複素ランジュバン法の正当化と正しい収束のための条件

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複素ランジュバン法の正当化と正しい収束のための条件 西村 淳 (KEK理論センター & 総研大) 「離散的手法による場と時空のダイナミクス」研究会 2016年9月16日(金)、静岡労政会館 Ref.) Nagata-J.N.-Shimasaki 1606.07627 [hep-lat] 1604.07717 [hep-lat], JHEP 1607 (2016) 073    Ito-J.N. 1609.04501 [hep-lat]

モンテカルロ法における「符号問題」 モンテカルロ法 場の量子論を非摂動的に研究するための強力な道具 例) 格子 QCD モンテカルロ法 場の量子論を非摂動的に研究するための強力な道具 例) 格子 QCD この確率で配位 U を生成し、 <O> を期待値として計算。

モンテカルロ法における「符号問題」 (続き) モンテカルロ法における「符号問題」                                     (続き) バリオン数密度が有限のとき ( ), フェルミオン行列式が一般に複素数値をとる 配位 U を                 という確率で生成し、 を計算。  (reweighting) 系の体積が大きくなると、指数関数的に小さくなる (位相   が激しく揺らぐため。) 期待値 <O> を計算するのに必要な配位の数が、指数関数的に増大。 「符号問題」

QCD の相図は、謎に包まれている 温度 バリオン数密度に対する 化学ポテンシャル 符号問題のために、第一原理計算は困難。

符号問題は、他にも様々な興味深い系で起きる Θ項 Chern-Simons項 実時間のダイナミクス 湯川相互作用 超対称理論 カイラル・フェルミオン 強相関電子系など フェルミオンに起源 を持つケース 符号問題が解決できれば、理論物理学における 大きなブレークスルーになる!

符号問題の解決に向けた新たな発展 Key : 力学変数の複素化 2011~ “Lefschetz thimble 法” もともとの経路積分 積分路を変形することにより、 符号問題を最小化する。 “Lefschetz thimble 法” 今日の話 複素化した変数に対する確率過程 のもとで、期待値を計算 (符号問題は一切なし!) 被積分関数     の位相 が激しく振動 (符号問題) “複素ランジュバン法” 但し、もともとの経路積分との等価性には、 一定の条件が必要。

目次 0. 序 複素ランジュバン法 正当化の議論と正しい収束のための条件 簡単な例でのデモンストレーション ゲージ・クーリングとその正当化 0. 序 複素ランジュバン法 正当化の議論と正しい収束のための条件 簡単な例でのデモンストレーション ゲージ・クーリングとその正当化 現実的なケースにおける成功例 まとめと展望

1.複素ランジュバン法

複素ランジュバン法 力学変数を複素化して、(仮想的な)時間発展を考える 時間発展を定義する「複素ランジュバン方程式」 Parisi (’83), Klauder (’83) 複素 力学変数を複素化して、(仮想的な)時間発展を考える 時間発展を定義する「複素ランジュバン方程式」 ガウス型のノイズ ? 注 : ドリフト項 と オブザーバブル      を、 複素変数に対して定義するには、解析接続を用いることが重要。

正当化の鍵となる恒等式 ? : 時刻 t における力学変数 の確率 この方法を正当化する鍵となる恒等式: 但し、           は、 Fokker-Planck方程式 を満たす。 c.f.) J.N.-Shimasaki, PRD 92 (2015) 1, 011501 arXiv:1504.08359 [hep-lat]

holomorphy の役割 ・・・・・・・・ P(x,y;t) の時間発展 ・・・・・・・・ ρ(x;t) の時間発展     と      の holomorphy を使った

従来の議論 ここで使う部分積分が必ずしも正当化できない。 (Aarts, James, Seiler, Stamatescu: Eur. Phys. J. C (’11) 71, 1756) ここで使う部分積分が必ずしも正当化できない。 我々の指摘: この表式が t 無限大では一般にwell-definedではない。

我々がやったこと “時間発展したオブサーバブル”の期待値が、十分長い時間に 対しては ill-defined になりうることを指摘。 Nagata-J.N.-Shimasaki 1606.07627 [hep-lat] “時間発展したオブサーバブル”の期待値が、十分長い時間に 対しては ill-defined になりうることを指摘。 この無限級数の収束半径は一般に無限大ではない。 実は、ランジュバン時間に関する帰納法を用いることにより、 有限の時間に対して定義できていればよい。 従来指摘されていた「部分積分の問題」が起こらないための 条件よりも僅かに強い条件を与える。 正しい収束のための「必要十分条件」が得られた。実用上も重要。

2. 正当化の議論と正しい収束のための条件 Ref.) Nagata-J.N.-Shimasaki 1606.07627 [hep-lat]

「時間発展したオブザーバブル」の期待値が定義できるための条件 この表式が有限の   に対して定義できるためには、 上の無限級数が有限の収束半径を持つことが必要。 それには、ドリフト項の確率分布が大きい値に対して指数関数的に抑制されていることが必要。

「部分積分」を正当化するための条件 この積分の収束性は明らかでない !!! いったんランジュバン時間を離散化して、ステップ・サイズ を導入 いったんランジュバン時間を離散化して、ステップ・サイズ  を導入 この積分の収束性は明らかでない !!!  展開が正当化されるには、ドリフト項の確率分布が大きい値に対して、 ベキ則よりも強く抑制されていないといけない。 の極限をとって、 部分積分が正当化できたことになる。

正しい収束のための条件 ドリフト項の大きさの確率分布 n次のモーメント         が有限であるためには、 は大きな u に対してベキ則よりも速く落ちることが必要。 例えば         であるならば、 収束半径は           と評価できる。 必要十分条件 オブザーバブルの有限 t 発展 指数関数的に落ちることが必要   部分積分の有効性 ベキ則よりも速く落ちることが必要

鍵となる恒等式の証明 任意の k に対する以下の恒等式を t に関する帰納法で証明 t=0 では自明に満たされる。

3. 簡単な例でのデモンストレーション Ref.) Nagata-J.N.-Shimasaki 1606.07627 [hep-lat]

3.1 ドリフト項が特異点を持つ模型

ドリフト項が特異点を持つ模型 ドリフト項 : に特異点 この領域を拡大 で CLM は間違った結果を出す。 J.N.-Shimasaki, PRD 92 (2015) 1, 011501 arXiv:1504.08359 [hep-lat] 解析接続 ドリフト項 : に特異点 この領域を拡大 で CLM は間違った結果を出す。

が小さい領域で失敗する原因 特異点付近に多くの配位が現れる。 特異点付近には配位が現れない。

我々の条件のデモンストレーション 片ログ・プロット ログログ・プロット ベキ則で落ちる ドリフト項の大きさ                  の確率分布

3.2 「漂流」の可能性がある模型

「漂流」の可能性がある模型 Aarts-Giudice-Seiler (’13) この領域を拡大 で CLM は間違った結果を出す。 解析接続 |z| の大きい領域で漂流する 可能性あり。 この領域を拡大 で CLM は間違った結果を出す。

  が大きい領域で失敗する原因 配位は |y|<C という領域にしか現れない。 配位は |y| の大きい領域に広がる。

我々の条件のデモンストレーション ベキ則で落ちる ドリフト項の大きさ                      の確率分布

これらの問題は有限密度QCDでも起こる ドリフト項が大きくなるのは以下のようなとき。 SU(3)の生成子 力学変数の複素化 : 離散化した複素ランジュバン方程式 ドリフト項が大きくなるのは以下のようなとき。 1)  リンク変数    がユニタリー行列から著しくずれたとき。 2)      の固有値がゼロに近づくとき。 ドリフト項に                が現れることに注意。 「ゲージ・クーリング」を用いて、これらの問題を回避できる。

4. ゲージ・クーリングとその正当化 Ref.) Nagata-J.N.-Shimasaki 1606.07627 [hep-lat] Nagata-J.N.-Shimasaki, PTEP 2016 (2016) no.1, 013B01 [arXiv:1508.02377 [hep-lat]]

「ゲージ・クーリング」 力学変数の複素化に伴い対称性が増える ランジュバン過程を以下のように変更。 「ゲージ・クーリング」 Seiler-Sexty-Stamatescu, PLB 723 (2013) 213 arXiv:1211.3709 [hep-lat]] N個の実変数   から成る系: ドリフト項     とオブザーバブル     の持つ対称性 力学変数の複素化に伴い対称性が増える ランジュバン過程を以下のように変更。 「ゲージ・クーリング」

「ゲージ・クーリング」の正当化 対称性のもとで不変。 但し、P(x,y;t) はゲージ・クーリングの影響で変わることに注意。 Nagata-J.N.-Shimasaki 1606.07627 [hep-lat] ゲージ・クーリングの影響はここだけ 複素化した対称性により効かない。      と            は、複素化した 対称性のもとで不変。 但し、P(x,y;t) はゲージ・クーリングの影響で変わることに注意。 ノイズ項が複素化した対称性のもとで共変的に変換しないため。 この自由度を利用して、正しい収束のための条件を満たすことができる。

5. 現実的なケースにおける成功例

5.1 有限密度QCDに対するランダム行列理論 Ref.) Nagata-J.N.-Shimasaki 1604.07717 [hep-lat] JHEP 1607 (2016) 073

有限密度QCDに対するランダム行列模型 分配関数が、バリオン数を持たないパイオン に支配されているため。 Bloch-Bruckmann-Kieburg-Splittorff-Verbaarschot, PRD 87 (2013) no. 3, 034510 [arXiv:1211.3990 [hep-lat]]. すべての       に対して厳密解が得られている。 分配関数が、バリオン数を持たないパイオン に支配されているため。 注)   には依存せず。

ランダム行列理論に CLM を適用する : エルミート 力学変数の複素化 : 一般複素行列

ランダム行列理論における「ゲージ・クーリング」 Nagata-J.N.-Shimasaki 1604.07717 [hep-lat] JHEP 1607 (2016) 073 系の対称性: 力学変数の複素化 この複素化した対称性を利用することにより、各ランジュバン・ ステップ毎に 「ゲージ・クーリング」 を適用し、問題を解決。 配位の非エルミート性 (漂流問題) ディラック演算子のゼロ固有値 (特異ドリフト問題)

「ゲージ・クーリング」におけるノルムの選び方 複素化した対称性を用いて、 「ノルム」をできるだけ小さくする。 非エルミート領域への漂流を避けるには 演算子(D+m)のゼロ固有値を避けるには D を反エルミートに近づける           実際には、上の2つの線形結合を用いる。

Dの固有値分布に対する結果 「ゲージ・クーリング」は、然るべきノルムを選ぶことにより、特異ドリフト問題を避けることが可能。 Nagata-J.N.-Shimasaki 1604.07717 [hep-lat] JHEP 1607 (2016) 073 「ゲージ・クーリング」は、然るべきノルムを選ぶことにより、特異ドリフト問題を避けることが可能。

「ゲージ・クーリング」有/無の場合の CLM の結果 Nagata-J.N.-Shimasaki 1604.07717 [hep-lat] JHEP 1607 (2016) 073 カイラル凝縮 バリオン数密度 これまで特異ドリフト問題のために正しい結果が得られていなかった軽いクォークの領域でも、「ゲージ・クーリング」によって正しい結果が得られた。

有限密度における格子QCDへの応用 Matsufuru-Nagata-J.N.-Shimasaki, in prep. 43×8, β=5.7 Staggard fermion(4 flavors), m=0.05 Dt=10-4,T=20-40 10-50 cooling / Langevin step for unitarity norm The trend of the Silver Blaze phenomenon is observed !!!

5.1 簡単化したIKKT行列模型における回転対称性の自発的破れ Ito-J.N.:arXiv/1609.04501 [hep-lat]

簡単化した IKKT行列模型 フェルミオン行列式の位相の効果により、 SO(4) 回転対称性が自発的に破れる。 J.N. PRD 65, 105012 (2002), hep-th/0108070 を固定して         の極限をとる (Veneziano limit) フェルミオン行列式の位相の効果により、 SO(4) 回転対称性が自発的に破れる。

SO(4) 対称性の自発的破れに対する秩序パラメタ : 4×4の実対称行列 4つの固有値:   が         の極限で等しくなかったら、 SO(4) 回転対称性の自発的破れ 注)      の代わりに      を用いる模型 phase-quenched model では の の位相の効果がSSBを引き起こしている。

ガウス展開法の結果 J.N., Okubo, Sugino: JHEP 0210 (2002) 043 [hep-th/0205253] が が起きる!

この行列模型にCLMを適用する : エルミート行列 : 一般複素行列 SSBを見るために、SO(4) 対称性を破る項を入れておき、 を計算。 Ito-J.N., arXiv:1609.04501 [hep-lat] : エルミート行列 : 一般複素行列 SSBを見るために、SO(4) 対称性を破る項を入れておき、 を計算。 については和をとらない。

CLM の結果 Ito-J.N., arXiv:1609.04501 [hep-lat] 特異ドリフト問題を回避するため、フェルミオンの作用を変形: GEMの結果: CLM は、フェルミオン行列式の位相が引き起こす SO(4)の自発的破れを再現!

6.まとめと展望

まとめ 複素ランジュバン法 符号問題に対する有望なアプローチ この議論の中に「ゲージ・クーリング」を取り入れることもできる。 この方法を正当化する議論が確立したことは重要。 正しい収束のための必要十分条件 : ドリフト項の確率分布が、大きい値において指数関数的に抑制されていること。 この条件が満たされていれば、 オブザーバブルの有限 t 発展を 議論の中で用いることができる。部分積分も正当化される。 この議論の中に「ゲージ・クーリング」を取り入れることもできる。 特異ドリフト問題や漂流問題を回避することが可能。 有限密度QCDに対するランダム行列理論や、 簡単化したIKKT行列模型における回転対称性の自発的破れで成功。

今後の展望 QCDの相図の探索 超弦理論の非摂動的定式化(IKKT行列模型)で という自発的破れが起こるのか? 信頼に足る方法に基づく臨界終点の決定 (重イオン衝突実験において重要。) 大きい  の領域で現れる核物質やクォーク液体 の状態方程式 (天体物理に対するインパクト) 超弦理論の非摂動的定式化(IKKT行列模型)で             という自発的破れが起こるのか? Ishibashi-Kawai-Kitazawa-Tsuchiya (’97) 以下にあげるものに手が届くようになる可能性あり。 Θ 項 Chern-Simons 項 実時間のダイナミクス 湯川相互作用 超対称理論 カイラル・フェルミオン 強相関電子系 など。 既に論文あり 全く新しい理論物理学の世界が我々を待ち受けているのかもしれない !