「小児集団における医薬品の臨床試験に関する ガイドライン(案)ICH-E11」と小児医薬品の将来

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「小児集団における医薬品の臨床試験に関する ガイドライン(案)ICH-E11」と小児医薬品の将来 第45回日本未熟児新生児学会 「小児集団における医薬品の臨床試験に関する  ガイドライン(案)ICH-E11」と小児医薬品の将来 日本未熟児新生児学会薬事委員会  藤村正哲、伊藤 進、板橋家頭夫  梶原真人、近藤裕一、中村秀文

ICH:International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use 日米欧医薬品規制調和国際会議 ICH-E11 Draft Consensus Guideline (Oct.1999) Clinical Investigation of Medicinal Products in the Pediatric Population 小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイドライン (案) 厚生省医薬安全局審査管理課 照会:医薬審1831号 (平成11年12月17日) 意見書案 (提出されず) 日本小児科学会・薬事委員会 意見書案 各分科会:日本未熟児新生児学会・薬事委員会

日本小児科学会へ提出した 本学会薬事委員会意見書の骨子 平成12年3月 基本的な考え方 ・小児年齢について安全性の確立した医薬品による治療を受ける  ことは子どもの基本的な権利であり、それは保証される必要がある  ということが本学会の基本的視点 ・小児医薬品開発を進めるとの決意だけでなく、それを  「実現することの保証」を盛り込むことが必要 ・社会からの看過あるいは無視を許さない歯止めが必要

小児臨床試験に影響を与える関連情報を有する他のICH文書 E-2 : 安全性情報の取り扱い E-3 : 治験の総括報告書の構成と内容 E-4 : 新医薬品の承認に必要な用量-反応関係の検討のための指針 E-5 : 外国臨床データを受け入れる際に考慮すべき民族的要因 E-6 : GCP E-8 : 臨床試験の一般指針 E-9 : 臨床試験のための統計的原則 E-10:臨床試験における対照群の選定 ほか 1.3 ガイドラインの適用範囲  ICH全体の一貫性の確認  他のICH文書とE-11と齟齬をきたす時、E-11を尊重することの規定  が必要。(意見)

日本小児科学会へ提出した本学会薬事委員会意見書の骨子 主な項目 1.4 一般原則 「小児年齢における開発計画の必要性が認定された場合の、 成人の疾患に対する開発との関係」   ・ 小児医薬品開発諮問委員会設置の提案 (⇒不採用)    すべての開発予定医薬品は、開発に先立って小児患者における     医薬品の有効性と安全性に関する知見の必要性について小児医療     担当者に諮問されるべきである   ・全体開発計画の中に小児開発計画を明記の提案 (⇒不採用)    小児患者における開発計画が必要であると認定された場合、     全体開発計画の中に小児開発計画を明記する。しかる後に当該     医薬品の開発開始が許可される。

具体例 2.3 臨床試験の(開始)時期 ・小児医薬品開発諮問委員会(仮称)の設置 (⇒不採用)  2.3.1 小児に多い症状又は小児特有の疾患に対する医薬品  2.3.2 成人及び小児患者の重篤な又は生命を脅かす疾患の治療を目的とした医薬品  2.3.3 その他の病気や状態の治療を目的とした医薬品 ・小児医薬品開発諮問委員会(仮称)の設置 (⇒不採用)   医薬品の開発に当たって、3分類のいずれに該当するかどうかの   判定が重要である。そのため開発当初から関連医学会の専門的意見が   反映されるような機構を整備する。具体的には小児医療及び専門学会代表   によって構成される「小児医薬品開発諮問委員会(仮称)」を設置し、   許認可当局の判断に医療上の専門的意見を反映させるようにすることが   重要である。 ・有効性を小児においても独自に証明すべき医薬品については、小児臨床   試験は成人の認可前に終了しておくべきである  (⇒一部採用)

具体例 2.3.3その他の病気や状態の治療を目的とした医薬品  小児患者に使用されるであろうが、前項に比べて緊急性の低い医薬品の  場合、小児における臨床試験は臨床開発の種々の段階で始めることが可能であり、  安全性の懸念があるならば、成人での十分な市販後の経験を積んだ後でもよい。  企業は、小児臨床試験の明確な計画と、それを何時始めるかに関する選択の理由  を持つべきである。小児集団におけるこれらの医薬品の臨床試験は、通常第Ⅱ相  又は第Ⅲ相まで始められない。ほとんどの場合、承認申請時は小児に関する成績  は限られたものであるが、市販後にはより多くの成績が期待される。 ----------  ・本項では具体的な歯止めなしに小児臨床試験を遅らせることを是認するニュアン  スがある。 ⇒「小児患者に使用される見込みがあり、あるいは発売後に小児への使用実態がある場合、小児臨床試験を実施することが必要となる」という文章とすべきである。  (⇒一部でニュアンスを緩和) ・安全性上の懸念があって小児臨床試験を遅らせる場合はその懸念の実効性につ いて具体的に証明しなければならない。小児臨床試験の明確な計画と試験の開始 時期を示して初めて、成人の試験は開始を許可されるものとする。(⇒不採用)

具体例 2.4.3 安全性 (追加) 臨床試験の対象となった超低出生体重児などに代表される新生児は、 その発達・行動などについて少なくとも学齢期までフォローする ことが必要である。 (⇒不採用) 2.5 小児患者の年齢区分 ・早産児(pre-term newborn infants) ・正期新生児(term newborn infants)(0から27日) 正期産児 (⇒採用) ・乳児(infants and toddlers)(28日から23ヶ月) 2歳未満の乳幼児 (⇒採用) ・幼児・学童(children)(2歳から11歳) ・青年(adolescents)(12歳から16歳又は18歳) 思春期青少年(12歳から18歳) (⇒青少年)

ICH-E11案に対する、日本未熟児新生児学会薬事委員会の意見 1) 実際に子どもに処方される医薬品は、このガイドラインの関門を通過するとの仕組みが   できなければならない。 2) 医薬品の開発に当たって、関連医学会の専門的意見が反映されるような機構を整備する   必要がある。具体的には小児医療及び専門学会代表によって構成される「小児医薬品開   発諮問委員会(仮称)」を設置し、許認可当局の判断に医療上の専門的意見を反映させる  ようにすることが重要である。 3) 有効性を小児においても独自に証明すべき医薬品については小児臨床試験は成人の認   可と同時もしくは前に終了しておくべきである。 4) 小児患者に使用される見込みがあり、あるいは発売後に小児への使用実態がある場合、  開発当初から小児臨床試験を実施することが必要である。 5) 安全性上の懸念があって小児臨床試験を遅らせる場合はその懸念の実効性について具   体的に証明しなければならない。小児臨床試験の明確な計画と試験の開始時期を示して   初めて、成人の試験は開始を許可されるものとする。 6) 臨床試験の対象となった超低出生体重児などに代表される新生児は、その発達・行動な   どについて少なくとも学齢期までフォローアップすることが必要である。

結語  ICH E-11 「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイドライン」   の案に対する日本未熟児新生児学会薬事委員会としての意見書を、   日本小児科学会薬事委員会に対して提出した。  我々の考え方と提案を本学会発表において、まとめておく。  結果として我々の具体的な提案は採用されていないが、今後の小児   医薬品開発における本学会の立場を明記する意味で、考え方の骨子   をここに発表し記録する。