神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義5 銀河の形成と進化 1. 銀河の金属量の進化 2. 銀河の構造の進化 3. 環境と銀河の進化

Slides:



Advertisements
Similar presentations
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 1 星間ダストによる減光 ( 散乱・吸収 ) 過程、放射過程 のまとめ、およびダストに関わるいろいろ。 2011/11/09.
Advertisements

- X 線選択で見つかる obscured AGN の母銀河 - @筑波大学 2010/02/19 秋山 正幸(東北大学天文学専攻)
銀河物理学特論 I: 講義1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 遠方宇宙の銀河の理解のベースライン。 SDSS のデータベースによって近傍宇宙の 可視波長域での統計的性質の理解は飛躍的 に高精度になった。 2009/04/13.
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
W31A領域に付随する 水蒸気メーザーによる3次元的速度構造
第9回 星間物質その2(星間塵) 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
X線による超新星残骸の観測の現状 平賀純子(ISAS) SN1006 CasA Tycho RXJ1713 子Vela Vela SNR.
星形成銀河の星間物質の電離状態 (Nakajima & Ouchi 2014, MNRAS accepted, arXiv: )
DECIGOのサイエンス ~ダークエネルギー関連~ 高橋龍一 (国立天文台PD).
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
銀河物理学特論 I: 講義3-3:光度関数の進化 分光探査サンプルによる Lilly et al. 1995, ApJ, 455, 108
Report from Tsukuba Group (From Galaxies to LSS)
1: Hokkaido Uni., 2: NROJ, 3: Hokkaigakuen Univ.
Ksバンドで見るz~1の銀河形態(途中経過)
電離領域の遠赤外輻射 (物理的取り扱い)      Hiroyuki Hirashita    (Nagoya University, Japan)
Damped Lya Clouds ダスト・水素分子
WISHによるhigh-z QSOs 探査案 WISH Science Meeting (10 Mar. 三鷹
銀河物理学特論 I: 講義1-1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 Kauffmann et al
銀河物理学特論 I: 講義1-2:銀河の輝線診断 Tremonti et al. 2004, ApJ, 613, 898
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義3 近傍宇宙の銀河の統計的性質 1) 銀河の星の系の統計的性質 2) 銀河の力学構造 3) 銀河の活動性、中心の巨大ブラックホール 4) 銀河の大規模構造、環境効果 2010/09/14.
Virgo Survey: Single Peak Galaxies
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義6 特別編 観測装置の将来計画
銀河物理学特論 I: 講義2-2:銀河バルジと巨大ブラックホールの相関関係 Magorrian et al
銀河物理学特論 I: 講義1-4:銀河の力学構造 銀河の速度構造、サイズ、明るさの間の関係。 Spiral – Tully-Fisher 関係 Elliptical – Fundamental Plane 2009/06/08.
平成26年度(後期) 総合研究大学院大学 宇宙科学専攻
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの力学的安定性 星間ガスの力学的な安定性・不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
Virgo CO Survey of Molecular Nuclei Yoshiaki Sofue Dept. Phys
銀河物理学特論 I: 講義3-4:銀河の化学進化 Erb et al. 2006, ApJ, 644, 813
Signatures of GRB host galactic Dust in the Afterglows
銀河物理学特論 I: 講義3-1:遠方銀河の探査 どのようにしてサンプルを作成するか。
銀河風による矮小銀河からの質量流出とダークマターハロー中心質量密度分布
銀河物理学特論 I: 講義1-3:銀河性質と環境依存性 Park et al. 2007, ApJ, 658, 898
すばる望遠鏡 次期観測装置の検討会 (銀河・銀河形成分野) 観測提案のまとめ
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
村岡和幸 (大阪府立大学) & ASTE 近傍銀河 プロジェクトチーム
坂本強(日本スペースガード協会)松永典之(東大)、 長谷川隆(ぐんま天文台)、 三戸洋之(東大木曽観測所)、 中田好一(東大木曽観測所)
X-ray Study of Gravitational Lensing Clusters of Galaxies
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
Environmental Effect on Gaseous Disks of the Virgo Spirals
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
COSMOS天域における ライマンブレーク銀河の形態
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
天の川銀河研究会 天の川銀河研究会 議論の種 半田利弘(鹿児島大学).
星間物理学 講義2: 星間空間の物理状態 星間空間のガスの典型的パラメータ どうしてそうなっているのか
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 2 銀河スケールのダスト、ダストの温度、PAH ほか
銀河物理学特論 I: 講義2-1:銀河中心の巨大ブラックホールと活動銀河中心核
M33高密度分子ガス観測にむけて Dense Cloud Formation & Global Star Formation in M33
塵に埋もれたAGN/銀河との相互作用 今西昌俊(国立天文台) Subaru AKARI Spitzer SPICA.
銀河物理学特論 I: 講義3-5:銀河の力学構造の進化 Vogt et al
セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
Spiral銀河における星形成史について
宇宙の初期構造の起源と 銀河間物質の再イオン化
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
COE外国出張報告会 C0167 宇宙物理学教室 D2 木内 学 ascps
The Baryonic Tully-Fisher Relation
「すざく」でみた天の川銀河系の中心 多数の輝線を過去最高のエネルギー精度 、統計、S/Nで検出、発見した。 Energy 6 7 8
星間物理学 講義6資料: 衝撃波1 超新星残骸などに見られる衝撃波の物理過程について
第12回 銀河とその活動現象 東京大学教養学部前期課程 2017年度Aセメスター 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
星間物理学 講義 3: 輝線放射過程 I 水素の光電離と再結合
MOIRCSサイエンスゼミ 銀河団銀河のMorphology-Density Relation
銀河物理学特論 I: 講義3-6:銀河とブラックホールの共進化 Alexander et al
天文・宇宙分野1 梅村雅之 「次世代スーパーコンピュータでせまる物質と宇宙の起源と構造」
10/19 GMCゼミ.
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
2009/4/8 WISH 三鷹 小山佑世(東京大学) クアラルンプールの夜景.
COSMOS天域における 高赤方偏移低光度クェーサー探査
星間物理学 講義7資料: 物質の輪廻と銀河の進化 銀河の化学進化についての定式化
形成期の楕円銀河 (サブミリ銀河) Arp220.
Presentation transcript:

神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義5 銀河の形成と進化 1. 銀河の金属量の進化 2. 銀河の構造の進化 3. 環境と銀河の進化 神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義5 銀河の形成と進化 1. 銀河の金属量の進化 2. 銀河の構造の進化 3. 環境と銀河の進化 2010/09/14

銀河の金属量の進化

遠方の銀河について知る意味 宇宙に一番たくさん存在する元素は?2番目は? われわれの身近な元素はもっと違うもの。 多くは星の中の核融合反応で形成される。 銀河が出来てくる歴史は銀河の中で星が出来てくる歴史。 銀河の中で「金属」が作られる歴史である。

SDSS による銀河のスペクトルの統計的性質: 銀河の星質量とスペクトルの関係。銀河の星質量と銀河の輝線から求められたガスの金属量に相関があることがわかった。 Tremonti et al., 2004, ApJ, 613, 898

Mass-metallicity relation of z~3 LBGs: 近赤外線での輝線分光観測による金属量決定。 Maiolino et al. 2008, A&A,488, 463

太陽系誕生 Mass-metallicity relation of z~3 LBGs: 銀河の星質量と金属量(酸素の組成比に直した場合)の赤方偏移依存性。この関係は赤方偏移に依存して進化し、高赤方偏移では金属量が下がることが示唆されている。 Maiolino et al. 2008, A&A, 488, 463 太陽系誕生

Metallicity from IS absorption lines: 銀河のスペクトルにみられる星間吸収線による金属量決定。 Savaglio et al. 2004, ApJ, 602, 51

Metal abundances of damped-Lya galaxies: Damped Lya system に付随する金属吸収線を用いてそれぞれの金属の組成量を推定する。 Z=2.8110 system Fe, Si, Zn, Ni, S, Mg, Cr, C, N, O Z=4.0803 system Fe, C, Si, Al, Ni Z=0.8598 system Fe, Mn, Zn, Cr, Mg Lu et al. 1996, ApJS, 107, 475

? Metal abundances of damped-Lya galaxies: Fe/H は同じ年齢の銀河系内の星に比べると小さい。組成比は銀河系のハローの星に近く、Type-II 超新星の寄与が大、Type-Ia 超新星の寄与は小さい。 ? Lu et al. 1996, ApJS, 107, 475

Metal abundances of Gamma-ray Burst Absorption systems: GRB に見られた DLA に付随する金属吸収線を用いてそれぞれの金属の組成量を推定する。 Prochaska et al. 2007, ApJ, 666, 267

遠方の銀河について知る意味 銀河が出来てくる歴史は銀河の中で星が出来てくる歴史。 銀河の中で「金属」が作られる歴史である。 惑星は金属量の高い星に付随する? Fischer & Valenti, 2005, ApJ, 622, 1102

銀河の構造の進化

Between 0<z<1 ハッブル宇宙望遠鏡による赤方偏移1の銀河の画像: HSTの空間分解能 (~0.1” @ 1um)があればかなり詳細まで調べられる。 補償光学なしの地上望遠鏡(<1.0”)でもぎりぎり内部構造を調べることが可能。

Between 0<z<1 : Disk galaxies : Disk dynamics Tully-Fisher 関係の進化: Disk galaxy dynamics with VLT/GIRRAFFE multi-IFU w/o AO Flores et al. 2006, A&A, 455, 107 (0.4<z<0.75, disk galaxies), 35% pure-rotating disks following local-TF relation, 65% disturbed rotation, complex kinematics ? IMAGES: Yang et al. (2008, A&A, 477, 789), Neichel et al. (2008, A&A, 484, 159), Puech et al. (2008, A&A, 484, 173) Neichel+08 : 12/22 spiral morphology galaxies have PR or CK velocity fields Peuch+08 : local K-band TF relation に乗るには星質量で2倍の進化が必要? Velocity dispersion ratio between model and observation at the model peak position Yang+08; RD (blue), PR (green), CK (red) Puech+08; Solid line: local TF relation Distance between model and observed peaks of velocity dispersion (pixel=0.52”)

Between 1<z<3 : Structures Elmegreen et al. 2008, arXiv:0810.5404; ACS+NICMOS H; Clump clusters (0<z<4), chain galaxies (0<z<4), spirals (0<z<2) Bulge-like clump (red clump) ~ logM*=8-9, Other clump (blue clump) ~ logM*=6-9, other clumps are ~10 times smaller than bulge-like clumps. Total clump mass corresponds to 5*2%=10% of the galaxies total mass. other clumps are younger than bulge-like clumps by 10 times. 0.3 Msolar / yr / clump それぞれのクランプの星質量は近傍銀河に見られる星形成領域の星質量の100倍ある。ディスクのガスの速度分散が大きく、ジーンズ質量が大きくなっている?

Above z>3 すばる望遠鏡+補償光学による赤方偏移3の銀河の画像 (Akiyama+08): HSTの空間分解能 (>0.2” @ 2um)では不足気味。 地上望遠鏡+補償光学(<0.1”@ 2um)でぎりぎり内部構造を調べることが可能。

Above z>3 ; structure 2019/1/15 Above z>3 ; structure 形態的には、ディスク銀河に似たフラットなプロファイルの銀河が多い、楕円銀河的な中心集中度の高い銀河が少ない。 (Akiyama et al. 2008, ApJS, 175, 1)

Z>1 の銀河の力学構造: Above z>3 : dynamics  回転か合体銀河か? Stark et al. 2008 Nature, 455, 755; z=3.07 lensed galaxy 重力レンズによって空間分解能が有効的に高く(20-40mas = 150-300pc resolution) 観測できた。回転が支持される。 +-50km/s rotation (inner 0.5kpc) + flat rotation curve, logMdyn=9.3 vs. logMstr=9.8 Sigma=54km/s, v/sigma=1.2 (星形成による加熱?), 4.4 Msolar/yr/kpc2 (近傍銀河の Nuclear Star burst 程度) 12+log(O/H)=8.6 = 0.9Zsolar, CO luminosity-gas mass conversion factor <0.8; ~local LIRG (1) << local spiral (5)

環境と銀河の進化

銀河団の中での銀河の進化: Butcher-Oemler 効果? 銀河団の中の「青い」銀河の割合を調べると、赤方偏移が大きい銀河団では青い銀河の割合が高いようだ。 Van Dokkum, 2000, ApJ, 541, 95 Buther & Oemler , 1984, ApJ, 285, 426

銀河団の中での銀河の進化: Butcher-Oemler 効果? ただし銀河団の性質にもよるので注意が必要である。 Smail et al. 1998, MNRAS, 293, 124

銀河団の中での銀河の進化: Butcher-Oemler 効果? HST のデータを用いて形態別に調べると、早期型銀河の割合も赤方偏移に依存して小さくなっている。 Van Dokkum, 2000, ApJ, 541, 95