2010年の夏期の高温による 水田土壌窒素発現への影響

Slides:



Advertisements
Similar presentations
過去の気象データ ダウンロードページ紹介 気象庁 気候情報課 気候リスク管理技術係 荒井 宏明 8 月 21 日(水) ヤマセ研究会.
Advertisements

土木計画学 第3回:10月19日 調査データの統計処理と分析2 担当:榊原 弘之. 標本調査において,母集団の平均や分散などを直接知ることは できない. 母集団の平均値(母平均) 母集団の分散(母分散) 母集団中のある値の比率(母比率) p Sample 標本平均 標本分散(不偏分散) 標本中の比率.
オオムギ縞萎縮病抵抗性ビールオオム ギ品種の育成と栽培法に関する研究 および RFLP 解析を用いたビールオオムギの主 要農業形質の QTL マップ(遺伝子座地 図)の作成に関する研究 五月女 敏範.
お問い合わせ先 名張市農業再生協議会 TEL 〒 名張市鴻之台 1 番町 1 番地 名張市産業部農林資源室 TEL 〒 名張市鴻之台 1 番町 1 番地 伊賀南部農業協同組合 営農部 TEL
稲の実り具合を調べる 坪刈り調査 資料提供 及び 取材協力 跡呂井農事実行組合. 実りの秋! 動画「1タイトル」を参照してください.
プレゼンテーション ソフト(Power Point 2002 )で 作成していますので、 授業の内容にあわせ て作り直すことがで きます。 ノートには参考資料とし て、発問や指導のポイン トを 示しています。
土性を考慮した有効水分量の検討 生産環境整備学講座  灌漑排水学研究室      玉内 翔子.
「葉面濡れセンサーで計測した葉面濡れ時間、誘電率といもち病の感染について」
北日本における4月と8月気温の強い相関関係とその時間変動(2)
稲作農業の体質を強化するため、稲作農業者が行う
稲作農業の体質を強化するため、稲作農業者が行う
稲作農業の体質を強化するため、稲作農業者が行う
稲作農業の体質を強化するため、稲作農業者が行う
児童の4年間の成長曲線と給食から見られる 食事の偏りとの関連性の検討
地球温暖化 現在(2010)起きていること.
いもち病感染危険度予測へ向けた 観測・モデル研究
アンサンブルハインドキャスト実験結果を用いたイネ葉いもち病の発生確率予報の精度検証
2週目の気温予測を用いた東北地方の稲作への影響予測
ラオス・ビエンチャン平野における稲作の環境対応事例
地球温暖化と私たちの暮らし 静岡県地球温暖化防止活動推進センター
土木計画学 第5回(11月2日) 調査データの統計処理と分析3 担当:榊原 弘之.
第6回ヤマセ研究会 2012年9月24~25日 2011年と2012年のヤマセが 水稲に及ぼした影響 宮城県古川農業試験場 菅野博英.
DIASできり拓く ジャストインタイム農業
安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発
施用当作の窒素肥効を 考慮した家畜ふん堆肥の利用
人工ゼオライトによる 作物の生育効果に関する研究
平成24年3月5日 ヤマセ研究会 仙台管区気象台 池田友紀子
気温の予想を用いた 栽培管理指導に向けた水稲の生育量予測
計量経済学 経済の構造を推定する 浅野 晳 筑波大学.
GEOSSデータ統合・解析システム」第1回フォーラム
第8回ヤマセ研究会 宮城県古川農業試験場 日平均気温を用いた小麦の開花期予測.
土木計画学 第6回(11月9日) 調査データの統計処理と分析4 担当:榊原 弘之.
CMIP5マルチ気候モデルにおける ヤマセに関連する大規模大気循環の 再現性と将来変化(その2)
1961年~2014年の54年間のランキング記録 最も暑かった日 39,7℃ 1994年 8月13日 2014年 37.8℃ 7月26日
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2013年4月 .
化学肥料(肥効調節型肥料)の窒素の効き方のパターン
アグリビジネス高知㈱四万十営業所研修会資料
Ver 地球温暖化と気候変動.
東京大学地震研究所 地震予知研究センター 平田直
熱中症の救急搬送者数 今日は,熱中症について勉強したいと思います。.
夏季における首都圏の ヒートアイランドの実態について
農業支援システムの2012年度運用実験(途中経過)と課題
イネ 大野 翔 佐藤 博一 佐野 太郎.
南米4ヵ国の経済動向セミナー ~チリ、アルゼンチン、ベネズエラ、ペルー~
光環境と植物 第10回 光量と植物の生長について
家畜ふん堆肥中の窒素の効き方を考慮した化学肥料との協調利用 普及への取り組み
(新)ふくしまアグリイノベーション実証事業【水田メガファームモデル事業】
○清家伸康・大谷 卓 (農業環境技術研究所)
土壌水分が大豆の生育に及ぼす影響 生産環境整備学講座 灌漑排水学研究室 林 春奈.
気象予測値を用いた カンシャコバネナガカメムシの 防除適期予測の精度検証 気象庁 地球環境・海洋部 気候情報課
家畜ふん堆肥の肥料成分量 窒素 リン酸 カリ 家畜ふん堆肥の肥料成分量 畜産環境整備機構「堆肥の品質実態調査報告書」(2005)より作成
気候予測情報を活用した 農業技術情報⾼度化に関する 研究成果概要 中三川 浩 気象庁 地球環境・海洋部 気候情報課 第12回やませ研究会
酸欠状態におかれた森林土壌の強熱減量および撥水性 ○ 小渕敦子・溝口勝・西村拓・井本博美・宮崎毅 東京大学大学院農学生命科学研究科
一貫 体系 対象分野: キーワード: 整理番号:事務局が記入 提案者名:○○農場 代表 ○○○○
ジャストインタイム農業システム (JITAS; Just In Time Agriculture System)
周辺圃場の土地利用変化が 水田の水需要に与える影響
「スマート農業加速化実証プロジェクト」に係る技術・体系提案会 資料(一貫技術体系)
気候モデルのダウンスケーリングデータにおける ヤマセの再現性と将来変化
菅野洋光 (農研機構東北農業研究センター) 渡部雅浩 (東京大学大気海洋研究所)
水田における除草剤ブロモブチドの濃度変動と挙動
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2015年4月 .
紫黒米新品種「兵系紫86号」の育成 兵庫県立農林水産技術総合センター 農業技術センター
水田立地とコメ品質の関係 東京大学 山路永司 2019/5/1.
情報の集約 記述統計 記述統計とは、収集したデータの分布を明らかにする事により、データの示す傾向や性質を要約することです。データを収集してもそこから情報を読み取らなければ意味はありません。特に膨大な量のデータになれば読みやすい形にまとめて要約する必要があります。
MIROC5による将来のヤマセの再現性について(2)
安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発
2019/5/27 大学での課題研究とは 教育実習生 平成23年度卒 和久井彬実.
南米4ヵ国の経済動向セミナー ~チリ、アルゼンチン、ベネズエラ、ペルー~
LANDSATデータを用いた 佐鳴湖流域の土地被覆分類と 温度分布の分析
PowerPoint Viewer の使用方法は簡単です      ① この画面は、プレゼンテーション 今これから何をやりたいかの最初のスライドです。 ② 画面が小さかったら、画面の中で右クリックし、[全画面表示] をクリックします。 ② 画面をクリックするたびに、プレゼンテーションが1段ずつ進行します。
Presentation transcript:

2010年の夏期の高温による 水田土壌窒素発現への影響 ○横山克至・齋藤寛*・中川文彦**・熊谷勝巳 (山形農総研セ・*同水田農試・**山形県村山総合支庁)

背景および目的 2010年は水稲生育期間が記録的な異常高温となり、特に玄米品質や食味特性への影響が大きかった。 穂肥の時期である7月に葉色が濃くなり、施肥対応が難しかった。 異常高温年次における水田の土壌窒素発現の特徴を明らかにし、対応技術構築の資とする。

2010年の水稲作柄の概要 乾土効果はやや小さい 茎数は少なく、穂数は平年並~少、 1穂籾数は平年並~やや多 ㎡当籾数は平年並~やや少  1穂籾数は平年並~やや多 ㎡当籾数は平年並~やや少 作況指数:100(山形県) 高温登熟となり品質は不良  (県1等米比率74.7%:2011年1月末現在) 粗玄米中タンパク質含有率は高  (県作況圃はえぬき7.6%:過去13年間で   3番目に高い)

2010年の気温 地点 (観測期間) 2010年の平均気温(℃)および観測史上順位 6 月 7 月 8 月 6~8月 山形 (1889.7~) 21.7 (4位) 25.5 (8位) 27.7 (1位) 25.0 酒田 (1937.1~) 20.8 (6位) (2位) 27.9 24.8 新庄 (1958.6~) 20.6 24.7 26.7 24.0

方法(稲体窒素吸収量の年次間比較) 調査場所:山形県農業総合研究センター (灰色低地土、山形市) 調査期間:1994~2010年         (灰色低地土、山形市) 調査期間:1994~2010年 供試品種:はえぬき 耕種概要:【標準区】基肥60kgN ha-1          +幼形期追肥20kgN ha-1         【N-0区】N無施用 調査項目:稲体窒素吸収量

図1 稲体風乾物重の推移 (はえぬき標準区、山形農総研セ) 結 果 図1 稲体風乾物重の推移      (はえぬき標準区、山形農総研セ)

図2 稲体窒素吸収量の推移 (はえぬき標準区、山形農総研セ) 結 果 図2 稲体窒素吸収量の推移      (はえぬき標準区、山形農総研セ)

図3 高温年次の稲体窒素吸収量の推移 (はえぬき標準区、山形農総研セ) 結 果 図3 高温年次の稲体窒素吸収量の推移      (はえぬき標準区、山形農総研セ)

図4 稲体風乾物重の推移 (はえぬきN-0区、山形農総研セ) 結 果 図4 稲体風乾物重の推移      (はえぬきN-0区、山形農総研セ)

図5 稲体窒素吸収量の推移 (はえぬきN-0区、山形農総研セ) 結 果 図5 稲体窒素吸収量の推移      (はえぬきN-0区、山形農総研セ)

方法(土壌窒素発現量の推定) 上野ら(1990)による「速度論的解析法による土壌窒素発現予測システム」により、土壌窒素発現量を推定 対象地点:山形県内5地点         (山形、鶴岡、酒田、新庄、南陽) 対象期間:山形:2008~2010年         その他の地点:2010年

方法(土壌窒素発現量の推定) 表1 土壌窒素発現推定地点の土壌型とCEC 地点名 土壌型 CEC(cmol kg-1) 山形 細粒灰色低地土 表1 土壌窒素発現推定地点の土壌型とCEC 地点名    土壌型 CEC(cmol kg-1)  山形 細粒灰色低地土    16.5  鶴岡 中粗粒強グライ土    17.7  酒田 細粒強グライ土    33.5  新庄 表層腐植質多湿黒ボク土    32.9  南陽    22.3

結 果 乾土効果画分 地温上昇効果画分 図6 土壌窒素発現量の推定値(地点:山形)

結 果 乾土効果画分 地温上昇効果画分 図7 地点別の土壌窒素発現量の推定値(2010年)

図8 地点別・時期別の土壌窒素発現量 推定値(総量)の平年差(2010年) 結 果 図8 地点別・時期別の土壌窒素発現量 推定値(総量)の平年差(2010年)

まとめ 2010年の稲体窒素吸収量は7月10日から20日にかけて大幅な増加がみられた。 速度論的解析による地温上昇効果画分のの土壌窒素発現量を推定したところ、2010年はCECが高い地点での発現量の増加が大きいことが推察された。 高温年次は7月中下旬の地温上昇効果をふまえた施肥対応が必要であることが考えられた。