E-mail: PatentIsland@hotmail.com SMIPS 特許戦略工学分科会 http://www.egroups.co.jp/group/Patent_Strategy_Engineering 2003年12月13日 ● 請求項記述言語の概念と将来展開構想 オーガナイザ 久野敦司 E-mail: PatentIsland@hotmail.com http://www.patentisland.com/
請求項記述言語とは: 人間にとってもコンピュータにとっても明瞭で理解しやすい構造を持つように請求項を記述するために用いる言語である。 英語表記 PCML: Patent Claim Markup Language 本分科会では、XMLによって言語定義することで、拡張性 と汎用性の高い請求項記述言語PCMLの標準を構築しよう としていますので、皆さんの標準化作業への参加を歓迎い たします。
請求項における問題点 請求項では、複雑な技術を公知技術と区別しながら、できるだけ権利範囲が広くなるようにしつつ、発明の技術構造を正確に表現する必要がある。 権利範囲を広くするために抽象的な用語を使用しがちになる。 複雑な技術構造を、あいまいな自然言語での修飾記述で表現するので技術構造が様々に解釈される可能性と、理解困難性が発生する。 請求項は読みにくいし、わかりにくいものとなる。 権利範囲の解釈に争いが発生するようになる。 内容がわかりにくいので、事業企画、営業、技術開発の部門での特許の活用が阻害される。 特許調査、審査、評価、鑑定などの処理の効率が低下する。 権利行使のコストと時間が増大するとともに、特許権が不安定になる。 明瞭で理解しやすい構造を持つように請求項を記述する事が必要。 特許の存在価値が大きく低下する。
請求項は職人技で請求項を作成する優れた人がいたとしても、出願後には、請求項を作成した人の手を離れて、さまざまな人の解釈や判断にさらされます。その時、請求項が用語の意味が明確であるだけでなく、請求項の技術的な構造も明確に表現されていなければ、技術開発者、事業企画者、営業担当者などの多くの関係者からみると、請求項とは意味のわからない呪文のようなものとなります。 請求項が呪文のようなものということになると、知財部員という者は呪文を唱えて、競合企業を倒す呪術師のような別世界の人間ということになります。これでは、事業に特許を活かすということは困難になります。 かといって、すべての特許出願について請求項をわかりやすく説明する図を作成することは多項制での多くの請求項の存在と、請求項が補正されて変化することを考えると無理があります。 そこで、請求項を自動的にわかりやすい図に変換することが必要となります。 自動的に請求項を図に変換するためには、コンピュータが請求項の構造を理解することが必要です。そのためには、請求項をコンピュータでも人間でも理解しやすく表現するための基盤である請求項記述言語が必要となると考えます。
人間にとってもコンピュータにとっても明瞭で理解しやすい構造を持つように請求項を記述するために用いる言語である請求項記述言語が必要。 請求項記述言語を必要とする背景 明瞭で理解しやすい構造を持つように請求項を記述する事が必要。 特許情報に関する便利で高度なサービスを提供するためには、請求項をコンピュータが処理しやすくする必要がある。 明瞭で理解しやすい構造の請求項を記述する事は、これまでも努力されていたが、自然言語を用いていたのでは限界がある。 人間にとってもコンピュータにとっても明瞭で理解しやすい構造を持つように請求項を記述するために用いる言語である請求項記述言語が必要。
請求項記述言語の機能 1. 請求項の構造の標準的な型を1つまたは複数個提供します。 1. 請求項の構造の標準的な型を1つまたは複数個提供します。 2. 請求項を構成する要素と要素間リンクの種類の標準を提供します。 3. 請求項で示される発明のカテゴリーを明示する符号を与えます。 4. 請求項を表現するために用いる用語の概念を示す符号を提供します。(将来機能) 5. 請求項と実施の形態の間の対応関係を明示します。(将来機能) 請求項の構造のイメージ A B D C C1 C2 C3 K 構成要素やリンクの意味を定義した情報 概念展開リンク 階層構造 入力 出力 リンク 請求項の理解可能性を支えている。 請求項を理解する主体である人間またはコンピュータが保持している。
XMLによって請求項記述言語PCMLを規定すると拡張性と汎用性 の高い言語が実現できる。 請求項記述言語の構文規則のイメージ XMLによって請求項記述言語PCMLを規定すると拡張性と汎用性 の高い言語が実現できる。 <!DOCTYPE 請求項 [ <!ELEMENT 請求項 (前提要件?,構成要件+,後続要件?,発明名称,発明カテゴリー符号)> ]> PCMLは上記のものをさらに洗練し、精緻にしたものとなる。 これの意味は、次のとおりです。 請求項は、0個以上の前提要件の後に、1個以上の構成要件が続き、その後に0個以上の後続要件が続き、その後に請求項末尾となる発明名称が続き、最後に発明カテゴリー符号で終わるというものです。 ここで、前提要件とは、「〇〇において、」とか「〇〇と〇〇からなる〇〇であって」というような記載です。また、後続要件とは、「を備えることを特徴とする」とか「とからなる」などのつなぎの言葉です。 発明カテゴリー符号とは、「物」、「方法」、「生産方法」というような発明の種別を示す符号です。
請求項記述言語(PCML)を支えるソフトウェア環境 ブロック図表現表示 請求項エディタ PCMLで記述された 請求項 請求項 ブラウザ ブロック図 エディタ PCML: 請求項の構造を 規定したDTD 請求項評価 ソフトウェア 請求項の特性値 ・構成要素数 ・未定義用語数 ・関連文件数 請求項利用の検索ソフトウェア 用語チェッカー 各種文書 データベース 用語辞書
請求項記述言語(PCML)で可能となる事柄 請求項をわかりやすく示す図の生成 請求項の上位概念化および下位概念化 請求項の間の比較に基づいた特許系統図の生成 請求項の構成要素と実施例の関係データの設定 請求項の記述に基づいた自動的な公知技術検索
請求項記述言語ができて、これを用いた請求項をもった特許出願がされていくと、次のようなことが可能となると思います。(具体的なイメージです) 1. 請求項の包含関係の自動解析に基づいたパテントマップの作成 審査過程における引用関係を用いて、特許の系統図を自動生成するものが製品化されていますが、請求項の包含関係に基づいたパテントマップの方が信頼性は抜群に高くなると思います。 2. 請求項を表現するブロック図やフローチャートの自動生成 請求項記述言語は、請求項の構成要素および構成要素間のリンクを明示した記述ですので、請求項を表現する図は簡単に作成できるはずです。図で請求項を表現することで、権利範囲の理解可能性が高まりますので、事業企画、営業、技術開発、知財の特許情報共有基盤が強化されます。 3. 審査や特許調査の効率アップ 請求項記述言語を用いた請求項では、技術構造を明確に表現していますので、公知文献との比較や他の出願の請求項との比較も技術構造レベルの比較ができます。その結果、自動的に技術構造レベルで比較して絞り込んだ文献が、技術構造レベルの比較結果付きで審査官などに提示されますので、審査の効率は格段に向上すると思います。 4. 請求項の品質のリアルタイムフィードバック付きの出願明細書作成支援ツールの実現 請求項記述言語で請求項を作成している瞬間に並行して、その請求項の特性値を計測して、出願明細書の作成者にリアルタイムでフィードバックします。例えば、請求項を構成する用語の概念として、さらに上位概念を使用してはどうですかと、上位概念を提示し、その上位概念に請求項を入れ替えた場合に、請求項の範囲に含まれると思われる公知文献をその場で検索して提示します。その公知文献が問題なければ、提示された上位概念を請求項の用語として受け入れます。実施例の部分と請求項を比較して、実施例で使用した用語と請求項で使用した用語の対応関係の確認を求めてきます。対応関係を承認すると、その対応関係を明細書に自動的に記載します。
請求項記述言語(PCML)の実用化のシナリオ 第1段階 請求項作成支援ソフトウェアで請求項を設計: 請求項記述言語を用いて、請求項作成支援ソフトウェアが使用される。特許出願における請求項は請求項記述言語では記述されていない。しかし、請求項の作成の過程で請求項記述言語を用いるので、わかりやすく権利範囲の広い請求項を作成しやすい。 第2段階 請求項記述言語による請求項の解説を明細書に記載: 請求項記述言語を用いた請求項の説明の欄を明細書中に記載することで権利解釈上の争いを避け、厳密な権利範囲を獲得しようとする。また、請求項をわかりやすく示す図を、請求項の説明の欄の記述から自動生成するブラウザも現われる。 第3段階 請求項記述言語による請求項が特許請求の範囲に記載可能となる: 請求項記述言語を用いた請求項の記述を特許庁が受け入れるようになり、請求項記述言語を用いた請求項が次第に一般的になっていく。