生活環境の変化と学校教育の役割 内 閣 府 「青少年の育成に関する有識者懇談会」 第10回 藤 田 英 典 東京大学大学院教育学研究科

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出所:法務省・出入国管理統計をもとに作 成 1998 年から 2008 年ま での 20 代の人口減少率は 22 % 35 %の減少は、人口減少率 22 %を大きく上回る 18,991,000 人 14,735,000 人 (万人)
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1 課題の洗い出し. 2 1.本日の日程 ①開会の挨拶 日程説明 ( 5 分) ②自己点検 ( 10分) ③情報モラル指導の必要性(プレゼン) (20分 ) ④課題の洗い出し ( 10分) ⑤全体計画についての協議Ⅰ (15 分) ⑥全体計画についての協議Ⅱ (20 分) ⑦全体計画についての協議Ⅲ.
第4章 何のための評価? 道案内 (4) 何のための評価? ♢なぜ教育心理学を勉強するか? (0) イントロダクション ♢効果的な授業をするために (1) 記憶のしくみを知る (2) 学習のしくみを知る (3) 「やる気」の心理学 ♢生徒を正しく評価するために ♢生徒の心を理解するために (5)
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生活環境の変化と学校教育の役割 内 閣 府 「青少年の育成に関する有識者懇談会」 第10回 藤 田 英 典 東京大学大学院教育学研究科 内 閣 府 「青少年の育成に関する有識者懇談会」 第10回 (2002年11月29日) 藤 田 英 典 東京大学大学院教育学研究科

1 80年代以降の教育改革の動向(初等・中等教育) 1 80年代以降の教育改革の動向(初等・中等教育)       ~(×):報告者批判的、(○):報告者支持~   ①「ゆとり教育」「学校スリム化」と新しい学力観(×)     ~完全学校週五日制と新学習指導要領の実施(2002年4月~)   ②学力重視への政策転換(×○)     ~アピール「学びのすすめ」(2002年1月17日)   ③エリート主義・能力主義と市場的競争原理による教育再編(×)     ~学校選択制、中高一貫校、アピール「学びのすすめ」など   ④治療的アプローチと懲戒的アプローチの拡大(×○)     ~スクール・カウンセラー、少年法改正、問題生徒への厳格な対応   ⑤復古的ナショナリズム・道徳主義の台頭(×)    ~「心のノート」、奉仕活動等の推進、教育基本法の見直し  ⑥地方分権化の推進-2つの方向-     ~現場裁量権の拡大と住民参加=「開かれた学校づくり」(○)     ~教育委員会による管理統制の強化と新たな集権化(×)   ⑦学校評価・教員評価-2つの方向-     ~外部評価・第三者評価、管理的評価(×)     ~当事者評価、形成的評価(○)

2 教育改革は効果的だったと言えるか? 1)80年代以降の教育改革の理由・目的 ①「教育病理」 ~「学校性ストレス」→学校批判・教師批判 2 教育改革は効果的だったと言えるか? 1)80年代以降の教育改革の理由・目的  ①「教育病理」     ~「学校性ストレス」→学校批判・教師批判     Æ「ゆとり教育」「学校スリム化」政策       心の教育、スクールカウンセラー、少年法改正  ②「変わる社会」     ~知識社会=IT化・グローバル化、国際競争の新展開     Æ「ゆとり教育」「学校スリム化」政策(新学力観)      アピール「学びのすすめ」、エリート教育

2)改革の目的は達成されたか? ①「教育病理」は改善・解決されたか? ~不登校、校内暴力・いじめ、学級崩壊、少年犯罪、キレる子ども  ①「教育病理」は改善・解決されたか?    ~不登校、校内暴力・いじめ、学級崩壊、少年犯罪、キレる子ども     Æ「教育病理」か「社会病理」か?→社会病理(図表①) ~日本の問題行動水準の低さを支えているのは何か(図表②) Æ中間集団の崩壊と生活圏(コミュニティ)の分断化・脆弱化  ②「変わる社会」に対応できるか?    ~「学力低下」への危惧・不安Ç(図表④⑤)      Æ「学びのすすめ」、新たなテスト主義の台頭 ~学校五日制・中高一貫校・学校選択制の拡大は何を意味するか?      Æエリート育成・安全圏確保の手段      Æ ①学力・努力・意欲・生活態度の二極分化       ②早期選抜・学校格差・階層差の拡大        →人材の浪費、人的資源の分断化・質的低下       ③教育サービスの低下と家庭の教育費負担の増大 図① 生活環境の変容と教育問題青少年問題の展開 日本語版出所:藤田英典「学校化・情報化と人間形成空間の変容」北海道社会学会『現代社会学研究』         第4巻、1991年(1-33頁)、図1(5頁)

~日本の問題行動水準の低さを支えているのは何か(図表②) Æ中間集団の崩壊と生活圏(コミュニティ)の分断化・脆弱化 ①「教育病理」は改善・解決されたか?   ~日本の問題行動水準の低さを支えているのは何か(図表②)   Æ中間集団の崩壊と生活圏(コミュニティ)の分断化・脆弱化 図②-1 主要な犯罪の少年検挙人員人口比の推移(1987年~1996年) 6,000 5,000 4,000 3,000 2,000 1,000 1987 88 89 90 91 92 93 94 95 96 韓国 988.3 日本 1,100.0 フランス 2,310.7 アメリカ 2,045.0 イギリス 3,063.3 ドイツ 5,548.7 図②-2 殺人の少年検挙人員人口比の推移(1987年~1996年) 12 10 8 6 4 2 1987 88 89 90 91 92 93 94 95 96 韓国 0.5 日本 フランス 2.4 アメリカ 7.1 イギリス 2.6 ドイツ 3.0 図②-3 強盗の少年検挙人員人口比の推移(1987年~1996年) 250 200 150 100 50 1987 88 89 90 91 92 93 94 95 96 韓国 25.0 日本 6.2 フランス 124.4 アメリカ 127.9 イギリス 133.0 ドイツ 217.4   (注) 各国の統計書による。       アメリカ Crime in the United States 及びアメリカ商務省経済統計局の資料       イギリス Criminal statistics England and Wales 及びイギリス中央統計局の資料       ドイツ Polizeliche Kriminalstatistik 及びドイツ統計局の資料       フランス Aspects de la criminalité et de la délinquance constatées en France 及び La Slluation émographique       韓国 勧告犯罪分析、韓国犯罪白書及び韓国統計年鑑。       日本 警視庁の統計及び総務庁統計局の人口資料。   出所: 『犯罪白書』平成10年版。       藤田英典「戦後日本における青少年問題・教育問題:その展開と現在の課題」藤田・黒崎・片桐・佐藤編             『教育学年報 8 子ども問題』世織書房、2001年(73-114頁)、図11a、b(99頁)

(注)   1. 矯正統計年報による。      2. ( )内は、実数である。 出所: 『犯罪白書』平成12年版。      藤田英典「戦後日本における青少年問題・教育問題:その展開と現在の課題」 藤田・黒崎・片桐・佐藤編            『教育学年報 8 子ども問題』世織書房、2001年(73-114頁)、図12a~c(105頁)

図④IEA国際学力比較調査(第3回、1995年、通称TIMSS) ②「変わる社会」に対応できるか? ~「学力低下」への危惧・不安Ç     Æ「学びのすすめ」、新たなテスト主義の台頭(図表④⑤) 図④IEA国際学力比較調査(第3回、1995年、通称TIMSS) 中学校2年数学 中学校2年理科 325.9 南アフリカ 354.1 411.1 コロンビア 384.8 429.6 クウェート 392.2 462.6 キプロス 428.3 イラン 469.7 454.4 ポルトガル 470.6 ベルギー(Fr) 473.6 476.4 リトアニア 477.2 478.3 デンマーク 481.6 ルーマニア 479.6 483.9 ギリシャ 484.8 ラトビア 486.8 アイスランド 486.1 487.3 スペイン 493.6 493.4 497.3 498.5 スコットランド 497.7 フランス 499.8 アメリカ. 516.0 国際平均値 502.3 517.0 503.3 ノルウェー 517.2 505.7 イギリス 521.7 スイス 507.8 ニュージーランド 522.1 香港 509.2 ドイツ 524.5 イスラエル 513.0 525.5 タイ 518.6 スウェーデン 521.6 527.2 522.5 530.9 カナダ 526.3 531.3 534.4 527.4 アイルランド 535.4 529.6 オーストラリア 537.8 535.5 ロシア 538.1 537.3 ハンガリー 544.4 スロバキア 544.6 539.4 オーストリア 550.3 ベルギー(Fl) 539.7 ブルガリア 552.1 540.8 スロベニア 553.7 541.0 オランダ 557.7 545.4 560.1 547.1 563.7 チェコ 564.8 565.2 564.9 韓国 588.0 571.0 日本 604.8 573.9 607.4 607.3 シンガポール 643.3 平均得点 国・地域 (1000点満点) (1000点満点) (注)  ベルギーのFlとFrは言語圏の違いによる。 出所: IEA(国際教育到達度評価学会)の調査『数学教育・理科教育の国際比較』国立教育政策研究所、2002年

図⑤-1 数学的リテラシー及び科学的リテラシーの平均得点(標準化済み) OECD国際学力比較調査(2000年、通称PISA) 図⑤-1 数学的リテラシー及び科学的リテラシーの平均得点(標準化済み) 数学的リテラシー 科学的リテラシー 1 日本 557 韓国 552 2 547 550 3 ニュージーランド 537 フィンランド 538 4 536 イギリス 532 5 オーストラリア 533 カナダ 529 6 528 7 スイス 8 オーストリア 519 9 ベルギー 520 アイルランド 513 10 フランス 517 スウェーデン 512 11 515 チェコ 511 12 デンマーク 514 500 13 アイスランド ノルウェー 14 リヒテンシュタイン アメリカ. 499 15 510 ハンガリー 496 16 503 17 18 498 19 493 スペイン 491 20 ドイツ 490 487 21 488 ポーランド 483 22 ロシア 478 481 23 476 イタリア 24 470 25 ラトビア 463 ギリシャ 461 26 457 460 27 ポルトガル 454 28 447 459 29 ルクセンブルグ 446 443 30 メキシコ 387 422 31 ブラジル 334 375 出所:文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/b_menu/link/index.htm)

図⑤-2 読解力の平均得点(標準化済み) OECD国際学力比較調査(2000年、通称PISA) 総合読解力 得点 情報の取出し 解 釈 図⑤-2  読解力の平均得点(標準化済み) 総合読解力 得点 情報の取出し 解 釈 熟考・評価 1 フィンランド 546 556 555 カナダ 542 2 534 オーストラリア 536 532 イギリス 539 3 ニュージーランド 529 535 527 アイルランド 533 4 528 530 526 5 韓国 日本 6 525 7 523 524 スウェーデン 522 8 518 9 516 アイスランド 514 オーストリア 512 10 507 フランス 515 510 11 ベルギー アメリカ. 12 ノルウェー 505 508 506 13 502 スペイン 14 504 500 501 15 497 499 デンマーク 16 494 スイス 498 チェコ 17 496 18 493 リヒテンシュタイン 492 ギリシャ 495 19 イタリア 488 491 20 487 483 489 485 21 ドイツ 484 22 481 ハンガリー 23 480 478 ポーランド 482 ポルトガル 24 479 475 25 474 455 477 26 470 ロシア 451 473 468 27 462 ラトビア 458 28 450 459 29 ルクセンブルグ 441 433 446 メキシコ 30 422 402 439 442 31 ブラジル 396 365 400 437 (日本は2位グループ) (日本は1位グループ) 出所:文部科学省ホームページ(http://www.mext.go.jp/b_menu/link/index.htm)

 ②「変わる社会」に対応できるか?    ~「学力低下」への危惧・不安Ç(図表④⑤)      Æ「学びのすすめ」、新たなテスト主義の台頭 ~学校五日制・中高一貫校・学校選択制の拡大は何を意味するか?      Æエリート育成・安全圏確保の手段      Æ ①学力・努力・意欲・生活態度の二極分化        ②早期選抜・学校格差・階層差の拡大         →人材の浪費、人的資源の分断化・質的低下        ③教育サービスの低下と家庭の教育費負担の増大

3 共生時代の学校づくりの指針と課題 1)現代社会における学校の基本的役割 ①生活の場 ~安全・健全(適切な配慮)・許容性(居場所)・楽しい 3 共生時代の学校づくりの指針と課題  1)現代社会における学校の基本的役割    ①生活の場     ~安全・健全(適切な配慮)・許容性(居場所)・楽しい    ②学力形成の場     ~基礎基本、専門的能力、学習の構えの形成    ③アイデンティティ形成の場     ~自尊心・誇り、帰属感・他者関係、      自己イメージ・将来展望の形成

2)教育改革・教育実践の指針と課題 図⑥ 四つの中軸原理と生活空間 ①努力と賞賛のカルチャーの再構築=「名誉の等価性」  ①努力と賞賛のカルチャーの再構築=「名誉の等価性」   ~参加・努力・挑戦Æ意味の発見、興味・関心・積極性の形成 ②地方・現場からの改革   ~現場裁量権の拡大、当事者の参加・協同・創意工夫  ③制度設計の基本 ~教育と社会の将来ヴィジョンをどう描くか?(図表⑥)    制度的価値:効率・平等・共生    実践的価値:自己実現    Æ生活圏(ケアリング・コミュニティ)の再構築と     市民的共生の実現 図⑥ 四つの中軸原理と生活空間 生活と活動の基盤 (制度的構造) 自己実現 平等 共生 効率 (活動の中で実現する価値) 出所:藤田英典『教育改革』岩波新書、1997年、図1(56頁)

 ④教育=未完のプロジェクトÆ現在と未来への投資    ★すべての子どもが尊厳的存在・有為な人材      ★金も人手も時間もかけずに教育がよくなることはない