輸血副作用とその対策 2008年6月11日.

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40~50年かけて形成された悪い口腔内菌叢を一度生まれてきた時と同じよう な状態にリセットするということが必要です。(まれに10代~20代でお口の菌 の状態が悪くなる人もいます。そのような場合は早期の治療が必要です) すべての菌が完全にゼロになるという可能性は低いですが、これからの人生に.
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輸血副作用とその対策 2008年6月11日

輸血の副作用 即時型副作用 遅延型副作用 溶血性副作用 非溶血性副作用 心不全 輸血関連急性肺障害(TRALI) 遅延性溶血 輸血後GVHD ABO不適合輸血 その他の血液型による溶血 非溶血性副作用 発熱 蕁麻疹 アナフィラキシー・ショック 心不全 輸血関連急性肺障害(TRALI) 遅延型副作用 遅延性溶血 輸血後GVHD 感染症 ウイルス:HBV, HCV, HIV, HTLV-1, CMV 細菌 血小板不応状態 抗HLA抗体,抗HPA抗体 輸血後紫斑病

輸血副作用の原因 溶血反応 赤血球抗体 発熱 白血球抗体 蕁麻疹 血漿蛋白抗体 アナフィラキシー IgA抗体,ハプトグロビン抗体 低血圧 血管作動性物質 急性肺障害 遅延性溶血 赤血球抗原に対する既往抗体 輸血後GVHD リンパ球 血小板不応症 HLA抗体,HPA抗体 輸血後紫斑病 血小板特異抗体(HPA抗体)

輸血副作用の頻度 副作用 頻度 アレルギー,蕁麻疹,発熱 1/20〜1/50 溶血反応 1/1000〜1/1万 アナフィラキシー 1/1万〜1/5万 輸血後肝炎(B型) 1/1万〜1/10万 輸血後肝炎(C型) 1/10万〜1/20万 輸血後GVHD(非照射) 1/5万〜1/50万 輸血後AIDS(NAT未検査) 1/400万〜1/800万

輸血副作用の報告 2005年

使用製剤の種類

副作用の発現時間

副作用の発現時間

ABO型不適合輸血 体内の抗A,抗B抗体(IgM型)が輸血された赤血球に結合 血管内溶血 数分で重篤な症状 胸部不快感,悪心,嘔吐,呼吸困難,チアノーゼ,意識障害,発熱 腎障害,ショック,DICにより死亡 患者や血液製剤の取り違えによることが多い

ABO型不適合輸血に対する処置 直ちに輸血を中止(血液製剤を保管) 静脈ルートはそのまま確保 適切な医学的処置 輸液、利尿剤、昇圧剤、ヘパリン,ATIIIの投与 血液透析 採血,採尿をし,溶血の有無について検査 血液型の再検査

発熱 症状 治療 血液製剤の細菌汚染に注意 輸血中または終了後数時間以内に1℃以上体温の上昇 通常は一時的で8-10時間後には消退 悪寒を伴うことが多い 白血球に対する抗体や製剤中のサイトカインが原因 治療 解熱鎮痛薬で軽快することが多い 重症例ではステロイドが有効 その後は白血球除去製剤を使用 血液製剤の細菌汚染に注意

蕁麻疹 発生率(1-2%)は最も高い 症状 治療 血小板輸血(血漿)の際に多い 輸血開始数分後に,かゆみや膨疹が出現 溶血反応の部分症状のこともある アトピー体質,輸血歴のある例に発症しやすい 血漿蛋白に対する抗体が原因 治療 蕁麻疹だけであれば輸血中止の必要なし 抗ヒスタミン剤により軽減 血漿成分の少ない洗浄赤血球や洗浄血小板を使用

アナフィラキシー反応 症状 治療 輸血1-45分後の突然の蕁麻疹や不安感,高血圧 その後の低血圧,全身の浮腫,呼吸困難(平滑筋収縮と血管透過性亢進) IgA欠損やトランスフェリン欠損,ハプトグロビン欠損の患者に多い 治療 直ちに輸血中止(血管は確保) 救急処置(ステロイド,昇圧薬,利尿薬) 血漿成分の少ない洗浄赤血球や洗浄血小板を使用 原因検索(赤血球適合性,IgA欠損症)

輸血関連急性肺障害(TRALI) Transfusion Related Acute Lung Injury 1992年に死亡例が報告 原因 患者あるいは供血者の抗HLA抗体あるいは抗顆粒球抗体 症状 輸血後1-2時間以内に発熱,咳,呼吸困難、血圧低下 胸部X線上,両側性の肺浸潤影 治療 呼吸管理 ステロイド投与

68歳男性 再生不良性貧血 血小板輸血2時間後に 呼吸困難と喘鳴が出現 脈拍:125/分 整 血圧:40mmHg 呼吸数:22/分 整 肺音:両側びまん性に    大水泡音聴取 皮膚:チアノーゼなし PaO2:58mmHg 供血者血清中に 抗HLA抗体(+) 大津赤十字病院 大野先生による

輸血実施手順 輸血の説明と同意書の取得 輸血検査と血液製剤のオーダー 血液製剤の伝票確認(ダブルチェック) ABO血液型,Rho(D)抗原 不規則抗体スクリーニング検査 交差適合試験 輸血前検体保存 血液製剤の伝票確認(ダブルチェック) 患者リストバンドと血液製剤の照合(携帯端末) 輸血開始と患者の観察(5分間,15分後) 副作用についての記録,輸血部へ報告 製剤を保管し,血液センターに検査を依頼 輸血後感染症検査の実施

当院における輸血業務 オーダー 病棟・外来 手術部 照会 患者 病院情報システム 血液製剤 検体 結果 血液 センター 輸血部 システム 保管庫 検査機器 発注

携帯端末による照合システム

輸血に関する注意事項 安全な輸血 適正な輸血 輸血の記録 血液型検査は複数回実施 頻回輸血者は不規則抗体を検査 当日使用分ごとに請求 キャンセルの連絡 輸血の記録 血液製剤のダブルチェックのサイン 携帯端末を用いた患者リストバンドの照合 副作用の報告