原子の姿 ボーアの水素模型とエネルギー順位

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物理化学 福井工業大学 工学部 環境生命化学科 原 道寛. 物理化学: 1 章原子の内部 (メニュー) 1-1. 光の性質と原子のスペクトル 1-2. ボーアの水素原子モデル 1-3. 電子の二重性:波動力学 1-4. 水素原子の構造 1-5. 多電子原子の構造 1-6.
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Numerical solution of the time-dependent Schrödinger equation (TDSE)
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学年   名列    名前 物理化学 第1章5 Ver. 2.0 福井工業大学 原 道寛 HARA2005.
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原子の姿 ボーアの水素模型とエネルギー順位 基礎無機化学 原子の姿 ボーアの水素模型とエネルギー順位

地殻と太陽における元素の存在比 地殻の元素比 ビッグバンによる宇宙の誕生 多少温度が下がり、核子(陽子と中性子)が相互作用により原子核を作る 太陽の元素比 さらに低温となり原子核と電子が結合、原子ができる(H 89% He 11%) 原子番号Zが奇数の元素は 隣り合うZが偶数の元素に比べ不安定

原子とは 陽子 電子 静電気力(電荷)は同等 重さはだいたい4000:1 原子の定義:地球上における一般的な温度・圧力条件下において、ある程度安定で、化学的操作で分けることができる限界の粒子 原子は、陽子・中性子・電子から構成 一番簡単な水素原子は、陽子1個+電子1個 陽子 電子 静電気力(電荷)は同等 重さはだいたい4000:1

化学に関する原子より小さい粒子の性質

分光学的情報 λ 1 = R n12  n22 R:Rydberg(リュードベリ)定数 1.097×107/m

金属の熱輻射・磁性などの説明に、従来型の電子論では不可能 原子という微視的世界の挙動説明には量子仮説の導入が必要と判断 ボーアの水素モデル 金属の熱輻射・磁性などの説明に、従来型の電子論では不可能 原子という微視的世界の挙動説明には量子仮説の導入が必要と判断 1911年ラザフォードの原子模型 →太陽系の惑星のような円・楕円軌道 →古典電磁気学では、電子が原子核に引きつけられながら電磁波を放出して  速度が減衰し原子核に吸われて終わってしまうという理由で受け入れられず バルマーの式 水素に電子をぶつけて発生する赤橙、青、青紫、紫の4種の可視光線が発生する。可視光以外も含めて、発生する波長を以下の式で表せると発表 逆数を取ると…

リュードベリ定数の算出と各系列 定数部分を計算してみると… 水素の原子スペクトル線の波長を計算する バルマー系列の3本の波長は? ライマン系列 バルマー系列 パッシェン系列 水素の原子スペクトル線の波長を計算する バルマー系列の3本の波長は? n1=2、n2=3,4,5,6… を上式に代入  λ1=661nm λ2=486nm λ3=434(nm) 最高にエネルギーが高い(波長が短い輝線) →n2=∞を入れて極限で計算する

振動数条件 基底状態(ground state) 水素原子がK殻、L殻という同心円状態の軌道を持つ時、電子一個が最低エネルギー軌道であるK殻に一個だけある状態。  励起状態(excited state) 加熱、放電などによりエネルギーを与えると、K殻電子が外側の軌道、例えばL殻へ遷移し、高エネルギー状態の水素となる。 スペクトル出現:励起状態にある電子が、基底状態へ遷移することで差分エネルギーを放出するためにおこる。 軌道間エネルギー順位の差=hν h:プランク定数 ν:光の振動数

軌道モデルイメージ あまり正しくない イメージ 2πr=nλ(nは整数)を満たす整数倍の波だけが安定して存在する 電子が定常波として 存在するためには 元の位置へ戻って こなくてはならない 電子が定常波として存在できるためには円周が波長の1倍、2倍、3倍、と決まってくる。上図は5倍の場合の軌道と8倍の場合。 あまり正しくない イメージ 2πr=nλ(nは整数)を満たす整数倍の波だけが安定して存在する

波の合成のイメージ 波の位相が合い、 強め合っている場合 (b)波が打ち消しあって いる状態。

de Broglieの物質波動論 高速運動している粒子は波の性質を持っており その波長はλ=h/mνである(1924年) C.J.Davisson&L.H.Germerらが電子線の干渉実験より電子(粒子)の波動性と式の確認 電子が定常波として存在するためには元の位置へ戻ってこなくてはならない。戻ってこない場合には、干渉によって波が消滅する。 2πr=nλ  (nは整数) 光子という粒子で、かつ波としての性質を持つ(波動と粒子の2重性) →ハイゼンベルグの不確定性原理:電子の線形運動量と位置を同時に知ることはできない →運動量と位置の不確かさの積は(h/2)程度残る

mv・2πr=nh 量子条件 原子核の周りの電子の軌道は、 その角運動量mvrが h/2πの整数倍に等しいものに限られる m:電子の質量 v:電子の速度 r:電子軌道半径  n:整数 h:プランク定数 原子核の周りの電子の軌道は、 その角運動量mvrが h/2πの整数倍に等しいものに限られる

量子化と定常状態 角運動量(angular momentum)が、 量子化(quantization)されている 量子条件(quantum condition)を満たしている状態を定常状態(stationary state)という。

ボーアモデルで 電子のエネルギーを計算してみる 正電荷e+の原子核と、負電荷(e-)の電子の間には クーロン引力(e+e-/r2)が働く。 速さv 電子の質量m 電気量e 電子の円運動による遠心力とは釣り合うから e2/r2=mv2/r クーロン力 半径r 代入計算より、 軌道半径r=n2h2/(4π2me2)

軌道半径の小さい方から、K-shell、L、M、N、O、P殻 軌道半径r=n2h2/(4π2me2) これより、例えばn=2の時に、r2=22r1 軌道半径はn2に比例したとびとびの値を取る n=1,2、3,4,5に対し、 r1, r 2=22r1, r 3=23r1, r 4=24r1,r5=25 r 1  軌道半径の小さい方から、K-shell、L、M、N、O、P殻   N=1の時をボーア半径(Bohr radius)とよび、通常a0で表す。 一方、電子の速度も求められる。 v=2πe2/(nh) これにより、電子の速度は1/nに比例しており、L殻で1/2、M殻で1/3,N殻なら1/4となる。 nを主量子数(principal quantum number)と言う。

電子軌道の一般的な表記 主量子数 (電子殻) 方位 量子数 磁気 軌道名 最大収容電子数 1(K殻) 1s 2 2(L殻) 2s 1 1s 2 2(L殻) 2s 1 0, ±1 2p 6 3(M殻) 3s 3p 0, ±1, ±2 3d 10 4(N殻) 4s 4p 4d 3 0, ±1, ±2, ±3 4f 14

水素原子のエネルギー準位 エネルギーの種類: 運動エネルギー(kinetic energy) 位置エネルギー(potential energy ) potential energy r Ep=∫e2/r2dr  = -e2/r ∞ Ep:位置エネルギー 電子が刻々と移動した 微少距離drと静電引力e2/r2の積分に関して、 無限遠から軌道半径rまでの移動距離の積分

ボーア理論まとめ 電子は量子条件に従う特定の半径の円軌道を周回運動している 原子がエネルギーを吸収・放出するときは振動条件に従う 電子が同一軌道上にある限りエネルギーを失わない。このため速度は落ちない。 →軌道を円だと考えてしまったので、のちに破綻

En =Ek+Ep =mv2/2+-e2/r =-e2/2r =-2π2me4/(n2h2) =-13.60/n2 (eV) kinetic energy 運動エネルギーEkはmv2/2 全エネルギーをEnで表すと、 En =Ek+Ep =mv2/2+-e2/r =-e2/2r =-2π2me4/(n2h2) =-13.60/n2  (eV) 若干のズレ:電子の質量を無視したため 補正すれば水素モデルに関しては完全に一致する

シュレーディンガーの波動方程式 →ドブロイ波とボーアの定常状態の概念を取り入れ 原子中の電子の状態を記述する波動方程式を提案 定常波をなす電子の運動を波動方程式で表し、この方程式を解き、解として得られた波動関数そのものが原子内の電子の行動そのものである、という考え。 →現在、波動関数全てを物理と関連して説明できてはいない  種々の境界条件、制約条件を付けて解き、その結果を利用している 参考本:量子力学を学ぶための解析力学入門  講談社; 増補第2版版 (2000/10)ASIN: 4061532413

三次元平面波とは? ψ=Acos2π(     +     +     - vt ) λx     λy      λz x      y       z    ?(三次元) 正(2次元) 実態は球面波

ドブロイ波の粒子の式 Px Py Pz E ψ=Acos2π( x+ y+ z - t) h h h h 運動量 p、エネルギー E を持つ粒子のド・ブロイ波 ψ=Acos2π(     x+     y+     z -  t)  h       h      h  h Px      Py      Pz  E   粒子はある直線に沿って一直線に進むものだというイメージがあるが,波は無限の広がりを持って進む →波の表現があまりよくない。絶対値の2乗を計算すると、極値がある=粒子の存在が均質でなくなる 指数関数による関数の置き換えを行う

ドブロイ波の粒子の式2 i ψ=Aexp ( Pxx+Pyy+Pzz-Et) h ψ=Aexp ( p・x-Et) i h →下式の絶対値2乗は定数 →粒子の存在確率は一定であるべきと考えると  波動関数は常に複素数をもたなくては数式上おかしい →粒子がどこかには存在する(全領域での積分を行う)場合には波動関数の係数をいじって積分結果が1になるように調整する。これを波動関数の規格化という。

演算子 エネルギーと運動量の古典力学の関係式より 波から運動量を取り出すには微分する。 微分をしてやっても指数関数の場合 波から運動量を取り出すには微分する。  微分をしてやっても指数関数の場合 形があまり変わらない。  x で微分してやれば px y で微分してやれば py z で微分してやれば pz     が得られる。 エネルギーと運動量の古典力学の関係式より

3次元シュレーディンガー方程式 h2 ∂2 ∂2 ∂2 ∂ ih ψ = - ( + + )ψ+ Vψ ∂t 2me ∂x2 ∂y2 ∂z2 総エネルギー 運動エネルギーの寄与 位置 エネルギー の寄与 -    ∇ 2ψ+Vψ   i h    ψ ∂t ∂ = h2 2me 電磁気学で出てきた記号「∇(ナブラ)」を使うと、シンプルにできる。 空間のある領域中に電子が存在する確率を算出 ψ2が大→電子が存在する確率大 Ψ2が0 →電子は存在しない

解くために使う条件の意味 ψは連続関数であること →微分可能 ψは一価関数である 答えは一個(電子は一個) ψは無限遠で0であること ψは一価関数である 答えは一個(電子は一個) ψは無限遠で0であること 全空間での電子の存在確率は1であること(ある、と決めたら、勝手に消滅しない)

規格化がうまくいかない例 ψ(x)=Aeipx ψ * ψ (x)=(A * e-ipx) (A eipx)=|A2| Ex.自由粒子の波動関数 何にも縛られない存在であるために、どこまで行っても一定の周期のままの波が同じように続く。→ つまり、ほとんどどこにも見出せないに等しいわけで、波動関数の係数は0の極限になる。 自由粒子の波動関数は と表される。 運動量 p が変化することなく一定周期でどこまでも続く波を表している。しかも絶対値の2乗が常に一定という、この状況を表すのに大変都合のいい性質をも持っている。 確率密度を計算してやると、 となって、これを無限の範囲で積分すると発散する。A = 0でも解決できない。→周期的境界条件というテクニックを使う ψ(x)=Aeipx ψ * ψ (x)=(A * e-ipx) (A eipx)=|A2| 金属の塊や結晶などは原子にとってみれば無限の広がりに似ているとし、原子1個あたりに必ず電子1個があるだろうから、その幅の範囲での積分が1になりさえすればいいと考える手法

波動関数の応用 波動関数からエネルギーを計算 エネルギーは波動関数を時間で微分して ih/2π を掛けてやるor波動関数を座標 x で微分して -ih/2π を掛けてやれば運動量 p が得られる。この値を使って p2/2 m + V を計算してやればエネルギーが計算できる。 →確かに原理的にはこの方法でOK。実際はそれほど甘くはなくて、問題を解くために 高度な手法を工夫しなければならない ex.「変数分離法」:式に時間が含まれたまま計算するのは面倒なので、エネルギーは 時間的に変化しないと仮定した上で定数 E と置いて計算する方法。 実用面 波動関数が決まってしまえば、結晶中で許される電子のエネルギーの値が決定できるため半導体素子のエネルギーバンド、エネルギーギャップが結晶の構造の違いでどのように変化するかなどの問題が計算が可能となる。他に「トンネル効果」「衝突の理論」「状態の遷移確率」などが説明可能。

元々はスペクトルの微細な部分を説明するためのもの ゾンマーフェルトの楕円軌道 元々はスペクトルの微細な部分を説明するためのもの 軌道が円ではなく、楕円もありうつ事を提案 量子化されているため、 楕円もとびとびの値

量子数 電子の軌道はこれまでに出てきた ( n, l, m ) の3つの整数の組で指定されるようなものしか存在できない。 n を「主量子数」 l を「方位量子数」 m を「磁気量子数」

量子数の意味 主量子数:軌道の大きさとエネルギーを規定 方位量子数:軌道の形を規定するパラメータ。 磁気量子数:強磁場印可実験でスペクトルが分裂したことから立証されたため、磁気と言われる。軌道の向きを制御するパラメータ。外部磁場により、複数の軌道が重なって一つの軌道のように振る舞うことを「軌道の縮退」あるいは「縮重」という。 磁場を印可してスペクトルが分裂することをゼーマン効果という。

3つの量子数の条件 n l m 1(K殻) l =0 (s) m = 0 2(L殻) l = 0(s) l = 1(p) m = -1 m = 1 3(M殻) l = 1 (p) l = 2 (d) m = -2 m = 2 sharp(くっきり), principal(主要な), diffused(広がった), faint(ぼやけた)の頭文字で、スペクトル線がどう見えるかという特徴を表している。 f より上はアルファベット順に g, h, i ... と続く.

S軌道の電子密度分布のイメージ図

P軌道の電子軌道イメージ図

d 軌道の電子軌道イメージ図

f 軌道の電子密度イメージ図