COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、

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COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、 現在までの様々な研究から、宇宙が始まってから星生成率密度はz~3に向かい増加し、z~1-3でピークになり、z~0に向かい減少していることが分かっている。しかし、これは宇宙を平均化してみた場合である。宇宙には低密度領域から高密度領域まで様々な環境が存在する。銀河の星形成史を正しく理解するには、銀河の星形成が銀河環境と時間の両方の関数としてどのように変化するのかを調べることが重要である。今回は、星生成と銀河環境の関係を調べるために、COSMOS surveyによって得られたphoto-z catalogからz=1.17-1.20のSubaru i’ < 24の天体1533個を、サンプルとして選び出し、NB816データにより [OII] 輝線の有無で分類した。このサンプルを用いて、emitterの割合と環境の関係を調べた。その結果、銀河密度が高くなるにつれてemitterの割合は増えるという結果を得た。この結果は、現在までに研究されている近傍の宇宙とは異なる傾向を示している。今回の結果は、z~1.2では、銀河の相互作用によって星生成が引き起こされたという可能性を示唆している。 3. Results 1. Introduction (1) [OII] fraction vs. local density @ z~1.2  Cosmic Evolution Survey (COSMOS) 2平方度の天域 ( 赤経10時、赤緯+2度)における、HSTなどの宇宙望遠鏡や、すばる望遠鏡などの地上望遠鏡による多波長撮像・分光観測プロジェクトで、銀河、銀河団、大規模構造の形成と進化の解明を目的とする。 local surface density・・・ Photo-z sample を用いて、[OII] emitter から10番目にある天体の距離を計算し、今回のサンプルである[OII]輝線銀河@z ~ 1.2のlocal density (Σ10th)を求めた。 ただし、 r : targetから10番目に近い銀河までの距離 Motivation 銀河の形成・進化の理解 ⇒ いつ、どのような場所で星が生成されてきたのかと深く関連する 現在分かっていること・・・ 星生成率密度(SFRD)は最初の900Myrsで急激に増加し、z = 3 – 1 でピークをとり、現在に向って急に減少している (e.g., Madau et al. 1996) ⇒ しかし、これは宇宙を平均化してみた場合である。宇宙には高密度領域から低密度領域までさまざま構造がある ⇒ 星生成が環境にどのように関連しているのかを調べることが必要 ↓ 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、 銀河の星生成と環境の依存性を調べる これを調べるには・・・ cosmic variance を避けて高密度から低密度までを含む、統計的に十分多くのサンプルが必要 ⇒COSMOSの2平方度の広い領域を狭帯域フィルターを用いて撮像し、[OII] 輝線銀河を選び出すことでz~1.2の星生成銀河のサンプルを大量に得た (Takahashi et al. 2007, ApJS, 172, 456) [OII] 輝線: Ha輝線よりもダスト吸収の影響を受けやすいが、z ~ 1では          可視光で観測ができて統計的議論に適した星形成の指標となる ⇒ emitter fractionを使ってstar formation activityを見積もり、   銀河数密度との関係を調べる 上の方法で求めたlocal surface densityを用いて、[OII] emitterの割合とΣ10thの関係を調べた。 高密度領域になるほど、[OII] emitterの割合が高い →[OII] emissionは星生成の指標となるので、高密度領域でも星生成が活発であることを示している。 (2) Environmental effect on star formation activity – z~0 vs. z~1 – Surface Density (Mpc-2) [OII] EW (Å) ( Gomez et al. 2003, ApJ, 584, 210 ) 左図は@z~0、右図は@z~1.2のstar formation activityと銀河環境の関係 近傍宇宙では、より低密度領域で星生成が活発になっており、近傍銀河と遠方銀河では、星生成と環境との関係が異なっている。 ⇒ 遠方銀河は近傍銀河よりもガスリッチなので、高密度領域では    銀河の相互作用や合体によって星生成が誘発されている? ⇒ 銀河の形態を調べてみる!! 2. Sample ・[OII] emitter sample (@ z=1.17-1.20) iz-NB816 NB816 5824 NB-excess objects (3) Galaxy morphology 3σ(iz - NB816) iz - NB816 = 0.2 iz 限界等級 HST/ACS 画像を用い、孤立銀河(isolated)とそれ以外(non-isolated)に目視分類した。 左図のようにして選び出したNB-excess object から、colorを用いて[OII] emitterを選び出した  3176 objects (See Takahashi et al. 2007, ApJS, 172, 456) isolated に分類した銀河の例 5” non-isolatedに分類した銀河の例 42kpc limiting EWobs ~ 26 A limiting SFR ~ 11 Msunyr-1 [OII] sampleの方が non-isolated galaxy の割合が高い ⇒銀河の相互作用や合体によって星生成が誘発され、銀河が[OII]で光っていると考えられる。 分類の結果、non-isolated galaxiesの fractionは [OII] sample: 75% non-[OII] sample: 58% ・Photo-z sample (@ z=1.17-1.20) 銀河の数密度を見積もるためには、z~1.2の天体の位置情報が必要 ⇒COSMOSのphoto-zカタログ (Ilbert et al. 2008) を用いてz=1.17-1.20の 銀河、1533天体を選び出した。(photo-zの精度を考えて、i’ < 24 とした) DEC(deg) RA(deg) 左図は選んできたz=1.17-1.20の銀河、1533天体の空間分布。 [OII] emitter sample ( i’ < 24) を青色で示した。 Total : 1533 [OII] : 965 Non-[OII] : 588 目視分類の結果を元に、non-isolated galaxiesの割合とlocal densityとの関係を調べた。 密度が高くなるにつれて、     non-isolated galaxiesのfractionが高くなっている ⇒遠方では高密度領域で星生成が活発であるという結果の原因は   銀河の相互作用や合体によるものである可能性が高い 1 z ~ 1.2では銀河密度が高い領域でも星生成が活発であるという、z ~ 0とは異なる結果を得た 2 原因を探るために目視分類をした結果、non-isolated galaxiesの割合は[OII] sampleでは75%、non-[OII] sampleでは58%であった 3 non-isolated galaxiesの割合と銀河環境の関係を調べ、銀河密度が高くなるほどnon-isolated galaxiesのfractionは高くなるという結果を得た 4 これらの結果から、1の原因は銀河の相互作用や合体による星生成の誘発であると考えられる 5. Summary