スピーキングタスクの繰り返しの効果 ―タスクの実施間隔の影響―

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スピーキングタスクの繰り返しの効果 ―タスクの実施間隔の影響― The Effects of Intersession Intervals in Speaking Task Repetition 名古屋大学大学院 小林真実 目的 結果 ■スピーキングタスクを繰り返す練習の効果は報告されているが、タスクを繰り 返す間隔の影響に関する研究は十分に行われていない。 →どの間隔で練習を取り入れると発話が向上するのか明らかになっておらず、 教育現場における適用には至っていない。 ■本研究の目的は、以下の2点を明らかにする事である。 1. 繰り返し練習の実施間隔が注意配分に与える影響 2. 繰り返し練習の実施間隔が発話に与える影響 ■繰り返しタスクの1度目と2度目、及び事前テスト・事後テストの結果 ■研究課題 1 繰り返しタスクの1度目・ 2度目 (多変量共分散分析,共分散分析) ・語彙の多様さ:群差あり ・文法的複雑さ、動詞の文法的正確さ、流暢さ:有意差なし ■研究課題 2 事前テスト・事後テスト (多変量共分散分析,共分散分析) ・語彙の多様さ:交互作用あり 単純主効果を確認→     集中学習群の事前・事後テストに有意差なし 集中学習群の語彙の多様さの事前・事後テスト:有意傾向 ・文法的複雑さ、動詞の文法的正確さ、流暢さ:有意差なし、群差なし 表 2 繰り返し1・2度目の結果 (n=38)   分散学習群 集中学習群 繰り返し 1 繰り返し2 繰り返し1 複雑さ M 1.37 1.36 1.23 1.39 SD 0.28 0.27 0.20 0.29 文法的正確さ 0.59 0.57 0.61 0.19 0.17 0.23 流暢さ 46.92 53.17 46.70 55.42 14.50 18.43 14.61 12.43 語彙の多様さ 4.08 4.23 3.85 4.07 0.55 0.58 0.44 研究課題 ■日本の大学において英語の授業でスピーキングタスクを繰り返す練習を行う 場合 1. 分散学習と集中学習は、繰り返し練習の1度目と2度目において、 注意配分はどの様に異なるか 2. 分散学習と集中学習は、事前・事後テストにおいて、注意配分はどの 様に異なるか ■仮説 1. 繰り返しタスクにおいて、集中学習は分散学習と比して 1) 文法的側面により多くの注意資源を配分 2) その結果発話は向上する 2. 事前・事後テストにおいて、集中学習は分散学習と比して、事後テス トの発話が向上する。 表 3 事前テスト・事後テストの結果 (n=38)   分散学習群 集中学習群 事前 事後 複雑さ M 1.40 1.37 1.41 1.43 SD 0.31 0.22 0.30 0.25 文法的正確さ 0.48 0.54 0.56 0.53 0.20 0.19 0.29 流暢さ 42.24 44.56 43.80 42.12 13.60 14.34 12.95 12.63 語彙の多様さ 4.20 4.64 4.39 4.42 0.49 0.43 0.51 繰り返し2度目 繰り返し2度目 実験 ■調査対象 日本の大学生38名 年齢 M=18.63, SD=0.63 TOEFL ITP® M=508.86, SD=26.61) ■実施方法 1. 各タスクを以下の手順で行う。 1) 6コマのイラストを30秒間見て内容を確認する 2) 内容を90秒間で英語で説明する 2. タスクA、B、C、Dを3回に分けて行う (表1) 3. 3回は1週間の間隔を開ける 繰り返し1度目 事前テスト 繰り返し1度目 図 1 繰り返しタスクにおける語彙の多様さの散布図 分散学習群 (左) 集中学習群 (右)  事後テスト 事後テスト 表 1 テストデザイン   分散学習群1 分散学習群2 集中学習群1 集中学習群2 第1週 A B D C 第2週 第3週 注 A, B, C, D はタスク名を指す 事前テスト 事前テスト 図 2 事前・事後タスクにおける語彙の多様さの散布図 分散学習群 (左) 集中学習群 (右)  分析 ■分析対象 1. 繰り返し練習(タスクB)の1度目 2. 繰り返し練習(タスクB)の2度目 3. 事前テスト(タスクAまたはD) 4. 事後テスト(タスクDまたはA) ■分析指標 (CALF) 1. 文法的複雑さ Complexity (節数/ASユニット数) 2. 動詞の文法的正確さ Accuracy (動詞の文法的誤りの無い節数/全節数) 3. 流暢さ Fluency (語数/分) 4. 語彙の多様性 Lexical Variety (異なり語数/√(語数)) ■データ分析 多変量共分散分析 (MANCOVA) 共分散分析 (ANCOVA) 結論 ■スピーキングタスクの繰り返し練習において、学習間隔の違いによる注意配 分の差は確認されず、また、発話への影響は見られなかった。