市場均衡と厚生経済学の基本定理 部分均衡分析での結果 厚生経済学の基本定理 消費者余剰,生産者余剰,社会的余剰 Pareto効率性

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市場均衡と厚生経済学の基本定理 部分均衡分析での結果 厚生経済学の基本定理 消費者余剰,生産者余剰,社会的余剰 Pareto効率性

部分均衡分析での結果 p S CS p0 PS D Q Q0 MB>MC MB=MC MB<MC 市場均衡で社会的余剰が最大化される MB=p=MC 市場の失敗が存在しない場合 p0 PS D Q Q0

厚生経済学の基本定理 部分均衡分析における社会的余剰最大化の一般化 第1定理 市場の失敗が存在しない場合,市場で実現する資源配分はある意味で望ましい性質*を持っている。 第2定理** 任意のPareto効率的な資源配分は,適切な所得再分配政策を用いることで市場を通じて実現することができる。 *:Pareto効率性 資源配分の効率性に関する概念 **:資源配分の効率性を満たしながら,社会的な公平性(あるいは公正性)を満たす資源配分が市場で実現できることを主張する所得再分配政策の根拠。ただし,「適切な再分配」は困難。

厚生経済学の基本定理(2) Pareto効率性の定義 1財の分配のケース 2財のケース 公平性との関連 消費におけるパレート効率性 生産におけるパレート効率性 生産と消費の組合せにおけるパレート効率性 市場でパレート効率性が実現することの確認

パレート効率性の定義 「誰かの状況を改善しようとするとき,必ず他の誰かの状況を悪化させてしまう」ような状況を,パレート効率的であると言う。 「誰かの状況を改善しようとするとき,他の人の状況を悪化させないでそれが可能」なら,パレート改善の余地があると言う。 パレート改善の余地が無いような状況がパレート効率的な状況である 2.の状況↔「全ての人の状況を改善できる」

パレート効率性 1財のケース Aの取分を増加させようとすると,Bの取分は減るパレート改善の余地は無いパレート効率的 A B Aの取分を増加させようとすると,Bの取分は減るパレート改善の余地は無いパレート効率的 A B Aの取分を増加させようとする時,Bの取分を減らす必要は無いパレート改善の余地があるパレート効率的ではない A B

2財のケース 財の供給量が与えられていて,それを2人の個人に分配するケースを考える 消費者 A,B 財 x,y 状況 効用で考える Ui(xi, yi) , i=A,B 財の分配状況(余りが無い場合) xA+xB=X yA+yB=Y この場合,単に余り無く分配しただけではパレート効率的にはならない

エッジワースの箱 Edgeworth’s box OA OB xA yA xB yB C エッジワースの箱の横の長さはX(財xの総供給量),縦の長さはY(財yの総供給量)を表している エッジワースの箱の内部の任意の点(周辺含む)は,2人の消費者間で,2種類の財を余り無く分配した状況を表す

エッジワースの箱(2) OA OB xA yA xB yB C uA2 uB0 uA1 uB1 uA0 uB2

パレート効率性の条件 xB OB C yB E F yA xA OA C点はパレート改善の余地がある。E点やF点はそうではない。 uA1 uB1 uB0 OA xA

パレート効率的な点の集まり 契約曲線 xB OB yB yA uA2 uB0 uA1 uB1 uA0 uB2 OA xA

消費におけるパレート効率性の条件 2人の個人の無差別曲線が接する 2人の限界代替率が一致する MRSA=MRSB 市場均衡でパレート効率性が実現すること 消費者iの効用最大化 MRSi=p/q 2財の相対価格は全ての消費者にとって等しいから,全ての消費者の限界代替率は一致する 分配の公平性とは無関係

生産におけるパレート効率性 2つの企業 財xを生産する企業,財yを生産する企業 2種類の生産要素 資本K, 労働L 生産要素の総供給量は与えられている どのように生産要素を2つの企業に分配すると「効率的」な生産が可能になるか Kx+Ky=K, Lx+Ly=L X=F(Kx,Lx), Y=G(Ky,Ly)

生産におけるパレート効率性(2) Ly Oy Ky Kx x2 y0 x1 y1 x0 y2 Ox Lx

生産におけるパレート効率性(3) 2つの企業の等量曲線が接する 技術的限界代替率が一致する RTSx=RTSy 市場でパレート効率性が実現することの確認 全ての企業は,与えられた生産要素の価格を所与として,費用最小化行動をする RTSと生産要素の相対価格(w/r)を一致させる 全ての企業が同一の生産要素の価格に直面するから,全ての企業の技術的限界代替率は均等化する。

生産と消費におけるパレート効率性 2種類の生産物 XとY (生産要素の総供給量は与えられている) 代表的な消費者の存在 生産の効率性を満たすような方法で,2種類の生産物を生産されている。代表的な消費者の効用を最大にするような消費と生産の組合せはどのようなものか。

生産可能性フロンティア Production Possibility Frontier 所与の生産要素のもとで,生産の効率性を満たすXとYの組合せ Y XをDXだけ増加させるとき,YをDYだけ減少させないといけない(生産要素の制約のため)。DY/DXを限界変形率Marginal Rate of Transformationという。 DX DY MRT=DY/DX MRTは逓増する 限界費用逓増の一般化 (図のような形になるためにはそれぞれの財の生産に特有な固定的な生産要素を暗黙に仮定) X

生産と消費におけるパレート効率性 Y MRT=MRS X X PPF上の点であってもA点はパレート効率的ではない E MRT=MRS U2 B U1 U0 X X

パレート効率性の条件 まとめ 消費: MRSA=MRSB (1) 生産: RTSx=RTSy (2) 生産と消費: MRS=MRT (3) パレート効率性の条件 まとめ 消費: MRSA=MRSB (1) 生産: RTSx=RTSy (2) 生産と消費: MRS=MRT (3) 市場均衡 効用最大化 MRSi=p/q 費用最小化 RTSj=w/r 利潤最大化 MRT=MCx/MCy=p/q (1)から(3)の条件が成立

厚生経済学の基本定理 第1定理 市場均衡はパレート効率的である 第1定理 市場均衡はパレート効率的である 第2定理 任意のパレート効率的な資源配分は*,適切な所得再分配政策**のもとで,市場を通じて実現できる * 任意のパレート効率的な資源配分を満たす点の中に,分配上の公平性を満たす資源配分が含まれることが重要 ** 相対価格に影響を与えるような再分配政策は資源配分の非効率性をもたらす(所得税など) 市場の失敗が存在しないことが前提

分配の公平性 UB UA 社会厚生関数(social welfare function) 効用フロンティア 功利主義 SSW=UA+UB A点 一般的なケース  SSW=W(UA,UB) B点 Rawls主義 最も不利な状況の人だけ考える C点 効用フロンティア UB C B A UA