安全対策セミナー (テロ補足資料編) 平成28年4月21日 在ベルギー日本国大使館
目次 1 ブリュッセルにおけるテロ事件(2016年) 2 ベルギーを取り巻くテロ情勢 3 テロの被害リスクを軽減するために
ブリュッセルにおけるテロ事件 (平成28年3月22日発生) (平成28年3月22日発生) 07:58 ブリュッセル国際空港出発ロビーに おいて2回の爆発。 09:11 ブリュッセル中心街へ向かう地下鉄が マルベーク駅を出発した直後、2両目 において1回の爆発。 この事件により32名が死亡、340人が負傷した。
ブリュッセルにおけるテロ事件 空港 マルベーク マルベーク周辺 26か国。国によって刑法の規定は異なるが、その影響を受けないようにするため「あなたはここ1年間で犯罪の被害にあいましたか?」と尋ねるという調査手法をとっている。 マルベーク マルベーク周辺
ブリュッセルにおけるテロ事件 3つ目の 爆弾(不発) 26か国。国によって刑法の規定は異なるが、その影響を受けないようにするため「あなたはここ1年間で犯罪の被害にあいましたか?」と尋ねるという調査手法をとっている。
ブリュッセルにおけるテロ事件 (朝日新聞より)
ベルギーを取り巻くテロ情勢 (1)欧州の首都ブリュッセル (2)有志連合の一員として空爆に参加 (3)数多くの若者が「イスラム国」に渡航 (4)“テロリストの温床” モレンベーク
欧州の首都ブリュッセル ・首都ブリュッセルは、欧州連合(EU)関係機関、北大西洋条約機構(NATO)本部を始めとする多くの国際機関があり、「欧州の首都」とも呼ばれている。一方で、テロリストにとってブリュッセルは、「世界に大きなインパクトを与えられる攻撃対象」であるともいえる。 ・ベルギーは、シェンゲン協定によって 欧州各国との出入りが自由にできるように定められている。しかし、各国(捜査当局)間の情報共有には課題が残されている。
有志連合の一員として空爆に参加 (平成28年3月24日付 毎日新聞)
ベルギーを取り巻くテロ情勢 外国人戦闘員の出身国 ヨーロッパからシリア等に入国した外国人戦闘員は5,000人強であるが、そのうち3,700人についてはフランス、イギリス、ドイツ、ベルギーの出身者である。 出典:ICSR(2014年)
人口100万人当たりの外国人戦闘員数 ベルギー デンマーク スウェーデン フランス オーストリア オランダ フィンランド イギリス ドイツ 出典:ICSR(2014年) ベルギー デンマーク スウェーデン フランス オーストリア オランダ フィンランド イギリス ドイツ アイルランド スペイン イタリア
数多くの若者が「イスラム国」に渡航 ・ベルギーの若者が「イスラム国」を目指す理由には様々なものがあると思われるが、その多くは 「学校の生活や就職において差別を感じており、社会に溶け込むことができない。」 「自分のアイデンティティについて悩みがある。」 「“西欧社会の自由”が重荷であるように感じられ、何か権威のあるものに従いたい。」 という不満・不安があるせいではないか などの意見がある。
失業率(平均,25歳未満)(2014年) モレンベーク 28.3%,37.3% ブリュッセル市 22.7%,32.4% サン・ジル 2013年5月7日付 Le soir モレンベーク 28.3%,37.3% ブリュッセル市 22.7%,32.4% サン・ジル 24.4%,31.6% スハールベーク 23.9%,34.3% イクセル 18.9%,28.6% W.S.ランベール 11.6%,22.4% W.S.ピエール 9.8%,21.7% アンデルレヒト23.5%,32.11% サン・ジョス:29.9%、37.45% フォレ 21.6%,35.0% ユックル 13.0%,26.4% W.ボワフォール 12.0%,26.3% オーデルゲム 11.7%,24.8%
イスラム教徒の割合(2013年) モレンベーク 38.5% ブリュッセル市 29.8% サン・ジル 24.7% スハールベーク 37.1% Amount of Muslims in Belgium per municipality – Vivid Maps モレンベーク 38.5% ブリュッセル市 29.8% サン・ジル 24.7% スハールベーク 37.1% イクセル 14.5% W.S.ランベール 6.5% W.S.ピエール 4.0% アンデルレヒト28.6% サン・ジョス:43.7% フォレ 21.9% ユックル 6.1% W.ボワフォール 3.9% オーデルゲム 5.6%
“テロリストの温床” モレンベーク ベルギーは1960年代からトルコ、モロッコ等からの移民を労働力として受け入れ始め、その結果都市部等において大きな移民問題を抱えることとなった。特に有名なのはモレンベークである。 1992年から2012年までモレンベークの首長を務めたフィリップ・ムロー氏はその寛大な移民政策で知られていた。同氏は違法状態にある多くの移民が「結婚」を理由に“合法化”されることを黙認したため、モレンベークにおける移民の数は急増したとされる。
“テロリストの温床” モレンベーク ベルギーは2006年にヨーロッパ以外の外国人にも地方レベルの選挙権を与えることとしたが、ムロー氏にとって移民は“票田”となるため、同氏の寛容な移民政策は選挙を意識した「人気取り政策」との指摘もなされている。 2015年11月に発生したパリ連続テロ事件はモレンベークで計画・準備されたと考えられており、メディア等から“テロリストの温床”などと称されている。
テロの被害リスクを軽減するために (1)テロリストによる標的の変化 (2)場所に関する注意点 (3)行動に関する注意点
テロの標的 かつて、ベルギーにおけるテロリストの標的はユダヤ博物館、シナゴーグ等のユダヤ教関連施設又は警察関係の施設だと考えられていた。 しかし、パリ連続テロ事件以降、テロの標的は武器を持たない一般の市民(ソフトターゲット)を大量に殺害できる場所に変化している。 “テロの標的となる場所”は、“一般犯罪が発生しやすい場所”と一致するようになったといえる。
場所に関する注意点 ブリュッセルは安全に出歩くことができる都市で あるが、以下のような場所では注意が必要である。 ・公共交通機関(電車、バス、トラムの車内) ・空港、駅、市場、コンサート会場 ・商店 ・カフェのテラス席 ・観光地 など
行動に関する注意点 1 逃げる テロの発生場所を特定し、そこから離れる。 2 隠れる 部屋の扉に施錠し、バリケードでふさぐ。 3 知らせる そして治安部隊の指示に従う。 ※別添「テロが発生した場合の対応」を参照
ご清聴ありがとうございました。
別添資料 1 テロが発生した場合の対応 2 ベルギーにおける警戒レベル
ベルギーにおける警戒レベル ベルギーに対するテロ等の脅威については、脅威度分析調整機関(OCAM)が、警察等から提供された情報に基づいて分析・評価している。 レベル1(わずか) テロは発生し得ない又はテロの脅威が存在しない。 レベル2(普通) テロが発生する可能性は小さい。 レベル3(重大) テロの可能性があり、発生し得る。 レベル4(とても重大) 非常に危険な状態であり、事態は切迫している。
ベルギーにおける警戒レベル OCAM発足(2006年)から2014年までの間、ベルギー全体としては特定の時期を除き「2」と評価されていることが多かった。 2007年12月21日、ニザル・トラベルシ(ベルギーの空軍基地に対するテロを計画していた容疑で逮捕・収監されていたチュニジア出身の元サッカー選手)を脱獄させようとした容疑で14人の被疑者が逮捕された。同人らはブリュッセルにおけるテロについても計画していたとされ、OCAMは警戒レベルを「4」に引き上げた。その後、2008年1月4日頃に「3」、3月7日ころに「2」に引き下げられた。 クライン・ブローゲル空軍基地
ベルギーにおける警戒レベル 2015年1月16日、大規模なテロが計画されていたことを受け、ベルギー全体について「3」とされた(3月9日に「2」に引き下げ)。 2016年11月13日にパリ連続テロ事件が発生したことを受け、翌14日、大人数が集まる可能性のある大規模行事について「3」に引き上げられた。 その後、捜査の進展を受け、11月16日、ベルギー全体について「3」とされた(特にブリュッセル首都圏については、21日から26日までの数日間「4」とされた。)。 現在も、ベルギー全体について「3」が維持されている。 クライン・ブローゲル空軍基地