中野区民環境学習講座その5 日常生活と持続可能 そして最終結論

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中野区民環境学習講座その5 日常生活と持続可能 そして最終結論 国際連合大学・東京大学 安井 至 http://www.yasuienv.net

目次 家庭からの環境負荷を減らす LCAとは LCAいくつかの実例 飲料容器 リサイクル ゴミ問題 5回の講座全体の結論

家庭からの環境負荷を減らす

家庭での環境負荷概要 廃棄物・汚染 エネルギー・水 ゴミの排出 電力の使用 危険物の排出 ガスの使用 洗剤などの排出 石油の使用 ガソリンの使用 上水道の使用 下水道の使用 廃棄物・汚染 ゴミの排出 危険物の排出 洗剤などの排出 医薬品の排出 園芸用農薬使用 ペットの排泄物

これらを分類して 地球レベルの負荷 家庭内での影響、個人への影響 これを解析するには、LCA LCA=ライフサイクルアセスメント これを解析するには、リスクアセスメント

LCAとは何か

地球のエネルギーバランス

究極の持続可能性 太陽 製品の製造と利用 宇宙 廃熱

再生可能資源 すべて太陽エネルギーの変形 水力発電 森林資源 太陽光発電 その他の植物 風力発電 漁業資源 波力発電 など 放牧 自然農業 波力発電   など 再生量の範囲内で使用すれば。

様々なレベルの持続可能性 枯渇性 太陽 資源、エネルギー 入力 製品の製造と利用 地球 出力 環境容量を 超える負荷 宇宙 シンク 廃熱

LCAの歴史

製品のライフサイクル

原単位という考え方 例えばCO2に着目して、 同様に、NOx、SOx、水使用、廃棄物などなど、様々な対象がありうる。 ガソリン1LあたりのCO2排出量 電力1kWhあたりのCO2排出量 など、単位量あたりの排出量を原単位 同様に、NOx、SOx、水使用、廃棄物などなど、様々な対象がありうる。

家庭に関係するCO2原単位 排出原単位 ガス:2.36kg-CO2/Nm3(東京ガス) 電力:0.378kg-CO2/kWh(環境省2003) 上下水道:0.58kg-CO2/m3(環境省環境家計簿) ガソリン:2.45kg-CO2/L(環境省2003) 廃棄物(紙など):0.1kg-CO2/kg 廃棄物(プラスチック):2.6kg-CO2/kg

いくつかの実例 (1)お風呂による二酸化炭素負荷 計算 仮定:水200L、温度15℃~42℃ 燃料ガスは効率80%=0.8 ガスの発熱量は10000kcal/立米 計算 ガス使用で発生するCO2量  =200*(42-15)/0.8/10000*2.36=1.59kg-CO2 水の使用で発生するCO2量  =200/1000*0.58=0.12kg-CO2 水の使用によるCO2発生量は、お湯にすると10~15倍になる。

お風呂の費用と二酸化炭素発生 費用は単位円(1回分)、二酸化炭素は単位kg(100回分)

買い物:ティッシュペーパー 紙のCO2原単位 1.2kg-CO2/kg ガソリンのCO2原単位 2.775kg-CO2/L 近くの小売店では4箱で400円。ところが、4km離れたスーパーでは、300円。 そこで、遠くのスーパーに車で買い物に出かけ、4箱×2=8箱を買うことにした。 紙のCO2原単位     1.2kg-CO2/kg ガソリンのCO2原単位  2.775kg-CO2/L ティッシュ8箱の重さ     ガソリンの価格       120円/L

カーボンニュートラルという考え 紙は燃やしても二酸化炭素を出さない? 化石燃料は、数億年~数1000万年 地球温暖化は、100年程度の現象 実際には出す。しかし、過去10年程度で木が吸収した二酸化炭素を再度放出している。 そのため、大気中の二酸化炭素は、10年ぐらいの時間を考慮すれば増えない。 化石燃料は、数億年~数1000万年 地球温暖化は、100年程度の現象

二酸化炭素放出量と再生パルプ含有量 カーボンニュートラル 0 25 50 75 100% 再生パルプ含有量 バイオマス起源 化石燃料起源 固定された二酸化炭素     0   25   50   75   100%       再生パルプ含有量

ティッシュの買い物編

食器洗い機のCO2排出量比較 前提条件 排出原単位 使用回数 効率 給水温:春夏20℃、秋冬10℃ 給湯温:食洗機60℃、手洗い春夏20℃(給水温)、秋冬30℃ 水量:食洗機10リットル、手洗い50リットル(実測による) 排出原単位 ガス:2.36kg-CO2/Nm3(東京ガス) 電力:0.378kg-CO2/kWh(環境省2003) 上下水道:0.58kg-CO2/m3(環境省環境家計簿) 使用回数 3回/日×365日/年=1,095回/年(春夏及び秋冬で等分) 効率 ガス給湯器:0.8 電気給湯器:0.85 エコキュート:0.85×3.5=3.15

費用の比較 手洗いの水使用量【食器約20点】 単価 200ml/4sec = 50ml/sec = 15,000ml/5min = 15㍑/回 【食器60点では】 15*(60/20) = 45㍑/回 伊藤さんLCIデータに比べると大きい 各社カタログ値に比べると小さい 単価 ガス:111.68円/m3 電力:23円/kWh 上下水道:228円/m3

料金比較

CO2排出量比較 教訓:電気を熱にするならヒートポンプ。

その他想定される使用場面 産業連関表より(国環研3EID) 「食洗機」も「お湯」も使わない場合 秋冬はゴム手袋を使用して手洗い ゴム手袋は月に1双使用すると仮定(1×6=6双/年) 産業連関表より(国環研3EID) 「食器洗い乾燥機」としてのデータは無し(類似品を探す) 「電気洗濯機」 93.75Mg-CO2/千台 「電子レンジ」 82.37Mg-CO2/千台  【→約90kg-CO2/台】 「ゴム手袋」 0.94Mg-CO2/千双 食洗機→CO2排出量「90kg-CO2/台」、使用年数を「9年」と仮定

「食洗機」も「お湯」も使わない場合

飲料容器のLCA 容器間比較研究会

今回の目的 500mlの容器の環境負荷比較を行う できるだけ統一的な取扱いを行う 廃棄プロセスにシナリオを設定する 未来型の予測も行う ペット、ガラス(ワンウェイ、リターナブル)  アルミ缶、スチール缶、紙パック

各容器の説明 無炭酸のニアウォータ飲料500ml ペットボトル 31.87g ワンウェイガラス 190g リターナブル 193.5g ペットボトル   31.87g ワンウェイガラス  190g リターナブル   193.5g アルミ缶   15.2g スチール缶  43.0g 紙容器  18.5g

リターナブル瓶の重量 ビール633ml=605gが標準 現在軽量化瓶(キリン)=475g ビール500ml=470g標準 仮想軽量化瓶500ml=380g? 無炭酸飲料なら、表面処理を施して           193.5gが可能

ワンウェイ瓶 現状と未来 現状 未来 市中カレット46% 市中カレット70% 場内カレット29% 場内カレット20% 直接埋め立て44% ワンウェイ瓶 現状と未来 現状 未来 市中カレット46% 市中カレット70% 場内カレット29% 場内カレット20% 直接埋め立て44% 直接埋め立て15% カスケード利用5% カスケード利用10%

二酸化炭素排出量(kg)

SOx、NOx排出量(g)

水使用量(kg)

エネルギー消費量 kcal

固形廃棄物量 kg

CO2排出量 ステージ別

(7)リサイクル型問題 1997年の容器包装リサイクル法実施以来、各種リサイクル法が動き始めた しかし、一部にはリサイクルは効果がないという主張もある。 果たしてどうか。 最大の問題点は、恐らく、誰がどうやって費用を負担するかという問題。

リサイクル効果判定 リサイクル一般論へ リサイクルをすればするほど、コストは掛かる。 しかし、エネルギー消費量、環境汚染は低下。

リサイクルのレベル 1.経済活動として成り立つ 2.単一的な資源・環境負荷の低減 3.総合的な資源・エネルギー消費削減 LCA 経済性 1.経済活動として成り立つ  銅、アルミ、貴金属など 2.単一的な資源・環境負荷の低減  紙・ペット、ゼロエミッション 3.総合的な資源・エネルギー消費削減 LCA 4.総合的な環境負荷(廃棄物)の低減 LCA 5.持続性社会実現を指向 6.社会的責任としての循環    EPR 7.国内雇用の創出のための循環 環境負荷   低減 動く

カスケードリサイクルの効用 回収 輸送 ペレット 社会 コスト 原料 エネルギー

非リサイクル比較モデル ペレット 社会 コスト 原料 エネルギー

リサイクル時非リサイクル時の比較 非リサイクル時の資源投入量 リサイクル時の資源投入量 回収などの 費用

この重要性が余り議論されない オリジナル製品の効用 資源投入量 リサイクル品の効用 回収などの 費用

+ 価値の推移 再商品化 - 回収 輸送 ペレット

日本の家庭ゴミトレンド

ご み 排 出 量 推 移

世界との比較 人口  3000 27000 12000 5400 5700 700 3800

一人あたりの排出量

日本の物質の流れ 入力総量 20.2億トン 製品総量 12.0億トン 食糧消費 1.3億トン エネルギー消費 4.0億トン 入力総量    20.2億トン 製品総量    12.0億トン 食糧消費     1.3億トン エネルギー消費   4.0億トン リサイクル     2.0億トン 不要物      3.1億トン 埋立量  0.8億トン 1人あたり1年間に17トンの資源             10トンの製品

家庭 からの BOD

家庭ゴミの中身 1920年 紙、布、ワラなど   39.5% 土砂、石塊など    44.0% 厨芥類         12.3% ガラスと金属類      4.2%

家庭のゴミ 1996年 厨芥類 42.8%(重量) 紙類 28.6% プラスチック 12.1% 繊維 4.3% ガラス 2.5% 家庭のゴミ  1996年 厨芥類     42.8%(重量) 紙類      28.6% プラスチック  12.1% 繊維  4.3% ガラス  2.5% 金属  2.3%

家庭での商品購入と環境 食料品 : 旬の地場産のものを 飲料 : 自作が一番 衣料品・靴 : エコプレミアム(修理ができる) 食料品 : 旬の地場産のものを 飲料   : 自作が一番 衣料品・靴 : エコプレミアム(修理ができる) 紙類   : 使用量削減、リサイクル 家具・耐久消費財 : 長寿命 容器・包装 : できるだけ少ないもの 自動車 : 低燃費 家電製品 : 低電力

5回の講座全体のまとめ

持続型市民の価値観 ヒトには寿命があることを前提とした人生哲学 未来世代を思いやるだけのやさしさ 全世界人々の生活を知る好奇心 地球の限界を知る好学心 より具体的には 人類の公平とは、といった大きな問題への考察力 現状の正しい状況分析を行う能力 「ノスイズム」に陥らないこと

正しい状況判断を行う能力 マクドナルドへのバッシング問題 日本人の変化 2004年5月、「スーパーサイズ・ミー」なる映画 監督が自ら、マックのみで1ヶ月生活 2004年11月、韓国の「環境正義市民連帯」 同様の実験で、「ファストフードの有害性が証明された」と主張。 成分表示の制度化の運動を進めることを発表。 いずれも、太りすぎと肝臓障害を引き起こす。 日本人の変化 老人病 → 成人病 → 若年性成人病 → 生活習慣病 と名前が変わった。 このようなヒト側の変化を「環境だけが原因」と考えていないか。

「環境ノスイズム(ノスィズム)」に陥らないこと エゴイズム:エゴ=吾(ラテン語) ノスイズム:ノス=我々 イスラム系のテロイズムは、ノスイズム その集団の中のみの合意が全価値 オウム真理教も同様 ノスイズムに陥らないためには 多様な価値観を認める できるだけ広い見識をもつ 全人類を対象とした考察を行う

ヒトは大脳がやや優秀な動物に過ぎない (1)人間の生きる目標を健康だとするのなら 肉体を「動物として健全」に保つべし 苦しいことに耐える能力 過度の快適・快楽から逃れる 過度の安全性を求めず、自分で判断 (2)人間の生きる目標を次世代への文化の伝承だとするのなら 大脳を健全に保ち、できるだけ大脳支配・脱欲望支配の個体となることを目指す

すべての環境問題は 地球の限界と人間活動の規模が抵触することによって発生する。 解決するには、人間活動を地球の限界の範囲内に納める以外に方法は無い。 「持続型社会をデザインする」とは、単に、それだけのことである。 それができるのだろうか?

中世小氷期  人類はエネルギー転換と産業革命を行った。 過去の温度変化 ヤンガードリアス寒冷期    人類は農耕文明による革命を行い生存した。

我々は今、第三の革命、「脱物質/脱エネルギー革命」に向かって進んでいる過程にあるのだろう。 過去の歴史から見ると、人類という生物は、相当切羽詰った状況にならないと、考え方を変えない。過去2回の革命は、人類の固有の欲求に沿ったものであり、なんとかなった。しかし、第三の革命は違うかもしれない。 これまでに活用していない人類の欲求は無いのか。 ある。それは、社会貢献を行うことによる満足感、他人に感謝されることによる満足感、他人に自慢できることをもつ満足感、未知の他人と交流する満足感、など。「他者との関係」 この「他者」が「仲間うち」ではなく、「全人類」になれば。。。