テイラーメード医療のための 確率・統計 1.

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テイラーメード医療のための 確率・統計 1

テイラーメード医療 個人ごとに医療内容を変える 「個人ごとに医療内容が変わらない」 ことが原則であるために出てきたアンチテーゼ 「個人ごとに医療内容が変わらない」 ことが原則であるために出てきたアンチテーゼ 「個人ごとに医療内容が変わらない」とは?

お空はちっとも飛べないが、 飛べる小鳥は私のやうに、 地面(じべた)を速くは走れない。 私がからだをゆすっても、 きれいな音は出ないけど、    私が両手をひろげても、    お空はちっとも飛べないが、    飛べる小鳥は私のやうに、    地面(じべた)を速くは走れない。    私がからだをゆすっても、    きれいな音は出ないけど、    あの鳴る鈴は私のやうに、    たくさんな唄は知らないよ。    鈴と、小鳥と、それから私、    みんなちがって、みんないい。

診”断”とは Aさんは、疾患Xである 疾患Xであるなら、治療法はQである XかYか QかPか 択一・・・”断” 4

ラベル付け 没個性化 AさんにX(疾患)というラベルを貼る Xというラベルには(がついていれば)Qをする 5

現在のラベル付けは不十分(1) 試行錯誤型 AさんにX(疾患)というラベルを貼る Xというラベルには(がついていれば)Qをする Qが無効なら、Pをする Qで副作用が出るから、Pをする 6

現在のラベル付けは不十分(2) 亜分類型 細かくなっているだけで、考え方は変わっていない AさんにX(疾患)というラベルを貼る XにはXa,Xb,Xcのタイプわけがある XaにはQをする XbにはRをする XcにはSをする 細かくなっているだけで、考え方は変わっていない 7

医療者側からの テーラーメード化要請 患者-治療の良い対応付け 治療メニューから最善方法を選択 効果を出して 副作用を避ける

治療開発側からの テーラーメード化要請 患者-治療の良い対応付け 全員に効果があって、全員に副作用がないことが「使用許可」の条件 全員に効果はなくとも、一部には効果あり 全員に副作用はなくとも、一部には副作用あり 使用可能な治療方法の範囲が拡大

既存の治療 全員に効果があって、全員に副作用がない 『安全域の広い』治療方法 よく効くヒト・病気・状態を治療 よく効かないヒト・病気・状態も治療 使用量も変わらない・・・?

『安全域の狭い』治療 使うか使わないかの判断が難しい 容量設定が難しい メリット>デメリット メリット<デメリット の両方がある場合 メリット>デメリット メリット<デメリット の両方がある場合 容量設定が難しい 量によってメリット・デメリットが逆転しうる場合

個人・個別ケースの多様性 どんな分類ができるか?

Aさん 発病要因的な多様性 病気X 病気X 治療反応的な多様性 Aさん

病気の成因に関する多様性 「見え方」は同じだけれども、「そもそも違う病気」なら、分類すべし 「成因」 遺伝要因 環境要因 そのための情報は? そのためのエビデンスは?

病気の状態に関する多様性 同じ病気だけれども、状態が違う 状態に応じた治療 疾患のステージ 疾患の重症度 そのための情報は? そのためのエビデンスは?

個人の多様性が予後に影響する 同じ病気だけれども予後が違う 年齢・性別 既往歴 発病前の全身状態 そのための情報は? そのためのエビデンスは?

個人の多様性が治療反応性に影響する 同じ病気だけれども治療効果が違う 生理機能 遺伝的多様性 そのための情報は? そのためのエビデンスは? 肝・腎・心・肺・・・ 遺伝的多様性 薬物代謝酵素多型 そのための情報は? そのためのエビデンスは?

Aさんの個性 病気Xの成因としての 疾患の原因分類 Aさんの「発病前」の情報を得る 遺伝因子 環境因子 原因によるXの亜分類 原因が違えば、治療も違う(かも知れない) 疾患の原因分類 疾患は症候群・ヘテロ 亜分類しているだけ でも、「個性」で分類 Aさんの「発病前」の情報を得る 遺伝因子:家族歴、DNA 環境因子:問診

疾患Xの違い(疾患の個性) 原因の違い 状態の違い 疾患を調べるとは 疾患Xを調べて原因を知る 疾患を調べて、疾患を特徴付ける 「診断名」は同じでも 亜分類できる 病型から 病理診断 発現解析 Signature解析

治療法Qの作用の違い Aさんに対する違い Xに対する違い Qの薬物反応 疾患として違えば、Qへの反応性が違うことはありえる ADME Absorption 吸収 Distribution 分布 Metablism 代謝 Excretion 排泄 Xに対する違い 疾患として違えば、Qへの反応性が違うことはありえる 亜分類の活用 治療反応性は変化する 感染症:薬剤耐性 ガン  :薬剤耐性

個性を汲み取る 細かく亜分類 原因(遺伝因子・環境因子) 反応性(遺伝因子・疾患特性) カテゴリカルな分類 n1 x n2 x n3 x ... カテゴリ数 ものすごい数・・・

みんな違ってみんないいけど 「EBMする」ためには、各カテゴリに相当数のサンプルを集めて「立証」しなくては・・・ 細かい亜分類はやりすぎるのは不得策 じゃあ、どうする・・・

個性を汲み取りつつ、さじ加減 体重に応じてさじ加減 年齢に応じてさじ加減 腎機能に応じてさじ加減 肝機能に応じてさじ加減 (病気の程度に応じてさじ加減) さじ加減:量で調整

情報の拡大解釈利用・・・ エビデンス エビデンスの利用 新薬承認 新薬治験 方法と結果 エビデンスの方法・条件に完全に合致していない場合にどうするか 「拡大解釈」するに足るだけの「確固とした」「方法」と、「正確なケース情報」・・・?? 新薬承認 新薬治験 国内治験 海外治験

おまけ 時間経過で変わらないこと 時間経過で変わること 1度測定すればよい事柄・・・DNA配列 何度も測定したい事柄 発病要因的な多様性 治療反応的な多様性 時間経過で変わらないこと 1度測定すればよい事柄・・・DNA配列 時間経過で変わること 何度も測定したい事柄

DNA・ゲノム(不変部分) 遺伝子型 表現型 DNA・染色体の修飾など可変部分 RNA・ トランスクリプトーム タンパク質・プロテオーム 形質・フェノーム

疾患原因・薬剤応答性遺伝因子探索 GWAS

? ? ? ? ? ? DNA配列 次世代 シークエンス eQTL GWAS E1 E2 E3 E4 E5 D1 D1a D2 D1b エピゲノム修飾 ? 次世代 シークエンス eQTL ? ネットワーク (転写物・翻訳物) ? ? ? GWAS ? E1 E2 E3 E4 E5 疾患に共通する因子 D1 疾患とその亜分類 D1a D2 D1b D2b D3 D2a D2c D4 D5