温度勾配下の半導体中の輸送現象 =ネルンスト効果= 平成21年2月4&5日@京大基研, International Molecule workshop 温度勾配下の半導体中の輸送現象 =ネルンスト効果= Fundamental Theory of Nonequilibrium Statistical Mechanics from view points of Complex eigenvalue problems of Liouville operators and its Application to Biological Problems -II- 日時:2009年2月4日・5日 会場:基礎物理学研究所 K202 中村浩章 自然科学研究機構 核融合科学研究所
ネルンスト効果 熱流磁気効果の紹介 ネルンスト係数の計算 磁場がない場合:熱電効果 磁場がある場合;ネルンスト効果 電流・熱流の輸送方程式 2/30 熱流磁気効果の紹介 磁場がない場合:熱電効果 磁場がある場合;ネルンスト効果 ネルンスト係数の計算 電流・熱流の輸送方程式 古典系の場合 量子系の場合 バリスティックな場合
共同研究者 古典ネルンスト効果 山口作太郎(中部大)池田一昭(理研)奥村晴彦(三重大) 量子ネルンスト効果 3/30 共同研究者 古典ネルンスト効果 山口作太郎(中部大)池田一昭(理研)奥村晴彦(三重大) 量子ネルンスト効果 羽田野直道(東大生産研)、白崎良演(横浜国大) 松尾まり(お茶の水大)、長谷川靖洋(埼玉大) 遠藤彰(東大物性研)、杉原硬
熱電効果 (磁場がない時) 応用例 ゼーベック効果 ペルチェ効果 ゼーベック効果 温度勾配(x方向) 電場(x方向) ペルチエ効果 4/30 熱電効果 (磁場がない時) ゼーベック効果 応用例 ゼーベック効果 熱電対(温度計) 人工衛星の電源 廃熱発電(ゴミ発電、自動車の廃熱) ペルチェ効果 静かな冷蔵庫 CPUの冷却 超伝導コイルの電流リード部 温度勾配(x方向) 電場(x方向) cf. 逆過程として ペルチエ効果 電場 電場(x方向) X Y 温度勾配(x方向)
熱流磁気効果(磁場がある場合) ネルンスト効果 磁場 温度勾配(x方向) 電場(y方向) 温度勾配(x方向) 電場 5/30 熱流磁気効果(磁場がある場合) ネルンスト効果 ネルンスト効果の研究 1970年代以前までほぼ絶滅 cf.熱電効果(磁場なし) 現在でも存続 ネルンスト効果再検討の背景 直接発電@核融合プラズマ装置 温度勾配+強磁場環境の利用 強磁場の技術進歩 超伝導コイルの開発 研究課題 測定技術の確立 非平衡系理論のシナリオ作り 磁場 温度勾配(x方向) 電場(y方向) 電場 cf. 逆過程として エッティングスハウゼン効果 電場(y方向) X Y 温度勾配(x方向)
ネルンスト効果の問題設定 6/30 熱流 熱流 半導体の境界条件 全方向に電気的に絶縁 上下端で断熱
電場E 磁場B 温度勾配一様下のボルツマン方程式 7/30 A.古典系の場合(分布関数 f ) 電場E 磁場B 温度勾配一様下のボルツマン方程式 + 緩和時間近似 (音響フォノン散乱) 分布関数
輸送方程式 電流 熱流 分布関数を使って、まとめると 8/30 これがパラメーターを適当に決めて計算した例です。GaAs(ガリ砒素)を想定した物理量を参考にしています。 左側がネルンスト係数、右側が熱コンダクタンスです。 いずれも下側で、横軸を磁場の逆数にとってあります。低温では、化学ポテンシャルがランダウ準位の間にある時にネルンスト係数がゼロになり、コンダクタンスがプラトーになっていることが分かります。 なお、化学ポテンシャルがランダウ準位に一致するときの曲線は、散乱がある場合には実際と異なります。
+ (断熱)ネルンスト係数 輸送方程式 条件:電気的に絶縁、y方向断熱 (断熱)ネルンスト係数 ネルンスト電圧 9/30 これがパラメーターを適当に決めて計算した例です。GaAs(ガリ砒素)を想定した物理量を参考にしています。 左側がネルンスト係数、右側が熱コンダクタンスです。 いずれも下側で、横軸を磁場の逆数にとってあります。低温では、化学ポテンシャルがランダウ準位の間にある時にネルンスト係数がゼロになり、コンダクタンスがプラトーになっていることが分かります。 なお、化学ポテンシャルがランダウ準位に一致するときの曲線は、散乱がある場合には実際と異なります。 (断熱)ネルンスト係数 ネルンスト電圧
10/30 これがパラメーターを適当に決めて計算した例です。GaAs(ガリ砒素)を想定した物理量を参考にしています。 左側がネルンスト係数、右側が熱コンダクタンスです。 いずれも下側で、横軸を磁場の逆数にとってあります。低温では、化学ポテンシャルがランダウ準位の間にある時にネルンスト係数がゼロになり、コンダクタンスがプラトーになっていることが分かります。 なお、化学ポテンシャルがランダウ準位に一致するときの曲線は、散乱がある場合には実際と異なります。
これが、解析的に求められる。f0 はマクスウェル分布 11/30 これが、解析的に求められる。f0 はマクスウェル分布 z= -1(電子)、+1 (正孔) これがパラメーターを適当に決めて計算した例です。GaAs(ガリ砒素)を想定した物理量を参考にしています。 左側がネルンスト係数、右側が熱コンダクタンスです。 いずれも下側で、横軸を磁場の逆数にとってあります。低温では、化学ポテンシャルがランダウ準位の間にある時にネルンスト係数がゼロになり、コンダクタンスがプラトーになっていることが分かります。 なお、化学ポテンシャルがランダウ準位に一致するときの曲線は、散乱がある場合には実際と異なります。
A.古典系の場合 (実験と比較 ) ネルンスト効果の磁場依存性 1.InSbの実験 2.理論値(1バンド) 電子のみ 3.理論値(2バンド) 12/30 A.古典系の場合 (実験と比較 ) ネルンスト効果の磁場依存性 1.InSbの実験 2.理論値(1バンド) 電子のみ 3.理論値(2バンド) 電子とホール
13/30 古典系(1999)から 量子系(2004)へ
B. 量子系 (磁場中の2次元電子系) 弾道伝導領域: 平均自由行程>試料サイズ 磁場中の二次元電子系のハミルトニアン 14/30 B. 量子系 (磁場中の2次元電子系) 弾道伝導領域: 平均自由行程>試料サイズ 閉じこめ ポテンシャル 磁場中の二次元電子系のハミルトニアン エネルギー固有値;E(n,k)
B. 量子系 (磁場中での二次元電子系のエネルギーバンド) 15/30 B. 量子系 (磁場中での二次元電子系のエネルギーバンド) 変数分離 Energy eigenvalues;E(n,k)
16/30 B. 量子系 (端電流) 試料の端付近のみ残る 端電流 k
端電流対流モデル ネルンスト係数(y 方向電位)→抑制 熱コンダクタンス(x 方向熱流)→量子化 条件 Y方向 断熱 全方向 電気絶縁 17/30 端電流対流モデル 条件 Y方向 断熱 全方向 電気絶縁 バリスティック伝導 ランダウレベル間に、化学ポテンシャル 私たちは以下のような系で、ネルンスト効果を調べることを考えました。 低温における2次元メゾスコピック系を用意し、すべての方向を絶縁して、キャリアの出入りが無いようにします。 上下は断熱し、左右に熱浴をつけ、左から右へ熱の流れが現れるようにします。 特に試料の大きさが散乱長より短いバリスティックな領域とします。 次に、化学ポテンシャルは磁場によるランダウ準位の中間にあり、系の中には端電流のみが存在するとします。 このとき、前回では次のような結果を報告しました。 1.ネルンスト係数、これはy方向の電位に比例しますが、これが強く抑制されます。 2.熱コンダクタンス、これはx方向の熱流に比例しますが、これが量子化されます。 モデルとしては、この図のようなものが妥当と考えられます。 端電流がサンプルを時計回りに対流しているとします。 左辺では、端電流が熱浴と熱をやりとりして、温度T+、化学ポテンシャルmu+の平衡分布になります。 上辺は断熱条件を課してあるので、平衡状態に達した端電流はバリスティックに走ります。 右辺では、再び熱浴と熱をやりとりして、温度T-、化学ポテンシャルmu-の平衡分布になります。 下辺は再び断熱条件を課してあるので、平衡状態に達した端電流はまた、バリスティックに走ります。 結局、x方向の外部熱浴の温度差によって、試料内部の端電流ではy方向にポテンシャル差がつき、これによって電位差が生じます。これでネルンスト効果の状況になります。 先に述べた2つの予想は、このモデルで簡単に説明できます。 まず、上辺の端電流と下辺の端電流では電子密度は同じなので、低温では化学ポテンシャルの違いは温度差の高次の項でしかありません。そのため線形応答であるネルンスト係数はゼロになります。 また、左辺から右辺への熱伝導は端電流によって運ばれるので、端電流のチャンネル数にのみ依存して、量子化されます。 ネルンスト係数(y 方向電位)→抑制 熱コンダクタンス(x 方向熱流)→量子化
B. 量子系 (電流・熱流) A1(n) 18/30 端電流モデルに基づいた計算を簡単に述べておきます。 まず、電流と熱流を定義どおり計算し、線形の部分だけを出します。 線形項の係数はこのような積分で表されます。積分の上限と下限はこのようなものになります。 E1はランダウ準位の底、E2は端での準位の上端です。
B.量子系(ネルンスト係数・熱伝導コンダクタンス) 19/30 B.量子系(ネルンスト係数・熱伝導コンダクタンス) 電流と熱流 実験値から化学ポテンシャル フェルミ=ディラック分布関数 境界条件: 輸送係数が求められる ネルンスト係数 熱伝導コンダクタンス
B. 量子系(輸送係数の磁場依存性) 熱伝導 ネルンスト効果 20/30 GaAsを想定 (熱コンダクタンス)/(温度) (磁場の逆数) 強磁場 弱磁場 (ネルンスト係数)×(磁場) (磁場の逆数) ネルンスト効果 強磁場 弱磁場 これがパラメーターを適当に決めて計算した例です。GaAs(ガリ砒素)を想定した物理量を参考にしています。 左側がネルンスト係数、右側が熱コンダクタンスです。 いずれも下側で、横軸を磁場の逆数にとってあります。低温では、化学ポテンシャルがランダウ準位の間にある時にネルンスト係数がゼロになり、コンダクタンスがプラトーになっていることが分かります。 なお、化学ポテンシャルがランダウ準位に一致するときの曲線は、散乱がある場合には実際と異なります。 δ関数的中性不純物散乱効果 (自己無撞着ボルン近似)
21/30 ビスマスでの実験出現! Kamran Behnia, et al., Phys. Rev. Lett. 98, 076603 (2007) Phys. Rev. Lett. 98, 166602 (2007) Science, 317 1729 (2007) Thermometers Heater SC wires 20 mm 磁場の逆数
22/30 実験との比較 次元 2 3 ピークの形 左右対称 左右非対称 ピークの高さ VK mVK
23/30 理論を拡張 M. Matsuo, A. Endo, H. Nakamura, N. Hatano, R. Shirasaki, K. Sugihara, in preparation 3次元系: 2次元系の 重ね合わせ
理論を拡張 ネルンスト係数×磁場 N×B [mV/K] 磁場の逆数 B [T] フィッティング パラメーターなし 24/30 理論を拡張 フィッティング パラメーターなし Phononドラッグ、二流対(電子と正孔)を考慮 M. Matsuo, A. Endo, H. Nakamura, N. Hatano, R. Shirasaki, K. Sugihara, in preparation ネルンスト係数×磁場 N×B [mV/K] 磁場の逆数 B [T]
25/30 Biの実験は、ほぼ説明できた。 基となった端電流モデルに話を戻す。
最近:熱流の計算の間違い発覚!! A1(n) 26/30 端電流モデルに基づいた計算を簡単に述べておきます。 まず、電流と熱流を定義どおり計算し、線形の部分だけを出します。 線形項の係数はこのような積分で表されます。積分の上限と下限はこのようなものになります。 E1はランダウ準位の底、E2は端での準位の上端です。
間違えたところ (誤) (正) 27/30 端電流モデルに基づいた計算を簡単に述べておきます。 まず、電流と熱流を定義どおり計算し、線形の部分だけを出します。 線形項の係数はこのような積分で表されます。積分の上限と下限はこのようなものになります。 E1はランダウ準位の底、E2は端での準位の上端です。