沖縄偏波降雨レーダー(COBRA)で観測 された台風0418号の風速場の特徴

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 フェーズドアレイ気象レーダーに よる局地的大雨の3次元詳細観測 佐藤晋介( NICT )、牛尾知雄、嶋村重治、円尾晃一 (大 阪大)、水谷文彦、和田将一(東芝)、花土弘、川村誠治、 浦塚清峰、井口俊夫( NICT ) 気象学会2013年度春季大会@国立オリンピック記念青少年総合センター 2013.
Advertisements

COBRA データの情報化と3次元可視化 佐藤 晋介・花土 弘・川村 誠治・岩井 宏徳・ 村田 健史・安井 元昭・浦塚 清峰( NICT ) NICT-HyARC 平成 23 年度共同研究集会 2012 年 2 月 28 日@名古屋大学 ES 総合館 沖縄偏波降雨レーダ( COBRA) X-band.
過去 100 年に観測された 夏季日本の気候変動 気象研究所 遠藤洋和 第 10 回ヤマセ研究会.
偏光ライダーとラジオゾンデに よる大気境界層に関する研究 交通電子機械工学専攻 99317 中島 大輔 平成12年度 修士論文発表会.
リモートセンシング工 学 2007 年 1 月 11 日 森広研 M1 本田慎也. 第 11 章 気象レーダーによる観 測 雲、雨、風など 気象災害 → 特に台風、集中豪雨、竜巻、 ウインドシアー 大気の激しい撹乱現象をレーダーで 観測し防災に役立てることが重要.
降水セルから見た 甑島ラインの形成過 程. 諫早ライン 1997/07/11/16:00JST 2001/06/19/11:30JST 五島ライン 五島列島 甑島列島 長崎半島 甑島ライン 2002/07/01/12:20JST 長さ:約 80km 長さ : 約 70km 長さ : 約 150km.
Determining Optical Flow. はじめに オプティカルフローとは画像内の明る さのパターンの動きの見かけの速さの 分布 オプティカルフローは物体の動きの よって変化するため、オプティカルフ ローより速度に関する情報を得ること ができる.
フェーズドアレイ気象レーダーの概念検討 佐藤晋介、安井元昭、村山泰啓、井口俊夫、熊谷博 (NICT) 1.はじめに
下左の図が,最大1時間降水量,下右の図が,最大24時間降水量の分布を示したもの.宮川,海山,紀伊長島で異常な量の降水があったことがわかる.また,津近辺でも大きな降水量があったことがわかる.左の図の+は,AMeDAS観測点,◆は,解析に用いた県の観測点(AMeDAS欠測のため).紀伊長島の観測点が,微妙に強雨域から外れていることがわかる.そのため,あとで示す統計値が,小さく出る.
高精度画像マッチングを用いた SAR衛星画像からの地表変位推定
レーダー観測データの多くは、ネットワーク上でアーカイブ/公開されていない 高速スキャンを実現するフェーズドアレイレーダーのアンテナ部外観
島田照久(1) 沢田雅洋(2) 余偉明(2) 川村宏(1)
数値気象モデルCReSSの計算結果と 観測結果の比較および検討
10.時系列データの解析 time-series data
コリオリ力の復習資料 見延 庄士郎(海洋気候物理学研究室)
(Precipitation Radar)
自作電波望遠鏡による木星電波の検出 園田愛実 冨田敬人 静岡県立磐田南高等学校 地学部 天文班
(Fri) Astrophysics Laboratory MATSUO Kei
アンサンブルハインドキャスト実験結果を用いたイネ葉いもち病の発生確率予報の精度検証
時空間的に連続な3次元レーダーデータの利用可能性
佐藤 晋介、井口 俊夫(NICT)、水谷 文彦、和田 将一 (東芝) 牛尾 知雄、吉川 栄一、河崎 善一郎(大阪大)
400 MHz帯ウィンドプロファイラ ・RASS観測による亜熱帯域温度微細 構造の観測
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
400MHz帯WPR/RASSによる 梅雨前線帯の降水過程と温度場の観測
次に 円筒座標系で、 速度ベクトルと加速度ベクトルを 求める.
みさと8m電波望遠鏡の性能評価 8m (野辺山太陽電波観測所より) (New Earより) 和歌山大学教育学部 天文ゼミ  宮﨑 恵 1.
小惑星を探れ! 村仲 渉 (木曽高校)  杉本 寛 (上宮高校)  佐藤 駿 (オイスカ高校)  鈴木 寿弥 (磐田南高校) 池内 苑子 (大宮高校)  吉川 優衣 (広島国泰寺高校)  斎藤 杏奈 (洗足学園高校)  §1.はじめに ②太陽から小惑星までの距離 小惑星の軌道は円と仮定する。小惑星の軌道半径をaA、周期をTA、地球の軌道半径をaE、周期をTEとすると、時間tでの小惑星の移動距離dA、地球の移動距離dEは、
A④_05 (チーム4:雲解像モデリング) 「雲解像モデルの高度化と その全球モデル高精度化への利用」
気象庁極座標レーダーデータの活用方法 -沖縄糸数レーダーとCOBRAのdual-Doppler観測-
400MHz帯WPR/RASSによる 冬季沖縄の大気境界層の観測
情報検索課題 ・室戸台風に関する当時の記事を入手 中央気象台に最低気圧データが  もたらされた日を調べよ.
いまさら何ができるのか?何をやらねばならないのか?
CMIP5マルチ気候モデルにおける ヤマセに関連する大規模大気循環の 再現性と将来変化(その2)
ランダム不均質媒質中の非等方震源におけるベクトル波エンベロープ合成
通信情報システム専攻 津田研究室 M1 佐藤陽介
物理学Ⅰ - 第 2 回 - 前回の復習 運動の表し方 位置と速度(瞬間の速度) 速度と平均速度、スピードはしっかり区別
東京商船大学における 地上気象データの解析
はしもとじょーじ(岡山大学自然科学研究科)
近年の北極振動の増幅 Recent Arctic Oscillation amplification
2013年7月のヤマセについて 仙台管区気象台 須田卓夫 昨年のまとめ(赤字は研究会後の調査)
大気レーダーのアダプティブクラッタ 抑圧法の開発
夏季における首都圏の ヒートアイランドの実態について
河川工学 -流出解析その1- 合理式と単位図法
沖縄偏波降雨レーダー (COBRA)で観測された 晴天境界層エコーと積雲対流
ロスビー波( Rossby wave) 渦度 (vorticity) 順圧非発散流(絶対渦度の保存) ポテンシャル渦度(渦位)
沖縄バイスタティック偏波降雨レーダー(COBRA)による次世代の気象レーダー観測
※今後、気象台や測候所が発表する最新の防災気象情報に留意してください。
Chiba campaign MAX-DOAS(2D) day9 2017/11/29
Chiba campaign MAX-DOAS(2D) day2 2017/11/22
長崎半島周辺における 停滞性降雨帯(諫早ライン)の 構造と発達過程に関する研究
Triple Doppler radar analysis
植生熱収支モデルによる いもち病感染危険度予測を目指して
流氷運動の数値予測における氷の初速度の算定法について
2009年7月9日 熱流体力学 第13回 担当教員: 北川輝彦.
400MHz帯WPR/RASSによる風速と気温 プロファイルの定常観測の現状と課題
移動ロボットの速度制御 桐蔭横浜大学 箱木研究室 T20R001 あべ松雄太.
Chiba campaign MAX-DOAS(2D) day1 2017/11/21
CMIP5気候モデルにおける ヤマセの将来変化
梅雨前線に伴う沖縄島を通過した 線状降水システムの構造の変化
学部生対象 地球水循環研究センター(一部)説明会 趣旨説明
竜巻状渦を伴う準定常的なスーパーセルの再現に成功
佐藤晋介(NICT)、古本淳一(京大生存研) 科研費研究 「局地豪雨予測のための先端的データ同化と雲解像アンサンブル手法に関する研究」
MIROC5による将来のヤマセの再現性について(2)
地球環境気候学研究室 513M230 松本直也 指導教員 立花義裕
Chiba campaign MAX-DOAS(2D) day /12/04
400MHz帯ウィンドプロファイラとCOBRAで観測された台風0418号の鉛直構造
地上分光観測による金星下層大気におけるH2Oの半球分布の導出
わかりやすいパターン認識 第6章 特徴空間の変換 6.5 KL展開の適用法 〔1〕 KL展開と線形判別法 〔2〕 KL展開と学習パターン数
Chiba campaign MAX-DOAS(2D) day7 2017/11/27
高計数率ビームテストにおける ビーム構造の解析
Presentation transcript:

沖縄偏波降雨レーダー(COBRA)で観測 された台風0418号の風速場の特徴 佐藤晋介*1 、長濱紘子*2 、花土弘*3 、 中川勝広*1 、高橋暢宏*4 、井口俊夫*4 *1 NICT沖縄亜熱帯計測技術センター *2 東京学芸大学 気象学研究室 *3 JAXA GPM/DPRプロジェクトチーム *4 NICT降水レーダグループ 気象学会2005年度春季大会 専門分科会 「2004年の台風はなぜ異常だったか?」 5月18日@東京大学本郷キャンパス

台風0418号(SONGDA)の特徴 <本研究の目的> COBRAのほぼ真上を通過 した軸対称性の良い台風 0418号の「風速場の特徴」 998hPa 27 28 29 30 31 01 02 03 04 05 06 07 980 975 945 935 940 08 970hPa 925hPa 沖縄県名護市で沖縄本島での観測史上最低の気圧925.2hPa (AMeDAS)を記録 (9月5日18時JST) 広島市で60.2m/s、札幌市で50.2m/sの最大瞬間風速を記録。北大のポプラ並木を倒すなどの被害。 09/05, 09JST 09/08,09JST <本研究の目的> COBRAのほぼ真上を通過 した軸対称性の良い台風 0418号の「風速場の特徴」 を地上気象観測データと ドップラー速度から調べる 09/05, 12JST 09/08,12JST

COBRA観測範囲とNICT 地上気象観測システム 大宜味大気観測施設 10分毎のシーケンス ・PPI (14-EL angles) ・RHI (4 AZ angles) ・POS (EL=90 deg) 名護降雨観測施設 (COBRAサイト) 沖縄亜熱帯計測技術 センター(恩納) 主な観測量(+45送信、H/V受信) ・反射強度、ドップラー速度 ・偏波データ(ZDR, (LDR), ρHV, φDP) <COBRA観測データ ~18 時間> 1030JST: dual-Cycleモード(TWTAパルス圧縮) | 1800JST:台風中心がCOBRAサイトを通過 1950-2120JST:1時間30分の欠測 2230JST以降: dual-PRFモード(Klystron) 9/6, 0430JST(1930Z)以降: 発発故障により欠測 与那国海洋観測施設 280 km 石垣市立野底小学校 距離分解能:150 m/300 m ビーム幅:0.9 deg <解析に使用したデータ> ・反射強度+ドップラー速度(PPI EL= 0.9 deg) ・COBRAサイトの地上気象観測データ

COBRAサイトを通過する台風 台風中心の移動速度 JST

COBRAサイト 地上気象観測データ 05SEP2004 TIME (JST) 06SEP2004 最大瞬間風速 56.1 m/s (18:57) 最大平均風速 29.8 m/s (16:58) 最低海面気圧 917.6 hPa (17:35) こちらの図は、名護での地上気象観測システムによって観測された、風速と気圧のグラフです。 この日名護では、観測史上最低の気圧、917.6ヘクトパスカルを記録しました。 風速:正時前10分間の平均風速。ある時間内に移動した空気の吹送距離を風程といい、これを移動距離で割った値。 気象庁が発表する日平均風速は24時間の風程から求められたもので、毎時の観測値の24個の平均ではない。「気象科学事典」 05SEP2004 TIME (JST) 06SEP2004 <台風中心> 瞬間風速 4.5 m/s (18:01) 平均風速 4.2 m/s (18:05)

気圧変化から求めた傾度風 1) COBRAで求めた台風中心の移動速度から時刻を距離に変換する 2) 気圧変化からHolland(1980)の式による回帰曲線を求める 3) 気圧傾度力(と遠心力+コリオリ力)から、傾度風を求める ・ 旋衡風速(傾度風)の大きさは、最大瞬間風速と同程度 ・ 旋衡風速の最大半径(Rm=47 km)は観測値(Rm=15~30km)より大きい

ドップラー速度の解析方法(1) ~折り返し補正~ 観測(生)データ シミュレーション(参考値) 折り返し補正後 Vmax=5.6 m/s 5 m/s 40 m/s Dual- PRF (pulse by pulse) 与えた接線方向の風速成分 速度の連続性による 折り返し補正 Vmax=21.1 m/s 20 m/s 40 m/s

ドップラー速度の解析方法(2) ~接線速度成分の抽出~ ドップラー速度の解析方法(2) ~接線速度成分の抽出~ o θ 接線風速 ベクトル vθ   vd ドップラー速度 台風中心の移動 速度ベクトル vm vr 動径風速 ベクトル   x  y φ 接線速度成分 動径速度成分 移動速度成分 :台風中心から見た観測点の方位角 :レーダから見た観測点の方位角 :台風の移動方位角 接線速度成分の係数 動径速度成分の係数      接線速度成分の寄与率

ドップラー速度から求めた平均接線風速 0330Z ドップラー速度(観測値) 動径速度(Vr=0)と移動速度 成分を差し引いた結果 台風中心に対して一周平均 した接線速度 接線速度成分 動径速度成分 移動速度成分 観測されるドップラー速度 :台風中心から見た観測点の方位角 :レーダから見た観測点の方位角 :台風の移動方位角

平均接線風速と地上観測の比較 ・ ドップラー速度から求めた平均接線風速 (高度2~4 km)は、傾度風の大きさ(~ 地上観測の最大瞬間風速)とほぼ一致。 ・ 接線風速最大となる半径は、18~20 kmでアイウォールの半径とほぼ一致。 半径20kmの円 2重のアイウォール

ドップラー速度 (m/s) [折り返し補正なし] 台風中心部の時間変化(10分毎) 反射強度 (dBZ) ドップラー速度 (m/s) [折り返し補正なし]

まとめ・今後の課題 ◇ 1台のドップラーレーダー観測から求めた平均接線 風速(高度2~4 km)は25~40 m/sで、傾度風の 大きさとほぼ一致した。 ◇ 接線風速が最大になる半径は~20 kmで、アイ ウォールの半径と良く一致した。 ◇ 地上観測で得られた2つの風速ピークは、アイ ウォールの2重構造に対応すると考えられる。 △ 降水バンドおよび風速場の3次元構造 → 降水バンドによる風速強化(?)のメカニズム解明 △ 数値予報モデルとの比較、インプット(データ同化) → 予測精度の向上 今後は、このようなドップラー速度図を用い

平均接線風速と動径風速 (同心円状に一定) 移動速度成分 除去のエラー 0330Z 0330Z 0330Z 1230Z 1230Z

PPI+RHI 1330JST (velocity aliasing) Vmax=5.61 m/s eye-wall bank eye-wall bank RANGE (0-100 km) RANGE (0-100 km) Vmax=14.04 m/s

PPI+RHI 1800JST(ほぼ台風中心) Vmax=5.61 m/s eye-wall convergence RANGE (0-100 km) RANGE (0-100 km) Vmax=14.04 m/s

PPI+RHI 2230JST Vmax=21.14 m/s Vmax=14.04 m/s RANGE (0-100 km)

COBRA観測シーケンス COBRA+ (DualCycle Beam) COBRA (Dual-PRF)

TRMM観測データ 09/05, 0443JST 09/05, 1115JST 09/06, 0525JST

等価地球半径によるビーム高度