47年ぶりとなる皆既日食は残念ながら曇りでほとんど観察できませんでしたね。でも、太陽が地球上のすべての生命にとってかけがえのないものであることを認識するよいチャンスでした。ところで、月がなかったら、地球はどうなっていたでしょう?背筋が寒くなるかもしれません。意外な月の役割についてお話し、みんなと月と海のある地球に生まれた喜びを分かち合いましょう。
科学怪談 『もしも月がなかったら』 -ぞくぞくする地球の歴史と海の関わり- 地球総合工学専攻 船舶海洋工学部門 教授 長谷川和彦
少しだけ、おさらい
地球の歴史 46億年前 新たに形成された恒星「太陽」のまわりを厚みのある円盤のような無数の宇宙塵が公転していた。 46億年前 新たに形成された恒星「太陽」のまわりを厚みのある円盤のような無数の宇宙塵が公転していた。 これらの宇宙塵は衝突を繰り返し、次第に塊になっていき、やがて、現在の地球の当たりにあったもっとも大きな塊が原始地球となった。 現在でも年間3万トン以上の隕石が地表に降り注いでいる。 原始地球が誕生したとき、月は存在しなかった。何百万年もの間、星と溶岩の川や海だけが夜空を照らしていた。
月のない地球 嵐が絶え間なく吹いていた。稲妻が鳴り響き、マグマが地表に吹き出している。 地表はからからに乾き、まったくの不毛で生命のない惑星であった。 巨大な微惑星が時速4万kmで原始地球に衝突した。 地球の外層の200億m3が地殻、マントルもろとも軌道にまき散らされた。原始地球の大気の一部も宇宙空間に放出された。その多くは二酸化炭素であった。
月の誕生 放出された原始地球の破片は地球の周りを回り始め、やがて、たがいに衝突を繰り返して、次第に月が形成されていった。 その後の地球は月に大きく影響される歴史をたどる。
もし、月がなかったら カレンダーが存在しない? 潮汐が存在しない。 では、波は? 実は、潮汐により、地球の1日は24時間になっている。 もしも、月がなかったら、現在の1日は8時間となり、1年は1,095日である。 影響は、そればかりではない。
余談1:潮汐の話 潮汐を初めて、科学的に分析したのは誰? 1686年5月8日「プリンシピア」出版 1896年「潮汐」出版 ニュートン、ジョージ・ダーウィン、ケルビン、ラプラスなどの大物理学者たち ちなみに、この波をケルビン波と呼ぶ。
余談2:風の話 ところで、風はどうして起こる? 地球規模で考えよう。 赤道付近の暖められた大気により上昇気流が起こる。 ある程度上昇した暖められた空気は、中緯度地域の温度がそれほど高くない地域に降りる。 それと、自転が作用して、地球規模の風(言い換えると気圧変化)が起こる。
余談3:波の話 ところで、波はどうして起こる? 大気と海水の境界の摩擦により、海水が風の吹く方向に引っ張られる。 しかし、いずれ、地球の重力により、もとの平面に戻ろうとする。 風が絶えず吹く限り、波は消えない。
もし、月がなかったら 地球は木星や土星のようになっていたであろう。 木星や土星の自転は約10時間である。 木星や土星では強力なハリケーンが赤道付近に発達しやすく、時として何年も、何世紀も続くことがある。 月のない地球で起こるハリケーンは時速300km以上である。 したがって、陸上では、人間のような2足歩行の動物は存在せず、仮にいたとしても、海では、大波が常に起こり、船舶の航行はまず不可能である。
海の関わり
考えると言うこと さて、みんなで考えよう! 高校までは学習を行う 大学ではいかに自分の力で考えるかが問われる ただし、すべての高校生が持つ能力を見つけ出し、誘導するのが大学の教授の仕事である 監督次第で強くも弱くもなるスポーツの世界 健康が一番の能力 精神面の強さも実力のうち それに、強い好奇心があれば、誰でも、夢は叶う!
「かぐや」からの見た月による地球のダイヤモンドリング 「あなたが僕の、私の夢になる」
地球に 生まれてよかった 我々はこうした奇跡の星「地球」に生まれた。 そこには、偶然としか言いようのない幸運が満ちあふれている。 海にそして、月に感謝し、我々の子孫のため、この星を大事にしよう。 地球総合工学科とはそうしたことを自らの力で考え、それを実現して、社会のため役立てることができるまさに、今の地球にとって、大転換期となりうる学問を学ぶところである。 今日は、短い間の講義だったが、少しだけでも大学の授業に触れ、地球のことを考えてくれたなら、望外の喜びである。 感謝 地球に 生まれてよかった