公益社団法人日本青年会議所 2017年度 経済再生グループ 強い産業構造創出委員会

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公益社団法人日本青年会議所 2017年度 経済再生グループ 強い産業構造創出委員会 誰もが夢を描ける 雇用制度改革について 公益社団法人日本青年会議所  2017年度 経済再生グループ  強い産業構造創出委員会

はじめに 【誰もが夢を描ける雇用制度改革】 安定した雇用環境により、企業の生産性向上と、それによる消費増大が起こり、好循環を生み出すことができる。 企業が安定することは、労働者の将来への不安を解消するだけでなく、好循環を生みだす原動力となる。 誰もが夢を描ける雇用制度改革 生産性向上 企業収益の向上 将来不安の無い社会 経済再生 誰もが夢を描ける日本への回帰 雇用の安定

目次 【誰もが夢を描ける雇用制度改革について】 1.将来不安を無くす日本型雇用制度の推進 2.生産性向上へ向けた労働時間貯蓄制度の導入 3.新規雇用促進に繋がる企業社会保険料補助制度の導入 4.雇用安定化のための育児介護関連費用に対する支援 5.まとめ

1.将来不安を無くす日本型雇用制度の推進 関連法令 労働基準法 現状 高度成長期の日本企業の特徴的な雇用制度として終身雇用と年功序列制度があった。バブル崩壊以降、低成長が続く現代では両制度とも弊害ばかりが喧伝され、終身雇用制度を廃止する動きを活発化させており、崩壊の一途を辿っている。しかし、これらの制度には大きな利点もあった。これらの制度の弊害を克服し、利点を強化できるような雇用制度が求められている。 問題点 終身雇用、年功序列制度が失われることで、企業は安定した労働力を確保することが難しくなり、他方、労働者は将来が見通せなくなることで、消費が縮小しデフレが促進されている。 提案内容 終身雇用や年功序列に繋がる雇用制度を導入した企業に対し、生産性向上のための事業計画立案を条件として、補助金を交付する。 想定される 経済的効果 長期的な展望で人材育成への投資が行いやすいので、離職率の低下により教育費用・採用費用をおさえられ、生産性が向上する。また労働者も、将来に対する不安が軽減される結果、消費が拡大する。

終身雇用・年功序列制度のメリット・デメリット 1-2.現状 高度成長期の日本企業の特徴的な雇用制度として終身雇用と年功序列制度があっ た。バブル崩壊以降、低成長が続く現代では両制度とも弊害ばかりが喧伝され、終身 雇用制度を廃止する動きを活発化させており、崩壊の一途を辿っている。 終身雇用・年功序列制度のメリット・デメリット メリット 企業にとっては労働力の安定的な確保ができる 労働者の将来の不安の軽減 愛社精神の向上 景気低迷が長期化し、リストラや早期退職があたりまえのように行われており、事実上、終身雇用や年功序列は相当程度失われていると言える。しかし、その結果雇用の安定は失われ、企業側、労働者側双方で将来への投資が難しくなっているという現状がある。 デメリット 組織の硬直化 やる気のない社員の存在 人件費の調整が困難

1-3.問題点 終身雇用、年功序列制度が失われることで、企業は安定した労働力を確保する ことが難しくなり、他方、労働者は将来が見通せなくなることで、消費が縮小しデ フレが促進されている。 年功序列制度廃止 回答別 株式会社ネオマーケティングが運営するアンケートサイト「アイリサーチ」のシステムを利用したWEBアンケート方式。調査実施日:2015年2月26日(木)~2015年2月27日(金) レジェンダ・コーポレーション株式会社調べ。入社3年目までの社会人4,707名に意識/実態調査を行い、869名から回答取得(調査期間2012/7/6~7/17日) 年功序列について<あまり良くないと思う>と回答した方と、<良くないと思う>と回答した方でその理由を比較してみると、経営者、従業員共に『士気』や『雰囲気』に影響があると懸念している方が多いことが判明しました。特に、経営者の多くの方が感じているようです。  若者は終身雇用を望んでいるというアンケート結果がある。84.1%が賛成している。将来の不安が軽減されれば住宅や乗用車などの耐久消費財への消費活動も活発化することが考えられる。

1-4.提案内容 終身雇用や年功序列に繋がる雇用制度を導入した企業に対し、生産性向上のた めの事業計画立案を条件として、補助金を交付する。 必要最小限の仕事だけをこなし、生産性が低下する懸念に対し、生産性向上のための事業計画を条件とし、終身雇用・年功序列制度に繋がる仕組みを推進する企業に、補助金を交付する 支給の流れ 事業計画提出 都道府県 計画の認定 実施計画提出 都道府県労働局 受給資格の認定 事業計画の実施  ※1年間の計画事業実施  支給申請書提出 都道府県労働局 認定支給 ※事業計画の例 終身雇用と、一定の年功序列制度を前提に、昇給昇進の早期選抜や選抜社員の教育など、生産性向上に繋がる事業計画とする。 事業計画を1年間実施し、計画が達成されている場合に企業規模に応じて一定の補助金を支給する。

1-5.想定される経済的効果 長期的な展望で人材育成への投資が行いやすいので、離職率の低下による教 育費用、採用費用をおさえられ、生産性が向上する。また労働者も、将来に対す る不安が軽減される結果、消費が拡大する。 年功序列を重視した賃金体系が従業員に与える影響(企業の認識) 労働者側にとっても、定年するまで同じ会社で働き続けることができるため、精神的にも経済的にも不安材料がなくなり、住宅ローンなど長期的なローンも融資を受けられ、消費増大に繋がる。

2.生産性向上へ向けた労働時間貯蓄制度の導入 関連法令 労働基準法 現状 中小企業が労働者に支払う残業代が大企業並みに引き上げられ、企業の負担が増えると考えられる。 問題点 労働時間は長いが、労働生産効率が伸び悩んでおり、少子高齢化による労働需給減少に対応するために、効率よく生産できる雇用制度が求められている。 提案内容 労働者が口座に労働時間を貯蓄しておける制度。従来の均等配分時間原則とは大きく異なり、通常の労働時間を繁忙期などに配分することを可能にする。 想定される 経済的効果 企業は労働時間を減らさずに、労働需要の短期的な変動に対応する自由度が高まり、残業に必要な追加的な手当の支払いの必要がなくなる。また、人材活用の柔軟度が向上し、生産性向上による企業収益増に繋がる。

2-2.現状 中小企業が労働者に支払う残業代が大企業並みに引き上げられ、企業の負担 が増えると考えられる。 企業は時間外労働に対しての ※平成31年4月1日から、中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予が廃止される。平成22年の労働基準法改正で1ヶ月あたり60時間を超える時間外労働に対して5割の割増率で計算した割増賃金を支払うことが決定されたが、中小企業は当面の間割り増し率の適用が猶予されていた。平成26年8月ごろから猶予を見直すことが検討されていたが、平成31年の4月1日から割増賃金率の適用猶予の廃止が決定した。 企業は時間外労働に対しての 賃金負担が増大していく。

上記表のように、日本に比べドイツの労働時間は短いが、左記表の通りドイツの生産性は高い 2-3.問題点 労働時間は長く、労働生産効率が伸び悩んでおり、少子高齢化による労働需給 減少に対応するために、効率よく生産できる雇用制度が求められている。 上記表のように、日本に比べドイツの労働時間は短いが、左記表の通りドイツの生産性は高い 出典:(日本生産性本部 http://www.jpc-net.jp/intl_comparison/)

2-4.提案内容 労働者が口座に労働時間を貯蓄しておける制度。従来の均等配分時間原則とは 大きく異なり、通常の労働時間を繁忙期などに配分することを可能にする。 ドイツでは、企業と従業員は通常の労働時間の強い拘束から解放された。従業員は時間を積み立て、職場外での活動に自由に使うことが可能となった。他方、企業は残業に必要な手続きや追加的な手当の支払いなどの制約を受けなくてすむようになった。また、労働需要が変動しても、企業は投入する労働力の調整を、従業員数ではなく労働時間の調整によって実現することが可能となったのである。 貯蓄 職場で定めた労働時間と、実際に働いた時間の差を勤務先の口座に積み立て、後から従業員が有給休暇などに振り替えて利用できる仕組み。企業は残業時間を増やさず、生産調整ができる。 『より短く』から『より柔軟』へ 労働時間貯蓄制度の導入

2-5.想定される経済的効果 ・生産効率向上 ・企業収益増 が見込める。 企業は労働時間を減らさずに、労働需要の短期的な変動に対応する自由度が高まり、 残業に必要な追加的な手当の支払いの必要がなくなる。また、人材活用の柔軟度が 向上し、生産性向上による企業収益増に繋がる。 ・生産効率向上 ・企業収益増  が見込める。 導入効果 1.投下労働力量を変動する労働需要に合致させ、残業や残業手当の発生を回避し、在庫コストを引き下げ、休止時間を削減し、労働強度の改善を実現する。 2.季節的・周期的な需要の変動に、コストの上昇(雇用コスト、解雇コスト)や生産性の悪化をもたらす従業員数(熟練労働者の維持と企業特有の人材育成)の増減なしに対応することが可能になる。 3.従業員の視点からは、自らの時間主権を向上させ、ワーク・ライフ・バランスの必要条件を改善することが可能となる。

3.新規雇用促進に繋がる 企業社会保険料補助制度の導入 関連法令 法人税法、健康保険法、厚生年金保険法 現状   企業社会保険料補助制度の導入 関連法令 法人税法、健康保険法、厚生年金保険法 現状 社会保険料は、企業と従業員が折半で負担し、企業は負担した分については経費に算入することができる。しかし、社会保険料は年々上昇しており企業及び従業員の負担は増大している。 問題点 社会保険料の負担を嫌い、企業が正規雇用より非正規雇用を増加させることを助長させている可能性がある。 提案内容 会社負担分の社会保険料について、新規雇用の際の会社負担分については3年を上限に、その2/3の補助金を支給する。 想定される 経済的効果 現在、企業の人手不足が深刻になっている。そのため社会保険料の負担が軽減されれば非正規雇用から正規雇用へとシフトする企業が増加することが考えられる。安定した雇用環境により、企業の生産性向上と、消費増大が見込める。

3−2.現状 社会保険料の負担が年々増加し、企業経営を圧迫している。 所得税・住民税 可処分所得 従業員を雇用すると、従業員の給与から控除する社会保険料とほぼ同額を企業も負担することとなる。また個人の可処分所得も圧迫している。 社会保険料 給与総額

3-3.問題点 社会保険料の負担を嫌い、企業が正規雇用より非正規雇用を増加させることを 助長させている可能性がある。 短時間労働の非正規雇用は社会保険に加入させる義務がないため、企業にとっては雇用しやすい。そのため、非正規雇用者数が増加、正規雇用が減少していると考えられる。 非正規雇用者の増加は日本経済にとって悪影響があるばかりでなく、人的資本の蓄積の弱化も懸念される。 総務省統計局HP 統計Today NO.97より

3-4.提案内容 会社負担分の社会保険料について、新規雇用の際の会社負担分については3 年を上限に、その2/3の補助金を支給する。 健康保険や厚生年金などの社会保険料が引き上げられ、法定福利費の占める割合が年々伸びている。 3年という期限を区切り、会社負担分社会保険料の2/3の補助金を支給する。長期間働く従業員は会社がその後は負担していく。短期で退職してしまう従業員への負担が軽減される。

3-5.想定される経済的効果 現在、企業の人手不足が深刻になっている。そのため社会保険料の負担が軽減 されれば非正規雇用から正規雇用へとシフトする企業が増加することが考えられ る。安定した雇用環境により、企業の生産性向上と、消費増大が見込める。 非正規雇用 正規雇用増加 労働者の所得増 消費増 企業収益増 生産性の向上 人的資本の蓄積 正規雇用増加 非正規雇用 ※月額給与30万円の正社員を雇用した場合 【労災保険】賃金総額の1,000分の2.5 (全額事業者負担) 【雇用保険】賃金総額の1,000分の13.5 (事業者8.5、労働者5) 【厚生年金】月額給与の約1,000分の178 (事業者と労働者で折半) 【健康保険】月額給与の約1,000分の10 (事業者と労働者で折半) 社会保険料の事業主負担分を計算すると、月収30万円で賞与や手当を含めて年収460万円の正社員の場合は、毎年「551,000円」かかることになります(2016年1月現在)。内訳は雇用保険と労災保険が合計50,600円、厚生年金と健康保険が合計500,400円かかる計算になります。 500,400円×2/3=333,600円 333,600円×3年=1,000,800円←補助金

4.雇用安定化のための 育児介護関連費用に対する支援 関連法令 子ども・子育て支援法、介護保険法 現状   育児介護関連費用に対する支援 関連法令 子ども・子育て支援法、介護保険法 現状 景気の低迷が続き、企業は経費削減の観点からバブル期には拡大していた福利厚生費を近年減少させている傾向にある。 問題点 企業にとって法定福利費の負担は上がる一方であるため、福利厚生費は削減されてきた。しかし、少子高齢化や人材不足などの社会の趨勢の変化から、福利厚生費の中で育児介護関連費用は増加しており、企業収益を圧迫している。 提案内容 育児介護関連の福利厚生制度を導入した企業は導入後3年間、同制度でかかった福利厚生費用の2/3の補助を受けることができる。 想定される 経済的効果 出産、育児、介護等の福利厚生費の補助により女性の雇用が増加、また女性が活躍しやすくなる。そして、雇用の確保と人材の効果的な活用は企業経営の安定化をもたらす。

4-2.現状 法定外福利厚生費は コスト削減の一環として 捉えられていた。 景気の低迷が続き、企業は経費削減の観点からバブル期には拡大していた福利 厚生費を近年減少させている傾向にある。 60年代から70年代あたりの高度成長期では、二桁の経済成長率に合わせて法定外福利厚生費も連年大きく伸びていたことがわかる。 90年代のバブル期で再び上昇するが、バブル崩壊からは成長率は下降の一途を辿ることになるわけだが、法定外福利厚生費は当初、若干の遅効性を見せながらも景気後退が深刻化し、長期化するに連れて短期的な連動性を強めることになる。 日本経団連「福利厚生費調査」より ※法定内福利費 福利厚生費のうち法律により資金の拠出が使用者に義務づけられている部分。健康保険・厚生年金保険・労災保険・児童手当の事業主負担分、身体障害者雇用納付金・労働基準法による法定補償金などである。 ※法定外福利費 福利厚生のうち、法律で義務付けられた法定福利以外に、企業が任意で実施するもの。交通費・住宅手当の支給、社宅の提供、法定健康診断以外の検診、育児支援、医療施設・社員食堂・レクリエーション施設の設置など、企業によってさまざまな施策・制度がある。 法定外福利厚生費は コスト削減の一環として 捉えられていた。

4-3.問題点 企業にとって法定福利費の負担は上がる一方であるため、福利厚生費は削減さ れてきた。しかし、少子高齢化や人材不足などの社会の趨勢の変化から、福利 厚生費の中で育児介護関連費用は増加しており、企業収益を圧迫している。 エン・ジャパンは2016年8月10日、「育児休業」に関する調査の結果を発表した。同調査は6月222日~7月19日、同社サイト「エン 人事のミカタ」を利用する企業233社を対象に、インターネットによるアンケートを実施している。 独自の取り組みで仕事と介護の両立支援を行う企業が増えてきた。  介護休業制度についても、対象者の範囲拡大、介護休業の延長や分割取得、介護休暇の延長、介護サービスにかかる費用の補助、在宅勤務など、法定以上の制度を定めている企業もある。 ・2015年度に企業が負担した福利厚生費は、初めて11万円を超えた。 ・福利厚生費のうち、法定福利費は、6年連続増加した。また、法定外福利費も9年ぶりに増加し、法定外福利費の伸びが現金給与総額、法定福利費の伸びを上回るのは02年度以来。今後もこの傾向が続くとみられる。

4-4.提案内容 育児介護関連の福利厚生制度を導入した企業は導入後3年間、同制度でかかっ た福利厚生費用の2/3の補助を受けることができる。 経団連が1955年度より毎年行っている2015年福利厚生費調査によると、企業が負担した法定外福利費は抑制傾向から一転し、9年ぶりの増加となった。 ※一例 この調査によると2015年の法定外福利費(任意の福祉施策費用)は月25,642円である。 25,642円×12か月×3年×2/3 =615,408円←給付金 法定外福利費×12か月×3年× 2/3=給付金

4-5.想定される経済的効果 出産、育児、介護等の福利厚生費の補助により女性の雇用が増加、また女性が 活躍しやすくなる。そして、雇用の確保と人材の効果的な活用は企業経営の安定 化をもたらす。 女性や高齢者の労働参加が全く進まない場合、労働力人口は60年に3,795万人と今より42%減少。30~49歳の女性労働力率を先進国最高のスウェーデン並みに引き上げ、60歳以上の労働者の引退年齢を5年遅らせた場合でも4,792万人と13年比27%減る。12年に1.41だった合計特殊出生率が2.07に回復した場合でも5,407万人と18%減少する。 福利厚生費の補助により、 人手不足の現在、労働人口増加は 企業経営の安定化と生産性向上に繋がる。 2014/3/12付日本経済新聞より

5.まとめ  2012年からの団塊の世代の大量退職により、労働人口が減少してきている。労働需給が減少し、現在人手不足になっている。この傾向は、出生率が2.0以上に改善されたとしても、今後20年以上は変わらない。  今こそ雇用制度改革を実現して、雇用イノベーションを起こし、経済再生を成し遂げ、誰もが夢を描ける日本へ回帰して行かなければならない。 企業支援 誰もが夢を描ける 雇用制度改革 生産性向上 消費増大 強い産業構造の創出