遺伝子の機能は、どのようにしてわかるのか

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遺伝子の機能は、どのようにしてわかるのか

遺伝子のクローニング ゲノム 制限酵素(Restriction enzyme) による切断 大腸菌 酵母など ライげーション 形質転換 transformation ベクター遺伝子(DNA)

発現しているものだけ取り出す方法 ゲノム mRNAの取り出し 逆転写酵素 大腸菌 酵母など cDNA作製 ライげーション 形質転換 transformation ベクター遺伝子(DNA)

遺伝子の研究法:       大きな二つの流れ 1.Forward genetics (遺伝学的手法) 2.Reverse genetics (逆遺伝学的手法)

表現型 遺伝子 遺伝子地図の作製 Forward genetics 表現型(Phenotype)における変異体の作製 (あるいは発見) 古典的メンデル遺伝に基づいた解析 = 交配実験による連鎖解析 遺伝子地図の作製

 遺伝子のマッピング法 遺伝子マーカーとの距離を 交配結果から計算 その部分のクローニング

目的の遺伝子がどのクローンに含まれて いるか探す方法が必要 ゲノミックライブラリー (genomic library) ゲノム 制限酵素 (Restriction enzyme) による切断 ライげーション 大腸菌 酵母など 形質転換 transformation ベクター遺伝子 ゲノミックライブラリー (genomic library) 目的の遺伝子がどのクローンに含まれて いるか探す方法が必要

連鎖しているマーカーの確定 マーカーを含むクローンを探す そのクローンのもつ挿入断片を解析

1950〜1960年代にかけて確立された常染色体異常マウス http://www.inra.fr/Internet/Produits/PA/an1999/num993/chemi/pc993.htm#fig1 正常マウス +/+ ob/obマウス db/dbマウス 過食・肥満・糖尿病・不妊 http://www.rockefeller.edu/pubinfo/ob.rel.nr.html

マウス肥満遺伝子のクローニングの成功 (Friedmanら 1994) 手法:ポジショナルクローニング ( Forward genetics) 単離遺伝子:ob遺伝子 504塩基対(bp) 167アミノ酸のタンパク質をコード 1 atgtgctgga gacccctgtg tcggttcctg tggctttggt cctatctgtc ttatgttcaa 61 gcagtgccta tccagaaagt ccaggatgac accaaaaccc tcatcaagac cattgtcacc 121 aggatcaatg acatttcaca cacgcagtcg gtatccgcca agcagagggt cactggcttg 181 gacttcattc ctgggcttca ccccattctg agtttgtcca agatggacca gactctggca 241 gtctatcaac aggtcctcac cagcctgcct tcccaaaatg tgctgcagat agccaatgac 301 ctggagaatc tccgagacct cctccatctg ctggccttct ccaagagctg ctccctgcct 361 cagaccagtg gcctgcagaa gccagagagc ctggatggcg tcctggaagc ctcactctac 421 tccacagagg tggtggcttt gagcaggctg cagggctctc tgcaggacat tcttcaacag 481 ttggatgtta gccctgaatg ctga

(4)ノックアウトして破壊された機能を知る。 遺伝子のクローニングができた。       ↓ (1)遺伝子の塩基配列が解読できる。       配列が類似の機能既知の遺伝子を検索 (2)発現量を調べることができる (3)遺伝子産物を大腸菌に作らせて           大量に入手できるようになる。 (4)ノックアウトして破壊された機能を知る。 抗体を作り、遺伝子産物の定量ができるようになる

これだけではクローニングした遺伝子が もともとどこにあったのか どんな機能を持つのかわからない

遺伝子の塩基配列がわかったので、 臓器・組織ごとに  mRNAをとりだす。 レプチン遺伝子の発現状態をしらべる。 肝臓 腎臓 腎周囲脂肪

組織、細胞 DNA除去後のRNA rRNA 28S 細胞破砕/RNA抽出 18S mRNA 総RNA rRNA(リボゾーム) mRNA(メッセンジャー) 一部DNAの混入

ゲル電気泳動で分離後、 RNAをナイロン膜へ移しとる ナイロン膜にプローブを かけて、結合するものだけを 見えるようにする

ob遺伝子の組織特異的発現 Northern blotting法

ob遺伝子 プラスミド cDNA ライゲーション ob遺伝子をもつ 大腸菌クローン 形質転換 大腸菌(コンピテントセル)

ob遺伝子を持つ大腸菌 集める タンパク質を抽出 大腸菌の作った レプチンを精製 培養して増やす

抗レプチン抗体を作る マウス 脾臓にレプチン液 を注入して免疫する レプチンに対する抗体を生産する 免疫細胞をとりだす 抗原 ガン細胞と合体させて 培養。抗体を大量生産

ELISA法 (Enzyme Linked Immunosorbent Assay) 抗体を利用した高感度定量法  ELISA法 (Enzyme Linked Immunosorbent Assay) 酵素標識抗体 一次抗体 抗原 マイクロタイタープレート ウェル http://www.biology.arizona.edu/immunology

血液中レプチン濃度は、肥満度(BMI)に比例する 血漿中レプチン濃度(Log mg/l) Body Mass Index (kg/ m2)

(4)ノックアウトして破壊された機能を知る。 遺伝子のクローニングができた。       ↓ (1)遺伝子の塩基配列が解読できる。       配列が類似の機能既知の遺伝子を検索 (2)発現量を調べることができる (3)遺伝子産物を大腸菌に作らせて           大量に入手できるようになる。 (4)ノックアウトして破壊された機能を知る。 抗体を作り、遺伝子産物の定量ができるようになる

Reverse genetics (逆遺伝学的手法) 遺伝子 表現型 遺伝子ノックアウト(knockout, Gene targetting) 特定の遺伝子を破壊し、表現型の異常を確認

ES細胞の遺伝子操作とキメラの作製 Evans and Kaufman (1988) 受精卵採取 内部細胞塊の取り出し 胚性幹細胞(ES cell)の分離と培養 受精3.5日後=胚盤胞 遺伝子操作 ノックアウト 相同組み替えされた変異 ES細胞 受精2.5日後=8細胞 マウスではES細胞株が単離確立 細胞そのものの入手可能 変異ES細胞を注入

遺伝子がわかればすべてがわかるのか?? 遺伝子型と表現型の深い溝 一つの遺伝子をノックアウトしても 表現型に違いが見られないことの方が多い      表現型に違いが見られないことの方が多い   遺伝子ノックアウト実験は、成功 << 失敗

遺伝子がわかればすべてがわかるのか?? 遺伝子型(genotype)が同じなら、同じヒトになるのか? 高等動物におけるクローンの問題    高等動物におけるクローンの問題 神経細胞連絡の選択ランダム性 ネットワーク の形成 つながらなかった 神経細胞は死ぬ 胎児期の脳細胞 緩い連絡