塩害対策特別調査団(4/26)の調査および 塩害水田における塩分調査等の概要

Slides:



Advertisements
Similar presentations
防災部会 平成23年度前期総会. The table of contents 1 東日本大震災概要(寺林) 2 被災地現状(下山 SV) 3 トンガでの影響(工藤)
Advertisements

土木構造物の点検の流れ 平成24年11月28日 大阪府都市整備部 事業管理室 平成24年11月28日(水) 09:30 ~ 第1回南海トラフ巨大地震土木構造物耐震対策検討部 会 資料-3 1.
大阪城 OB P 寝屋川流域 総合治水対策 流域面積 約270k ㎡ 東西約14k m 南北 約19k m 寝屋川流域の特徴 淀川 大和川.
都市域で起こる水害の防止対 策 C07047 村上彰一 C07048 森田紘 矢 C07049 矢口善嵩 C07050 矢田陽 佑 C07051 山河亮太 C07052 山下優 人.
宮城県 3.11 被災地被害状況. 東日本大震災がもたらしたもの 広範囲に及ぶ災害 津波被害 原子力被害.
(より良いものを・より目的に合致したものを)
雨水吐越流が都市河川・堀川に与える影響について
1 地震の起こる場所 2 地震とは 3 プレートの運動の様子 4 断層の大きさとマグニチュード 5 揺れの長さ 6 マグニチュードと震度
スマートフォン、携帯電話、パソコン等による情報の取得
■5万円/10アールを助成(集約化要件を満たす場合6万円)
2015年関東・東北豪雨による常総市被災状況 1.住宅被害に関する状況 区分 全壊 大規模半壊 半壊 床下浸水 件数 50件 914件
高分子電気絶縁材料の撥水性の画像診断に関する研究
東北地方の 二重ローン問題         10bd020p 小瀬村 愛子.
イシガイ類幼生の魚類への寄生状況 魚類を介した移動に関する研究
森林と雨 ~雨と人と自然の関わり~ 発表者 浅川 岳 安東 憲佑 石井 笑子 岩井 悠人.
第3回「槇尾川ダム建設事業」等に関する有識者会議
水田湛水深モニタリングサービス 「農業水利サービスの定量的評価と需要主導型提供手法の開発」 インターフェイス開発グループ
講演概要 1.津波の被害 2.東日本大震災での農地被害 3.塩害とは 4.塩害の事例 5.除塩の研究 ~干拓地での研究を中心に~ 6.塩害調査 ~青森県沿岸域~ 7.除塩対策 8.おわりに.
自治体における震災アーカイブとは 東北大学災害科学国際研究所 災害アーカイブ研究分野 柴山明寛 東北大学災害科学国際研究所.
洪水の基礎知識 ※このスライドは非表示になっています 小高・洪水①・10分
洪水の基礎知識 ※このスライドは非表示になっています 中学・洪水①・10分
援農者の農業技術向上と農家の作業負担低減<<大阪府羽曳野地域>>
西大阪地域 高潮対策 (株)ニュージェック 齋藤 憲.
名古屋市内の地下水の 有効利用について 第11班 C07053 山下 芳朋 C07056 吉田 昴平
渇水と渇水調整会議 *渇水調整会議は世界でも例を見ないわが国独特のシステム *渇水被害の軽減に果たす役割 *利根川渇水調整会議
1 日本と世界の降水量 日本と外国の1年間の降水量を表しています。 世界の降水量の平均は807mm
地震が発生したら 『助け合って守る』 『自分の身は自分で守る』 行動するのは 『みなさん』です.
平成16年度はこれまで最多の10個の台風が上陸するなど、豪雨災害が頻発
 平成23年度 建設部会 活動報告 平成23年12月14日 公益社団法人 日本技術士会 建設部会.
新潟県中越地震における被害状況 1.下水道施設被害及び復旧状況 ○ 新潟県内9市11町4村で処理場12箇所・管渠34処理区で被害発生
前回の振り返り 資料6 2日目のカリキュラムに入る前に、1日目を簡単に振り返ります。
水質調査の現地観測手法について 茨城大学農学部 黒田 久雄.
地域における危険性の確認 資料4 前の時間で気象や土砂災害に関する知識を学びました。
地域における危険性の確認 資料3 前の時間で地震・津波に関する知識を学びました。
都市域における水害対策 10班 C07047 村上彰一 C07048 森田紘矢 C07049 矢口善嵩 C07050 矢田陽佑
9 水環境(4)水質汚濁指標 環境基本法(水質汚濁防止法) ・人の健康の保護に関する環境基準 (健康26項目) 
9 水環境(4)水質汚濁指標 ・人の健康の保護に関する環境基準 (健康26項目) 環境基本法 地下水を含む全公共用水域について適用
大山崎町洪水ハザードマップ(桂川浸水想定区域図)
土砂災害について.
(新)ふくしまアグリイノベーション実証事業【水田メガファームモデル事業】
図3 地球環境変動の中核的課題と動向 自然圏(Natursphäre) 人類圏(Anthropophäre) 生物圏 大気圏 水文圏 土壌圏
塩害促進条件の違いがRC床版の材料劣化に及ぼす影響
※今後、気象台や測候所が発表する最新の防災気象情報に留意してください。
灌漑強度の違いに着目した 被覆灌漑の有効性の検討
土壌水分が大豆の生育に及ぼす影響 生産環境整備学講座 灌漑排水学研究室 林 春奈.
下水道について 「水循環と下水道」 このマークは子ども向けスライドのマークです。.
みずから守るプログラム~大雨が降ったら~
レスキューWeb MAP 防災 減災 少子 高齢 産業 創出 レスキューWeb MAP誕生の キッカケ
津波・海環境G調査報告 (茨城大学東日本大震災調査 中間報告会)
日本学術会議主催 学術フォーラム 巨大災害から生命と国土を護る 災害に強い農業生産基盤の整備と国土保全 公益社団法人農業農村工学会 塩沢 昌.
社会奉仕.
トンネル栽培における 水消費メカニズムの解明
周辺圃場の土地利用変化が 水田の水需要に与える影響
(ほ場整備を契機に設立、WCS用稲作付けに特化した法人運営)
河川工学 -流出解析その2- 貯留関数法,タンクモデル,キネマティックウエイブ法
地震の基礎知識.
前回の振り返り 資料5 2日目のカリキュラムに入る前に、1日目を簡単に振り返ります。
宅地の液状化対策 国土交通省 都市局 都市安全課 平成31年3月更新.
長崎大学大学院生産科学研究科 環境保全設計学専攻修士課程1年 足達 亮
水田立地とコメ品質の関係 東京大学 山路永司 2019/5/1.
水田地帯における 小型魚類の分布状況と 環境要因について
スマートフォン、携帯電話、パソコン等による情報の取得
水平井戸による循環式浄化システム 解 析 事 例 マルチ水平ウェル研究会.
宅地造成等規制法の概要 国土交通省 都市局 都市安全課 平成31年3月更新.
水道施設のあらまし 配水池編 みんなで配水池のことを 学んでみましょう! 作成日 平成27年3月17日 改 訂
~ 東日本大震災復旧のための海洋関連技術 ~
F-08 避難のタイミング情報等_02 避難の目安 状況 発令の目安 どうするの 大雨・洪水注意報
落葉広葉樹林流域における 水文特性の比較 人工針葉樹林流域と 水利環境学研究室 久田 重太.
1月府・市町村合同地震・津波災害対策訓練の考え方
宮城県図書館 「東日本大震災文庫」の取組 宮城県図書館 震災文庫整備チーム 田中 亮
Presentation transcript:

塩害対策特別調査団(4/26)の調査および 塩害水田における塩分調査等の概要 農業農村工学会シンポジウム 「東日本大震災の津波による農地塩害と取組方向」                      2011.8.9(火) 塩害対策特別調査団(4/26)の調査および 塩害水田における塩分調査等の概要    宮城大学食産業学部 加藤 徹 千葉 克己

      (社)農業農村工学会の対応 ◆災害対応特別委員会(委員長:青山威康石川県立大学教授)      として、1)現地調査団の結成・現地派遣、2)災害復旧・復興技術相談、3)災害復旧に係る技術図書・データの提供、4)ウェブサイトに技術相談窓口を設置。

農業農村工学会東日本大震災農地塩害対策特別調査団の行程 (平成23年4月26日)    ●石巻市蛇田地区の除塩(代掻き)作業の視察と関係者との簡単な意見交換  ⇒●名取土地改良区に於いて懇談(被災状況の聞き取り、今後の対応についての意見交換;改良区は森理事長、総務課長、事業課長)  ⇒●名取土地改良区管内の被災状況視察と塩分調査   (名取土地改良区での意見交換会~現地視察まで地元の民放「宮城テレビ」が随行→夕方のニュースで放映)  ⇒東北農政局において調査結果の概要とりまとめ  ⇒●17:00~宮城県庁記者クラブにおいて調査結果の記者会見             ↓     4月27日朝刊、河北新報(社会面)、讀賣新聞(県内版)記事掲載   マスコミは、今回の塩害に注目するとともに、その対策には破壊された排  水機場や排水路等の早期復旧が必要と報道(地域の湛水排除のためにも)。 排水機場等の重要性についてこれだけ認識されたことはなかったのでは?

  石巻市蛇田地区における除塩のための代掻き作業(調査団視察;4月26日撮影)

名取市閖上地区の農地・宅地の被災状況(調査団視察;4月26日撮影)

  名取市閖上地区の農地の被災状況(調査団視察;4月26日撮影)

               <現地調査報告> 平成23年4月26日 ◆塩害等の調査  ▽農地の塩害の塩害被害の実態は、陸地への津波の浸入の形態・経路により、農地浅層までの塩類化、長期にわたる湛水による深層までの塩類化が認められる。このため、今後の対策にあたっては、塩害の範囲・濃度をできる限り定量的に把握・評価した上で、塩害形態に応じた手法を選択していくことに留意すべきである。 ◆塩害に対する基本的な視点(被害地域の現地調査を行い、議論し取りまとめた塩害に対する4つの基本的な視点) 視点1 塩害は現在も進行中(地盤沈下により、相対的に海面が上昇し、堤防等の被災箇所から海水の浸入が繰り返され、湛水域の下層に塩水クサビが浸入している。これにより地下水の塩分濃度の上昇が懸念される。) 視点2 塩害対策には確実な排水対策が必要(排水対策なくして塩害対策は成功しない。今回の地震で地盤が沈下し、排水系統の確保が重要である。)  視点3 塩害対策には大量の用水(真水)が必要(除塩作業は、用水を農地に繰り返しかける必要があり、また地下水が塩害を受けている場合には別途の水源が必要になることもあり、大量の水が必要である。) 視点4 塩分濃度等に対応した対策の実施が必要(地域により塩分濃度が異なるため、濃度の違いに応じた対策が必要である。)

塩害水田における塩分等の調査 ◆調査地の状況   排水機場が機能不全に陥っているため,灌漑水による塩害対策(除塩)ができず,稲作再開のめどが立っていない。   暗渠の除塩効果は知られるが,そのメカニズムはよくわかっていない。   弾丸暗渠などで暗渠の除塩効果がどれほど向上するのか不明。   ◆目的   雨水による除塩を進め,後の除塩作業に必要な灌漑水を節減するとともに,早期な稲作再開に寄与する。   暗渠による除塩のメカニズムを明らかにし,効果的な除塩法を考案する。   弾丸暗渠など農地の地下排水機能を高めることによってどれだけ暗渠の除塩効果が向上するのかを明らかにする。

調査地 津波の浸水区域 (水田2200ha) ガレキ類が多い区域 2週間以上海水が浸水した区域 1か月以上海水が浸水した区域 調査地はガレキ類がほとんどなく5日間程海水が浸水 Google Mapに加筆

調査圃場 試験区2 試験区1 作土の電気伝導度 作土の電気伝導度 2.86mS/cm(5/10) 3.47mS/cm(5/10) 弾丸暗渠あり(6/14施工) 30a区画 黒泥土 試験区1 作土の電気伝導度 2.86mS/cm(5/10) 弾丸暗渠なし 30a区画 黒泥土

調査内容 降雨後の暗渠排水量とその水の電気伝導度を測定 降雨後の土壌の電気伝導度を測定 雨 田面 疎水材 どれくらい塩分を含んだ水がどれくらい排水されるのか 土壌中の塩分は降雨でどれくらい低下するのか

調査機器 流量計と水質センサー 雨量計

暗渠排水量(5/24-7/25) 弾丸暗渠

地区排水が進まず,排水路の水位が上昇し,暗渠排水が一時停止,田面も湛水した。 大雨時の調査圃場(5/30)   地区排水が進まず,排水路の水位が上昇し,暗渠排水が一時停止,田面も湛水した。

暗渠排水量(5/24-7/25) 358mm 264mm(74%) 198mm(55%) 弾丸暗渠 弾丸暗渠施工後,排水量が増大

暗渠排水の電気伝導度(5/24-7/25) 暗渠排水量が「大」のとき,電気伝導度も「大」

暗渠からの塩素イオン排出量(5/24-7/25) 1,144kg 915kg 最大時間排出量 試験区1=11kg,試験区2=13kg

土壌の電気伝導度(5/10-7/9) 降水および暗渠排水ごとに電気伝導度が低下 試験区2が試験区1より低い傾向

雑草が生い茂る(畦畔部は除草剤で枯れている) 調査圃場(7/25)  雑草が生い茂る(畦畔部は除草剤で枯れている)

まとめ 暗渠を開放するだけでも雨で除塩は進む 弾丸暗渠を施工すると,暗渠排水量が増大し,除塩効果が高まる。 雨水による除塩を進めるためには秋の長雨の前に弾丸暗渠などで圃場の地下排水機能を高めておくことが重要。 暗渠排水の塩分濃度は排水量が大きいほど高い。 灌漑水を利用して急速な除塩を行うためには,暗渠排水量を大きくする工夫が必要。 急速な除塩には給水しながら湛水状態を保ち暗渠排水を行うことが有効か(30a区画の場合,給水量は3~5m3/hr程度)。

急速な除塩法(かけ流し暗渠排水) 灌漑水を入れながら暗渠排水を行う(湛水状態を保ち,強力な暗渠排水を続ける)。 灌漑水を入れ続ける 湛水状態を保つ 大量の排水と塩分 疎水材 この方式により,除塩作業の回数が減り,除塩に用いる水量を節減できる可能性もある。