「水道・下水道システムにおける設計製図 」

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「水道・下水道システムにおける設計製図 」 北海道大学工学部環境社会工学衛生環境工学コース(3年次 H30年度後期) 「水道・下水道システムにおける設計製図 」  水道施設設計(その3)浄水場実施設計    H30.11.01(木)13:00~14:30  14:45~16:15 (一社)全国上下水道コンサルタント協会 水道事業部東京水道部  板垣 竜太郎

自己紹介 名前:板垣 竜太郎 所属:(株)日水コン 東京水道部 出身:広島県 名前:板垣 竜太郎 所属:(株)日水コン 東京水道部 出身:広島県  業務:上水道・工業用水道施設の設計    茨城県 霞ヶ浦浄水場(高度処理)    東京都 金町浄水場(送配水ポンプ棟)      茨城県 鹿島浄水場(工業用水道)      埼玉県 行田浄水場(PCタンク)

浄水場実施設計 講義概要 1.本日の講義と演習概要 2.浄水場の設計手順と概要 3.浄水処理方法の選定概要 4.水道での浄水処理 浄水場実施設計 講義概要 1.本日の講義と演習概要 2.浄水場の設計手順と概要 3.浄水処理方法の選定概要 4.水道での浄水処理 5.演習課題の説明    休憩 14:30~14:45(15min)

1.本日の講義と演習概要

11/1 浄水場の設計と浄水処理の学習 浄水方式の選定プロセスの演習 【演習課題】 ・任意水質に応じた浄水処理方式の選定 11/1 浄水場の設計と浄水処理の学習  浄水場の設計手順、処理方式の基本事項の説明と  浄水方式の選定プロセスの演習 【演習課題】 ・任意水質に応じた浄水処理方式の選定 ・日本の原水水質特性の把握と選定水源の特性 (評価基準)  秀:適切な回答ができている上位3グループ  優:4位~6位  良:7位~9位  ※全グループ「秀」もある  可:回答間違い、提出期限遅れ、    注意事項(要件)が守られていない

2.浄水場の設計手順と概要

水道施設の設計 水道施設を造るための基本計画、基本設計、実施設計 基本計画 基本設計 認可申請 実施設計 工事 運転 調査・各種検討 施工  水道施設の設計 水道施設を造るための基本計画、基本設計、実施設計 基本計画 基本設計 認可申請 実施設計 工事 運転 調査・各種検討 施工 監理 運転 監理 基礎調査 基本方針 規模の決定 水理・構造計算 基本事項 関係法令確認・対応 図面作成 整備内容 方式の決定 申請書作成 図書作成

基本設計と実施設計 <基本設計> <実施設計(詳細設計)>  基本設計と実施設計 <基本設計> ・設計条件に基づき、目的とする構造物の構造や工法、設備の仕様等について概略的な検討や比較選定など、実施設計に先立ち実施するものである。 ・例えば、浄水場の処理方式や構造形式を何にするのか、どこに造るのか、予算はどのくらいかかるのかの目安となる設計で、実施設計の方針を決定するための作業。 <実施設計(詳細設計)> ・基本設計に基づき、目的とする構造物の形状・寸法等を構造計算等により決定し、断面設計や細部設計を行い、  工事に必要な数量計算や設計図書の作成を行うもの。

基本設計の手順 調査等(資料・現地) 配置計画の検討 基本条件の確認・整理 水理検討 設計コンセプトの検討 施工方法の検討  基本設計の手順 調査等(資料・現地) 配置計画の検討 基本条件の確認・整理 水理検討 11/15 設計コンセプトの検討 施工方法の検討 今回 浄水処理フローの検討 基本設計図の作成 CAD演習 維持管理方法の検討 概算事業費の算定 施設計画の検討 各種申請・実施設計へ

 基本条件の確認・整理 設計条件は、水量、水質、構造、土質、材料、荷重、用地条件等からなり、基本計画及び必要に応じて行う測量調査、土質調査、環境調査等に基づき示される構造物の所与の条件として明らかにしておくものである。 浄水場基本設計にあたっては、次のような条件を確認する。  ① 水源及び取水地点  ② 原水水質(既存施設があれば既存施設の浄水水質)  ③ 計画浄水量  ④ 浄水場の規模  ⑤ 浄水場の管理体制(人員:現在、将来)  ⑥ 浄水場建設の年次計画(スケジュール)  ⑦ 将来の拡張計画あるいは可能性  ⑧ 浄水場候補地の選定  ⑨ 導送水管路の路線計画  ⑩ 浄水場計画に関わるそのほかの制約条件(周辺環境、法的規制等)

 設計コンセプトの検討 コンセプトとは、「作者がその製品に込めた意図・意匠・目的・思い等の概念」であり、その後の設計方針を決める上で、関係者の共通認識としてもつべきものである。 例えば、東京スカイツリーでは、クライアントからの「この地に“時空を超えたランドスケープ”を造ってほしい」との一言が設計の基本コンセプトとなっている。 浄水場設計での基本コンセプトは、 事業体の上位計画や建設位置の条件等 を加味して主任設計者(PM:Project Manager) がクライアントと協議の上決定する。  (例)  比布町:田園の大地に潤いを与える浄水場  国立公園内の浄水場:大自然と共生しつづける浄水場

 施設計画の検討 浄水場基本設計では、各単位処理プロセスが効率良く総合され、目標の水質の浄水を産み出せるように全体施設を構成するために個々の処理施設の検討を行う。  ① 個別施設の機能、処理能力及び処理目標   ② 設備機器などの配置(室内)  ③ 各施設の容量、形状、高さ、平面及び縦断寸法  ④ 各施設間の相互連携 また、施設完成後の運転管理のあり方も検討を行う。  ① 施設の制御及び操作の基本コンセプトの検討   ② 効率的な監視と制御方式の選定  ③ 施設の信頼性を高めるためのソフト、ハード面での方策     (主設備の構造的な分離等の検討)

配置計画の検討 施設計画に基づき、各施設の敷地内での納まりについて、数案抽出し比較検討する。留意事項は次の通り。  配置計画の検討 施設計画に基づき、各施設の敷地内での納まりについて、数案抽出し比較検討する。留意事項は次の通り。  ① 将来の拡張性、水源水質の動向によっては高度浄水処理施設の導入も視野に入れたレイアウトとする。  ② 水は、着水井以降、できるかぎり自然流下で一連の全工程を流れるようにする。  ③ 効率よく施設運営ができるように施設群の配置、維持管理要因の動線等を十分考慮する。  ④ 各池の水量負荷ができるかぎりバランスよく配置されるようにする。  ⑤ 工事の容易さ、工事コストの経済性について配慮する。  ⑥ ポンプやろ過池洗浄等の機器、水音による騒音や建物高さの周辺への影響についても配慮する。

この時の設計方針は、次の通りで比較検討の結果Case-1を採用  1.最も経済的な施設配置であること  2.地域環境と調和し、周辺住民に影響を与えない施設配置であること  3.将来の増設スペースを確保できる施設配置であること

残念ながらフロントガーデンは採用されず

3.浄水処理フローの選定概要

浄水処理フローの検討 検討条件の把握 水 質 対 応 技術の抽出 浄水システム の選定 原水水質 の把握 (問題点の抽出) 処理目標  浄水処理フローの検討 検討条件の把握 水 質 対 応 技術の抽出 浄水システム の選定 原水水質 の把握 (問題点の抽出) 処理目標 水質の設定 維持管理 レベル による検討 水源種別 ・地下水 ・河川水 ・湖沼水 基本項目 色、におい、 味覚、濁り、 システムに 要求される 維持管理 レベルを 検討 現在対応 可能な レベルも 対応可能な 単位の浄水 処理プロセス の抽出 単位プロセス を組合せた 浄水処理 システムの 抽出 病原微生物 重 金 属 緩速ろ過 急速ろ過 膜ろ過 前処理 高度処理 水質成分 ・不溶解性 ・溶解性 ・水温 ・pH ・アルカリ度 無機物質 比較検討 農   薬 選  定 化学物質

原水水質の把握 ・処理対象となる水源の水質条件を把握するプロセスで、後の浄水処理システム選定の判断材料とする。  原水水質の把握 ・処理対象となる水源の水質条件を把握するプロセスで、後の浄水処理システム選定の判断材料とする。 ・過去、現在の水質データの整理、解析による将来水質予測と処理すべき水質項目の抽出。 51項目 27項目128物質 48項目

 水(Water) 水の中には何が入っているか? 固形性物質と溶解性物質がある。 溶解性物質 固形性物質

固形性物質と溶解性物質とは 濁質、粘土、病原虫、金属(Fe、Mg) 固形性物質 溶けているもの 溶解性物質  固形性物質と溶解性物質とは 濁質、粘土、病原虫、金属(Fe、Mg) 固形性物質 溶けているもの (カビ臭物質、トリハロメタン前駆物質の大半、金属) 溶解性物質

 浄水処理の対象物質 通常の浄水処理方法で、 固形性物質 除去できる。 高度な浄水処理 溶解性物質 除去できない。 04

 おいしい水 山登りの後で飲む谷川の水 運動して一汗かいた後で味わう甘露のような井戸水 ・異臭味がない。 ・清涼感 ・水温が15℃程度

(カルシウム) (おいしい水研究会)

水をまずくする成分 ・臭気物質(カビ臭:ジェオスミン、2-MIB) ・有機物質(トリハロメタン) ・残留塩素(カルキ臭、アンモニア性窒素が関係する) 除去するには? ①水源をきれいにする ②浄水場で対応する(高度処理)

 水質対応技術の抽出

4.水道での浄水処理

 水道での浄水処理とは 河川、湖沼、地下水などから取水した原水は、種々の物質、生物、細菌などが含まれているので、そのままでは飲用に適さない。これらの水中に含まれている物質などを取り除き、飲料用に供するための適切な処理を行い、水道法に定められた水質基準に適合させる処理操作。 水道用語辞典(第二版)

 降雨時の原水濁度 その1

 降雨時の原水濁度 その2 原水濁度 平均 3度 原水色度 平均 4度

浄水処理 排水処理

浄水処理方式の種類 ・消毒のみ ・緩速ろ過方式 ・急速ろ過方式(凝集沈澱) ・膜ろ過方式 通常処理  浄水処理方式の種類 ・消毒のみ ・緩速ろ過方式 ・急速ろ過方式(凝集沈澱) ・膜ろ過方式 通常処理 ・高度処理(生物処理、活性炭処理、オゾン処理) ・その他

その他の処理 ・マンガン接触ろ過:溶解性マンガン処理 ・塩素酸化(鉄・マンガン、アンモニア性窒素)  その他の処理 ・マンガン接触ろ過:溶解性マンガン処理 ・塩素酸化(鉄・マンガン、アンモニア性窒素) ・紫外線処理(クリプトスポリジウム不活性化) ・エアレーション(揮発性有機化合物、遊離炭酸除去) ・イオン交換(硝酸態窒素除去 ) ・電気透析(脱塩、硝酸性窒素除去) ・吸着(フッ素、ヒ素除去)      ・・・等々

浄水処理方式の現状 ・水量ベースだと急速ろ過方式が最も多い。  浄水処理方式の現状 H23水道統計より ・水量ベースだと急速ろ過方式が最も多い。 (国内の大規模浄水場は急速ろ過が主体で、高度処理導入済) ・消毒のみ、緩速ろ過処理は簡易水道、専用水道で採用され、  規模は小さいが、施設数は多い。

消毒のみの方式(Disinfection) 地下水(深井戸)、湧水等のクリプトスポリジウム(原虫)汚染の恐れがなく、水質基準に適合した水源にて、特別な処理は行わず塩素消毒のみとする方式。 水道法第22条(衛生上の措置)  水道事業者は、厚生労働省令の定めるところにより、水道施設の管理及び運営に関し、消毒その他衛生上必要な措置を講じなければならない。 水道法施行規則第17条(衛生上必要な措置)  三 給水栓における水が、遊離残留塩素を0.1mg/L(結合残留塩素の場合は、0.4mg/L)以上保持するように塩素消毒をすること。ただし、供給する水が病原生物に著しく汚染されるおそれがある場合又は病原生物に汚染されたことを疑わせるような生物若しくは物質を多量に含むおそれがある場合の給水栓における水の遊離残留塩素は、0.2mg/L(結合残留塩素の場合は、1.5mg/L)以上とする。

消毒のみの設計諸元 一般的な 設計諸元 塩素の種類 ・液化塩素 JIS K 1102 ・次亜塩素酸ナトリム JWWA-K120  消毒のみの設計諸元 一般的な 設計諸元 塩素の種類 ・液化塩素 JIS K 1102 ・次亜塩素酸ナトリム JWWA-K120  (生成次亜塩素酸ナトリム) 注入量 ・注入方式、塩素要求量により異なる (概ね浄水場出側の遊離塩素で1~0.3mg/L) 設計留意事項 ・大腸菌(100mLMPN) 50以下 ・一般細菌(1mL) 500以下 ・他の項目は水質基準に適合する ・アンモニア性窒素処理には、8~10倍の塩素注入が必要 運転管理 ・塩素注入、濃度管理 浄水処理フロー (原水)→ 塩素注入 →(配水)

緩速ろ過方式(slow sand filter system)  砂層表面に藻類、真菌、細菌などの生物繁殖により分泌する粘膜が  形成され、濁度などの不溶解性成分が除去され、アンモニア性窒素、鉄、マンガン、水の臭気等の溶解性物質もある程度除去される。 緩速ろ過池の模式図 緩速ろ過池砂層の微生物の例

北海道以外では覆外、上屋を設けないのが一般的 神奈川県谷ケ原浄水場 http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f906/p40433.html

北海道では覆外、上屋を設ける のが一般的(一部道南地方除く)

緩速ろ過方式の設計諸元 一般的な 設計諸元 ろ過速度 4~5m/日、最大8m/以下 ろ材種類 水道用ろ過砂(JWWA-A103) ろ材粒径  緩速ろ過方式の設計諸元 一般的な 設計諸元 ろ過速度 4~5m/日、最大8m/以下 ろ材種類 水道用ろ過砂(JWWA-A103) ろ材粒径 有効径0.3~0.45mm、均等係数2.0以下 ろ材層厚 砂700~900mm 砂利400~600mm 設計留意事項 ・設計濁度10度以下に摘用(以上では前処理組合せ) ・水張り用として、ろ過池へのろ過水逆送設備を設置する。 運転管理 ・砂の掻き取り、補砂 浄水処理フロー (原水)→緩速ろ過→(塩素消毒)→(配水)

緩速ろ過方式の前処理(1) 緩速ろ過池の前に設置し、緩速ろ過池への流入濁度の軽減を図る。前処理としては、普通沈澱、前処理用ろ過等がある。  緩速ろ過方式の前処理(1) 緩速ろ過池の前に設置し、緩速ろ過池への流入濁度の軽減を図る。前処理としては、普通沈澱、前処理用ろ過等がある。  普通沈澱地の諸元 一般的な 設計諸元 方式 無薬注自然沈降方式(希に薬注あり) 表面負荷率 5~10mm/分 池内横流速 平均0.3m/分以下 集水設備 堰負荷:500m3/日・m以下 設計留意事項 ・設計濁度30度以下に適用 ・用地の制約条件から、新設での採用は近年難しい

緩速ろ過方式の前処理(2)前処理用ろ過 一般的な設計諸元 種類 粗ろ過 繊維ろ過等 移動床ろ過 ろ過速度 240m/日以下  緩速ろ過方式の前処理(2)前処理用ろ過 一般的な設計諸元 種類 粗ろ過 繊維ろ過等 移動床ろ過 ろ過速度 240m/日以下 1 ,000m/日以下 240m/日 ろ材種類 アンスラサイト、砂利 繊維塊、長繊維 硅砂 ろ材粒径 1~6mm - 1mm ろ材層厚 350~650mm 1, 000mm 1, 200mm 凝集剤注入率 0~10mg/L 洗浄方式 空気洗浄+ 逆流洗浄方式 連続式(洗浄) 洗浄速度 (m3/分・m2) 空気:0.8~1.2 水 :0.6~1.0 空気:1.0 水  :1.0 運転 管理 定期的に洗浄を実施 連続洗浄による排水あり その他、浮上ろ材を使用して上向流で処理する浮上ろ過や、特殊ろ材等を使用するものなど種々の方式がある。

 緩速ろ過方式の前処理(3)前処理用ろ過 移動床ろ過模式図 繊維ろ過模式図 浮上ろ過模式図

移動床ろ過の設計例

急速ろ過方式(Rapid sand filtration method) ・急速ろ過は、原水に凝集剤を加えて沈澱を行い、沈澱池で除去されなかったマイクロフロックを砂層等のろ材に付着させ、ろ過水を得るプロセス。 ・直接ろ過を除いて、前段に凝集沈澱設備(急速混和池、フロック形成池、沈澱池又は高速凝集沈澱池)を設ける。 ・120~300m/日の早いろ過速度でろ過するため、  緩速ろ過に比べ敷地が狭くて済む半面、  表面洗浄、逆流洗浄などの設備が必要。

凝集剤 塩素 急速 混和池 フロック形成池 沈澱池 急速ろ過池 浄水 凝集剤 塩素 急速 混和池 高速凝集沈澱池 急速ろ過池 浄水 (酸・アルカリ剤) (アルカリ剤) 凝集剤 (塩素) 塩素 急速 混和池 フロック形成池 沈澱池 急速ろ過池 浄水 (酸・アルカリ剤) (アルカリ剤) 凝集剤 (塩素) 塩素 急速 混和池 高速凝集沈澱池 急速ろ過池 浄水

凝集沈澱(Coagulation-sedimentation) ・凝集とは、水中に含まれる微細なコロイド粒子が不安定化され、集塊し、より大きな粒子(マイクロフロック)へとなること。 ・一般的な浄水処理においては、PAC等の金属系凝集剤を用いて、プラスに帯電した凝集剤とマイナスに帯電した微粒子を混和させると電気的中和が起こり、微粒子相互の反発力がなくなってマイクロフロック化する。 ・その後、フロック形成池(緩速混和池)にてマイクロフロックを大きく成長させ、沈澱池にて沈澱分離作用により除去する。 不溶解性物質や大腸菌、病原虫も集塊化

急速混和(Rapid mixing) 一般的な 設計諸元 方 式 機械攪拌方式、ポンプ攪拌方式、 パイプミキサ方式 滞留時間 1~5分 方  式 機械攪拌方式、ポンプ攪拌方式、 パイプミキサ方式 滞留時間 1~5分 周辺速度 1.5m/秒以上(機械攪拌の場合) G  値 100 1/秒程度 設計留意事項 薬品の均一の注入が行えるような注入点の設定 ポンプ攪拌方式 機械攪拌方式

フロック形成(Flocculation) 一般的な 設計諸元 方  式 機械攪拌方式、上下う流方式、水平う流方式 滞留時間 20~40分 周辺速度 15~80cm/秒(機械攪拌方式) 平均流速 15~30cm/秒(う流方式) G値 :10~75 1/秒  GT値 :27, 000~210, 000 設計留意事項 ・フロキュレータの周辺速度は可変にし、フロックの破壊や沈澱が生じないようにする。 ・う流式の場合は、低流量時への適応性に乏しく、原水高濁時には、汚泥が堆積して滞留時間が減少する場合があるため処理水量、水質が安定した浄水場に適する。 運転管理 大きくなったフロックが破壊しないように、下流に行くにしたがって攪拌は強度を漸減させるように、周辺速度を設定する。水質や水温に応じて速度を変え、特に水温の低い場合はフロックが破壊しやすいので、攪拌を弱くするなどの考慮が必要である。

水平う流攪拌方式 機械攪拌方式(横軸) 機械攪拌方式(縦軸) 上下う流攪拌方式

沈澱池(Sedimentation tank) 主として横流式沈澱池と上向流式沈澱池があり、傾斜板(管)式沈澱池は 傾斜板(管)等の傾斜装置を設置することにより、沈降面積を増加させ、 容積的に横流式沈澱池より小さくできる。 一般的な 設計諸元 方 式 横流式傾斜板沈澱池 上向流式傾斜板(管)沈澱池 表面負荷率 4~9mm/分 7~14mm/分 池内横流速 平均0.6m/分以下 下部入口平均0.7m/分以下 上昇流速 ――――― 80mm/分以下 装置下部 ~池底部 1.5m以上 集水設備 堰負荷:500m3/(日・m)以下 堰負荷:350m3/(日・m)以下 排泥設備 機械方式:(リンクベルト式、水中牽引式、走行式ミーダ形、 中心駆動型、レシプロ式) ホッパ式:(ダイヤモンドピット方式) その他:気圧式

傾斜板沈澱池 上向流式傾斜板(管)沈澱池 排泥:気圧式 排泥:ホッパ方式

高速凝集沈澱池(Suspended soild contact clarifier) 高速凝集沈澱池は、フロック形成を既存フロックの存在下で行い、沈澱との操作を一つの装置のなかに組み入れて、短い滞留時間内でこの2つを行う装置 北海道では、江別市、釧路市、桂沢水道企業団等で設置されている。 コンパクトな浄水場となる半面、水質変動に弱い 一般的な 設計諸元 方式 スラリー循環型 スラッジブランケット型 複合型 表面積負荷 40~60mm/分 設計留意事項 原水濁度10~1 000度程度 (各方式により適正な原水濁度が異なるので留意) 運転管理 水温(5℃以下難)、濁度、流量の変動 スラリー濃度の適正化、スラリゾーン面の管理、排泥量の適正化

スラリー循環型 複合型 スラッジブランケット型 (機械式) スラッジブランケット型 (脈動式)

外観(桂沢水道企業団) センタードレーン(清掃時) 回転翼

急速ろ過方式(Rapid sand filtration method) 一般的な 設計諸元 方 式 単層ろ過 多層ろ過 ろ過速度 150m/日以下 300m/日以下 ろ材種類 硅砂 アンスラサイト+硅砂 ろ材 有効径 0.45mm~0.7mm アンスラサイト 0.9~1.4mm 砂         0.45~0.7mm 均等係数 1.7以下 アンスラサイト  1.5以下 砂          1.7以下 ろ材層厚 600~700mm アンスラサイト 200~500mm 砂        300~500mm 洗浄方式 表面洗浄+逆流洗浄方式 空気洗浄+逆流洗浄方式 洗浄速度 (m3/分・m2) 表洗速度: 固定 0.15~0.2 回転 0.05~0.1 逆洗速度:0.6~0.9 空洗速度:0.3~1.0

・原水に溶解性の鉄やマンガンがある場合には、ろ過砂をマンガン砂に替えて、塩素酸化との組み合わせにより、処理する場合が多い。 ・水質基準の1/50まで処理可能 重力式ろ過池(単層) ろ過池のタイプは、  ・流量制御方式  ・水位制御方式  ・自然平衡方式 など、流量制御方式や逆流洗浄方式によりさらにタイプが分かれる。 また、重力式ろ過の場合には、集水装置にも種々の種類がある。 圧力式ろ過機

膜ろ過方式(Membrane filtration method) ・膜ろ過は化学反応も相変化も伴わず、圧力差によって膜に水を通し、懸濁物質やコロイドを物理的に分離するプロセス。   1.精密ろ過膜(MF)/限外ろ過膜(UF)は、除濁、除菌を目的として    使用される膜ろ過。   2.ナノろ過膜(NF)は、限外ろ過膜(UF)と逆浸透膜(RO)の中間に    位置する浸透膜を用いる。 ・分離対象は分子量が最大数百程度までの低分子物質であり、溶解性物質の除去の一方式となる方法。ナノろ過の主な役割は、消毒副生成物、農薬、臭気物質、その他塩類等の除去である。

 水道原水中成分の大きさと膜の適用範囲 1μm=1×10-6m=1×10-3mm

 膜ろ過の分離概念図(MFの場合)

膜ろ過方式フロー① 後マンガン処理設置 凝集剤 塩素 塩素 着水井 混和池 膜ろ過 下向流Mn 接触池 浄水 (酸剤) (アルカリ剤) 膜ろ過方式フロー① 後マンガン処理設置 凝集剤 (酸剤) (アルカリ剤) 塩素 塩素 (粉末活性炭) 着水井 混和池 膜ろ過 下向流Mn 接触池 浄水 P

膜ろ過方式フロー② 前マンガン処理設置 塩素 凝集剤 塩素 着水井 上向流Mn 接触池 混和池 膜ろ過 浄水 (アルカリ剤) (アルカリ剤) 膜ろ過方式フロー② 前マンガン処理設置 (粉末活性炭) (アルカリ剤) (アルカリ剤) 塩素 (酸剤) 凝集剤 塩素 着水井 上向流Mn 接触池 混和池 膜ろ過 浄水

膜ろ過方式フロー③ 凝集沈澱+急速ろ過+膜ろ過 膜ろ過方式フロー③ 凝集沈澱+急速ろ過+膜ろ過 凝集剤 (酸剤) 塩素 塩素 (アルカリ剤) (粉末活性炭) 着水井 混和池・ フロック形成 横流式 沈澱池 急速ろ過 (Mn砂) 膜ろ過 浄水 P

膜ろ過の種類(1) ・膜の種類 MF・UF・NF・RO ・膜の形状 中空糸型・管型・管型(マルチルーメン) 平膜型・スパイラル型  膜ろ過の種類(1) ・膜の種類  MF・UF・NF・RO ・膜の形状  中空糸型・管型・管型(マルチルーメン)        平膜型・スパイラル型 ・膜の材質  有機膜…PE・CA・PAN・PP・その他        無機膜…セラミック ・設置方法  浸漬式・ケーシング収納式 ・通水方式  外圧式・内圧式 ・ろ過方式  全量ろ過・クロスフローろ過

膜ろ過の種類(2) ケーシング収納型の例:(中空糸内圧式) 左:クロスフロー式、右:全量ろ過式 管型の例 (モノリス型) 大口径モノリス管型  膜ろ過の種類(2) ケーシング収納型の例:(中空糸内圧式) 左:クロスフロー式、右:全量ろ過式 管型の例 (モノリス型) 大口径モノリス管型 エレメントの例 浸漬槽用の例 (中空糸外圧式) 中空糸型マルチエレメント型の例 (外圧式) 管型モジュールの例(外圧式)

膜ろ過の種類(3) 外圧式 内圧式 全量ろ過 クロスフローろ過  膜ろ過の種類(3)  外圧式      内圧式 全量ろ過方式とクロスフローろ過方式は、原水水質、膜の材質及び分離性能、モジュール構造、洗浄方法等と深い関係があり、処理条件に適した方法を選択する必要がある。コスト的にみると、全量ろ過方式はクロスフローろ過方式のような平行流を必要としないため、動力費は小さくて済む。クロスフローろ過方式は、一般に膜面流束が高いほど膜面への付着物質の堆積が抑制されるため、高い膜ろ過流速が得られ、膜汚染防止の点では高膜面流速が好ましいことになる。しかし高膜面流速となるほどランニングコストが増加するため、処理水量や洗浄効果との関係から、経済的な膜面流速を設計する必要がある。また、低濁度時は全量ろ過を行い、高濁度時にクロスフローろ過方式に切り替える場合もある。 全量ろ過   クロスフローろ過

原水または凝集などの前処理水に適用される場合 一般的な 設計諸元 精密ろ過膜(MF) 限外ろ過膜(UF) 公称孔径または 分画分子量 公称孔径 0.01μm以上 1, 000~300, 000 操作圧力 (×100kPa) 吸引:-0.6程度以上 加圧:2程度以下 透過流束 原水または凝集などの前処理水に適用される場合 0.5~2m3/(m2・日) 1~2m3/(m2・日) 砂ろ過水に適用される場合 0.5~3m3/(m2・日) 1~3m3/(m2・日) 設計留意事項 ・設計水量の確保:水の粘性は水温の影響を大きく受けるため、最低水温にて設計水量を得られるように膜面積を決定する。 ・透過流束:膜前段のプロセス・水質によって透過流束を選定する。 ・塩素注入:膜種類によって塩素に対する耐性が異なるので注意が必要。 運転管理 ・膜薬品洗浄 薬品洗浄排水処理が必要。 ・膜破損監視:膜ろ過水濁度を高感度濁度計や微粒子カウンターで監視。 ・定期的に圧力保持試験を行い、膜の状態を確認する。 ・膜交換:定期的に膜の交換が必要で、交換頻度は膜材質、透過流束、薬品洗浄頻度等により異なる。

ケーシング収納法フロー例(全量ろ過方式) 槽浸漬型フロー例

 浄水場断面図

高度浄水処理(Advanced treatment) 溶解性物質(かび臭物質(ジェオスミン、2-MIB)、トリハロメタン、アンモニア性窒素、陰イオン界面活性剤等)の処理 高度浄水処理 原理 酸化、分解 ①生物処理 ②活性炭処理 吸着 ③オゾン処理 酸化、分解

高度浄水処理・・・活性炭処理 ①粉末活性炭処理 ②粒状性炭処理  高度浄水処理・・・活性炭処理 ・活性炭処理は、活性炭の吸着力を利用して、異臭味、色度、有機物など通常の浄水処理では除去できない物質を処理するプロセス。粉末活性炭処理と粒状活性炭処理がある。 ・また、生物活性炭処理は活性炭の吸着力に加え粒状活性炭を担体として、その上に成長した微生物による分解作用をもちあわせて維持する処理方法であるが、北海道の表流水では水温が低いため適用が難しい。 ①粉末活性炭処理   着水井などに粉末状の活性炭を投入し不純物を吸着させ、その後、凝集処理をして   粉末活性炭を懸濁質として沈澱ろ過し、吸着された溶解性成分とともに除去する方法。 ②粒状性炭処理   通常、粒径が0.3~2.4mm程度に調整された粒状活性炭を層状にし、砂ろ過池と同様に   水を通して吸着を行う方法。

活性炭の細孔 生物活性炭の場合には生物が繁殖し生物処理機能 触媒や薬剤の担持 強力な吸着作用

 高度浄水処理・・・オゾン処理 ・オゾン処理は、オゾンを使用して水中の無機物及び有機物などの酸化及び細菌、ウイルスなどの殺菌・不活性化を行うプロセス。 ・オゾンは塩素などの他の酸化剤に比べて強力な酸化力を持ち、異臭味及び色度の除去、消毒副生成物前駆物質の低減などを目的として行われる。 ・オゾン処理を設置する場合、後段に粒状活性炭プロセスを組み合わせなければならない(アルデヒド等の副生成物対策)。 オゾン処理フロー例

 高度浄水処理・・・生物処理 ・生物処理は、微生物を付着繁殖させた担体に原水を接触させることにより、生物酸化を利用して水中のアンモニア性窒素や臭気等を除去するプロセス。 ・水温、pH、溶存酸素濃度の影響を受ける。 浸漬ろ床槽模式図 下向流固定床接触ろ過模式図 回転円板方式模式図

清廉な原水でクリプトスポリジウム(原虫)汚染のみに対応する方式として紫外線処理がある。 原水濁度2度未満に適用可能とされている。 ろ過水濁度0.1度以下 ・紫外線処理

5.演習課題の説明

演習1:浄水処理方法の抽出 サーバー上にある「演習課題3-①.xls」を用いて、各グループ毎に最適な浄水処理方法を抽出し、浄水処理フローを作成せよ

回答の流れ ① Step1.対象の設定 Step2.原水水質レベルの確認 Step3.原水水質レベルの設定 回答の流れ ① Step1.対象の設定 Step2.原水水質レベルの確認 Step3.原水水質レベルの設定 Step4.浄水水質目標レベルの設定 Step5.除濁・有機物除去プロセス群の選定 Step6.浄水処理フローの作成

演習2:原水水質特性の把握 サーバー上にある「演習課題3-②.xls」を用いて、次の1から4のクラスタとなる条件を探せ!  1.低汚濁 2.平均的 3.中汚濁 4.高汚濁 また、クライアントの水源の特性を検討せよ! 目的:一般的な水道原水水質の理解

回答の流れ ② Step1.1から4のクラスタとなる条件を探せ! ①の演習のクライアントの水源の特性を探せ! 回答の流れ ② Step1.1から4のクラスタとなる条件を探せ!     ①の演習のクライアントの水源の特性を探せ! Step2.1から4のクラスタとなる条件を探せ!     ①の演習のクライアントの水源の特性を探せ! グラフの 貼り付け Step3.1から4のクラスタとなる条件について考察せよ! Step4.①の演習のクライアントの水源の特性を検討せよ!

演習課題・条件 ・次の水質範囲を使って、1から4のクラスタとなる条件を探せ! ・①の演習のクライアントの水源の特性を検討せよ!  演習課題・条件 ・次の水質範囲を使って、1から4のクラスタとなる条件を探せ! ・①の演習のクライアントの水源の特性を検討せよ! 提出は入力シートとグラフ(1グループ1セットを提出) ※注意事項:提出グラフは一度データをクリアして、再プロットしたものとする 項目 データ範囲 備考 一般細菌(個/mL) 10~1,000 水質基準:100以下 硝酸・亜硝酸態窒素(mg/L) 0.1~3.0 水質基準:10mg/L以下 全鉄(mg/L) 0.01~0.5 水質基準:0.3mg/L以下 全マンガン(mg/L) 水質基準:0.05mg/L 硬度(mg/L) 50~150 100以下が軟水 pH 6~9 7が中性 色度(度) 0.1~20 水質基準:5度以下 濁度(度) 水質基準:2度以下 有機物-TOC(mg/L) 0.1~5 水質基準:3mg/L以下 アンモニア性窒素(mg/L) 0.01~0.1

① ③ ④ ② 水道技術センター(e-WaterⅡ研究成果) ・我が国の水道原水水質データを主成分分析とクラスター解析を行った結果 ・水質項目10項目を用いて、対象原水が全国のどのレベルにあるか知ることができる。

【提出期限・提出方法】  11月8日(木)12時までにexcelを  メールで送付 【提出・質問先】  日水コン 板垣     itagaki_r@nissuicon.co.jp