QMDを用いた10Be+12C反応の解析 平田雄一 (2001年北海道大学大学院原子核理論研究室博士課程修了

Slides:



Advertisements
Similar presentations
相対論的場の理論における 散逸モードの微視的同定 斎藤陽平( KEK ) 共同研究者:藤井宏次、板倉数記、森松治.
Advertisements

ニュートン重力理論における ブラックホール形成のシミュレーション
原子核物理学 第3講 原子核の存在範囲と崩壊様式
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
α α 励起エネルギー α α p3/2 p3/2 α α 12C 13B 12Be 8He α α α
山崎祐司(神戸大) 粒子の物質中でのふるまい.
クラスター変分法による 超新星爆発用 核物質状態方程式の作成
LHC Run-2 進展状況 [1] Run-2に向けたアトラス検出器の改良 [0] Run-2 LHC
中性子過剰核での N = 8 魔法数の破れと一粒子描像
埼玉大学大学院理工学研究科 物理機能系専攻 物理学コース 06MP111 吉竹 利織
to Scattering of Unstable Nuclei
原子核物理学 第1講 原子核の発見.
S-Cube 1月 無料 光と放射線のおはなし (第169回) 体験科学授業
S-Cube 平成26年6月 無料 光 の 不 思 議 (第171回) 体験科学授業
数値相対論の展望        柴田 大 (東大総合文化:1月から京大基研).
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
SEDA-APのデータ解析 ~Albedo中性子の検出~
質量数130領域の原子核のシッフモーメントおよびEDM
RHIC-PHENIX実験での 直接光子測定
理研RIBFにおける深く束縛されたπ中間子原子生成
中性子数51近傍の原子核における 高スピン状態の研究 増江 俊行, 堀 稔一, 田尻 邦彦, 長澤 拓, 小紫 順治,西村 太樹,
Dissociative Recombination of HeH+ at Large Center-of-Mass Energies
原子核物理学 第8講 核力.
理研稀少RIリングの為の TOF検出器の開発 埼玉大学大学院理工学研究科 博士前期課程2年 久保木隆正
光子モンテカルロシミュレーション 波戸、平山 (KEK), A.F.Bielajew (UM)
10MeV近傍の2H(p,pp)n反応におけるQFS断面積異常探索
発光と発光励起スペクトルから見積もる 低次元電子系のキャリア温度
電子後方散乱の文献調査 総合研究大学院大学 桐原 陽一.
一次元光学格子中の冷却気体Bose-Einstein凝縮系 における量子輸送方程式による数値シミュレーション
蓄積イオンビームのトラップからの引き出し
Azimuthal distribution (方位角分布)
原子核物理学 第2講 原子核の電荷密度分布.
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
理研RIBFにおける 中性子過剰Ne同位体の核半径に関する研究
高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
Charmonium Production in Pb-Pb Interactions at 158 GeV/c per Nucleon
ILC実験における ヒッグス・ポータル模型での ヒッグス事象に関する測定精度の評価
4体離散化チャネル結合法 による6He分解反応解析
星間物理学 講義2: 星間空間の物理状態 星間空間のガスの典型的パラメータ どうしてそうなっているのか
2重井戸型ポテンシャルに捕捉された 冷却原子気体の非平衡初期分布緩和過程に対する非平衡Thermo Field Dynamics
チャネル結合AMDによる sd殻Ξハイパー核の研究
素粒子原子核理論のフロンティア 岡田安弘 総研大大学院説明会 2006年6月.
原子核物理学 第5講 原子核の振動と回転.
卒業論文発表 中性子ハロー核14Beの分解反応 物理学科4年 中村研究室所属   小原雅子.
中性子過剰F同位体における αクラスター相関と N=20魔法数の破れ
井坂政裕A, 木村真明A,B, 土手昭伸C, 大西明D 北大理A, 北大創成B, KEKC, 京大基研D
? 格子QCDシミュレーションによる南部-ゴールドストン粒子の 質量生成機構の研究 質量の起源 ドメインウォールフェルミオン作用
早稲田大学 未来エネルギーセミナー 来聴歓迎、懇親会参加も歓迎、無料
10MeV近傍の2H(p,pp)n における Star断面積異常探索
水素の室温大量貯蔵・輸送を実現する多孔性材料の分子ダイナミクスに基づく解明と先導的デザイン
格子ゲージ理論によるダークマターの研究 ダークマター(DM)とは ダークマターの正体を探れ!
Marco Ruggieri 、大西 明(京大基研)
2006 年 11 月 24 日 構造形成学特論Ⅱ (核形成ゼミ) 小高正嗣
α decay of nucleus and Gamow penetration factor ~原子核のα崩壊とGamowの透過因子~
課題研究 P4 原子核とハドロンの物理 (理論)延與 佳子 原子核理論研究室 5号館514号室(x3857)
大規模並列計算による原子核クラスターの構造解析と 反応シミュレーション
原子核物理学 第6講 原子核の殻構造.
核内ω中間子質量分布測定のための 検出器開発の現状
大型ヘリカル装置における実座標を用いた 粒子軌道追跡モンテカルロコードの開発
低エネルギー3核子分裂反応について 法政大学 石川壮一 1.はじめに 2.3体クーロン問題の定式化 p-p-n系
媒質中でのカイラル摂動論を用いた カイラル凝縮の解析
(K-,K+)反応によるΞハイパー核の生成スペクトル
現実的核力を用いた4Heの励起と電弱遷移強度分布の解析
5×5×5㎝3純ヨウ化セシウムシンチレーションカウンターの基礎特性に関する研究
荷電粒子の物質中でのエネルギー損失と飛程
? リー・ヤンの零点 これまでの格子QCD計算の結果 今年度の計画 リー・ヤンの零点分布から探る有限密度QCDにおける相構造の研究
Clusteringを用いたEMCal解析
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
軽い原子核の3粒子状態 N = 11 核 一粒子エネルギー と モノポール a大阪電気通信大学 b東京工業大学
Presentation transcript:

QMDを用いた10Be+12C反応の解析 平田雄一 (2001年北海道大学大学院原子核理論研究室博士課程修了 3/25/2009 ミニワークショップ「核データと核物理」 QMDを用いた10Be+12C反応の解析 平田雄一 (2001年北海道大学大学院原子核理論研究室博士課程修了 専門は原子核反応シミュレーション 指導教官:大西明(京大 基研)) 岩元洋介1 , 仁井田浩二2, 板垣直之3, 千葉敏4, 佐藤達彦5, R.M.Roninngen6 1.日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究部門 放射線工学研究グループ 2. 高度情報科学技術研究機構 3. 東京大学大学院 理学系研究科物理学専攻 4.日本原子力研究開発機構 先端基礎研究センター 極限重原子核研究グループ 5.日本原子力研究開発機構 原子力基礎工学研究部門  環境・放射線工学研究ユニット 放射線防護研究グループ 6.Michigan State University National Superconducting Cyclotron Laboratory

α α 核物理における10Beの研究の進展 反応: 10Beを入射原子核として利用可能となった 10Be(30MeV/u)+12C EXFOR 核データベース N.I.Ashwood et al. Phys. Rev. C 72, 024314 (2005). 構造:  10Beの高励起状態における新しいクラスター構造の予言 10Beの高励起状態(励起エネルギー=45MeV)には、 2n+4d正四面体の構造(新しいクラスター構造)が現れる。 Naoyuki Itagaki et al. International Journal of Modern Physics A (2008). d n クラスター構造の変化 α α d n n n d d 基底状態 励起状態(励起エネルギー=45MeV)

微視的シミュレーション(QMD)を用いた 10Be(10, 30, 50MeV/u)+12C反応の解析 研究課題 (1)10Beの高励起状態が生成可能か? (2)フラグメント及び中性子の生成断面積の振る舞いはどのようなものであるか?

QMDの枠組み (1)前平衡過程 (時刻t≤tsw[fm/c]) (2)平衡過程(時刻t>tsw[fm/c]) Koji Niita et al. Phys. Rev. C 52, 2620 (1995) (1)前平衡過程  (時刻t≤tsw[fm/c]) 粒子の波動関数 (ガウス波束を仮定) 粒子の運動方程式 (波束中心に関するニュートン方程式)   衝突項 粒子間衝突断面積(実験データ)により粒子衝突による運動量(Pi)の変化を記述 (2)平衡過程(時刻t>tsw[fm/c])   統計崩壊模型(GEM)による励起フラグメントの崩壊を記述 S. Furihata Nucl. Instruments and Meth. B 171, 251 (2000)  tsw(前平衡過程から平衡過程へ到達するのにかかる時間)は、 任意パラメータ

波束中心(Ri)の時間発展  10Be(30MeV/u)+12C 衝突径数= 4fm 衝突径数= 0fm 12C 10Be

     核データの解析におけるQMDの利用   10Be(10, 30, 50MeV/u)+12C反応にQMDが適用された例はない。

tsw(前平衡過程から平衡過程へ到達するのにかかる時間)について QMDにおける tsw(前平衡過程から平衡過程へ到達するのにかかる時間)について  10Be+12C反応の重心系での衝突した2核子 の平均運動エネルギー(<Tc.m.>)の時間変化 Satoshi Chiba et al., PRC 54, 6, 3302 (1996).  <Tc.m.>が一定に収束するまで、少なくとも75fm/cを要する。  したがって、tsw≧75fm/cであると考えられる。

10Be(50MeV/u)+12C反応の前平衡過程において生成される10Beフラグメントの 励起エネルギー分布の時間発展 前平衡過程で、励起エネルギーが45MeV以上の高励起10Beフラグメントが生成される可能性がある。 励起エネルギーが45MeV以上の高励起10Beフラグメントは早い段階に生成され、すぐに崩壊する傾向がある。 →高励起10Beフラグメントの崩壊によって放出されるγ線や中性子線を実験で観測可能?!

10Be(50MeV/u) + 12C, b= 2fm 10Be 45MeV 10Be 45MeV 10Be 45MeV 10Be 45MeV 10Be 45MeV 10Be 45MeV

tsw=75[fm/c],100[fm/c] ,150[fm/c]のときの Be,C,Oフラグメント 生成断面積 10MeV/uでは、 tswが大きいほど 中性子過剰核 生成断面積が大きい。 50MeV/uでは、 tswにあまり依存しない。

tsw=75[fm/c],100[fm/c],150[fm/c]のときの中性子生成断面積 入射エネルギーが10MeV/uの場合に、顕著なtsw依存性が見られる。

是非、理研のRIビームを用いて、実験をお願い致します。 まとめ QMDを用いて、 10Be(10,30,50MeV/u)+12C反応を解析した。 その結果以下のことがわかった。 (1)前平衡過程で、励起エネルギーが45MeV以上の高励起の10Beフラグメント が生成される可能性がある。 (2)QMDに含まれるパラーメータtswに関する情報を、中性子及び中性子過剰核の 生成断面積から得られる可能性がある。 是非、理研のRIビームを用いて、実験をお願い致します。