%1秒量を用いた呼吸機能の 再評価 ~前年データより受診勧奨者を探る~ 医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック 医療法人社団 新虎の門会 新浦安虎の門クリニック ○齊藤 智 大前 利道 大前 由美 沼本 美由紀 堀内 純 角谷 美佳 まず抄録と本発表のデータに、若干の訂正がございます。ここでお詫び申し上げます。 では、はじめます。
はじめに 2008年度より ドック呼吸機能基準(%) 従来のドック呼吸機能基準 1秒率<70 → 次年度の検診にて経過観察 1秒率<70 → 次年度の検診にて経過観察 2008年度より ドック呼吸機能基準(%) 1秒率<70 %1秒量≧80 1秒率<70 %1秒量<80 【コメント】 次年度の健診にて経過観察 受診勧奨として専門医への紹介 はじめに 2008年度より特定健診がはじまり、人間ドック学会の呼吸機能基準が見直されました。いままで人間ドック学会基準により、1秒率70%未満で、閉塞性肺疾患の疑いとされ、「次年度の検診にて経過を観察してください」との報告書コメントをだしていました。しかし今年度より%1秒量が加わり、この基準に該当すると、受検者に受診勧奨としての報告書コメントを出し、COPD疑いとして、初期のうちに呼吸器専門医への紹介が可能となりました。 COPD初期段階で呼吸器専門医への紹介が可能となる
背景 ・ 日本のCOPD患者数: 530万人 ・ 人間ドック学会の呼吸機能基準 1秒率・・・1年後の経過観察 1秒率 + %1秒量 ・ 日本のCOPD患者数: 530万人 (2001年 Nice Study調べ) ・ 人間ドック学会の呼吸機能基準 1秒率・・・1年後の経過観察 1秒率 + %1秒量 ・・・受診勧奨者として専門医での治療対象 背景 2001年Nice Studyによると、日本のCOPD患者は40歳以上の成人の8.5%、約530万人もいると言われており、国民衛生動向によると2000年に死亡原因の第10位となり、2020年度には、世界の死因別、死亡率 第3位になりえるといわれています。今年度より、呼吸器学会で用いられている、COPD病期分類を、人間ドック学会の呼吸機能基準でも使用することとなり、よりCOPD患者の早期発見、早期治療にとつながると考えられています。
目的 ・ 1秒率と%1秒量でのCOPD再評価 ・ 受診勧奨者の割合 目的 ・ 1秒率と%1秒量でのCOPD再評価 ・ 受診勧奨者の割合 目的 前年度、健診受検者を対象に、もし%1秒量を併用した、呼吸機能基準を使用していたら、どの程度の受検者が受診勧奨となりえていたのかを、報告します。
対象 ・ 2007年4月1日~2008年3月31日 ・ 40歳以上 スパイロメトリー測定者 ・ 測定者数3771名 40~84歳 ・ 2007年4月1日~2008年3月31日 ・ 40歳以上 スパイロメトリー測定者 ・ 測定者数3771名 40~84歳 男性2250名(平均51.0歳) 女性1521名(平均51.3歳) ※他疾患での気流制限 除外 対象 2007年4月1日から2008年3月31日の間に当院検診を受検し、スパイロメト リー測定を行い、事前の問診表から、その他の疾患による、気流制限を示す 、受検者は除外した方を対象としました。 40歳以上の成人3771名で、男性2250名(平均年齢51.0歳)、 女性1521名 (平均年齢51.3歳)でした。
使用機器 FUKUDA DENSHI社製 機種 :SP-350 COPD 使用機器 フクダデンシSP-350 COPDを使用しました。
方法 1 FVC立位測定(1秒率 %1秒量) 2 受診勧奨者の割合 3 nice studyと当院結果を比較 方法 1 FVC立位測定(1秒率 %1秒量) 2 受診勧奨者の割合 3 nice studyと当院結果を比較 方法 1は、FVCを立位で測定し、1秒率と%1秒量をだしました。 2は、前年度分の受検者データを使用してどの程度の受診勧奨者がいるか調べてみました。 3は、ナイススタディと当院結果の比較をしてみました。
結果1 FVC立位測定 (1秒率 %1秒量) 結果2 受診勧奨者となった8名の一覧表 測定項目 人数 (%) 1秒率<70 結果1 FVC立位測定 (1秒率 %1秒量) 測定項目 人数 (%) 1秒率<70 138 (3.7) 1秒率<70 %1秒量≧80 130 (3.5) 1秒率<70 %1秒量≦80 8 (0.2) 結果2 受診勧奨者となった8名の一覧表 性別 受診時年齢 1秒率 %1秒量 喫煙歴 備考 男 64 53.3 76.1 あり 喫煙(+) 喫煙指数400以上 63 45.8 65.4 女 55 47.7 68.1 無 甲状腺摘出後の状態 65 53.9 76.9 肺気腫(治療中) 46 48.9 69.8 喘息(治療中) 53.6 76.5 - 50.2 71.7 54 53.8 76.8 結果-1 FVC立位測定についての表です。 138名(3.7%)の方が有病者となりました。 受診勧奨となる受検者は8名(0.2%)で、この方達が呼吸器専門医への紹介をされます。 結果-2 受診勧奨となった8名の一覧です。 8名中喫煙指数が400を超えていた2名は、ともに男性、60代でした。早急に専門医での受診をすべき受検者であることがわかりました。 残り6名中3名が肺気腫、喘息、甲状腺摘出といった気流制限を伴う病気、もしくは状態がみられたので、除外しました。 その他3名ついてです。非喫煙者のCOPD疑いで受診勧奨の対象者になっているということになります。COPDの90%近くが喫煙を原因としておりますので、非喫煙者のCOPDは少数例報告となっています。 この3名中1名は、毎年当院で受検されるかたで、呼吸機能が例年よりかなり低値となっていたため、おそらく測定誤差と考えられます。そのほかの2名は、基礎疾患はあったものの、特に気流制限をともなう症状、病気は患っていませんでした。 現在ピークフロー値は検診結果に載せていないので、FEV(努力性肺活量)の検査精度は確認できませんでした。
結果3 nice studyと当院結果の比較表 受検者数、平均年齢、有秒率の比較表 nice study 当院結果 受検者数 (人数) 2666 3771 平均年齢 (%) 58 51 有病率 (%) 8.5 3.6 有病率の比較表 nice study(%) 当院結果(% ) 男 13.1 4.5 女 4.4 2.4 40-49歳 3.1 1.9 50-59歳 5.1 3.8 60-69歳 12.1 9.2 70歳以上 17.4 12.7 結果-3 これはNice studyと当院結果の比較表です。 受検者数、平均年齢、有病率を比較しました。 次に有病率を基に、性別、年代で比較をしてみました。 わかりやすく、グラフで説明します。
グラフ1 平均年齢と有病率の比較(nice studyと当院結果) グラフ2 有病率を性別と年代で比較 グラフ1は、平均年齢と有病率です。 平均年齢は当院結果が7歳若く結果がでました。 有病率はnice studyに対して当院結果3.6%となりました。 グラフ2は、有病率を性別、年代で比較しました。 性別での有病率は、ナイススタディの結果で男性優位となっていました。 年代ごとの有病率は、高齢なるほど高くなってなっています。
結語 【新ドック学会基準】 5名COPD疑い (受診勧奨者・専門医紹介) 【従来基準】 138名COPD疑い (1年後の経過観察) 【従来基準】 138名COPD疑い (1年後の経過観察) 1秒率<70(1基準) 【新ドック学会基準】 5名COPD疑い (受診勧奨者・専門医紹介) 1秒率<70 と %1秒量<80(ドック学会基準) 3名の非喫煙者について検討課題 結語 従来の基準でCOPD疑いとされ、1年後の経過観察と報告された138名のうち、特定健診の評価で受診勧奨となるべきであった受検者が5名存在することがわかりました。 判断材料としての基準が増えたことで、COPD疑いの受検者を、早期の段階で、呼吸器専門医へ受診を勧めることが可能となりました。 当院結果はナイススタディの有病率と比較すると、やや低くなっています。両者とも、COPD有病率は高齢になるほど高くなっています。Nice studyの平均年齢が58歳であるのに対して、当院の受検者の平均年齢51歳と7歳若くなっています。よって有病率も低くなっていると考えられます。 呼吸機能の評価に、%1秒量が加えることで、COPD早期発見、早期治療が可能となると検証されました。しかし当院結果では、COPD疑い受診勧奨者の5名中3名は非喫煙者であったことから、副流煙の影響なども積極的に検討する必要があります。 ご静聴ありがとうございました。 ★当院として今後の課題★ 当院結果のCOPD疑い受検者で、非喫煙者 →副流煙影響について検討