日本音楽教育学会第37回全国大会 研究発表 2008年11月8日 研究発表G 日本音楽教育学会第37回全国大会 研究発表 2008年11月8日 研究発表G ブレンディッドラーニングを導入した 保育者養成向けピアノ実技指導(その2) 深見友紀子* 中平勝子* * ,赤羽美希*** *京都女子大学 * *長岡技術科学大学 ***東京藝術大学大学院応用音楽学修了
背景1 ・ 保育者養成機関における対面式授業(レッスン)時間の不足 ピアノ教育における新たな改善の必要性 eラーニングの活用 ・ 保育者養成機関における対面式授業(レッスン)時間の不足 ・ ハード面~ML(ミュージックラボラトリー)の形骸化 ・ ソフト面~対面式授業(レッスン)における小さな改善策のみ 赤字部はこれで良いでしょうか. ピアノ教育における新たな改善の必要性 eラーニングの活用
背景2 リアルタイムの教室での対面(同期)指導・学習 + 非対面(非同期)指導・学習 ・ブレンディッドラーニング Blended Learning 教育の「質保証」を目指す 集合教育とeラーニングを連携・併用 (eラーニング白書 2008/2009) ・ピアノレッスン実技にブレンディッドラーニングの考えを導入 リアルタイムの教室での対面(同期)指導・学習 + 非対面(非同期)指導・学習 赤字部はこれで良いでしょうか.
背景3 ・MLにネットワークを導入 ・ 先駆的な研究 Net-CAPIS 学生の動画像の活用・動画配信 ・ 先駆的な研究 Net-CAPIS ・MLにネットワークを導入 ・電子メール、掲示板、各種教材の提供、学習者の演奏を電子的に記録し、演奏分析を行う。 (鈴木寛 「ピアノ指導における“eラーニング”」、兵庫教育大学研究紀要『実践教育研究19』 p.11-22 2005) 学生の動画像の活用・動画配信 平成18~19年科学研究費補助金基盤研究C 赤字部はこれで良いでしょうか.
演奏映像提出という試み ・場所:京都女子大学発達教育学部児童学科 ・科目:児童音楽Ⅰ ・期間:2006年度(6~7月) 2007年度(6~7月) ・履修者:105名( 2006年度) 98名( 2007年度) 中間実技試験 → 授業・レッスン+演奏映像提出 → 期末実技試験
授業デザイン 本方式 実技試験 自主訓練・録画 講義・個人指導 従来の方式 講義・個人指導の後 特に講師は学生に働きか けず試験を行う 研修君 講義・個人指導 本方式 実技試験 従来の方式 講義・個人指導の後 特に講師は学生に働きか けず試験を行う 実技試験時の楽曲 ・学生が自由に3曲を選定 ・当日,指定された1曲を演奏 実技試験の採点法 ・2名の教員が独自に採点 ・両者の平均点が学生の得点
ピアノ弾き歌いの自主訓練・録画環境 (本実践では,カメラ部に KS20(「研修君」 フジノン(株))を利用 内視鏡技術を用いて延長) KS20(「研修君」 フジノン(株))を利用 映像録画は通常のビデオデッキと同じ操作 Mpeg2 で録画,DVD へ焼きつけ可能 映像ファイルをバーコードで管理できる
演奏映像の提出の状況 ・ 2006年度 ~提出をノルマ、提出回数を成績に加算 中間実技試験後に練習した任意の楽曲→成功テイクを提出 ・ 2006年度 ~提出をノルマ、提出回数を成績に加算 中間実技試験後に練習した任意の楽曲→成功テイクを提出 ・ 2007年度 ~提出は任意、提出回数を成績に反映させない(学生の自主性を重視) ピアノ弾き歌い模範演奏7曲(DVDで配布)を反復視聴し、その7曲の録画を推奨→成功テイクを提出
演奏映像提出回数と期末試験の平均点
演奏映像提出の効果 ・ 映像提出回数と実技試験の点数には正の相関がある。 ・ 提出前映像チェックを通じて自己内省の誘発「気づき」の場を創生 ・ 映像提出回数と実技試験の点数には正の相関がある。 ・ 提出前映像チェックを通じて自己内省の誘発「気づき」の場を創生 ・ 録画によって、本番(期末試験)・人前での演奏における羞恥や萎縮を和らげ、緊張に対する慣れをつくる。
教員・保育者養成のための ピアノ実技eラーニングコース
コンテンツ制作協力者 ・ プロデュース: 深見 友紀子 (京都女子大学発達教育学部教授) ・ プロデュース: 深見 友紀子 (京都女子大学発達教育学部教授) ・ ディレクション: 志民 一成 (静岡大学教育学部准教授) ・ ピアノ弾き歌い演奏: 山下 薫子 (東京藝術大学音楽学部准教授) ・ 歌唱: 梶谷 祐子 (淑徳大学非常勤講師) ・ 歌唱伴奏: 今野 貴子 (東京藝術大学非常勤講師) ・ 撮影場所:深見友紀子ミュージック・ラボ(東京・早稲田) ・ 配信元: 長岡技術科学大学 http://oberon.nagaokaut.ac.jp/kwu/piano/
eラーニングコンテンツ視聴の状況 2008年度 ・ 中間実技試験前~模範演奏7曲の中の最低1曲は練習するように指示、演奏映像録画 成功テイクを提出 ・ 中間実技試験後~eラーニングコンテンツを紹介 ・ 期末実技試験まで~アクセス数チェック、アンケート調査、演奏映像録画 成功テイクを提出
eラーニングコンテンツ視聴の効果 点数の伸びた者 :50名 下がった者:17名 期末試験時採点教員間の付与得点差 採点差 人数 7割 実技試験当日の楽曲選定: 模範演奏と同一曲を候補曲とした者→28名 実際に模範演奏曲を演奏した者→8名 期末試験時採点教員間の付与得点差 採点差 人数 10 7 2 1 8 15 9 3 4 6 11 5 12 7割 点数の伸びた者 :50名 下がった者:17名 -1,-2点は13名,平均75点(昨年よりやや上昇) 1,2点は16名 30:34をどう見るか? 5点以上伸びた→15名,5点以上下がった→9名
模範演奏視聴、演奏映像提出の効果 参考になった 模範映像のアングル 研修君を使った感想と得点分布 学生の意識と 実態が一致 手元よりも全体の 雰囲気を確認したい 頑張れたという 満足感 意識しない所 での上達
アンケート結果① 期末実技試験時に注意したこと 大きな声で歌う,顔の表情,姿勢 姿勢 19 eラーニング教材のアドバイス 6 大きな声で歌う 12 ダウンロード楽譜に記載されていること 5 指づかい,指の形 先生に指摘されたこと 4 顔の表情 8 演奏するテンポ eラーニング模範映像 7 間違えないように 3 緊張しないようにする 「姿勢」「大きな声で歌う」「顔の表情」は,対面指導でも講師から指摘がありますか? 大きな声で歌う,顔の表情,姿勢 →対面指導で指摘されているが,自覚しづらい →自身の演奏映像を見ることで,自覚可能に →模範映像と併せて比較することで,更にステップアップ可
アンケート結果②(記述) ・ 映像を見て、自分の歌声がピアノに負けていて殆ど歌が聞こえていないことに気づいた ・ 映像を見て、自分の歌声がピアノに負けていて殆ど歌が聞こえていないことに気づいた ・ 映像を見て,自分が思う以上に大げさに表情をつけないと伝わらないことに気づいた ・ 教えられる以上に,自身の映像を振り返ることで演 奏上の欠点を自覚 ・ 模範映像を記憶にとどめることで,自身の音楽/情 感表現についても内省
遠隔・非対面指導 ・場所:京都女子大学発達教育学部児童学科 ・科目:児童音楽Ⅱ ・期間:2007年度(6~7月) ・履修者:26名( 協力者20名) 自己練習 → 演奏映像提出 → 「上書き機能」を使用して助言をテキストと演奏で返送 → 再自己練習 → 演奏映像再提出 (有効ファイル数45組) ・助言者 赤羽美希(東京藝術大学大学院修了)
遠隔・非対面指導の実際 時間 助言 0.05- 学籍番号、氏名、演奏する曲名を言う。演奏開始 0.26-0.37 助言① [一時停止] 助言① [一時停止] 0.51-1.02 助言② [一時停止] 1.34 助言③ [停止せずに] 1.51 演奏終了 2.00-2.46 総括的な助言
遠隔・非対面指導による演奏の改善 ・ ほぼ演奏に改善がみられる助言 ピアノのディナーミク、促音の発音、適正なテンポなど 遠隔・非対面指導による演奏の改善 ・ ほぼ演奏に改善がみられる助言 ピアノのディナーミク、促音の発音、適正なテンポなど ・ 他に悪影響が出る可能性が高い助言 ピアノ音と声量のバランス、スラーへの意識など ・ 改善がみられない助言 音楽用語を多用した助言、音の間違い、指づかい
遠隔・非対面指導の有効性の向上 ・ より具体的で明確な指示 ・ 予想される悪影響も述べる ・ 良かった点を伝える ・ すべてを指摘せず、考えさせる 対面レッスンとの補完 eラーニングコンテンツとの補完
まとめ ・ 演奏映像提出の意義 提出前映像チェックを通じて自己内省の誘発 ・ eラーニングコンテンツの意義 ・ 演奏映像提出の意義 提出前映像チェックを通じて自己内省の誘発 「気づき」の場を創生 ・ eラーニングコンテンツの意義 模範演奏の提示→自己内省の一助 注意事項の提示→上達へのガイド 演奏映像提出と,確実な模範演奏・注意事項の提示が, 模範演奏曲に拠らない実技能力を育成する
まとめ ピアノ実技ブレンディッドラーニングの確立 ・ eラーニングコンテンツの普及(大学コンソーシ アム京都など) ・ 遠隔・非対面指導力のアップ 通常の対面指導とeラーニングコンテンツ、遠隔・非対面指導との好ましいブレンディッド