「空間横断の安全保障」の出現? ー冷戦後と9.11後の安全保障ー

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「空間横断の安全保障」の出現? ー冷戦後と9.11後の安全保障ー 「空間横断の安全保障」の出現? ー冷戦後と9.11後の安全保障ー 安全保障論 (第1回) 担当:神保 謙

安全保障の概念の多元化 旧モデル +α 何を(主体) 国家 企業・経済・福祉・コミュニティ 何から(脅威) 国家 非国家主体            旧モデル          +α 何を(主体)            国家        企業・経済・福祉・コミュニティ 何から(脅威)            国家        非国家主体 どのように(手段)             軍事力       非軍事的手段 誰と(協調関係)            同盟関係     多元的安全保障協力 守る

安全保障論 -授業の視座と射程- 第二次大戦後、日本国内で十分に論じてこられなかった「安全保障論」の台頭 安全保障論  -授業の視座と射程- 第二次大戦後、日本国内で十分に論じてこられなかった「安全保障論」の台頭 理論オタ・ミリオタを越えた「政策学」としての安全保障論の必要性 →それでも重要な理論と軍事知識! 安全保障の基礎的な議論の枠組みを学び、セキュリティ・マインドを身につける

安全保障論  -授業の視座と射程- 「政策学」としての 安全保障論の重要性!

授業計画(I) 「空間横断の安全保障」の出現?: 冷戦後と9.11後は安全保障に何をもたらしたか 第2回(4月18日) 第1回(4月11日) 「空間横断の安全保障」の出現?:       冷戦後と9.11後は安全保障に何をもたらしたか 第2回(4月18日) 安全保障政策の体系:国防・同盟・多国間安全保障協力の諸類型 第3回(4月25日) 抑止論(deterrence)と拡大抑止(extended deterrence)             5月2日(火)は休講です 第4回 (5月9日) 核戦略とミサイル防衛

授業計画(II) 軍備管理・軍縮・不拡散・拡散対抗 第6回 (5月16日) 国連の安全保障と多国間主義の可能性と限界 第7回 (5月23日) 第5回 (5月13日) ― 土曜日補講 軍備管理・軍縮・不拡散・拡散対抗 第6回 (5月16日) 国連の安全保障と多国間主義の可能性と限界 第7回 (5月23日) 欧州における多国間安全保障 第8回 (5月30日) アジアにおける多国間安全保障 第9回 (6月6日) 軍事技術・国防産業・インテリジェンス

授業計画(III) テロリズムとカウンターテロリズム 第11回 (6月20日) 日本の安全保障政策と防衛体制I: 防衛政策の基礎的理解 第10回 (6月13日) テロリズムとカウンターテロリズム 第11回 (6月20日) 日本の安全保障政策と防衛体制I: 防衛政策の基礎的理解                             6月27日(火)は休講です 第12回 (7月4日) 日本の安全保障政策と防衛体制II: 現代の防衛政策の課題 ゲスト講師(予定): 大塚海夫一佐 (海上幕僚監部教育班長) 第13回 (7月11日) ―火曜日補講 日本の安全保障政策と防衛体制III :現代と将来の展望

提出課題と成績評価 中間レポート(2000字以上) 基礎編 最終レポート(3000字以上) 応用編 ⇒レポートは和文・英文どちらでも可 中間レポート(2000字以上) 基礎編 最終レポート(3000字以上) 応用編     ⇒レポートは和文・英文どちらでも可             +授業参加についても評価 *参考文献・論文は毎回の授業レビューなどで適宜指定。重要な資料についてはリーディング・マテリアルとして配布する  

学習・研究の進めかた 参考文献 授業ブログ 防衛大学校安全保障学研究会編『最新版:安全保障学入門』(亜紀書房、2005年) ジョセフ・ナイ・ジュニア『国際紛争:理論と歴史(第5版)』(有斐閣、2005年) 授業ブログ 「安全保障論ノススメ」 URL: http://web.sfc.keio.ac.jp/~kenj/security/

脅威の座標軸 非対称脅威とWMDの結びつき 台頭する中国への対処 小規模紛争への対処 High Intensity 非対称 対称 旧ソ連 +WMD +WMD 中国 非対称脅威とWMDの結びつき 台頭する中国への対処 北朝鮮 非対称 経済秩序の破壊・混乱 国家統合の破綻による政治危機 対称 テロリズム 南沙諸島領有権問題 小規模紛争への対処 国際組織犯罪 小規模越境紛争 大規模災害等 Low Intensity

9・11事件とは なんだったのか? 1.非対称的脅威の台頭 2.大量破壊兵器と非対称的脅威のリンケージの恐怖 9・11事件とは       なんだったのか? 1.非対称的脅威の台頭 2.大量破壊兵器と非対称的脅威のリンケージの恐怖 ・・・によって挑戦を受ける国際政治の考え方 → 1) 伝統的Balance of Power    2) 抑止理論

伝統的Balance of Powerの考え方 A, B, C, D, E の5カ国を想定した場合・・・ 1) A = B = C = D = E 2) A + B + C = D + E eg. 東西対立 3) A + B + E ≧ C + D E = Balancer A + B ≦ C + D + E 4) A > B + C + D + E A = Hegemon 主権国家体制を前提とした Rule of Games 国際法の存立基盤

Balance of Power から 均衡なき協調へ? 対テロ戦争の三つの戦場 均衡なきアクターΩの挑戦!?  アフガニスタン戦争        Ω← A > B + C + D + E  イラク戦争      (Ω+) F ← A > B + C ≠ D + E  Transnational Front         Ω ← A + B + C + D + E

ブッシュ政権の政策過程 ーアフガニスタン/イラク戦争― ボブ・ウッドワード 『ブッシュの戦争』 ボブ・ウッドワード 『攻撃計画』 ジェームズ・マン 『ウルカヌス・の群像』

抑止理論への挑戦 (第3回授業で詳しく説明します) 抑止の成立条件   1) 十分な報復力   (能力)   2) 報復意志の明示  (意志)   3) 相手側の理性   (相互理解) テロリストの特徴   1) 領土をもたず匿名性が高い (報復不可)   2) 殉教的な攻撃手段 (相互理解の前提なし)

9.11後の安全保障の 「空間軸」と「時間軸」の パラダイム・シフト まずは「空間軸」・・・

冷戦期の2戦域(theater) ワルシャワ 北大西洋条約機構 条約機構 アジア戦域 欧州戦域 (第2戦域) (第1戦域) 米国との二国間安全保障関係

インドネシア・フィリピン(テロリスト・セル) 9.11テロの「空間」 欧州各国(テロリスト・セル) ロシア(兵器調達) 米国(テロリスト・セル・訓練) アフガニスタン(訓練基地・組織) サウジアラビア(資金提供) パキスタン(テロリスト・セル) スーダン(訓練基地) インドネシア・フィリピン(テロリスト・セル)

北朝鮮の脅威比較分析 1994年/2004年 ミサイルの射程 拡散危機 ⇒「戦域的脅威」から「グローバルな脅威」へ 1994:ノドンミサイル(射程:1300km) 2004:テポドンミサイル(射程:2000km推定値) 拡散危機 1994: ミサイル/通常兵器の輸出 2004:大量破壊兵器/関連物質の輸出 ⇒「戦域的脅威」から「グローバルな脅威」へ

North Korean Nuclear/Missile Threat System Range Quantity Status Scud Mod C 550km unknown Operational Nodong 1300km 100-200 Operational Taepodong1 1500-2000km n/a Tested Taepodong2 3500-10000km n/a Development

空間横断の安全保障? National Level Security 日本有事 Regional Level Security 周辺事態 イラク支援特措法 テロ特別措置法 PKO協力法 Global Level Security?

9.11後の安全保障の 「空間軸」と「時間軸」の パラダイム・シフト お次は「時間軸」・・・

弾道ミサイル脅威に応じた拒否的抑止力、対処能力(MD)の必要性 脅威と紛争のスペクトラム概念図 弾道ミサイル脅威に応じた拒否的抑止力、対処能力(MD)の必要性 対処 伝統的(対称的)脅威 脅威の烈度 外交 弾道ミサイルと結びついた対称的脅威 対処 外交 抑止 新しい(非対称的)脅威 被害局限 脅威の質の差 復興・安定化 国家・国際総合力によるリスク・ヘッジ 予防 先制行動 紛争のスペクトラム       平 時        危 機     有 事       収 拾

先制攻撃論の登場 『国家安全保障戦略』(2002年)9月 1)戦略の前提 2)先制行動の形態 抑止の限界 損害受忍の限界 →脅威との共存不可 損害受忍の限界   →脅威との共存不可 2)先制行動の形態 対テロリズムとしての先制行動 拡散対抗としての先制行動 テロ支援国家と大量破壊兵器の結びつきへの先制行動

同盟と多国間安全保障の枠組み ARF 日米同盟 米韓同盟等 PSI 有志連合 双務化 国連・地域集団安全保障 レジーム? 中国 北朝鮮 強制型 高 中国 日米同盟 米韓同盟等       北朝鮮 (枠組みの性格) (脅威の烈度) テロリズム PSI 有志連合 地域紛争 友好協力条約 多国間共同演習等 WMD拡散 海賊 破綻国家 国際組織犯罪 予防・対話型 ARF 低 非対称的 (脅威の対称性) 対称的 包含的 (枠組みの性格) 限定的

同盟と多国間安全保障の枠組み 攻防均衡・双務化 ⇒ 伝統脅威対処 対処 日米同盟 枠組みの重層化 ⇒ 多層的な安全保障 抑止 国連 ⇒ 伝統脅威対処 対処 対称的脅威 日米同盟 枠組みの重層化 ⇒ 多層的な安全保障 抑止 国連 多国間枠組の整備⇒ 新しい脅威対処 復興・安定化 非対称的脅威 予 防 PKO等 共同演習 PSI等 多国間安全保障 紛争のスペクトラム       平 時        危 機     有 事       収 拾 (※多国間安全保障には、国連枠組内・外の有志連合を含む)