村山祐司(筑波大学)・尾野久二(㈱パスコ) オープンソースを利用した 統合型空間分析システムの開発 村山祐司(筑波大学)・尾野久二(㈱パスコ) それでははじめます
GeoComputation ●従来の計量地理学と可視化技術を統合・発展させた新しい研究分野 ●最近では,GeoVistaなど空間分析ツールのプラットホームの研究開発もおこなわれている GIS(地理情報システム)は,大学などの研究・教育機関において,ここ10年程で急速に普及・浸透した.GISの基本的機能もよく知られるようになった.しかしながら,一部には分析結果の地図表示のみにとどまり,可視化の重要性を強調する傾向がみられる. GISは,本来,その研究・開発の歴史から見て,分析・解析機能が,地図表示と同様に,またはそれ以上に重要である.また,地理学で開発されてきた空間分析の手法を,GIS機能と有機的に統合化することも重要である. 近年,GISの世界では,従来の計量地理学と可視化技術を統合・発展させた,GeoComputationという研究分野が注目を集めている.このGeoComputationの研究課題の最新の成果の一つに,空間分析用のプラットホーム構築に関する研究がある.Luc AnselinのSpaceStat,Leeds大学CCGやペンシルベニア州立大学GeoVistaなどで,研究・開発が活発におこなわれている. また,このような空間分析ツールの情報を集めた,社会科学における空間分析のポータル・サイトであるCSISS(Center for Spatially Integrated Social Science, http://www.csiss.org)も注目される. 本研究は,このような研究動向を踏まえ,GISを有効に利用した空間分析の研究教育に有効な統合型空間分析システムを開発することを課題としている. なお,本システムの開発にあたっては,慶應大学渡辺利夫先生より,因子分析プログラムの利用許可をいただき,カーネル密度分析,K関数法,ポイントパターン分析および空間的自己相関のR言語パッケージについては,Economic Geography Section, Department of Economics, Norwegian School of Economics and Business Administration のBivand先生より, 懇切丁寧なご教授をいただいた.記して感謝を申し上げる.
オープンソースまたはフリーの空間分析ツール ●インターネットの普及 ●GISの標準化 ・OpenGIS ●地理学研究者自らの貢献 ●主なオープンソースの空間分析ツール ・R言語 オープンソースまたはフリーの空間分析ツールの開発が盛んになった要因としては、ここに示す4つが挙げられる。 まず一つ目にはインターネットの普及が挙げられる。これにより、以前に増して学術・技術情報へのアクセスが容易になり、それに基づいたツールの開発と配布が容易になった。 2つ目は¥いSOやOGCでのGIS標準化が挙げられる。これによって、データタイプや操作性のガイドラインができた。 3つ目には地理学研究者の直接・間接のツール開発への貢献が挙げられる。 このような中から,本システムでは以下の3つのツールを使って作成された. R言語は、オックスフォード大の応用統計学の教授、Ripleyの尽力が多きい。空間分析については、同教授の空間統計をさぽーとしたSpatialライブラリーがSplusよりRに移植を契機に、他の空間分析ライブラリーもRへの移植が増加した GeoToolsはLeeds大学CCG(Center of Computational Geography)においてJavaで開発されたGISエンジンである。今回のシステム作成にあたっては日本語処理などのためにかなりの修正をおこなった。 JTS(Java Topology Suite)は昨年よりこれまで商用GISソフトにほぼ独占されていた空間検索および空間検索を可能にしたパッケージである。現在、高速なC++版の開発が進行中である。 ・GeoTools ・JTS (Java Topology Suite)
R言語 ●S言語のクローン ●ベクトル・マトリックス処理がベース ●数多くの統計分析手法をサポート ●近年、空間分析のパッケージが増加(地理学研究者の貢献) ・空間的自己相関 ・ポイントパターン分析 R言語はこのような特長があります。 ・空間的補間
オープンソースの空間分析開発の目的 ●空間分析のためのプラットホームの提供 ●オープンソースで構築したため、無料で配布が可能 ●空間分析手法の教育や普及に貢献 本システムは,大学における,GIS(地理情報システム)の空間分析に関する教育に利用することを目的に開発された統合型空間分析システムである. 本システムは,地図表示を中心とするGIS機能と統計解析ソフトを融合させて,GUIによって,面倒なコマンド入力なしに,また,各ソフトの詳しい利用知識なしに,ユーザが自分自身のデータを使って分析できるという特長をもっている.
システム構成
メニュー駆動型の操作 本システムでは、このようなメニュードリブンで操作をいたします。
地図表示 地図表示はこのようになります。コロプレス図と円ドット図をサポートしています.
多変量解析 地図化 本システムは、回帰分析および因子分析をサポートしています。 本システムは、回帰分析および因子分析をサポートしています。 因子分析の場合は、クラスター分析と連動してデンドログラム(樹形図)のグルーピングと地図表示が連動しています。
ESDA(探索的空間分析) リンク・同期 本システムではESDAのなかのグラフと地図を連動する機能をサポートしています。
GeoViz(可視化) カルトグラムの例 本システムでは、GVizやGeoVizなどの可視化技術のうち、カルトグラムをサポートしています。
空間検索・オーバーレイ解析
バッファー・ディゾルブ
TIN・ボロノイ・凸包
カーネル密度推定
ポイントパターン分析・空間的自己相関 ローカルG統計量メニュー ローカルG統計量の地図表示(20km)
入手先と今後の課題 ●空間分析機能をより充実する ●空間DBを利用した大規模データ対応 ●WebGIS化 を図る ●英語版作成 ●村山のサイト(http://land.geo.tsukuba.ac.jp/teacher/murayama/index.html) において,本システムを試験的に公開 ●空間分析機能をより充実する ●空間DBを利用した大規模データ対応 ●WebGIS化 を図る ●英語版作成