原子核物理学 第8講 核力
核力に対する対称性からの要請 Hermite 性(核子の確率の保存) 核子の番号の交換に対する対称性 並進不変性(空間の一様性) 位置座標は の組合わせだけ ガリレイ変換不変性 運動量は の組合わせだけ 回転不変性(空間の等方性) 各項はスカラー 空間反転不変性(強い相互作用がパリティを保存することに基づく不変性) 時間反転不変性 荷電空間における回転不変性(強い相互作用が核子の電荷に依らない)
反対称化した2核子状態 保存する量子数 反対称化の条件 ⇒ 4つの可能なチャネル 記号
核力の構造と表し方 球テンソルとしての分類 中心力 テンソル力 スピン-軌道力
OPEP(one pion exchange potential) 中心力と強いテンソル力をもたらす
現実的核力ポテンシャル 数種類のメソンの交換 (Paris potential, Bonn potential など) 遠距離部分は OPEP が支配的 中距離部分の引力は σメソンの交換に起因 短距離部分に斥力芯
中心力ポテンシャル 短距離力 ⇒ 1粒子描像が成り立つ チャネルに大きく依存 強いアイソスピン・スピン依存性 短距離力 ⇒ 1粒子描像が成り立つ チャネルに大きく依存 強いアイソスピン・スピン依存性 Singlet-Even(SE) T = 1 短距離に強い引力 ⇒ 同種粒子(nn, pp)間の強い 対相互作用の起源 唯一の2核子束縛系(deuteron)は Triplet-Even(TE) なぜ?
Deuteron TE 状態 量子数 S = 1,J = 1,T = 0
TE 状態の引力によって原子核は束縛している Deuteron (続き) S 状態の方程式において,D 状態の項を有効ポテンシャルと考える D 状態との結合によって,S 状態に対する強い引力ポテンシャルが生じる。 その結果,Deuteron は束縛する テンソル力の2次の効果 TE 状態の引力によって原子核は束縛している
結合エネルギーの飽和性 中性子だけからなる系は束縛しない (中性子星は,重力によって自己束縛系をなしている) 陽子と中性子からなる系 中性子だけからなる系は束縛しない (中性子星は,重力によって自己束縛系をなしている) 陽子と中性子からなる系 密度が小さい領域では,密度の増加に伴い,ポテンシャルの短距離引力から,結合エネルギーを得る 密度の大きい領域では,密度の増加に伴い,テンソル力の2次の効果が減少するので,結合エネルギーが減少する その結果,飽和点が現れる
TO における状態依存性 TO 状態は S = 1 ⇒ 非中心力が作用 ⇒ J に依存したポテンシャル 中性子星の内部では の超流動状態が実現していると予想される
核内における有効相互作用 実験で観測された原子核のエネルギースペクトルから得られた行列要素 1粒子状態によらずに,T = 0 と T = 1 は,それぞれ同じような振る舞い
有効相互作用の平均的強さ 陽子-中性子相互作用(主に T = 0)の引力 横軸は1粒子状態の 2n+l の和 強い系統性が見られる
魔法数の消失 中性子過剰核において,安定線近傍核で見られた魔法数 N = 8, N = 20 が消失する 右図は中性子分離エネルギー 同じ Tz = 2(N-Z) をもつ原子核を線で結んである 魔法数のところで,中性子分離エネルギーは小さくなる この現象は核力の性質,特に, 1粒子エネルギーの変化で説明できる
中性子過剰核の1粒子エネルギー Valence 核子間の相互作用も考慮した1粒子エネルギー: monopole 相互作用
Monople 相互作用の分解 Racah 代数を駆使して, monopole 相互作用を8成分に分解できる 中心力(SO,TE,SE,TO) テンソル力(TNE,TNO) スピン軌道力(LSE,LSO) 中心力の TE 成分(強い引力)が支配的