脂質異常症 7月 疾患別研修.

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脂質異常症 7月 疾患別研修

脂質異常症とは… 血中LDLコレステロール値 140mg/dL以上 血中HDLコレステロール値 40mg/dL未満 すべて あるいは いずれか を呈する状態をいう。

治療薬 HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系) プロブコール 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 陰イオン交換樹脂 植物ステロール フィブラート系 デキストラン硫酸ナトリウム ω(オメガ)-3脂肪酸製剤 ニコチン酸誘導体 主にコレステロール値を 低下させる 主にトリグリセリド値を 低下させる

HMG-CoA還元酵素阻害薬 (スタチン系) 主にコレステロール値を低下させる薬剤 HMG-CoA還元酵素阻害薬 (スタチン系) ローコール錠 (フルバスタチン) メバロチン錠 (プラバスタチン) リポバス錠 (シンバスタチン) リピトール錠 (アトルバスタチン) リバロ錠 (ピタバスタチン) クレストール錠 (ロスバスタチン)

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系)の作用機序 CE CE CE LDL LDL受容体 肝臓 血清LDLの低下 マロニルCoA (C3) ≈ C4 C6 C8 RCOOH TG 多 TG 血清TGの低下 CE アセチルCoA (C2) CE VLDL アセトアセチルCoA Chの合成抑制 ACAT アセチルCoA HMG-CoA ラノステロール Ch 胆汁 HMG-CoA還元酵素 胆汁酸 メバロン酸 スクアレン Ch CE TG:トリアシルグリセロール Ch:コレステロール CE:コレステロールエステル ACAT:アシル-CoA コレステロール アシル基転移酵素 CE CE HDL受容体

プロブコール コレステロール合成を抑制 肝でのコレステロールから胆汁酸への異化促進作用 LDLコレステロール低下 主にコレステロール値を低下させる薬剤 プロブコール コレステロール合成を抑制 肝でのコレステロールから胆汁酸への異化促進作用    LDLコレステロール低下 欠点:HDLコレステロール低下作用もあり 抗酸化作用    動脈硬化の予防 MΦ 酸化 変性 LDL LDL シンレスタール錠 ロレルコ錠 血管

小腸コレステロール トランスポーター阻害薬 主にコレステロール値を低下させる薬剤 小腸コレステロール トランスポーター阻害薬 エゼチミブ 小腸細胞壁に存在するコレステロールトランスポーター(NPC1L1) を阻害することにより、コレステロールの吸収を選択的に阻害 食事由来より体の中で作られるコレステロールの方が多いため、 単独では効果が弱い    スタチン系と併用することが多い ゼチーア錠 (エゼチミブ)

脂溶性ビタミンやワルファリンなどの酸性薬物の吸収阻害 主にコレステロールを低下させる薬剤 陰イオン交換樹脂 コレステロール 脂溶性ビタミンやワルファリンなどの酸性薬物の吸収阻害 LDL受容体 禁忌:胆道が完全に閉塞している患者 胆汁酸 胆嚢 コレバイン錠 (コレスチミド) 腸管循環 血管 吸収 - 乳化 胆汁酸 吸着 コレステロール 小腸 クエストラン粉末 (コレスチラミン)

陰イオン交換樹脂製剤の飲み方 コレバイン錠500mg コレバインミニ83% クエストラン粉末44.4% 通常、成人にはコレスチミドとして1回1.5g(錠は3錠、ミニは1.81g)を1日2回、朝夕食前に水とともに経口投与する。 ただし、症状、服用状況を考慮して朝夕食後投与とすることもできる。なお、年齢、症状により適宜増減するが、最高用量は1日4gとする。 [高コレステロール血症に対しての用法・用量] 通常成人にはコレスチラミン無水物として1回4gを水約100mLに懸濁し、1日2~3回服用する。 ※十分量(約200mL)の水で服用する(口の中や喉の奥に薬  剤が残った時は、さらに水を飲みたして服用する)。 ※温水(お湯や温かい飲み物など)で服用すると膨らんで服  用できない場合があるため常温の水又は冷水で服用する。 ※本剤は誤って気道に入り膨潤し呼吸困難に至った例がある  ため注意して服用する。 ※本剤は1回の服用分の薬剤を適切な量の水に懸濁して  から服用する。

植物ステロール 腸管でのコレステロールの吸収を阻害する 主にコレステロール値を低下させる薬剤 ハイゼット錠 (ガンマオリザノール) ユンゲオール3 (ソイステロール) ヘルシーコレステ

治療薬 HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系) プロブコール 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬 陰イオン交換樹脂 植物性ステロール フィブラート系 デキストラン硫酸エステル ω(オメガ)-3脂肪酸製剤 ニコチン酸誘導体 主にコレステロール値を 低下させる 主にトリグリセリド値を 低下させる

フィブラート系 主にトリグリセリド値を低下させる薬剤 ベザトールSR錠 (ベザフィブラート) リピディル錠 (フェノフィブラート) リポクリン錠 (クリノフィブラート) クロフィブラート錠 (クロフィブラート) ベザリップ錠 (ベザフィブラート) トライコア錠 (フェノフィブラート)

ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)を活性化 コレステロール合成を抑制(VLDLの合成分泌も抑制) フィブラート系薬の作用機序 ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体α(PPARα)を活性化 β酸化 アセチルCoA RCOOH 体内で 合成された TG 活性化 CM TG CE 多 CMレムナント MG 脂肪酸 LPL TGの合成低下 TGの分解促進 TG CE 多 LPL TG CE HTGL CE LDL受容体 VLDL IDL LDL MG 脂肪酸 MG 脂肪酸 レムナント 受容体 LDL受容体 HDL受容体 TGから 分解 肝臓 ATP産生や 生体成分の合成など Ch供給 生体成分の合成など 食事由来の TG 胆汁 血清Ch値の低下 余剰のCh 末梢組織 小腸 CE コレステロール合成を抑制(VLDLの合成分泌も抑制) 胆汁へのコレステロール排泄を促進 LPL:リポタンパク質リパーゼ MG:モノアシルグリセロール HTGL:肝性TGリパーゼ HDL

デキストラン硫酸ナトリウム LPL及び肝性トリグリセリドリパーゼを活性化し、 TGを低下させる 主にトリグリセリド値を低下させる薬剤 MDSコーワ錠

ω(オメガ)-3脂肪酸製剤 LPLを活性化し、TGの加水分解を促進 肝でのVLDL合成を抑制し、TGを低下 主にトリグリセリド値を低下させる薬剤 ω(オメガ)-3脂肪酸製剤 LPLを活性化し、TGの加水分解を促進 肝でのVLDL合成を抑制し、TGを低下 血小板凝集抑制作用あり➡抗動脈硬化作用が期待できる  ※副作用:出血傾向 CAD(冠動脈疾患)に対する予防効果が認められている エパデールS (イコサペント酸エチル) COX TX合成酵素 アラキドン酸 (20:4) PG2系 TXA2 強い血小板凝集作用 COX TX合成酵素 イコサペント酸エチル (20:5) PG3系 TXA3 血小板凝集作用なし ロトリガ粒状カプセル (イコサペント酸エチル+ ドコサヘキサエン酸エチル)

ニコチン酸誘導体 ニコモール、ニセリトロール、トコフェロールニコチン酸エステル 主にトリグリセリド値を低下させる薬剤 ニコチン酸誘導体 ニコモール、ニセリトロール、トコフェロールニコチン酸エステル 脂肪組織のアデニル酸シクラーゼを阻害し、cAMPの産生を抑制するこ とで、脂肪組織からの遊離脂肪酸の動員を抑制  ➡肝におけるVLDL産生を減少させることにより血清TGを低下させる LPLを活性化しTGの分解を促進させる 副作用:末梢血管拡張による顔面及び上半身の紅潮、かゆみ 少量から投与を開始し漸増する 副作用の末梢血管拡張作用を利用して 末梢循環障害に使われることが多い 脂肪組織 AC リパーゼ グリセロール 3× RCOOH TG ユベラNカプセル (トコフェロール ニコチン酸エステル) コレキサミン錠 (ニコモール) ペリシット錠 (ニセリトロール)

模擬処方箋

処方① 小島 雅子 生年月日:昭和24年8月4日 Rp1)アムロジン錠 5mg 1錠 1日1回 朝食後 28日分 コジマ マサコ 小島 雅子 生年月日:昭和24年8月4日 Rp1)アムロジン錠 5mg     1錠     1日1回 朝食後 28日分 Rp2)リピトール錠 5mg    1錠   1日1回 朝食後     28日分 ○他科受診:整形外科 ○併用薬:アルファロール、ボナロン、      ロキソニン、ムコスタ ○検査データ:LDL-C 170mg/dL、BMI 24 患者メモ 高血圧でずっとアムロジンを服用してきたが、コレステロールが高くなってきたので、今回よりリピトールが追加になった。              整形外科の薬も飲んでいるので、あまり薬はたくさん飲みたくない様子。

処方①についての考察… “整形の薬も飲んでいるので、あまり薬はたくさん飲みたくない”との 患者の訴え ○薬を服用することの重要性を伝える ロキソニンのような整形の薬は 飲むと効果を自覚しやすいが 血圧やコレステロールの薬は 飲んでも効果を自覚しにくいため 飲む必要性を感じにくい?? 処方①についての考察… “整形の薬も飲んでいるので、あまり薬はたくさん飲みたくない”との   患者の訴え  ○薬を服用することの重要性を伝える   高血圧、脂質異常症等の放置は動脈硬化を促進させ、心筋梗塞や   脳梗塞等の命に関わる疾患を招くことを理解させる  ○合剤の提案   カデュエット3番   (アムロジピン5mg/アトルバスタチン5mg)

処方①についての考察… LDL-C 170mg/dL、BMI 24 ○生活改善のすすめ 食事療法、運動療法 ○具体的な目標値の設定  ○生活改善のすすめ   食事療法、運動療法  ○具体的な目標値の設定   60歳代女性、高血圧   ➡一次予防のカテゴリーⅡ   ➡脂質管理目標値(mg/dL)    LDL-C:<140 HDL-C:≧40  TG:<150 non-HDL-C:<170

処方② 渡辺 紀子 生年月日:昭和42年5月5日 Rp1)リポバス錠 5mg 1錠 1日1回 夕食後 28日分 ワタナベ ノリコ 渡辺 紀子 生年月日:昭和42年5月5日 Rp1)リポバス錠 5mg       1錠    1日1回 夕食後      28日分 Rp2)ゼチーア錠 10mg     1錠    1日1回 夕食後      28日分  ○併用薬:眠剤、爪白癬 患者メモ 2年間リポバスを服用していた。 今回LDLコレステロールが基準値を超えていることからゼチーア錠が追加となった。 先生に「女性はホルモンの関係で高齢になるとコレステロールは上昇しちゃうから、落ち込む必要はないよ」と言われたので、どちらかというとこれからの季節、サンダルを履きたいが、爪が白くなっていることのほうがコレステロールより心配そうである。 昨日皮膚科に受診し、初めて爪白癬の薬が出た。

処方②についての考察… 爪白癬の薬が出た ○イトラコナゾールやミコナゾールはリポバスと併用禁忌  ○イトラコナゾールやミコナゾールはリポバスと併用禁忌   イトラコナゾールやミコナゾールはCYP3A4を阻害し、   リポバスの代謝を阻害するため、併用により急激な腎機能悪化を伴う   横紋筋融解症があらわれやすい  ○アゾール系抗真菌薬と睡眠薬トリアゾラムは併用禁忌  ○相互作用のないスタチン系に変更の提案   CYP3A4が関与しないものに変更   ➡プラバスタチン(メバロチン)、ピタバスタチン(リバロ)

処方③ 山田 和夫 生年月日:昭和28年5月15日 Rp1)レニベース錠 5mg 1錠 1日1回 朝食後 14日分 ヤマダ  カズオ 山田 和夫 生年月日:昭和28年5月15日 Rp1)レニベース錠 5mg     1錠    1日1回 朝食後      14日分    バイアスピリン錠 100mg  1錠 1日1回 朝食後      14日分 ロトリガ粒状カプセル    2g  1日1回 朝食直後     14日分 ○嗜好品:タバコ20本/日、酒はたまに飲む ○検査データ:血圧 130/70、        LDL-C 135mg/dL、TG 190mg/dL 患者メモ レニベース、バイアスピリンは数年前から服用している。今回職場が転勤になり他県から来た。こちらでは初めての受診だが、中性脂肪が高いと言われ、薬が追加になった。

処方③についての考察… ロトリガが追加になった ○ロトリガとバイアスピリンは併用注意 ロトリガは本剤は血小板凝集抑制作用を有するので、  ○ロトリガとバイアスピリンは併用注意   ロトリガは本剤は血小板凝集抑制作用を有するので、   バイアスピリンと併用すると出血を助長するおそれがある   ➡出血等の副作用に注意  ○ロトリガは食直後に服用   理由も併せて服用方法を説明 喫煙習慣あり  ○動脈硬化を進行させる大きなリスクファクター   ニコチン自体が強力な血管収縮作用を持つため、   血管内腔が狭窄し血圧が上昇、血流は低下

処方③についての考察… レニベースとバイアスピリンの処方 ○冠動脈疾患の既往の可能性  ○冠動脈疾患の既往の可能性 血圧 130/70、LDL-C 135mg/dL、TG 190mg/dL  ○具体的な目標値の設定   冠動脈疾患の既往   ➡二次予防   ➡脂質管理目標値(mg/dL)    LDL-C:<100 HDL-C:≧40  TG:<150 non-HDL-C:<130   ➡血圧:140/90mmHg未満 (診察室血圧) 135/85mmHg未満 (家庭血圧)

ご清聴ありがとうございました