地球惑星科学II 宇宙論(4/4)~太陽の科学

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Presentation transcript:

地球惑星科学II 宇宙論(4/4)~太陽の科学 北海道大学・環境科学院 藤原正智 http://wwwoa.ees.hokudai.ac.jp/~fuji/

宇宙の起源、物質と力の起源 素粒子物理学~宇宙論 天文学 膨張宇宙の発見  宇宙のはじまり つまり、 ビッグバン直後に物質と力が生成 [ 上図:地球惑星科学入門; 村山「宇宙は. . .」]  天文学  地球惑星科学  生物学  化学  原子核 物理学  素粒子物理学~宇宙論  膨張宇宙の発見  宇宙のはじまり つまり、 ビッグバン直後に物質と力が生成 素粒子: 原子原子核陽子・中性子クォーク 4つの力: 重力、電磁気力、 強い力(クォーク同士を結びつけ陽子、中性子を作る力)、 弱い力(中性子を崩壊させ、電子、ニュートリノを放出させて         陽子に変える力) 宇宙の研究と素粒子の研究は密接に関わる ウロボロス:「尾を飲み込む蛇」 「死と再生」「不老不死」等の象徴であるヘビが自らの尾を食べる 始まりも終わりも無い完全なもの象徴 Paul Gauguin, 1897 D'où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ? われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか

宇宙の起源に迫る(1/3) 光を使って遠くを見ること =昔の状態を見ること 今実際に観測できる「宇宙の果て」 =宇宙誕生後38万年後   (温度・密度が十分に下がり、    電磁波・光が電子に散乱される    ことなく自由に動きまわれる    ようになった) =「宇宙の晴れ上がり」 この時放出された電磁波が、 現在約3Kの宇宙背景放射(Cosmic Microwave Background (radiation), CMB )として観測される CMBに見られる不均一は、宇宙誕生時の(誕生の原因となった)量子論的ゆらぎであり、これが銀河等の成因 [地球惑星科学入門] 

宇宙の起源に迫る(2/3) 宇宙誕生から38万年後までの間は? 「インフレーション宇宙モデル」 ・量子論的ゆらぎにより宇宙誕生(t=0) ・インフレーションにより、宇宙は10-28 m  から 1 pc(3.26光年)に急激膨張、冷却 ・陽子・中性子の形成(t=10-4 s, T=1012 K) ・軽元素の形成(t=3分, T=109 K)、 原子の形成 ・T=3740 Kで、電子と原子核の密度が  等しくなる(再結合) ・T=3000 Kで、宇宙の晴れ上がり  (t=38万年)

宇宙の起源に迫る(3/3) 素粒子の標準模型 力が4つあるのは美しくない 大統一理論・量子重力理論へ その構築の努力として 「超ひも理論」 感じる粒子 伝える粒子 強い力 クォーク グルーオン 電磁力 電荷を持つ粒子 光子(フォトン) 弱い力 すべてのクォーク、レプトン、ヒッグス粒子 ウィーク・ボソン 重力 すべての粒子 重力子(グラビトン) 力が4つあるのは美しくない 大統一理論・量子重力理論へ    その構築の努力として    「超ひも理論」 [Wiki, Standard Model] [宇宙論のすべて、より] 素粒子の標準模型 ・ワインバーグ・サラム理論(弱い力と電磁力) ・量子色力学(強い力) ・小林・益川理論(クォークが第3世代6種以上  存在1995までに確認、2008にノーベル賞) 現在の地球に存在しているのは第1世代まで。 第2世代以降は宇宙創世時に存在。観測は可能。

暗黒物質と暗黒エネルギー Dark Matter & Dark Energy 暗黒物質: 銀河の運動を詳しく調べると、力のつりあい上、 光学的に観測される物質の全質量では足りない  光を出さずに質量のみを持つ未知の物質   (2007年には、重力レンズ効果(質量が存在すると    光の伝播がゆがむ)を利用した、暗黒物質の    3次元空間分布の測定結果が発表された。) 暗黒物質の候補としては様々なものが挙げられている(ニュートリノ、ブラックホール等) 暗黒エネルギー: 宇宙膨張の割合は現在加速していることが分かっている。 これを説明するための仮想的なエネルギーで、宇宙全体 に広がっていて負の圧力を持ち、実質的に「反発する重力」 としての効果を及ぼしているもの。 cf. アインシュタインが生涯最大の失敗となげいた   「宇宙斥力」に対応(彼自身は宇宙を定常化させる    ために導入した) [村山「宇宙は…」]  ここまで: 地球惑星科学入門・第30章・宇宙とその進化 村山斉「宇宙は何でできているのか-素粒子物理学で解く宇宙の謎-」幻冬舎新書(新書大賞2011第1位) 池内了「宇宙論のすべて」新書館

宇宙の加速膨張の発見で米研究者ら 3人がノーベル物理学賞を受賞 【2011年10月5日 ノーベル財団】 10月4日、2011年のノーベル物理学賞が、遠方の超新星観測により宇宙の加速的な膨張を発見した研究者3名に贈られることが発表された。 137億年前のビッグバン以来私たちの宇宙が膨張し続けていることは、1929年からわかっていたが、その膨張の勢いが宇宙に存在する物質の重力によって衰えるどころか、むしろ加速しているということを示したのが今回の受賞者たちの功績だ。 受賞者は、Saul Perlmutter氏、Brian P. Schmidt氏、Adam G. Riess氏の3名で、Schmidt氏とRiess氏は共同チームとしての受賞となる。 この発見には、Ia型超新星と呼ばれる天体がかぎとなった。Ia型超新星とは、白色矮星と呼ばれる星の燃えかすのような高密度の天体が、核反応が暴走することで爆発して明るく見える天体だ。ピーク時の明るさがどれも同じであるため、地球からの見かけの明るさと比較することで距離を測定することができる。 求められた距離(光が届く時間がかかるので、遠くほど過去を見ることになる)と、天体が観測者から遠ざかるスピードが速いほど波長が長く伸びる「赤方偏移」の測定値を組み合わせることで、宇宙の時代ごとの膨張スピードがわかる。 3氏のチームは1998年、この原理を利用して、宇宙空間が加速的に膨張していることの観測的な証拠を見出した。もともとは膨張速度の衰えを計測するつもりで観測を行っていたので、この研究結果は当時衝撃的なものだった。 宇宙が加速度的に膨張していることの説明として、物体同士を遠ざけ空間を広げる斥力(物質同士を引き合わせる「引力」とは反対に、物質同士を引き離す力)を生む「暗黒エネルギー」が提唱されており、宇宙の全エネルギーの約4分の3を占めているとする説が現在主流である。 Saul Perlmutter 1959年、米・イリノイ州生。カリフォルニア大学バークレー校博士号。「超新星宇宙論計画」代表。ローレンス・バークレー国立研究所およびカリフォルニア大学バークレー校宇宙物理学教授 Brian P. Schmidt 1967年、米・モンタナ州生。アメリカ・オーストラリア国籍。ハーバード大学博士号。「遠方超新星捜索チーム」代表。オーストラリア国立大学特等教授 Adam G. Riess 1969年、米・ワシントンDC生。ハーバード大学博士号。ジョンズ・ホプキンズ大学および宇宙望遠鏡科学研究所宇宙物理学教授 ノーベル物理学賞を受賞した3氏。左からPerlmutter氏、Schmidt氏、Riess氏。(提供:Perlmutter - Lawrence Berkeley National Lab/Schmidt - Belinda Pratten, Australian National University/Riess - Homewood Photography)

まとめ ー 宇宙論 ー 天体現象の観察の時代 自然哲学の時代 中世ヨーロッパにおける太陽中心説(地動説)復興の努力     コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、そしてニュートンの万有引力 (地球の自転はなかなか実感できない) 宇宙は有限か無限か、定常か非定常か     ニュートンの無限宇宙(万有引力の帰結)     オルバースの夜空のパラドックス 銀河宇宙そして宇宙の階層構造 膨張宇宙の発見     宇宙の寿命と始まり(ビッグバン)     物質の起源と恒星の一生 現在の宇宙論・素粒子論 科学者とは何か、科学とは真理とは何か ― 実験科学・実証科学 時代の流れから独立でいられるのか 神話の時代から何が変わったのか ― 人間の世界認識力

太陽の科学 太陽系の構造 太陽系の形成 太陽

太陽系の構造 ・公転方向全て同じ。太陽自転方向に一致 ・軌道面はほぼ同一平面上 ・円に近い楕円軌道 ・木星が最大(“太陽になれなかった星”)の惑星 ・火星より内側:地球型惑星 ・木星より外側:木星型惑星 ・火星・木星間に小惑星帯 ・カイパーベルト(彗星帯)  (40~100AU付近) ・オールト雲(彗星の巣)  の仮説  (1万~10万AU付近) AU:天文単位(地球と太陽との平均    的な距離である約1.5億km) [全て、地学図表より]

太陽系の構造 太陽系の位置 太陽系の端 オールト雲仮説(~太陽の 重力圏)とは別に 太陽風・恒星風の境界 終端衝撃波面:67AU [地学図表] 太陽系の位置 太陽系の端 オールト雲仮説(~太陽の 重力圏)とは別に 太陽風・恒星風の境界 終端衝撃波面:67AU 太陽圏界面:116~177AU パイオニア10号(1973木星) パイオニア11号(1974土星) ボイジャー1号(1980土星) ボイジャー2号(1989海王星) [小森長生「太陽系と  惑星」東海大学出版会] 

太陽系の形成 現代の太陽系起源論: 恒星(太陽)の形成・進化の過程 で惑星は普遍的に生じる 太陽系は宇宙に無数に存在 星間分子雲 [全て、地学図表より] 現代の太陽系起源論:  恒星(太陽)の形成・進化の過程  で惑星は普遍的に生じる  太陽系は宇宙に無数に存在 星間分子雲  星間物質(主に水素原子)の  密度増加紫外線・宇宙線遮蔽  により低温化重力収縮  水素分子等多くの分子が形成 原始星(太陽)の誕生と進化  分子雲の重力収縮  密度差や回転の影響により  多数の雲に分裂、星の集団が誕生 原始太陽系の誕生と進化 各惑星は~1億年で現在程度

太陽 [全て、地学図表より] ~0.533°

太陽 ー 黒点(1/2) 黒点とは: 顕著な変動周期: 周囲より低温で暗く、 磁場が太陽表面を破って 現れている場所  黒点は太陽活動度 黒点とは:  周囲より低温で暗く、 磁場が太陽表面を破って 現れている場所  黒点は太陽活動度   (磁場強度)の指標 顕著な変動周期: 11年周期(7~16年) 太陽磁場反転は22年周期 マウンダー極小期の存在各種長周期変動の存在 [全て、地学図表より]

太陽 ー 黒点(2/2) 黒点は、古代ギリシャ/中国の時代より知られていた(大きな黒点は夕日のシミとして肉眼でも見える) 17世紀初期:ガリレオ(~1642) 19世紀前半:シュワーべが20年間の観測に基づき11年周期の発見(実際には7~16年) マウンダー極小期(1645~1715)の(再)発見により、より長周期の変動の存在判明 オーロラ頻度と黒点数には正相関あり 宇宙線と地球の気候について 宇宙線は、太陽活動、太陽磁場極性、太陽圏の磁場環境などによって決まる 樹木や南極アイスコアに含まれる宇宙線生成核種の分析により過去の宇宙線の変動を「復元」することができる たとえば、88年、2000年、2300年などの周期性が確認されている たとえば、マウンダー極小期(この時期の欧州・北米の小氷期の遠因か)には、宇宙線の11年/22年変動が14年/28年変動に伸びており、かつ、28年変動の振幅が大幅に増加していて、28年に1度、宇宙線が30-50%程度急増するイベントが発生していた(宮原ひろ子 東京大学宇宙線研究所) Wiki:エドワード・マウンダー(Edward Walter Maunder、モンダーとも、1851年4月12日 - 1928年3月21日)はイギリスの天文学者である。太陽黒点の研究で知られ、1645年から1715年までの黒点出現頻度の少なかった期間(マウンダー極小期)のあったことを確立したことで知られる。聖書学者でもある。 ロンドンにメソジストの役職者の家に生まれた。キングス・カレッジ・ロンドンに入学したが卒業はしなかった。ロンドン銀行に勤めた後1873年に王立天文台の分光助手を務め、太陽黒点の撮影と測定も行った。1904年に約11年周期で黒点の出現する緯度が変化することを蝶型図で示し発表した。天文台に残された黒点の観測資料を調べ1645年から1715年の間に太陽活動が低くなった時代が存在したことを提唱する論文を1894年と1922年に発表したが当時は注目されなかった。1970年代にパーカーによってマウンダーの研究が再発見され、この黒点の少ない時代はマウンダー極小期と呼ばれることになった。

太陽活動の11年周期と現状 http://solarscience.msfc.nasa.gov/SunspotCycle.shtml (2011年9月27日アクセス、最新図取得)

まとめ 現在の宇宙論・素粒子論-「宇宙論」最終回 太陽の科学 次回 科学者とは何か、科学とは真理とは何か ― 実験科学・実証科学 時代の流れから独立でいられるのか 神話の時代から何が変わったのか ― 人間の世界認識力 地球惑星科学入門・第30章・宇宙とその進化 村山斉「宇宙は何でできているのか-素粒子物理学で解く宇宙の謎-」幻冬舎新書(新書大賞2011第1位) 池内了「宇宙論のすべて」新書館 太陽の科学 地球惑星科学入門・第33章・太陽と宇宙空間 次回 地球惑星科学入門・第31・32章

WCRP Open Science Conference Climate Research in Service to Society 24-28 October 2011 Sheraton Denver Downtown Hotel, Denver, CO, USA http://www.wcrp-climate.org/conference2011/ How is this conference different from other conferences? It covers all aspects of understanding and predicting climate variability and change. It will deliver a comprehensive assessment of climate research. It will bring together diverse research communities that usually meet separately. It will identify the grand challenges facing the climate research community and help establish future priorities for climate research. It is timed to provide strategic input into the IPCC Fifth Assessment Report.

かに星雲(Crab Nebula, M1, NGC1952) おうし座にある超新星残骸 『明月記』: 藤原定家(鎌倉時代の公家)の日記。 1180年から1235年までの56年間。 客星古現例として1054年5月下旬のかに星雲の超新星爆発の伝聞を記す: 「後冷泉院・天喜二年四月中旬以後の丑の時、客星觜・参の度に出づ。東方に見(あら)わる。天関星に孛(はい)す。大きさ歳星の如し。」(原文読み下し) 藤原定家(菊池容斎・画、明治時代)(wikiより) 

ブラックホールとホワイトホール? アインシュタインの重力場の方程式: ホワイトホール (white hole): 一般相対性理論における万有引力・重力場を記述する場の方程式 。 ニュートンの万有引力の法則を強い重力場に拡張。中性子星や ブラックホールなどの高密度・大質量天体や、宇宙全体の幾何学を対象。 (左辺は時空の曲率、右辺は物質場の分布)  ちなみに、自身が信じた静止宇宙モデルを実現するために「宇宙項」 を加えたバージョンは: ホワイトホール (white hole): ブラックホール解を時間反転させたアインシュタイン方程式の解として、一般相対性理論で理論上議論されるものである。 ブラックホールは事象の地平線を越えて飛び込む物質を再び外部へ逃さずにすべてを呑み込む領域であるが、ホワイトホールは事象の地平線から物質を放出する。 数学的には在り得るが、実際に天体として存在するかどうかは不明である。