卒業論文 重力波のデータ解析における 分散処理の必要性

Slides:



Advertisements
Similar presentations
第 7 週目: 周波数伝達関数とボード線図 周波数伝達関数 ボード線図 TUT, System & Control laboratory 1/16.
Advertisements

情報通信システム( 2 ) 年 4 月 26 日 火曜日 午後 4 時 10 分~ 5 時 40 分 NTT-IT Corp. 加藤 洋一.
卒研のようなもの 圧縮ちーむ 2008.4.22 鴫原、山本、齋藤.
アインシュタインの重力波で聴く 宇宙の調べ スタン ウイットコム 山本博章 カリフォルニア工科大学 重力波で探る宇宙 平成21年5月30日
ニュートン重力理論における ブラックホール形成のシミュレーション
伝達事項 過去のレポートを全て一緒に綴じて提出されている 方が何名かいらっします。 せっかくの過去の宿題レポートが紛失する可能性を
復習.
2006年2月22日 宇宙重力波干渉計検討会 - 小型衛星とDECIGO - 川村静児 国立天文台
集積回路工学研究室 岩淵 勇樹 秋田 純一 北川 章夫
GRAPESで学ぶフーリエ級数 GRAPESで学ぶ フーリエ級数 立命館高等学校 早苗雅史.
情253 「ディジタルシステム設計 」 (2)modem2
デジタル信号処理①
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
日経平均株価の時系列データ分析 B03007 明田 剛慈.
プロジェクト研究発表 重力波天文学 at Spring School, ICRR, The University of Tokyo
カオス力学系と重力波 木内 建太 & 前田 恵一 (早稲田大学)  PRD、 (2004)
情253 「ディジタルシステム設計 」 (4)WirelessComm4
周期境界条件下に配置されたブラックホールの変形
担当 : 山口 匡 伊藤 祐吾 (TA) 宮内 裕輔 (TA)
伝達事項 試験は6/6 (土) 1限目の予定です。.
首都大学東京 都市教養学部数理科学コース 関谷博之
(質問)  体軸分解能を評価するための「SSPの測定」
ディジタル信号処理 Digital Signal Processing
重力レンズ効果を想定した回転する ブラックホールの周りの粒子の軌道
デジタル信号処理④
ガウス誤差関数を利用した 収束の速いヒルベルト変換ディジタルフィルタ
羽佐田葉子 2007年3月24日 アクロス研究会@静岡大学
LCGT Collaboration Meeting (2010年2月15日)
宇宙での重力波観測 (1) 宇宙での重力波観測 宇宙で観測するメリット : 他にはないサイエンスがある
新特定領域 「全波長重力波天文学のフロンティア」 第5回会合 (2005年7月30日 国立天文台, 東京)
ー 第3日目 ー ねじれ型振動子のブラウン運動の測定
2.伝送線路の基礎 2.1 分布定数線路 2.1.1 伝送線路と分布定数線路 集中定数回路:fが低い場合に適用
数値相対論の展望        柴田 大 (東大総合文化:1月から京大基研).
特殊相対性理論での光のドップラー効果と光行差
ディジタル信号処理 Digital Signal Processing
準光速ロケットでのブラックホール旅行における時間の遅れ
京大岡山 3.8m 望遠鏡 分割鏡制御に用いる アクチュエータの特性評価
瀬戸直樹(京大理) CMBワークショップ 年6月8日(火) 国立天文台
低周波重力波探査のための ねじれ振り子型重力波検出器
大阪工業大学 情報科学部 情報科学科 学生番号 A03-017 犬束 高士
ニューラルネットは、いつ、なぜ、どのようにして役立つか?
プログラミング論 II 2008年吉日 主成分分析 数値積分
横磁化成分と歳差運動 M0 横磁化Mxy 回転座標系 90°RFパルスにより、縦磁化成分Moはxy平面に倒れる(横磁化生成)
フーリエ級数展開 ~矩形波について~ 長江 栞 中島 涼 中村 勇樹
重力・重力波物理学 安東 正樹 (京都大学 理学系研究科) GCOE特別講義 (2011年11月15-17日, 京都大学) イラスト
安東 正樹池本尚史,小林洸,坪野公夫 (東京大学 理学系研究科)
基本システムのボード線図 ボード線図による基本システムの同定
東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
重力波の重力レンズでの 波動効果 高橋 龍一 (国立天文台PD).
ー 第3日目 ー ねじれ型振動子のブラウン運動の測定
瀬戸直樹 (京大理) 第7回スペース重力波アンテナDECIGOワークショップ 国立天文台
パルサーって何? 2019/4/10.
音声分析 フーリエ解析の定性的理解のために.
パイプ風鈴の振動理論 どの様な振動をしているか。周波数は何で決まるか。 (結論) ・振動数は棒の長さLの二乗に反比例する。
京都大学理学研究科 中村卓史 2006年2月24日 国立天文台
Fourier 変換 Mellin変換 演習課題
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
第7回 高エネルギー宇宙物理連絡会研究会 「高エネルギー宇宙物理学の将来計画」
正弦波.
滝脇知也(東大理)、固武慶(国立天文台)、佐藤勝彦(東大理、RESCEU)
フーリエ級数.
落下水膜の振動特性に関する実験的研究 3m 理工学研究科   中村 亮.
定常剛体回転する宇宙ひもからの 重力波放射
理学部ガイダンス 2019/5/15 進学ガイダンス 2010.
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 学生番号 B02-014 伊藤 誠
木内 建太(早稲田大) 共同研究:柴田大(京大基研) 関口雄一郎(国立天文台) 谷口敬介(ウィスコンシン大)
卒論中間発表 2001/12/21 赤道の波動力学の基礎 北海道大学理学部 地球科学科 4年 山田 由貴子.
研究紹介:山形大学物理学科 宇宙物理研究グループ 柴田研究室
Fourier 変換 Mellin変換 演習課題
中性子星/ブラックホール連星の光度曲線の類似性
Presentation transcript:

卒業論文 重力波のデータ解析における 分散処理の必要性 大阪工業大学 情報科学部 情報科学科 A05-043 北口 潤

はじめに 一般相対性理論によると、大質量の物体の激しい運動は周囲の時空を歪ませ波のように伝わる。この波動現象を重力波と呼ぶ。 重力波はまだ直接検出はされていない。 重力波の直接検出を目指す分散処理を用いたプロジェクトがある。

研究の目的 重力波のデータ解析 Einstein@homeではどのような概念で計算がなされているのかプログラムで解析 分散処理の必要性 なぜ、分散処理をするのか、分散しなければどのぐらい計算時間がかかるのかを見積もる。

重力波について 重力波は1916年にアインシュタインが存在を予言した。それから約60年後、観測によって間接的に発見されている。 予測される重力波源は連星系 の合体、超新星、パルサーか らの連続波、ブラックホール がある。 図1.連星系の合体

Einstein@homeとは Einstein@homeは重力波の直接検出を目的としたプロジェクトである。 LIGOとGEOから出力されるデータを用いる。データはパルサーからの連続波を対象にしている。パルサーの形状が回転軸の周りで非対称であれば重力波が発生するとされている。 BOINC(Berkeley Open Infrastructure for Network Computing)とは分散処理のソフトウェアである。(http://boinc.berkeley.edu/)

フーリエ級数展開  フーリエ級数展開   成分の求め方は 入力信号波形 sinとcosの合成と考える

区分求積法 長方形近似 長方形で近似する。黒い部分は誤差である。 台形の公式 台形で近似する。長方形近似よりは誤差が少ない。  長方形で近似する。黒い部分は誤差である。 台形の公式  台形で近似する。長方形近似よりは誤差が少ない。 シンプソンの公式 二次曲線で近似するため誤差は最小限まで減らせることができる。

テスト計算 y x 図2.サンプルデータ

テスト結果 長方形近似 台形の公式 シンプソンの公式

シミュレーション 次の図は、大阪市立大学理学研究科の神田教授から実際に計算に用いられているデータをいただき、そのデータに故意的な重力波を含めたものである。 データを周期的な波と捉えて周波数と検出時間のパワースペクトルを求める。

重力波データ 振幅 [s] 縦軸は振幅、横軸は時間(秒)を表している。

100Hz~200Hzの周波数の パワースペクトル 縦軸は全体の割合(%)、横軸は周波数(Hz)を表している。

0秒~0.1秒間の周波数の パワースペクトル 縦軸は全体の割合(%)、横軸は周波数(Hz)を表している。

0.8秒~0.9秒間の周波数の パワースペクトル 縦軸は全体の割合(%)、横軸は周波数(Hz)を表している。

周波数198Hzでの 0.1秒刻みのパワースペクトル 縦軸は全体の割合(%)、横軸は秒(s)を表している。

重力波データ

結論 本研究では周波数50~300Hzの間で1秒間(0.1秒刻み)のデータを用いて計算したが、周波数と検出時刻を特定するのに約6秒かかった。

まとめ 実際のパルサー重力波の同定には、さらに振幅、周波数、受信方向による重力波到達時間の変調などのパラメータがあり、計算量はさらに増える。分散処理が必要な計算であることがわかった。