NPOの会計基準について NPO法人会計基準策定委員会 副委員長  脇坂誠也.

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NPOの会計基準について NPO法人会計基準策定委員会 副委員長  脇坂誠也

1.NPO法人と会計基準の役割

従来の公益法人 法人の設立⇒主務官庁の許可が必要 公益性の判断⇒主務官庁が自由に判断できる NPO法成立前は、民間が行政からの監督指導を受けずに公益的な活動をしようと思えば、非営利法人となる道はなかった

NPO法人とは 行政が指導する法人でない非営利法人 行政の監督はできる限り排除し、法律違反をしている場合のみ行政に監督権限がある。 行政の関与を少なくする代わりに、情報公開を積極的に行うことで市民による監視に重点を置く

NPO法の情報公開 毎事業年度終了後3カ月以内に ①事業報告書、②財産目録 ③貸借対照表、④収支計算書 ⑤役員名簿、⑥10名以上の社員名簿   ①事業報告書、②財産目録   ③貸借対照表、④収支計算書   ⑤役員名簿、⑥10名以上の社員名簿  を所轄庁に提出  所轄庁はそれを一般市民に公開する

NPO法の仕組み 市民のチェックを 期待した情報公開 ワンセット 行政の関与を少なく した自由な市民活動

会計基準の必要性 会計報告は情報公開の重要な部分を占めるにもかかわらず、会計基準がないため、会計報告があまりにも多様で、数字の整合性が取れないものも多く存在する。 情報公開の重要な部分を占めるNPO法人の会計報告について、統一したルールを作成し、NPO法人の信頼性の向上につなげる

2.これまでの経緯

NPO法の会計規定(1999年12月施行 ) ①財務諸表(第28条) 収支計算書・財産目録・貸借対照表 ②情報公開規定(第28条、29条)     収支計算書・財産目録・貸借対照表 ②情報公開規定(第28条、29条)     事業年度終了後3ヶ月以内に所轄に事業報告書及び計算書類等を提出するとともに、事務所に備えおく。所轄庁でも閲覧できる ③会計原則(第27条)     1.予算準拠原則(H15年 改正で削除)     2.正規の簿記の原則     3.真実かつ明瞭性の原則     4.継続性の原則

NPO法の会計規定(1999年12月施行 ) ・会計基準について定めなかった どのような法人が出てくるのかわからなかったため ④区分経理(第5条第2項)   その他の事業の会計は特定非営利活動にかかる事業に関する会計から区分し、特別な会計として経理しなければならない ・会計基準について定めなかった どのような法人が出てくるのかわからなかったため

「特定非営利活動法人の手引き」 を所轄庁が公開 ・強制力はなく、あくまでも例示であるが、所轄庁が例示したため、多くのNPO法人が影響を受ける ・昭和52年、 60年公益法人会計基準の影響が強く、収支計算書を資金収支の部と正味財産増減の部に2区分 ・作成するには一取引二仕訳が必要

「特定非営利活動法人制度の見直しに向けて」 2007年6月 国民生活審議会総合企画部会報告より発表 NPO法人の会計基準がないため、NPO法人の計算書類が正確に作成されていなかったり、計算書類の記載内容に不備が見られたり、会計処理がまちまちでNPO法人間の比較が難しいなどの問題点を指摘 NPO法人の会計基準の策定は民間の自主的な取り組みに任せるべきである

NPO法人会計基準協議会発足 全国18のNPO支援組織がNPO法人会計基準協議会を発足させ、NPO法人会計基準の策定作業を2009年3月に開始(最終的に79団体が加盟) 専門家、研究者、実務家、助成財団等の24名で構成されるNPO法人会計基準策定委員会に会計基準の策定を諮問

3.会計基準策定までのプロセス

事務局 シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 NPO会計税務専門家ネットワーク プロジェクトの体制図 NPO支援センター NPO法人 会計基準協議会 アドバイザー 委員 随時、意見交換 各地のNPO NPO会計 専門家 諮問・答申 オブザーバー (関心のある方は誰でも) 意見・質問 NPO経理 担当者 策定委員会 助成財団 金融機関など 事務局 シーズ・市民活動を支える制度をつくる会 NPO会計税務専門家ネットワーク 専門委員会 冊子 各地 検討会 報告会 ヒアリング パブコメ オンライン 掲示板

策定プロセスの基本的考え方 NPO法人会計基準は、NPO法人自身が自発的かつ主体的にそれを採用し、また、多くの法人がそれに準拠して会計報告を行うようになることが法の趣旨にかなう NPO法人会計基準の策定におけるすべての議論を公開し、また、オブザーバー制度も取り入れて、終始、市民が発言できる機会を確保することに努める

具体的な策定プロセス 2009年3月~策定委員会を中心に議論 2009年11月 中間報告を公表 2010年4月 最終案を公表 2009年11月 中間報告を公表   中間報告会を全国17地区で実施。753 名参加。484名から519件のコメント  中間報告を受けて、策定委員会を中心に議論 2010年4月 最終案を公表    最終案報告会を全国15地区で実施。573名が参加。107名から333件のコメント 2010年6月~7月 臨時の策定委員会を開催 2010年7月20日 最終のNPO法人会計基準発表

4.会計基準の全体像

全体の構成(1) (1)NPO法人会計基準の性格と基本的考え方 (2)NPO法人会計基準 ①NPO法人会計基準(注解も含む) ②別表1~2 ③様式1~5 (3)議論の経緯と結論の背景

全体の構成(2) (4)実務担当者のためのガイドライン →会計基準を実務に適用する場合の指針 (1)~(3)を実務担当者に分かりやすく伝え る機能 ①フローチャート ②パターン分類された記載例 ③NPO法人会計基準のQ&A

本文の構成 Ⅰ NPO法人会計基準の目的 Ⅱ 一般原則 Ⅲ 財務諸表等の体系と構成 Ⅳ 収益及び費用の把握と計算ーその1 Ⅴ 収益及び費用の把握と計算ーその2 Ⅵ その他の事業を実施する場合の区分経理 Ⅶ NPO法人に特有の取引等 Ⅷ 財務諸表の注記

本文の構成の背景 収入規模が500万円以下の法人が過半数であるNPO法人にこの基準をどのように浸透させるのかが最大の問題 シンプルな形態のNPO法人であれば、会計基準の全文を読まなくても簡単に会計基準を導入できるようにする

NPO法人のパターン分類 ① 期末に現預金以外に資産や負債があるか? ② その他の事業を行っているか? ③ 使い道に指定のある寄付の受入れ、現物寄付やボランティアの受入れ、助成金や補助金の受入れなどNPOに特有の取引があるか? *実務担当者のためのガイドラインのフローチャート参照

会計基準の見方 Ⅰ NPO法人会計基準の目的 Ⅱ 一般原則 Ⅲ 財務諸表等の体系と構成 Ⅳ 収益及び費用の把握と計算ーその1 Ⅴ 収益及び費用の把握と計算ーその2 Ⅵ その他の事業を行う場合の区分経理 Ⅶ NPO法人に特有の取引等 現預金以外に資産・負債がない 記載例1に対応 現預金以外に資産・負債がある。 記載例2に対応 その他の事業を行っている。 記載例3に対応 NPOに特有の取引等がある。 記載例4に対応

5.内容のポイント

NPO法人会計基準の基本的考え方 「市民の期待とそれにこたえるべきNPO法人の責任の双方にふさわしい会計基準とはいかなるものであるか」を策定作業の出発点とする 情報公開の重要な部分を占める会計報告では  ①市民にとってわかりやすいこと  ②NPO法人の信頼性の向上につながること  が必要

内容のポイント ポイント1 収支計算書から活動計算書へ ポイント2 事業費も形態別分類に ポイント3 使途が制約された寄付等は原則注記とする ポイント1 収支計算書から活動計算書へ ポイント2 事業費も形態別分類に ポイント3 使途が制約された寄付等は原則注記とする ポイント4 ボランティアなどを会計に取り込む   ポイント5 小規模法人への対応

ポイント1. 収支計算書から活動計算書へ 会計報告の正確性を担保するためには、複式簿記を前提とする財務諸表の体系である、貸借対照表と活動計算書を中心とする。 活動計算書は、NPO法人の活動の実態を会計的に表現する計算書で、企業会計の損益計算書に相当するもの 利益を目的としないNPO法人でも、事業や管理のサービスに費やしたコストの計算や、継続して活動を続けていくことができる財務的な力があるか否かを判断することは重要。

ポイント2. 事業費も形態別分類に 費用の分類は、まず、「事業費」と「管理費」に分ける 「事業費」と「管理費」について、さらに「人件費」と「その他経費」に分け、形態別に表示をする。 「事業費」と「管理費」の定義や共通する経費の按分の方法などをQ&Aなどで明示する

複数事業の開示 複数事業を行っている場合、事業ごとの金額表示を行うのか否かは法人の判断に任せるが、利用者の判断に有用であると考えられる場合には事業別の開示を推奨する 事業ごとの開示は、注記で行い、「事業費の内訳」を表示する方法と、「事業別の損益」を表示する方法のいずれかとする

ポイント3. 使途が制約された寄付金等 「このような目的に使って欲しい」といって受け取った寄付金等で、期末まで使い切っていないようなものをどう会計上表現するか? 公益法人会計基準では、「一般正味財産」と「指定正味財産」に分けるという複雑な処理をする

原則を注記方式とする 受け取った年度の収益に計上したうえで、使途に制約のある場合は、その使途ごとに寄付金等の受入額、減少額、次期繰越額を注記することを原則とする。 その寄付金等の重要性が高い場合は、公益法人会計基準にならって、貸借対照表を指定正味財産と一般正味財産に区分するとともに、活動計算書にも指定正味財産増減計算の部、一般正味財産増減計算の部の区分を設け、それぞれの動きを表示する

助成金・補助金の計上方法 補助金等をもらった年度と、その補助対象事業の終了年度が異なる場合にいつの時点で収益に計上するか? (実施期間の途中で会計年度が到来した場合)

具体的な会計処理方法 未使用額の返還義務が課されている場合には、未使用額を前受助成金等として負債として計上する 事業年度末に未収の金額がある場合、対象事業の実施に伴って当期に計上した費用に対応する金額を、未収助成金等として計上する 使途が制約された寄付金等として財務諸表に注記をする

ポイント4. ボランティアなどを会計に取り込む 無償又は著しく低い価格で施設の提供等の物的サービスを受けた場合やボランティアによる無償又は著しく低い価格による役務の提供があった場合 従来は会計に計上していないが、NPO法人の真実のコストを表示するという観点、援助を受けたという事実を表示するという観点から、会計に計上したいというNPO側からの要望が、中間報告時の各地での報告会やパブリックコメントで強かった

具体的な会計処理 原則は会計的には認識しないが、合理的に金額を算定できる場合には注記、財務諸表に計上するに足りるほど客観的なものである場合には、活動計算書に計上できるとする 金額測定手法や慣行が成熟して、多くのNPO法人が活動計算書に計上し、他の法人などの活動規模の比較が容易になるような事態を期待する

ポイント5. 小規模法人への対応 重要な事項はより詳細な会計報告をすることを明らかにする 収入規模が500万円以下の法人が全法人の半分を占めるNPO法人に今回の会計基準をいかにして浸透させるかが大きな議論 「重要性の原則を柔軟に解釈して、少しでも負担の軽減を図る」という方向性 簡便な方法をとったとしても全体的に利用者の判断を誤らせない場合に限る 重要な事項はより詳細な会計報告をすることを明らかにする

6.導入に向けて

適用時期 この会計基準は、純粋に民間の立場で作成したもので、法律に基づいた規則などとは違うので、いつから適用すると決めることができる性格のものではない この会計基準を採用できる体制が整い次第、今期からでも来期からでも可能 「重要な会計方針」に、「財務諸表の作成は、当事業年度より、NPO法人会計基準(2010年7月20日NPO法人会計基準協議会)によっています。」と記入する。

情報の入手方法 HPで、会計基準やガイドラインなどをダウンロードできるようにする予定 質問コーナーもHP上に作る予定 会計基準のフォームをエクセルデータでダウンロードできるようにする予定