製品の流通形態が環境に与える影響の ライフサイクルアセスメント ~清涼飲料水容器の事例~ 名古屋大学環境学研究科  ○ 金原 宏 加藤 博和.

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Presentation transcript:

製品の流通形態が環境に与える影響の ライフサイクルアセスメント ~清涼飲料水容器の事例~ 名古屋大学環境学研究科  ○ 金原 宏 加藤 博和

背景 突然ですが、みなさんに質問です! どちらが環境にやさしいでしょうか? アルミ缶 ペットボトル 答えは簡単にはわからない!

単純な製品ですら、環境にやさしいかどうかわからない 製品に内包されている環境負荷を定量的に分析 背景 アルミ缶 ペットボトル 石油製品製造過程の 副産物を有効活用 リサイクル製品 (H.15国内リサイクル率:82%) 冷やして飲むのか? 冷やさずに飲むのか? コンビニで買うのか? 自販機で買うのか? 乗用車で店に買いに行くか? 徒歩か? さらにケースに よって異なる 単純な製品ですら、環境にやさしいかどうかわからない これでは環境負荷削減策が提案できない! 製品に内包されている環境負荷を定量的に分析

LCA(Life Cycle Assessment)ISO-14040番台で規格化 アルミ缶など、様々な清涼飲料水のLCAが実施されている 環境負荷を定量的に分析 材料加工 製品製造 原料採掘 流通 ・販売 使用 ・消費 廃棄 製品のライフサイクル 流通 ・販売 使用 ・消費 流通・販売を含めた 事例が少ない理由 様々なモノ・サービスが内包されている 配分が難しい 既往研究:350mlアルミ缶のLCA 素材の違い 尾上ら (蓋:5000系合金 側面:3000系合金) リサイクル 坂村ら (製造の投入エネルギー:810⇒330 [kcal]) 将来の製造技術向上 容器間比較協会 (製造段階の負荷 CO2:現状から3割削減 NOX:4割 SOX:4割) 例:350ml アルミ缶 アルミ缶など、様々な清涼飲料水のLCAが実施されている

内包環境負荷:エコロジカルリュックサック 様々なモノ・サービスの環境負荷が内包されている 流通段階の環境負荷 荷役・保管・梱包 輸送 冷蔵庫で冷却? 店舗 トラック 船、鉄道 2t、10tトラック 速度、積載率 道路建設 など 工場 使用・消費 販売 乗用車で買い物?

流通販売段階を含めた製品のライフサイクル環境負荷を推計し、製品のライフサイクル環境負荷の低減に有効な手段を検討する! 目的 様々なモノやサービスの 内包環境負荷 難しい配分   流通販売段階の  環境負荷の把握 製品のライフサイクル環境負荷を分析 製品のライフサイクル環境負荷の削減 目的 流通販売段階を含めた製品のライフサイクル環境負荷を推計し、製品のライフサイクル環境負荷の低減に有効な手段を検討する!

評価対象 製品 : 清涼飲料水容器 容器素材:PET、アルミ、スチール、びん、紙 体積:350ml、500ml、1.5L、2.0L 販売店 : 郊外型大店舗、コンビニ、自販機 負荷物質:CO2、NOX、SOX 乗用車? 多品目取扱い? コンビニ まとめ買い? (少量多頻度輸送) 郊外型大店舗 自販機

Inventory:500ml清涼飲料水のLC-CO2 流通段階の負荷が無視できない、自販機販売の負荷が大きい 流通段階からの排出が40~50% LC-CO2 [g-C /can] 大店舗 コンビニ 大店舗 コンビニ 大店舗 コンビニ 大店舗 コンビニ 大店舗 コンビニ 自販機 自販機 自販機 自販機 自販機 PET アルミ ビン 紙 スチール 流通段階の負荷が無視できない、自販機販売の負荷が大きい

⇒しかし保管日数と輸送の関係を考慮したら? 様々な削減策の評価を行ったが、今回は最も削減量が大きい 流通段階の削減案の評価 輸送 トラックの大型化 トラック輸送から鉄道貨物への転換 12 g-C⇒ 0.1 g-C 買い物交通:乗用車⇒バイク、自転車、バス 7.6 g-C⇒1~2 g-C 保管(在庫) 再生ダンボールの使用 4.3 g-C⇒0.7 g-C 冷却を伴う保管日数の短縮 自販機47g-C⇒ 23g-C ⇒しかし保管日数と輸送の関係を考慮したら? 販売 販売店の省エネ化 多品目商品の販売 販売効率の向上 様々な削減策の評価を行ったが、今回は最も削減量が大きい 保管日数の短縮について取り上げる!

Inventory:アルミ缶の流通段階のCO2排出量 350mlアルミ缶の流通段階のCO2排出量の内訳 (*)大規模店の店舗、各D.Cの負荷は1g-C未満 保管日数3.5日 販売機 CO2 [g-C / can] 10日 1日 冷蔵庫 乗用車 出展: 日本自動販売機工業会: 自販機普及台数及び年間自販金額 大店舗 自販機 コンビニ 自販機の負荷が大きい⇒冷却を伴う保管(在庫)日数の影響? ⇒保管日数の感度分析            

Interpretation:保管日数の感度分析 冷却を伴う保管日数とCO2排出の関係 CO2排出量[g-C /can] 保管日数 [day] 同一保管日数では、自販機の影響はそれほど大きくない 環境面では、どの流通形態でも冷却を伴う保管日数の短縮が重要!

Interpretation:少量多頻度輸送の感度分析 一般的に、保管日数の短縮のためには少量多頻度輸送が行われ、 輸送の負荷増大が懸念される⇒少量多頻度輸送を考慮! 積載率と保管日数を仮定 (アルミ缶自販機販売の場合) 自動販売機 輸送距離など 片道:50km 積載率一定  トラック1台の配送エリアを固定 目的地 2tトラック 出発地 自販機の保管日数と積載率の関係

Interpretation:少量多頻度輸送の感度分析 自販機の増加分とトラックの減少分がトレードオフの関係 各保管日数のCO2排出量 20%増加 CO2 [g-C / can] NOX、SOXの排出量 排出地点の違い インパクト評価 (日本版被害算定型統合指標) 2 4 6 8 10                      保管日数 [day] 自販機の増加分とトラックの減少分がトレードオフの関係

Interpretation:少量多頻度輸送のインパクト評価 保管日数のインパクト評価 被害額 [円 / kg] 2 4 6 8 10          保管日数 [day] 保管の負荷と輸送の負荷はトレードオフの関係 単純に保管を削減するだけではダメ⇒保管と輸送の両方を削減!

結論 製品のライフサイクル環境負荷を対象として、 流通・販売段階の環境負荷を推計し、検討 流通・販売段階が、 ライフサイクル環境負荷の大きな割合を占めている 結論:保管、輸送など流通全体の負荷を削減することが、製品のライフサイクル環境負荷削減に重要 具体案 ・ 保管日数の短縮 ・トラックから鉄道貨物転換 ・買い物交通:乗用車からバスへの転換 ・販売効率の向上 ・販売店の省エネ化 ・多品目販売

ご清聴ありがとうございました!

結果の解釈-自販機の消費電力 消費電力:215 [kWh/月] ≒7.1 [kWh/日] 小売価格/自販機の売上げ =1.8×10 - 3 自販機の売上げ:85600 [円/月] 平均在庫日数:10 [日] アルミ缶1本あたりの消費電力: 0.38 [kWh] 出展:サンデン(株) 日本自動販売機工業会:自販機普及台数及び年間自販金額 2003年版

コンビニの方が効率良く稼いでいる⇒仮にコンビニと同じ効率? 結果の解釈 INPUT 消費電力:空調82、ケース57 [kWh/日] INPUT 消費電力:215 [kWh/日] 配分 販売機:1.8×10 - 3 配分 空調:2.9×10 – 4 ショーケース:4.2×10 – 4 アルミ1本の消費電力 0.38 [kWh] アルミ1本の消費電力0.0047 [kWh] コンビニの方が効率良く稼いでいる⇒仮にコンビニと同じ効率?

結果の解釈 各販売方法の流通のCO2の内訳 CO2 [g-C / can] 販売効率の向上⇒大幅な負荷削減が可能! (*)大規模店の店舗、各D.Cの負荷は1g-C未満  仮に販売機が     コンビニ並だったら 販 売 機 CO2 [g-C / can] 冷蔵庫 乗用車 大店舗 自販機 コンビニ 販売効率の向上⇒大幅な負荷削減が可能!              ⇒輸送を削減するより効果的!

流通段階の環境負荷削減策 ① 例えば、自販機販売効率の向上で負荷削減する場合 自販機への環境税の導入 考えられる 削減策   良く売れる自販機の清涼飲料水の値段は安く設定、   売れない自販機は高い値段を設定? 考えられる 削減策 販売効率の悪い自販機の撤去   売れない自販機は、儲からないので設置する必要がない?   業界の自主規制?

仮に少量多頻度輸送を行った場合でも、その影響は大きくない 流通段階の他の削減案の評価 輸送 トラックの大型化 g-C⇒ g-C トラック輸送から鉄道貨物への転換 g-C⇒ g-C 買い物交通:乗用車⇒バイク、自転車、バス  g-C⇒ g-C 保管 再生ダンボールの使用 冷却を伴う在庫日数の短縮 g-C⇒ g-C 仮に少量多頻度輸送を行った場合でも、その影響は大きくない 販売 販売店の省エネ化 g-C⇒ g-C 多品目商品の販売 トラックの大型化 

範囲の設定 (Goal and Scope Definition) 製品のライフサイクル D.C:配送センター&倉庫 流通 ・販売 使用 ・消費 原料採掘 材料加工 製品製造 廃棄 D.C 郊外型大店舗 消 費 者 工 場 D.C コンビニエンスストア D.C 自動販売機 物量で配分 金額で配分

範囲の設定 (Goal and Scope Definition) 各運輸交通手段 各拠点 運輸交通手段・各拠点には、様々な仮定を用いて推定

流通形態の負荷推計方法 輸送 D.C 小売店舗 消費者 流通形態から発生する環境負荷 燃料消費 D.C運営 店舗運営 冷蔵庫の消費電力 買い物 交通 D.C 小売店舗 消費者 輸送 輸送 輸送 廃棄 工場 荷役、保管 販売、保管 保管、消費 輸送 D.C 小売店舗 消費者 燃料消費 D.C運営 店舗運営 冷蔵庫の消費電力 輸送t・km (買い物交通は金額) 取り扱い貨物量 1店舗1日の 平均売上げ 冷蔵庫内の 在庫時間 車両製造 D.C建設 店舗建設 消費 生涯走行距離 生涯取り扱い 貨物量 生涯総売上げ 負荷は“0”とする 道路建設 生涯走行台数 流通形態から発生する環境負荷

Inventory:アルミ缶の流通段階のCO2排出量 販売機の負荷が大きいため、自販機販売の負荷が最も大きい (*)大店舗の店舗、各D.Cの負荷は1g-C未満 販売機 CO2 [g-C / can] 冷蔵庫 乗用車 大店舗 自販機 コンビニ 販売機の負荷が大きいため、自販機販売の負荷が最も大きい

在庫日数4日(積載率40%)以上であれば、それほど総量は変わらない 結果の解釈ー少量多頻度輸送の感度分析 積載率40%以上 NOX [g / can] 2 4 6 8 10          在庫時間 [day] Fig. 8 少量多頻度輸送のNOX排出量 在庫日数4日(積載率40%)以上であれば、それほど総量は変わらない

トラックと自販機は負荷の排出地点が異なる⇒インパクト評価 結果の解釈ー少量多頻度輸送の感度分析 積載率40%以上 SOX [g / can] 2 4 6 8 10          在庫時間 [day] Fig.9 少量多頻度輸送のSOX排出量 トラックと自販機は負荷の排出地点が異なる⇒インパクト評価

在庫の負荷が大きい場合には、少頻度大量輸送は環境面で不利! 結果の解釈‐少量多頻度輸送の感度分析 Fig.11 各在庫と輸送の負荷の合計 在庫の負荷が大きい場合には、少頻度大量輸送は環境面で不利!

“買い物”という目的のために、派生的に交通需要が発生! 例)大店舗とコンビニ 郊外立地型大規模小売店舗 公共交通の利便性が低い 郊外に立地 来客の多くが乗用車     コンビニエンスストア    1日に何度も商品を搬入 (Just In Time) トラックの多頻度輸送 “買い物”という目的のために、派生的に交通需要が発生!

Fig.12 各在庫と輸送のNOX排出量 Fig.13 各在庫と輸送のSOX排出量 NOX排出量[g] SOX排出量[g]

簡単に「どちらが環境にやさしい」とは言うことができない! 背景-どちらが環境にやさしい? ○ × リユースが困難 リユースが可能 しかし! アルミ缶はリサイクル可能!  (平成15年のリサイクル率:約82%) リサイクル可能だが、限定的 容器が割れたら使えない? 回収や洗うことの負荷は? 簡単に「どちらが環境にやさしい」とは言うことができない!

背景 販売までに内包される環境負荷 B店舗の流通段階の環境負荷 B店舗 A製品 原料採掘 材料加工 製品製造 A製品生産の環境負荷 輸送 荷役・保管・梱包 B店舗の流通段階の環境負荷 B店舗 A製品 原料採掘 材料加工 製品製造 A製品生産の環境負荷

Fig.1 「運輸部門におけるエネルギー消費動向及び省エネルギー対策」 国交省 生産・生活活動に関係が深く、これを含めて考える必要がある 背景 CO2排出量(2001年度) 自家用乗用車 自家用貨物車 営業用貨物車 内航海運 バス タクシー 航空 鉄道 運輸・交通部門 22% Fig.1 「運輸部門におけるエネルギー消費動向及び省エネルギー対策」 国交省 運輸交通部門 CO2排出削減策は 功を奏していない 生産・生活活動に関係が深く、これを含めて考える必要がある

“買い物”という目的のために、派生的に交通需要が発生! 例)大店舗とコンビニ 郊外立地型大規模小売店舗 公共交通の利便性が低い 郊外に立地 来客の多くが乗用車     コンビニエンスストア    1日に何度も商品を搬入 (Just In Time) トラックの多頻度輸送 “買い物”という目的のために、派生的に交通需要が発生!

評価対象とする販売形態 評価対象の販売方法 対象販売店:郊外型大店舗、コンビニ、自動販売機 評価項目:買い物交通、取り扱い品目、まとめ買い 自販機 乗用車? 多品目取扱い? まとめ買い? (少量多頻度輸送)

LCA (Life Cycle Assessment) 「ゆりかごから墓場まで」の 環境負荷を評価 ISO-14040番台で定義 主に工業製品の製造段階 を対象としたLCA実施 結果の解釈 目的と範囲の設定 インベントリ分析 インパクト評価 Fig.2 ISOで定義されたLCA 材料加工 製品製造 原料採掘 流通 ・販売 使用 ・消費 廃棄 製品のライフサイクル 材料加工 製品製造 原料採掘 廃棄

目的 本研究の目的 流通形態における環境負荷を推計し、製品の生涯全体からみて、どのような施策が環境負荷削減に有効であるかを評価すること 製品のライフサイクル 消費者の生活活動 (買い物) 流通・生産活動 生産 流通 消費者の生活活動 廃棄 消費

アルミ缶1本のコンビニ店舗消費電力: 0.047 [kWh/day] 例)コンビニ店舗の消費電力 1店舗の消費電力: 50900[kWh/年] 約6割 約4割 空調:29957 [kWh/年]     ≒82 [kWh/日] ショーケース:20943 [kWh/年] ≒57 [kWh/日] 小売価格/店舗総売上げ =2.9×10 - 4 (店舗総売上げ:515,300 [円/日]) 小売価格/ケース内総売上げ =4.2×10 - 4 (日配品売上げ:357,700 [円/日]) アルミ缶1本のコンビニ店舗消費電力: 0.047 [kWh/day] 出展 中部電力:コンビニ向け空調・ショーケース統合蓄熱システムの開発     経済産業省-商業販売統計:コンビニエンスストア商品別販売額等及び前年(同月)比

コンビニでは弁当など、他の製品も売っている LCAにおける配分問題 仮にコンビニ1店舗の 消費電力が求められた場合 コンビニでは弁当など、他の製品も売っている 弁当 日用雑貨 アルミ缶1本に配分する!

LCA既往研究の問題点 ライフサイクルと言うが・・・ 工場出荷後~使用・消費までを対象とした事例はあまりない 材料加工 製品製造 原料採掘 流通 ・販売 使用 ・消費 廃棄 製品のライフサイクル 流通 ・販売 使用 ・消費 様々なモノ・サービスが内包されている 配分が難しい 流通・販売を含めた 事例が少ない理由 既往研究:五藤ら 1リットル紙パック牛乳の流通・販売段階は、生産段階比の40~70%と大きく、流通販売の負荷を無視できない