星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19
発表の概要 渦巻銀河での星形成時間を観測的に測定する手法の紹介 手法の適用例 まとめ これからの課題とALMA 密度波理論とパターン速度 分子雲と星形成領域のずれ 手法の適用例 NGC4254 NGC4321、NGC5194 まとめ これからの課題とALMA NGC5194 CO on DSS B 第4回 銀河shop 2004/10/19
密度波理論とパターン速度(1) Winding Problem 星やガスの差動回転によって腕が形成されるとすると、 時間とともに巻き込みが激しくなり、 腕の形はすぐにきれいな渦巻ではなくなってしまう。 ↓ これは、多くの渦巻銀河が観測されることと矛盾している。 第4回 銀河shop 2004/10/19
密度波理論とパターン速度(2) 密度波理論 パターン速度 円運動のポテンシャル+spiralの摂動 ポテンシャルの深い所でショックが起きる。(galactic shock) 定常な腕が形成される。 パターン速度 spiralのポテンシャルが回転している角速度。 ≡ΩP [km s-1 kpc-1] 物質の運動速度ではないため、直接測定できない。 第4回 銀河shop 2004/10/19
分子雲と星形成領域 ↓ ガスとパターンの速度の差とΔt CO:分子ガス(H2)のトレーサー →COの強い所=分子ガスが集積している所 Hα:HⅡ領域のトレーサー 星形成時間:galactic shockによって溜まった分子雲から星が生まれて、HⅡ領域が周りに出来るまでにかかる時間。 ≡Δt ~107年?(Δt~3×106年@河村さんの発表) ↓ HαとCOのずれは ガスとパターンの速度の差とΔt に比例する。 第4回 銀河shop 2004/10/19
手法(0):仮定 ガスは完全な円軌道で回転している。 パターンは定常であり、 ΩP=定数。 円軌道から外れる速度成分は、約10 km/s 途中でパターン速度が変化するような状況は考えない。 第4回 銀河shop 2004/10/19
手法(1):ずれの見え方 観測されるずれ d=VG×Δt-VP×Δt [km] 分子雲の腕 VG×Δt VP×Δt 星形成領域 t=0 t=Δt VG=ガスの回転速度 [km/s] VP=パターンの回転速度 [km/s] Δt=星形成のタイムスケール [s] 観測されるずれ d=VG×Δt-VP×Δt [km] 第4回 銀河shop 2004/10/19
手法(2):ずれの定式化とfitting ずれを角度で表すと、 θ=(ΩG-ΩP)×Δt Δt:一定と仮定すれば、 Δt ΩP 定数:Δt・ΩP ↓ θはΩGの一次関数になるので、 fittingによりΔtとΩPを 同時に求められる。 Δt ΩP 第4回 銀河shop 2004/10/19
適用例(1):NGC 4254 おとめ座銀河団の中の1つ Hubble Type : SAc 中心部: 距離~16 Mpc 1’~ 5 kpc Hubble Type : SAc 中心部: P.A. = 72° Inclination = 34° 第4回 銀河shop 2004/10/19
CO on Hα CO:Sofue et al. (2003) → 視野:中心約1’ Hα:Koopmann et al. (2001) 分解能はともに約2”程度 ~200pc@Virgo 第4回 銀河shop 2004/10/19
Phase Diagram 第4回 銀河shop 2004/10/19
銀河の回転速度 COの速度場からRotation curveを作る。 3σ 5σ 第4回 銀河shop 2004/10/19
Plot and Fitting 第4回 銀河shop 2004/10/19
結果(1):NGC 4254 ΩP=26 +10 -6 km/s/kpc Δt=4.8±1.2 106 yr This work: ΩP=26 +10 -6 km/s/kpc Δt=4.8±1.2 106 yr Previous work: ΩP~25 km/s/kpc (Kranz et al. 2001) 第4回 銀河shop 2004/10/19
適用例(2):NGC 4321、NGC 5194 NGC 4321とNGC 5194 分子雲データ→CO: Helfer et al. (2003) 星形成領域データ→DSSのB-band 第4回 銀河shop 2004/10/19
結果(2):NGC 4321、NGC 5194 NGC 4321: This work Δt=7.8±1.2 106 yr ΩP=37 +7 -6 km/s/kpc Δt=7.8±1.2 106 yr Previous works ΩP= 17 Elmegreen et al. (1989) ΩP= 20 Sempere et al. (1995) ΩP= 31 Canzian et al. (1997) ΩP= 18 Oey et al. (2003) NGC 5194: This work ΩP=26 +6 -4 km/s/kpc Δt=4.1±0.6 106 yr Previous works ΩP= 90 Elmegreen et al. (1989) ΩP= 40 Vogel et al. (1993) ΩP= 16 Oey et al. (2003) 第4回 銀河shop 2004/10/19
議論:吸収による腕の位置決定の誤差 Hαの輝線は、ダストによる吸収を受ける。 Gonzalez & Graham (1996) 本当のHαの腕のピークは、もっとCOの腕に近いのでは? Gonzalez & Graham (1996) 表面輝度のピーク位置は、 Ks-、g-、rs-bandでほぼ同じ。 ↓ 吸収によって腕の位置が 変化する量は無視できる。 第4回 銀河shop 2004/10/19
まとめ 星形成時間とパターン速度を決める新たな手法を開発した。 個別の銀河について、それぞれの星形成時間を決定した。 求められる星形成時間は、腕に付随する分子雲から星形成領域(HⅡ領域)ができるまでの時間。 星形成のモデルを介さず、観測的に測定が可能。 個別の銀河について、それぞれの星形成時間を決定した。 得られた時間は、5~7Myr 分子雲の自己重力による崩壊時間(約10Myr)に良く合っている。 第4回 銀河shop 2004/10/19
これからの課題とALMA これからの課題 ALMAでの観測:NGC 4254が10倍の距離にあると? 腕決定の自動化 解析対象を増やし、統計的な議論に進める。 ALMAでの観測:NGC 4254が10倍の距離にあると? 必要な分解能~0.2”~200pc@D=160Mpc 銀河のサイズ~0.6’~ 0.8’→1視野でよい。 速度幅10km/s、3時間の積分で、1σ~4.1 K・km/s NMAの半分の積分時間で、銀河の全面が観測できる。 ちょうど視野に収まる程度に遠い銀河が観測に適している。 第4回 銀河shop 2004/10/19
End 第4回 銀河shop 2004/10/19