2. 論理ゲート と ブール代数 五島 正裕.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
論理回路 第3回 今日の内容 前回の課題の解説 論理関数の基礎 – 論理関数とは? – 真理値表と論理式 – 基本的な論理関数.
Advertisements

論理回路 第 11 回
第3回 論理式と論理代数 本講義のホームページ:
第12回 順序回路の解析方法 瀬戸 順序回路から,以下を導き、解析を行えるようにする タイムチャート 状態遷移関数・出力関数 状態遷移表
第1章 数と式 第4節 集合と命題  8  集合 (第3回).
電子回路設計 電子制御設計製図Ⅰ  2009年11月17日 Ⅳ限目.
アナログとディジタル 五感 視覚、聴覚、味覚、臭覚、触覚 埼玉県立越ヶ谷高等学校・情報科.
ファジィ論理と ファジィ構造モデリング 北海道工業大学 情報デザイン学科 三田村 保.
第2回 真理値表,基本ゲート, 組合せ回路の設計
計算の理論 II NP完全 月曜4校時 大月美佳.
4. 順序回路 五島 正裕.
論理式の表現を数学的に取り扱いやすくするために代数学の助けを借りる.
香川大学工学部 富永浩之 情報数学1 第5-2章 命題論理式の 同値変形とカルノー表 香川大学工学部 富永浩之
数理論理学 第1回 茨城大学工学部情報工学科 佐々木 稔.
第4回 カルノー図による組合せ回路の簡単化 瀬戸 目標 ・AND-OR二段回路の実現コスト(面積、遅延)が出せる
補数 n:桁数、b:基数 bの補数 bn-x 253(10進数)の10の補数は、 =747
デジタル回路(続き) コンピュータ(ハードウェアを中心に)
基本情報技術概論(第3回) 埼玉大学 理工学研究科 堀山 貴史
ディジタル回路 1. アナログ と ディジタル 五島 正裕.
1. アナログ と ディジタル 五島 正裕.
7. 順序回路 五島 正裕.
5. 機能的な組み合わせ回路 五島 正裕.
離散数学I 第6回 茨城大学工学部 佐々木稔.
4. 組み合わせ回路の構成法 五島 正裕.
大阪大学 大学院工学研究科 極限光通信工学領域 井上研究室 欅田 直也・橘 遼太郎・隅田 拓也・高 祥史
6. 順序回路の基礎 五島 正裕.
ICトレーナーの構成 7セグメントLED ブレッドボード XOR OR AND NAND 電源端子 スイッチ端子 LED端子 データLED
第6回 よく使われる組合せ回路 瀬戸 重要な組合せ回路を理解し、設計できるようにする 7セグディスプレイ用デコーダ 加算回路・減算回路
アルゴリズムとチューリングマシン 「もの」(商品)としてのコンピュータ 「こと」(思想)としてのコンピュータ アルゴリズム
電子回路設計 電子制御設計製図Ⅰ  2010年11月30日 Ⅲ限目.
第4章 組合せ論理回路 (4) Quine McCluskeyの方法.
ディジタル回路 3. 組み合わせ回路 五島 正裕 2018/11/28.
1.コンピュータと情報処理 p.18 第1章第1節 2.コンピュータの動作のしくみ CPUと論理回路
3. 束 五島 正裕.
ディジタル回路 2. ブール代数 と 論理ゲート 五島 正裕.
第5回 今日の目標 §1.6 論理演算と論理回路 ブール代数の形式が使える 命題と論理関数の関係を示せる
ディジタル回路 6. 順序回路の実現 五島 正裕.
ICトレーナーの構成 7セグメントLED ブレッドボード XOR OR AND NAND 電源端子 スイッチ端子 LED端子 データLED
ディジタル回路 5. ロジックの構成 五島 正裕.
計算機構成 第2回 ALUと組み合わせ回路の記述
ICトレーナーの構成 7セグメントLED ブレッドボード XOR OR AND NAND 電源端子 スイッチ端子 LED端子 データLED
電気電子情報第一(前期)実験 G5. ディジタル回路
3. 論理ゲート の 実現 五島 正裕.
論理と推論 命題論理 推論 命題論理体系の健全性と完全性 構文と意味 → 同値関係と標準形(節形式) 決定問題と意味木 推論規則
2012年度 情報数理 ~ 様々なデジタル情報(1) ~.
9.通信路符号化手法1 (誤り検出と誤り訂正の原理)
知能情報システム特論 Introduction
上のURLはシラバスに掲載されている (念のために次ページに拡大表示します)
ディジタル回路 0. ディジタル回路 五島 正裕.
7. 機能的な組み合わせ回路 五島 正裕.
アナログ と ディジタル アナログ,ディジタル: 情報処理の過程: 記録/伝送 と 処理 において, 媒体(メディア)の持つ物理量 と
基本情報技術概論(第2回) 埼玉大学 理工学研究科 堀山 貴史
論理回路 第12回
論理回路 第4回
  第3章 論理回路  コンピュータでは,データを2進数の0と1で表現している.この2つの値,すなわち,2値で扱われるデータを論理データという.論理データの計算・判断・記憶は論理回路により実現される.  コンピュータのハードウェアは,基本的に論理回路で作られている。              論理積回路.
上のURLはシラバスに掲載されている (念のために次ページに拡大表示します)
B03 量子論理回路の 最適化に関する研究 西野哲朗,垂井淳,太田和夫,國廣昇 電気通信大学 情報通信工学科.
第2回 標本化と量子化.
第7回  命題論理.
8. 順序回路の実現 五島 正裕.
論理回路 第5回
メカトロニクス 12/15 デジタル回路 メカトロニクス 12/15.
Ibaraki Univ. Dept of Electrical & Electronic Eng.
上のURLはシラバスに掲載されている (念のために次ページに拡大表示します)
香川大学工学部 富永浩之 情報数学1 第5-2章 命題論理式の 同値変形とカルノー表 香川大学工学部 富永浩之
論理回路(and,or,not)を作成. 回路を組み合わせ半/全加算器.
2008年7月11日 論理回路(and,or,not)を作成. 回路を組み合わせ半/全加算器.
2019年度 情報数理特論B ~ 様々なデジタル情報(1) ~.
アナログ と ディジタル アナログ,ディジタル: 情報処理の過程: 記録/伝送 と 処理 において, 媒体(メディア)の持つ物理量 と
練習問題.
Presentation transcript:

2. 論理ゲート と ブール代数 五島 正裕

今日の内容 前回の復習 アナログとディジタル 本論 論理ゲート ブール代数 今日のまとめ

前回の復習

アナログ と ディジタル 情報処理の過程において, 媒体の持つ物理量 と それの表す値 との 写像の方式 アナログ:連続 連続的なデータ ⇔ 媒体の連続的な状態 ディジタル:離散 離散的なデータ ⇔ 媒体の離散的な状態

物理量 と 値 の 写像 閾値 値 値 3 2 1 O O 物理量 物理量 アナログ ディジタル

アナログ,ディジタル と 信号劣化 劣化がなければ(S/N 比∞)… アナログがよい アナログ: 情報量∞ ディジタル: 量子化誤差がある 8b(256階調)で 0.4%(≒ 人間の識別限界) ビット数を増やせば,誤差は減る

アナログ,ディジタル と 信号劣化 劣化があるので… ディジタルがよい アナログ: 決して元に戻らない ディジタル: 閾値未満のノイズなら,完全に元に戻る 2値なら,10~20% くらいなら耐えられる ただし,それでも誤るとアナログより致命的になり得る

ディジタル の メリット(まとめ) 記録/伝送 ノイズによって誤りが発生しにくい コピーや経年によって情報が劣化しにくい 再現性が高い 処理 ディジタル式のコンピュータとの親和性が高い プログラミング可能 圧縮が容易 誤り訂正符号などによる誤り訂正が可能 …

ディジタル回路 と 論理回路 ディジタル回路 物理的 通常は,Low/High の2つの物理状態を扱う 通常は,電子回路で作る 論理回路 抽象的,モデル 真理値の 0/1,false/true を扱う ディジタル回路で作る

論理ゲート と ブール代数

今日の目標 すべての論理回路は,AND,OR,NOT の組み合わせでできる.

論理ゲート AND OR NOT (論理積) (論理和) (論理否定) z = a∙b z = a + b z = a z = ¬ a a MIL記号 MIL symbol a a z z a z b b 論理式 logic expression z = a∙b z = a + b z = a z = ¬ a a b z 1 a b z 1 a z 1 真理値表 truth table

論理ゲート NAND NOR buffer? z = a∙b z = a + b z = a a a z z a z b b MIL記号 MIL symbol a a z z a z b b 論理式 logic expression z = a∙b z = a + b z = a a b z 1 a b z 1 a z 1 真理値表 truth table

論理ゲート XOR (EOR) XNOR (EQ) (排他的論理和) z = a b z = a b a a z z b b MIL記号 MIL symbol a a z z b b 論理式 logic expression z = a b z = a b a b z 1 a b z 1 真理値表 truth table

余談 MIL 記号 MIL : 米国軍用規格(Military Standard) JIS の論理記号もある(が,誰も使わない) OR と XOR OR : (包含的)論理和 (inclusive-OR) XOR :  排他的 論理和 (exclusive-OR) 日常の「または」は,どっち? 1年以下の懲役 または 100万円以下の罰金 x = 0, 1

組み合わせ回路 (Combinational Circuit) z c d z = a∙b + c∙d

ブール代数

ブール代数 ブール代数 (Boolean Algebra) George Bool 論理計算のために考案 Claude Shannon 論理回路に応用

ブール代数の公理系 変数(ブール変数)の値 0 または 1 論理和 0 + 0 = 0, 0 + 1 = 1, 1 + 0 = 0, 1 + 1 = 1 論理積 0 ∙ 0 = 0, 0 ∙ 1 = 1, 1 ∙ 0 = 1, 1 ∙ 1 = 1

論理関数 f : (i1, i2, …, in) → o (i1, i2, …, in, o : ブール変数) 2入力論理関数:先ほどの AND,OR 等 1入力論理関数:NOT ,BUF 等 n入力の論理関数は 22n とおり 入力は 2n とおり そのそれぞれに,0 または 1 を指定できる i1 i2 … in o 0/1 1 2n

すべての1,2入力論理関数 すべての1入力論理関数 すべての2入力論理関数 21 = 2 221 = 4 22 = 4 222 = 16 i1 o0 o1 o2 o3 1 すべての1入力論理関数 21 = 2 221 = 4 すべての2入力論理関数 i2 i1 o0 o1 o2 o3 o4 o5 o6 o7 o8 o9 o10 o11 o12 o13 o14 o15 1 22 = 4 222 = 16

ブール代数の定理 対合律 ¬(¬x) = x 補元律 x∙(¬x) = 0 x + (¬x) = 1 べき等律 x∙x = x, 交換律 x∙y = y∙x x + y = y + x 結合律 (x∙y)∙z = x∙(y∙z) (x + y) + z = x + (y + z) 分配律 x + y∙z = (x + y)∙(x + z) x∙(y + z) = x∙y + x∙z 吸収律 x∙(x + y) = x x + x∙y = x ド・モルガンの定理 ¬(x∙y) = ¬x + ¬y ¬(x + y) = (¬x)∙(¬y)

ド・モルガンの法則 ¬(x∙y) = ¬x + ¬y ¬(x + y) = (¬x)∙(¬y)

完全性(Completeness,完備性) 完全集合 (Complete Set) 論理関数の集合で, その要素の組み合わせによって,すべての論理関数を表現できる 完全集合の例 {AND, OR, NOT} {AND, NOT} {OR, NOT} {NAND} {NOR}

完全性の証明 {AND, OR, NOT} 数学的帰納法: 1入力の論理関数は {AND, OR, NOT} の組合せで表現できる n 入力の関数を {AND, OR, NOT} の組合せで表現できたと仮定して,(n + 1) 入力の関数が表現できることをいう

完全性の証明 {AND, OR, NOT} o0 = 0 o1 = i1 o2 = ¬i1 o3 = 1 1 1 o0 = 0 o1 = i1 o2 = ¬i1 o3 = 1 1

すべての1,2入力論理関数 すべての1入力論理関数 すべての2入力論理関数 21 = 2 221 = 4 22 = 4 222 = 16 i1 o0 o1 o2 o3 1 すべての1入力論理関数 21 = 2 221 = 4 すべての2入力論理関数 i2 i1 o0 o1 o2 o3 o4 o5 o6 o7 o8 o9 o10 o11 o12 o13 o14 o15 1 22 = 4 222 = 16

完全性の証明 {AND, OR, NOT} f0 f1 i1 i1 1 i2 = 0 2 入力の関数が表現できることをいう f0 i1 f1 i1 1 i2 = 0

完全性の証明 {AND, OR, NOT} f0 f1 i1 i1 1 i2 = 1 2 入力の関数が表現できることをいう f0 i1 f1 i1 1 i2 = 1

完全性の証明 {AND, OR, NOT} f = ¬in+1∙f0 + in+1∙f1 f0 f1 n 入力の関数を {AND, OR, NOT} の組合せで表現できたと仮定して, (n + 1) 入力の関数が表現できることをいう in+1 in … i2 i1 o 1 f0 f = ¬in+1∙f0 + in+1∙f1 f1

完全性の証明 {AND, OR, NOT} f0 f1 i1 i2 in i1 i2 in in+1 n 入力の関数を {AND, OR, NOT} の組合せで表現できたと仮定して, (n + 1) 入力の関数が表現できることをいう i1 f0 i2 in i1 f1 i2 in in+1

完全性の証明 一般の場合 {AND, OR, NOT} が作れることを言う ex) {NAND} AND OR NOT

今日のまとめ

ブール代数 完全集合: すべての論理関数が作れる 完全集合の例: {AND,OR,NOT} {NAND} 完全集合をディジタル回路で作ればよい! 普通は,{NAND,NOR,NOT}

来週以降の予定 11/ 3 文化の日 11/10 組み合わせ回路の最小化