大離心率トランジット惑星HD17156bの 公転軌道傾斜角の測定

Slides:



Advertisements
Similar presentations
系外惑星系 TrES-1 における Rossiter 効果の検出可能性と その観測意義 東京大学大学院 理学系研究科 成田憲保 共同研究者 太田泰弘、樽家篤史、須藤靖 (東京大学) Joshua N. Winn ( Harvard-Smithsonian Center ) Edwin L. Turner.
Advertisements

太陽系外地球型惑星の 発見に向けたロードマップ 成田 憲保. 目次: 地球型惑星の発見に向けて 1. これまでに何がわかったか? 2. 今何をやろうとしているのか? 3. 将来何がどこまでわかるのか?
系外惑星系セミナー速報 Balmer line features of HD 東京大学大学院 理学系研究科宇宙理論研究室(須藤研)修士1年 成田憲保.
国立天文台 光赤外研究部 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
日本トランジット観測ネットワークによる Transit Timing Variationの探索
TMT可視分光観測のサイエンス <太陽系外惑星の光と影の観測>
Spectroscopic Studies of Transiting Planetary Systems
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
系外惑星の大気透過スペクトル 観測による大気成分の分析 ( Swain et al レビュー)
すばる望遠鏡・高分散分光器を用いた系外惑星HD209458bの大気吸収探索
国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
国立天文台 光赤外研究部 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
晩期型星T-Lepに付随する 水メーザースポットを用いた年周視差測定 ~系内MIRA型変光星周期-絶対光度関係の測定に向けて~
Planet search with HDS at Subaru
軌道が傾いた系外惑星は意外と多い: ロシター効果の観測と惑星移動理論への示唆
WISH 太陽系天体・系外惑星の場合 WISH to Investigate Solar system History
原始惑星系円盤の形成と進化の理論 1. 導入:円盤の形成と進化とは? 2. 自己重力円盤の進化 3. 円盤内での固体物質の輸送
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
近接連星 V4046 Sgr のホットスポットモデル ガスはどこから降着するのか 花輪 知幸 (千葉大学)
謎の惑星スーパーアースを探れ! 国立天文台・成田憲保.
すばる観測体験企画参加者向け 惑星軌道進化の理論と観測的検証の研究資料
トランジット法による低温度星まわりの地球型惑星探索と大気調査
岡山188cm望遠鏡ISLEによる 系外惑星トランジット観測の性能評価 成田憲保 (国立天文台).
High-amplitude, long-term X-ray variability in the solar-type star HD 81809: The beginning of an X-ray activity cycle? F. Favata, G. Micela, S.L. Baliunas,
東京大学大学院 宇宙理論研究室 成田 憲保(なりた のりお)
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
北海道大学 理学部 地球科学科 惑星宇宙グループ 高橋康人
宇宙物理II(9) Planetary Formation
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
Transmission Spectroscopy and the Rossiter-McLaughlin Effect
系外惑星系セミナー速報 Balmer line features of HD209458
Taurus-Auriga association
系外惑星大気の研究最前線 最新の研究会より
成田 憲保 国立天文台・太陽系外惑星探査プロジェクト室
B型星の非動径振動 増田盛治 (国立天文台岡山) B型脈動星について HIDESによるSPBsの観測.
国立天文台 光赤外研究部 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
岡山188cm望遠鏡時間の 割り当て状況 泉浦秀行 国立天文台岡山天体物理観測所 1/17/ 光赤天連シンポ@京都大学.
系外惑星探査の現在 2003年天文・天体若手夏の学校 成田 憲保
太陽系外惑星の トランジット観測 和歌山大学  教育学部  自然環境教育課程   地球環境プログラム  天文学ゼミ   玉置 順大.
系外惑星系TrES-1におけるRossiter効果の検出可能性と その観測意義
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
トランジット惑星系TrES-1での Rossiter-McLaughlin効果の観測結果
S3: 恒星とブラックホール (上田、野上、加藤)
オリオン座流星群の ダストトレールはもっと古い
大離心率トランジット惑星HD17156bの ロシター効果の観測結果
ANIRによるM型星まわりの トランジット地球型惑星の観測 国立天文台 成田憲保.
COSMOS天域における ライマンブレーク銀河の形態
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
銀河 galaxy 現在までの認識.
セイファート銀河中心核におけるAGNとスターバーストの結び付き
Uncovering the Migration History of Giant Exoplanets
すばる望遠鏡、 主星の自転に逆行する 太陽系外惑星を発見
国立天文台 太陽系外惑星探査プロジェクト室 成田憲保
MOAデータベースを使った セファイド変光星の周期光度関係と 距離測定
10/19 GMCゼミ.
すばる /HDSによる系外惑星 HD209458bの精密分光観測
トランジット惑星系TrES-1における 初めてのRossiter効果の観測結果
すばる/HDSによる系外惑星HD209458bの精密分光観測
トランジット惑星系におけるRossiter効果 I. HD209458での観測結果
矮新星の早期スーパーハンプを用いた 降着円盤の再構成
すばる&マグナム望遠鏡による 系外惑星トランジットの 同時分光・測光観測
観測的宇宙論ジャーナルクラブ 2006年5月22日 成田 憲保 1
望遠鏡技術検討会 (2013/2/9) 京大3.8m望遠鏡用 面分光装置開発 松林 和也 (京都大学)
HT Casの測光観測と モデルによる物理量の推定2
従来研究 本研究 結果 南極大型大気レーダーPANSYで観測された大気重力波の数値モデル再現実験による力学特性の解明
(FMOS戦略枠観測で余ったファイバーによる) M型星まわりのトランジット地球型惑星探し
中間質量ブラックホールの理解に向けた星の衝突・破壊に関する研究
科学概論 2005年1月27日
中性子星/ブラックホール連星の光度曲線の類似性
Presentation transcript:

大離心率トランジット惑星HD17156bの 公転軌道傾斜角の測定 国立天文台 光赤外研究部 成田 憲保 佐藤 文衛(東工大)、 大島 修(水島工業高) Joshua N. Winn(MIT)

内容 惑星形成理論と公転軌道傾斜角 ロシター効果について 岡山での分光・測光観測結果 今年度の観測予定

Extrasolar Planets Catalog より作成 太陽系外惑星の多様性 惑星の有効質量 Snow Line Jupiter 惑星の軌道長半径 Extrasolar Planets Catalog より作成

太陽系外惑星の多様性 惑星の軌道離心率 Eccentric Planets Jupiter 惑星の軌道長半径

惑星軌道分布の特徴 巨大惑星が内側の軌道にある 離心率を持った惑星が多く存在する これらの特徴を説明する理論モデルは? もともとは遠くでできたはず 外側から内側への惑星の移動過程があったはず 離心率を持った惑星が多く存在する 離心率を増大させる何らかの機構があるはず これらの特徴を説明する理論モデルは?

hot Jupiter形成理論の例 惑星が円盤との相互作用で徐々に移動(Type II migration) コア集積モデルの自然な帰結 離心率と公転軌道傾斜角は~0となる 惑星同士の重力散乱による移動(planet-planet scattering) 3つ以上の巨大惑星が形成した場合に起こる 大きな離心率と大きな公転軌道傾斜角を得る可能性がある 伴星による古在共鳴と主星の潮汐力で移動(Kozai migration) 連星系にある一部の惑星に対して起こる HD 80606の伴星は~1800AU、HD 80606bはe=0.927

HD17156bについて N2Kプロジェクトで発見(佐藤文衛他 2007年秋季年会P55a) 2007年10月にトランジットが報告された(Barbieri et al. 2007) 非常に面白い恒星・惑星パラメータ 主星が明るい (V = 8.2) 大きな離心率を持つ (e = 0.67) トランジット惑星としては最長の公転周期 (P = 21日) 大きな惑星質量 (Mp = 3.1MJup) 大きな公転軌道傾斜角を持つかもしれない絶好のターゲット どうやって公転軌道傾斜角を測定するのか? 離心率が大きくて形成過程が興味深い  長周期なため観測の機会が少ない

ロシター効果 = 惑星がトランジット中に主星の自転を隠す効果 近づく側を隠す → 遠ざかって見える 遠ざかる側を隠す → 近づいて見える 惑星 恒星 ロシター効果 = 惑星がトランジット中に主星の自転を隠す効果 トランジット中の視線速度を測定する

ロシター効果の形 惑星がどのような軌道を通ったかでロシター効果の形が変わる Gaudi & Winn (2007) 惑星がどのような軌道を通ったかでロシター効果の形が変わる 主星の自転軸に対する惑星の公転軸の傾き(公転軌道傾斜角)が測定できる

※謝辞 京大の森谷さんらのグループと岡山プラネットサーチグループより観測時間をいただきました 今回の観測 2007年11月12日(トランジット発見後、最初のトランジット) 世界で初めてこの惑星系のロシター効果を観測できるチャンス かつ2007年中に日本で観測できる唯一の機会 岡山での同時分光・測光観測 岡山天体物理観測所 188cm望遠鏡 HIDES による分光観測(※) 「日本トランジット観測ネットワーク」による測光観測 世界で最初にロシター効果を観測 ※謝辞 京大の森谷さんらのグループと岡山プラネットサーチグループより観測時間をいただきました

得られたデータ 上段 Rc バンド測光データ 251 samples 約4mmag の測光精度 下段 HIDES視線速度データ 10~20 m s-1 の精度

データの解析方法 視線速度にpublished dataを追加 Subaru 9, Keck 24 samples (Fischer et al. 2007) Ohta, Taruya, & Suto (2005, 2006) の公式でモデル化 ロシター効果を含む視線速度・光度曲線を同時フィット 3つの統計手法でパラメータの最適値と誤差の評価 Δχ2 Monte Carlo bootstrap Markov Chain Monte Carlo (MCMC)

67 ± 26 度 (bootstrap) 65 ± 25 度 (MCMC) ロシター効果のフィット結果 λ= 62 ± 25 度 (Δχ2), reduced χ2 = 0.97 67 ± 26 度 (bootstrap) 65 ± 25 度 (MCMC)

観測結果のまとめとその後の進展 HD17156bのロシター効果を世界で初めて観測 岡山HIDESの観測結果から λ= 62±25 度 を得た Narita et al. (2008) PASJ 4月25日号で報告 面白い結果だが、視線速度の誤差がまだ大きい 別の観測結果が最近報告された(Cochran et al. ApJL 08/08/10) HET(9.2m)のトランジット前半の観測からλ= -32.4±25.2 度 我々のデータを合わせると、ほとんどずれていないと結論 視線速度の残差にうねりが見える?(Short et al. ApJL submitted) P = 111 days に ~20 MEarth の惑星があると予言している

今年度の観測予定 すばると岡山での観測時間を確保 今年度の観測から目指すこと すばるではλを5度以内の精度で決定可能 岡山では昨年と同じ位相を観測し去年の結果と比較できる 今年度の観測から目指すこと HD17156bのλのより正確な値の測定 この惑星系での2つ目の惑星の存在を確認/制限