction Ⅱ.モデルと計算方法 Ⅲ.結果 Ⅳ.まとめと今後の課題 栗原研究室
冷却原子系を用いた 量子シミュレーション: 格子場の理論に対する 新奇シミュレーション技術の 現状と未来
Why Rotation ? Why 3He ? l ^ d Half-Quantum Vortex ( Alice vortex ) n
担当: 松田 祐司 教授, 寺嶋 孝仁 教授, 笠原 裕一 准教授, 笠原 成 助教
2重井戸型ポテンシャルに捕捉された 冷却原子気体の非平衡初期分布緩和過程に対する非平衡Thermo Field Dynamics
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
大学院理工学研究科 2004年度 物性物理学特論第5回 -磁気光学効果の電子論(1):古典電子論-
第1回、平成22年6月30日 ー FEM解析のための連続体力学入門 - 応力とひずみ 解説者:園田 恵一郎.
有限クォークおよび有限アイソスピン化学ポテンシャル
4. システムの安定性.
Perturbative Vacua from IIB Matrix Model
東北大学 大学院情報科学研究科 応用情報科学専攻 田中 和之(Kazuyuki Tanaka)
? 格子QCDシミュレーションによる南部-ゴールドストン粒子の 質量生成機構の研究 質量の起源 ドメインウォールフェルミオン作用
大阪市立大学 宇宙物理(重力)研究室 D2 孝森 洋介
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
水素の室温大量貯蔵・輸送を実現する多孔性材料の分子ダイナミクスに基づく解明と先導的デザイン
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
Marco Ruggieri 、大西 明(京大基研)
定常剛体回転する宇宙ひもからの 重力波放射
原子核物理学 第7講 殻模型.
【第六講義】非線形微分方程式.
統計力学と情報処理 ---自由エネルギーの生み出す新しい情報処理技術--- 2003年8月14日前半
固体中の多体電子系に現れる量子凝縮現象と対称性 「複数の対称性の破れを伴う超伝導」
第3回応用物理学科セミナー 日時: 7月10日(木) 16:10 – 17:40 場所:葛飾キャンパス研究棟8F第2セミナー室
卒論中間発表 2001/12/21 赤道の波動力学の基礎 北海道大学理学部 地球科学科 4年 山田 由貴子.
電子物性第1 第10回 ー格子振動と熱ー 電子物性第1スライド10-1 目次 2 はじめに 3 格子の変位 4 原子間の復元力 5 振動の波
媒質中でのカイラル摂動論を用いた カイラル凝縮の解析
現実的核力を用いた4Heの励起と電弱遷移強度分布の解析
実数および純虚数化学ポテンシャル領域における 2+1フレーバーPNJL模型を用いた QCD相構造の研究
Orientifolding of IIB matrix model
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
Presentation transcript:

非エルミート 量子力学と局在現象 羽田野 直道 D.R. Nelson (Harvard) 羽田野 直道 青山学院大学 物理学科 共同研究者 D.R. Nelson (Harvard) A. Zee (UC Santa Barbara) 参考文献 N.H. and D.R. Nelson: PRL 77, 570 (1996) PRB 56, 8651 (1997) PRB 58, 8384 (1998) N.H.: Physica A 254, 317 (1998) 学会誌1998年11月号 固体物理1999年3月号

なぜ非エルミート? (1) アンダーソン局在 (2) 高温超伝導体中の 磁束線ピン止め (3) 共鳴状態 局在長や移動端を求める 1) 概念を拡張して、新たな  視点から物理を眺める 2) 有効的に物理を表現する (1) アンダーソン局在 局在長や移動端を求める (2) 高温超伝導体中の  磁束線ピン止め ピン止め破壊点を求める (3) 共鳴状態 散乱問題における共鳴状 態の寿命を求める

目次 1. 局在とは何か? 2. 非エルミート・アンダー ソン模型と非局在転移 3. 研究目的 I ____ 局在長の計算 2. 非エルミート・アンダー ソン模型と非局在転移 3. 研究目的 I ____   局在長の計算 4. 複素スペクトルと  非局在転移 5. なぜ非局在化するのか? 6. 研究目的 II ____   磁束線ピン止め   共鳴寿命の計算

局在とは何か? 局在状態 絶縁体 非局在状態 金属

H  ( p  i g ) m V x 非エルミート アンダーソン模型 連続空間模型 2 m V x g: “虚数ベクトルポテン  シャル” (定数ベクトル) V(x): (スカラー)ランダム   ポテンシャル g=0: (通常のエルミートな)    一電子アンダーソン模型

格子模型 H = - t 2 g ◊ e n x + ( 1 d  ) V 非対称ホッピングとランダムネスの競合

(i) g: g = gc で 非局在転移する (ii) 非局在転移と 複素固有値が対応 (iii) 局在長逆数: = gc 非エルミート非局在転移 g=0: 局在状態が存在 (i) g: g = gc で  非局在転移する (ii) 非局在転移と 複素固有値が対応 (iii) 局在長逆数: = gc

非局在転移のしくみ 複素ゲージ変換 g H = ( p + i ) 2 m V x H y = e g ゲージ変換: : 実数値に固定

g でのみ収束          g  エネルギー固有値  

研究目的 (1) エルミート・アンダーソン模型の局在長の計算 g gc で複素固有値が 出現 gc

非エルミート非局在転移 数値計算例 注:粒子の存在確率 H y = e Æ ˆ ˝ ¯ ≠ R † L 一次元・1000 サイト・10001000 行列を対角化 注:粒子の存在確率 H y R = e L Æ † ≠ ˆ ˝ ¯

複素固有値と非局在転移 数値計算例 g g 実数固有値 局在状態 複素固有値 非局在状態 一次元・1000 サイト・10001000 行列を対角化 実数固有値 局在状態 g 複素固有値 非局在状態 g

研究目的 (2) 高温超伝導体中の   磁束線ピン止め

H = V r 経路積分で量子系へ Ú ( p + i g ) 2 m 転送行列 T ( D t ) ª exp( - H e Z = D Nelson and Vinokur, PRB 48, 13060 (1993) 転送行列 T ( D t ) ª exp( - H Z = Ú D x - cl E t ( ) [ ] e y f L H i H = ( p + i g ) 2 V r 2 m

磁束線の統計力学模型

ピン止めと局在 ピン止め 局在分布関数 ピン止め破壊 非局在分布関数

研究目的 (3) 共鳴状態 共鳴状態の寿命 境界条件を満たさない

H = V r ; - x 複素スケーリング ( p + i g ) m 2 m V r ; - x Aguilar et al, Comm. Math. Phys. 22 (1971) 加藤 他、学会誌1998年2月号 複素スケーリング

その他の応用・展望 ディラック・フェルミオン 電荷密度波のピン止め破壊 フォッカー・プランク方程式 ランダム・ゲージ場中の Chen et al., PRB 54, 12798 (1996) フォッカー・プランク方程式 Nelson and Shnerb, PRE 58, 1383 (1998) ランダム・ゲージ場中の ディラック・フェルミオン Mudry et al. PRL 80, 4257 (1998) PT 対称性と実数固有値 Bender and Boettcher, PRL 80, 5243 (1998) 複素エネルギー固有値  PT 対称性の破れ 相互作用と多体問題 Lehrer and Nelson, cond-mat/9806016 周期ポテンシャル中のモット相と非局在転移 非エルミート・ランダム行列