Dome Flat vs. Twilight Flat そしてアノマリパターン

Slides:



Advertisements
Similar presentations
とりあえず、勉強を兼ねて MOIRCS のダークテスト 画像を いじった様子のログとメモ たなかいち 2004-07-08 *基本的に勝野報告 ( & ) をトレース *いじってるうちにどういうデータかやっとわかって来ま した (^^; 。
Advertisements

分散分析と誤差の制御 実験結果からできるだけ多くの情報を取り出すために 分散分析を利用する 主効果の大きさ 交互作用の大きさ 誤差の大きさ 採用した因子の効果の有無 の検定には,誤差の大きさ と比較するので誤差を小さ くできれば分散分析での検 出力が高まる どのようにしたら誤差を小さくできるか?
パノラマ合成 富山商船高等専門学校 情報工学科4 年 富田 大志 長岡技術科学大学オープンハウス テーマ:ロボット実践コース③-映像信号処 理- 研修期間 2009 年 8 月 17 日~ 21 日.
1 通信教育学部 コンピュータ演習 Excel の書式設定と関数 授業ページ「コンピュータ演習(通信教育学 部)」を 開いてください。提出課題の一覧が掲載されてい ます。
Determining Optical Flow. はじめに オプティカルフローとは画像内の明る さのパターンの動きの見かけの速さの 分布 オプティカルフローは物体の動きの よって変化するため、オプティカルフ ローより速度に関する情報を得ること ができる.
(実はアイコンは単なる飾りで、この縦書きの部分のどこをクリックしても次のページに移動します。)
電子物性第1 第4回 ーシュレーディンガーの波動方程式ー 電子物性第1スライド4-1 目次 2 はじめに 3 Ψがあると電子がある。
高速分光器観測マニュアル ○内容 1:各種マスクスリットの(CCD上での)位置 p.2
Ⅰ.電卓キーの基本的機能 00 0 1 2 3 6 ⑤ 4 9 8 7 M- MR MC + × % M+ - = ÷ C √ +/- GT
Pattern Recognition and Machine Learning 1.5 決定理論
DEPTとは? n-butyl methacrylateの13C-NMRおよびDEPT135スペクトル
星の明るさと等級 PAOFITS WG 開発教材 <解説教材> 製作: PaofitsWG <使い方> ①「実習の方法」についての説明に使う
疫学概論 母集団と標本集団 Lesson 10. 標本抽出 §A. 母集団と標本集団 S.Harano,MD,PhD,MPH.
食事療法の摂取エネルギーを、いわゆる 「隠れ肥満」と「太りやすい体質」 を考慮して求める方法
「データ学習アルゴリズム」 第3章 複雑な学習モデル 3.1 関数近似モデル ….. … 3層パーセプトロン
☆日本における「SOA」の状況について 最近は、以前のような「どこを見てもSOAだ」、というような状況が
スコアによるキューブアクションの違い なにが“学会”発表にふさわしいのか考える。結論自体は分かっていた。そこに至るまでのプロセスが新しい。(かもしれない) 少なくとも整理されていて、わかりやすい。また、視覚的に覚えやすい。
貧困と出産の関係.
みさと8m電波望遠鏡の性能評価 8m (野辺山太陽電波観測所より) (New Earより) 和歌山大学教育学部 天文ゼミ  宮﨑 恵 1.
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
オルソポジトロニウムの 寿命測定によるQEDの実験的検証
(ラプラス変換の復習) 教科書には相当する章はない
Astro-E2搭載X線CCD(XIS) BIチップにおける 新しい解析法の構築および応答関数の作成
速度式と速度定数 ◎ 反応速度 しばしば反応原系の濃度のべき乗に比例 # 速度が2種の原系物質 A と B のモル濃度に比例 ⇐ 速度式
繰り返しのない二元配置の例 ヤギに与えると成長がよくなる4種類の薬(A~D,対照区)とふだんの餌の組み合わせ
スペクトル・時系列データの前処理方法 ~平滑化 (スムージング) と微分~
原子核物理学 第4講 原子核の液滴模型.
みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
Astro-E2衛星搭載 XISの データ処理方法の最適化
銀河物理学特論 I: 講義1-1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 Kauffmann et al
大阪工業大学 情報科学部 情報科学科 学生番号 A03-017 犬束 高士
合成伝達関数の求め方(1) 「直列結合 = 伝達関数の掛け算」, 「並列結合 = 伝達関数の足し算」であった。
MOAデータベースを用いた 超長周期変光星の解析
視野の位置による測光精度評価用領域 TXS
6. ラプラス変換.
治療用フィルムによる線量分布測定の 基礎的検討Ⅱ
実習課題B 金属欠乏星の視線速度・組成の推定
DEPTによる炭素の級数の見分け方 二次元NMRを用いた構造解析(1) HーH COSY CーH COSY
アルゴリズムとプログラミング (Algorithms and Programming)
宇宙線ミューオンによる チェレンコフ輻射の検出
音声分析 フーリエ解析の定性的理解のために.
部分的最小二乗回帰 Partial Least Squares Regression PLS
CCDカメラST-9Eの      測光精密評価  和歌山大学 教育学部           自然環境教育課程 地球環境プログラム 天文学専攻 07543031   山口卓也  
ノイズ.
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
X線CCD新イベント抽出法の 「すざく」データへの適用
1.因子分析とは 2.因子分析を行う前に確認すべきこと 3.因子分析の手順 4.因子分析後の分析 5.参考文献 6.課題11
第3章 線形回帰モデル 修士1年 山田 孝太郎.
クロス表とχ2検定.
「ICAによる顔画像特徴量抽出とSVMを用いた表情認識」
報告080710 東大 ICEPP 森研 M2 金子大輔.
牛ふん堆肥、豚ぷん堆肥の無機・有機成分と窒素肥効 鶏ふん堆肥(副資材なし)の無機・有機成分、分析方法と窒素肥効
構造的類似性を持つ半構造化文書における頻度分析
村上 浩(JAXA EORC) SGLI利用WG 2005/01/17
数値解析ⅡーI ~オセロゲームのプログラム~
独占はなぜいけないか.
「非破壊試験等によるコンクリートの品質管理について」改定のポイント
増倍管実装密度の観測量への影響について.
実習 実験の目的 現行と目標値の具体的数値を記す。 数値がわからなければ設定する。.
MOAデータベースを使った セファイド変光星の周期光度関係と 距離測定
輻射伝搬効果の検証(中) 都丸隆行.
MOIRCS撮像データ フリンジ処理の一例
  情報に関する技術       情報モラル授業   .
追加資料③ 岸本 祐二.
MOIRCS 32channel読み出し時に発生したクロストークについて
プログラミング演習I 数値計算における計算精度と誤差
X線望遠鏡用反射鏡の 表面形状向上の研究 宇宙物理実験研究室 大熊 隼人.
磁場マップstudy 1.
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
中性子星/ブラックホール連星の光度曲線の類似性
Presentation transcript:

Dome Flat vs. Twilight Flat そしてアノマリパターン 2005-03-15 Ichi Tanaka

ドームフラットとトワイライトフラットを比較 1日目データ。ドームフラットを1日目にまとめて取得している関係上、1日目の明け方に取ったKバンドのTwilightデータしか比較できるものがない。 ドームフラットはオン点、オフ点を単純にそれぞれメジアン合成後引き算して作成。 オフ点のカウント 6620 ADU (ch1:MCSA04045.fits), 8070 ADU (ch2:MCSA04046.fits) オン点のカウント 7300 ADU (ch1:MCSA04063.fits), 8900 ADU (ch2:MCSA04064.fits) Twilightフラットは、空が暗い時のデータをOFF点としてメジアン合成。明るくなってきた段階データをOn点とするが、明るさに応じてアノマリパターンが明瞭に生じるため、オフ点、オン点ともアノマリ処理をしてから合成する。  オフ点データ処理。オフ点画像リストの一枚目の画像を基準として、2枚目以降の画像を1枚目カウントにスケールし、1枚目データを引き算する。すると2枚目データに入っているアノマリパターンが見えてくる。それをimsurfitでモデル化し、規格化済み2枚目データから引く。同様に全部のデータを処理してからメジアン合成。→OFF点データとする。  オン点処理:オン点リストの各々の画像からOFF点合成データを引く。オン点リストの一枚目のデータについて、0)と同じ行程を行ってアノマリパターンを除き、合成。規格化してフラットとする。 オフ点の基準画像カウント  2191 ADU (ch1: MCSA03751.fits) 2097 ADU(ch2:MCSA03752.fits) オン点の基準画像カウント  5912 ADU (ch1: MCSA03793.fits) 6887 ADU(ch2:MCSA03792.fits)

ドームフラットをトワイライトフラットで割った結果 どちらもきれいなアノマリパターンが支配的。これに伴う誤差は今の最大20%程度。これを抑えないと、ドームフラット自身の特性は見えにくい。 よく見ると、若干迷光の兆候が、アノマリパターンのX方向の傾きとして見える(矢印)。起源は不明。 0.9 1.0 1.1 1.2 0.9 1.0 1.1 1.2 ch1                         ch2

アノマリパターンを減らすには アノマリはフラットを作った際のカウントの違いを反映して現れるグローバルパターン。実験として、Twilightデータから、ドームのOn-Offのカウントに近いカウントのセットを選び、それで仮twilightフラットを作り、ドームフラットと比較する事を考える。 Domeのオンオフ点と完全に同じカウントセットのデータは残念ながらないため、それに近い値の2画像を使ってOn・OFF点とし、グローバルなパターンの振る舞いを見る。 Ch1: オフ点カウント 5912 ADU (MCSA03793)、オン点 7070ADU (MCSA03795) Ch2: オフ点カウント 6886 ADU (MCSA03794)、オン点 8304ADU (MCSA03796) 前頁のTwilitフラット作成時に比べて、On-OFFカウント差は  CH1: 3721 ADU (前頁TW)→ 1149 ADU (今回:domeは680ADU)  CH2: 4790 ADU (前頁TW)→ 1418 ADU (今回: domeは830ADU) となった。まだ一致とは程遠いものの、カウント差は3分の1以下まで減っている。

アノマリを除く:割り算の結果 3ページ目と同じ表示レベル。アノマリパターンは弱まった。まだ残っているのは、ドームのOnOff差とTwilightデータのOnOff差がまだ2倍近くズレていためかと思われる。 なおアノマリ以外の成分がよりはっきり見えてきたが、各象限で不連続に振る舞うため迷光あるいはフラット光の非一様性とは別起源。これによる誤差成分は最大で5%。 0.9 1.0 1.1 1.2 0.9 1.0 1.1 1.2 ch1                         ch2

比較 x=1050—1150pixelsの範囲の列を平均しプロットしてみた。横軸はy座標。 ch1                             ch2 通常のTwilightフラットで割った。 カウントを合わせた仮の Twilightフラットで割った。  On-Offカウント差をドームに近づけた方はアノマリが半分弱。通常のTwilightのカウント差より1/3以上カウント差を近づけたのだから、その程度には減って欲しいが、そうはならなかった。アノマリパターンはカウント差には比例していない。  もっと低照度のTwilightを使って、よりDomeフラット作成時に近いカウント差を再現した画像も試したが、却ってアノマリは増えてしまった。当たり前だが、アノマリパターンの再現には同じ照度かつ同じカウント差が要求される。

カウントを合わせたドームフラット/Twilightフラットの結果 チャンネル1断面 アノマリパターン 謎のへたりパターン アノマリパターン

カウントを合わせたドームフラット/Twilightフラットの結果 チャンネル2断面 第一、第三象限外側のへたりパターンは、強度が違 うがチャンネル1と共通で出ている。電気的なもの? アノマリパターン へたりパターン アノマリパターン

アノマリをもう少し調べる。 アノマリパターンを引く操作は、フラット作成の要となると思われる。しかし、アノマリパターンは2つのフレームを比較して初めて見えてくるため、あるカウントのフラットに入っているアノマリパターンの絶対強度を直接測定する方法はない。単位時間に来る入射光強度と、おそらく露出時間にも依存すると思われる。 その意味でアノマリパターンの相対強度と入射光との関係を見ておくのは、アノマリの絶対量を予測できるかどうか考える上で重要である。そこでKバンドTwilightフラットデータを使って、入射光とアノマリの関係を見た。 まず、Twilightの「オン点」データ全てからオフ点データ(スカイカウントが上がり始める前のデータ平均)を引く。次に、オン点データリストの最初の一枚をアノマリ基準フレームとし、オン点データリストの2枚目以降の各画面中央のカウント値にアノマリ基準フレームのカウントをスケールした上で、それぞれから引く(この行程で初めてアノマリパターンが見えてくる)。結果画像の第3象限[400:900,400:500]付近のカウントを計り、それをアノマリのカウント値とする。さらに、その画像の生画像(オフ点を引く前)の中央平均カウントを出し、アノマリカウント値との関係をプロットする。

アノマリと画像カウント値との関係 ch1 ch2 横軸は生画像の中央付近平均値。アノマリの基準画像(onデータ1枚目)のアノマリカウントは解析行程上0になる。この基準画像からどの位アノマリが増加したか、が示されている。 *指数関数でフィットできそう。f(x)=a*exp(b*x)+cで試しにフィットすると(gnuplot)、 ch1: a=70 b=1.70 c=-200 ch2: a=30 b=1.70 c=-80 カウントが0でアノマリが0になると仮定すると、ゲタが評価できるか??

ある照度レベルでのアノマリパターンをフィットし、別の低めの照度のアノマリパターンにスケールして引き算してみると、小さなレベルでパターンの違いが見えるが、基本的には引き算できた。ただしch2の額縁模様は違う振る舞いをするなど、それなりに残差は出た。 アノマリパターンを消したといっても、 アノマリ引きの基準にした画像(オン点リストの最初の画像)自体に入っているアノマリパターンは評価できないため、アノマリ基準画像にどの位アノマリパターンが隠れているかが、この方法でのアノマリ引きの精度を決める。最終的には、同じ星を画面のあちこちに置いて測光し、実際に測光結果がどうばらつくかを確認する必要がある。 今回の結果を他の観測フレームにも適用できるかについては、まずアノマリ引きの基準にする画像のカウントレベルが違えば、当然結果も違ってくる(次ページ図)。さらに、露出時間などの違いに対してアノマリの振舞いがどう違ってくるかも見極める必要があり、まだまだ基礎データの蓄積が必要である。

アノマリ評価の基準画像が変わると・・・ ch1 Jバンドでの評価(1) Jバンドでの評価(2) Kバンドで評価したもの 「Off点」として扱った画像のカウント(1500ADU) Kバンドで評価したもの アノマリ基準とした画像のカウント(2280ADU) Jバンドで同じ実験をした。ただし、(1)はアノマリ基準画像を2300ADU程度の照度で評価し、(2)ではKバンドでの基準画像カウントに近い5500ADUの画像で見ている。 評価(2)とKバンドの値がずれているが、Off点として扱った画像がKの2230ADUより低いカウントのため(同じカウントの画像をOFF画像に選ぶと、ほぼ一致することは確認してある)。

まとめ ドームフラットとトワイライトフラットの差は、アノマリパターンが支配的だった。両チップにほとんど性質の差は見られなかった。それゆえ、カウントを制御しやすいドームフラットが推奨フラットとなる。 ただし、チップ1は残像が盛大で、オン点を取った後のオフ点は5枚以上影響が消えないケースもあった。取得は注意を要する。 アノマリパターンをどうフラットフレームから除去するかが正確なフラットの作成の要となる、と考えているが、そのためのドームフラットの取得手順を次ページにまとめた。 アノマリパターン抽出の基準にする画像に内在するアノマリパターンは除去できず、これが不定性となる。オフ点とアノマリ基準画像とのカウント差を小さく(<数100ADU)保つ事で不定性を小さく抑える事が可能と考えている。 これらの作業の上で、アノマリパターンは割り算でなく引き算するものである、というのは仮定だが、エンジニアリング的には合理的との事。 最終的な確認は視野の多くの場所に星を置き測光をして確認する必要がある。

アノマリを考えたドームの取り方 ライトOFFでたくさん取る(K)。 ライトちょっとだけつけて、低照度で数枚取る。OFF点+数100ADU程度。安定するまで時間が要る。 ライトをしっかりつけて、適当な枚数だけ取る。サチるかなり手前の、ピーク値15000ADU以下に抑える方が安全。安定するまで時間が要る。 ライトOnを取ったら5枚程度ダークを撮って残像消し。 解析 オフ点を合成する。 低照度On,およびオン点画像からオフ点画像を引く。 合成した低照度On画像をスケールして、各オン点画像から引きアノマリだけを引き出す。 Jバンドはオフ点は不要か。低照度On画像をスケールして引くだけでよいかもしれない(枚数は要る)。迷光、バイアスパターンをキャンセルする上で、小さな影響かもしれないが、オフ点があると確実。ただカウントはほとんどない。あるいは、低照度を2種類のカウントレベルで撮るのが推奨される。 アノマリパターンをフィットした面を作り、オン点画像から引く。タスク。 全部加工したらOn合成。低照度On画像に含まれるレベルのアノマリは残ってしまうが、これは仕方ない。これに起因する誤差は、低照度オン画像の照度レベル依存。 様々な輝度レベルが取れたら(Twilight)それでゲタを推定できるかもしれない。 *ここまでの解析や考察は、今後データがたまって来たら修正されることもあると思う。

Twilight vs. Self flatsについて *3月8日に投げたレポート「Twilight flatとSelf flatによる標準星解析」において使用したKバンドTwilightフラット画像は、ここでのアノマリ除去フラット作りの行程に従って処理した画像です。図1にあるようにSelf Flat画像とTwilight flat画像とは感度比がだいぶ違います。ここで使用しているSelfFlatの画像は標準星データで一枚あたりのカウントが3000-4000ADU程度である事から、アノマリもそれほど深刻ではないかも知れません(12ページの図からの類推)。しかし、一般的な天体画像のカウントレベルである10000ADU超のデータの場合、アノマリも大きくなって10%近い値になっている事も想像されます。セルフフラットの誤差はこのように大変大きな(>0.1mag)ものになる可能性が大きいと、現在までの解析が間違えていなければいえると思います。