PFハイブリット運転用の 光パルスセレクター

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PFハイブリット運転用の 光パルスセレクター 物構研 田中宏和

光パルスセレクターとは PFの光パルスセレクターとは、ハイブリッドモード運 転時に大強度のシングルパルス部のみを取り出すための ものである。 ここだけを取り出す PFリング 624nsで繰り返し ハイブリッドモードの 電子フィルパターン ハイブリッドモードの発光パターン

ハイブリッドモードとは(1) PFでは、時分割測定による動的な状態の測定のためのシングルバンチモードと静的な状態を調べるためのマルチバンチモードが用いられてきた。 シングルバンチ モード 624nsで繰り返し PFはご存じのとおり放射光施設で、放射光とは光速に近い電子が曲げられたときに出る強い光で、それを用いて実験します。 PFでは、312バンチのバケットがあり、シングルバンチモードでは、そのうち一つのバンチにだけ電子を詰め込むため、強いパルス状の光が出ます。それに対して、マルチバンチモードでは、広い範囲のバンチに電子を詰め込むので、次々と光が来ます。 そのため、動的な状態の研究にはシングルバンチが、静的な状態の研究にはマルチバンチが用いられてきました。 マルチバンチ モード 624nsで繰り返し 電子フィルパターン 発光パターン

ハイブリッドモードとは(2) シングルバンチモードでは、一つのバンチにすべての電子を詰め込むため、50mA程度が限界である。それに対して、マルチバンチモードでは広範囲のバンチに電子を入れることにより、450mAの電流を蓄積することができる。そのため、時間平均光量は、約10倍違い、静的な測定をするには、シングルバンチモードは、あまり魅力的でない運転モードであった。 シングルバンチ モード マルチバンチ 電流値 50mA 450mA パルス特性 パルス幅 100ps程度 繰り返し 624ns間隔      (1.6MHz) CWに近い

ハイブリッドモードとは(3) そこで、PFでは、ハイブリッドモードと言う、シングルバンチの半周とマルチバンチの半周を組み合わせたモードを試行することとなった。 これにより、電流値を450mAにしたまま、マルチバンチ部をチョップし、シングルバンチ部のみを取り出すことができれば、時分割測定も行うことができる。 PFリング ここだけを取り出す 624nsで繰り返し ハイブリッドモードの 電子フィルパターン ハイブリッドモードの発光パターン

光パルスセレクターとは(2) シングルバンチ部のみを取り出す方法は2通りある。 ①”信号”を選択 ②”光”自体を選択 元の光 元の光 ①”信号”を選択  ②”光”自体を選択 元の光 元の光 検出器の信号 チョップ後の光 ゲート信号 検出器の信号 =最終的な信号 最終的な信号 欠点 繰り返し周波数が低い 従来のX線チョッパーでは数kHz 利点 検出器に時間分解能は不必要 →多くの測定法にそのまま適応    このタイプを開発した。 欠点 検出器に時間分解能が必要 →長距離のTOFなども  測定できない     余分に試料にX線が照射される →長い緩和時間の現象は 利点 高繰り返しや短時間ゲートに対応 

軟X線パルスセレクターの開発 放射光の光チョッパー HX @ SP8:工藤・大沢 回転スリットディスク (tw:900ns,w:100μm,208kHz,同期) VUV@BESSY-II: S. Plogmaker et al, RSI83,013115(2012). 回転ディスク (tw: 750ns, w: 40mm,  120 kHz, 同期) VUV@PF: 伊藤健二ら, RSI80,123101(2009). 回転円筒 (tw: 350ns, w: 80mm, 80 kHz, 非同期) HX@ESRF: M. Cammarata et al., RSI80,015101(2009). 三角ディスク (tw: 190-420ns, w: 100-220mm, 1 kHz, 同期) HX@SLS: A. Meents et al., JAC42,901(2009). 回転ディスク (tw: 230ns, w: 50mm, 1 kHz, 同期) HX@APS: M. Gembicky et al., JSR12,665(2005). 回転ディスク (tw: 2110ns, w: 350mm,  22.6 kHz, 同期) (PF足立純一さん まとめ) HX(Hard X-ray)、VUV(Vacuum Ultra Violet) tw(Time window)、w(width)、同期はリングに対して。 これをベースにした

HX @ SP8をベースにするメリット 国内製で、改造に関する打ち合わせが容易。 軸受の芯ぶれが少なく(数μm、TMPの軸受は十 数μm)、短い開口時間幅(tw)と広い開口幅(w:光 量)を追及しやすい。 回転安定性がよいとのSPring-8の報告があり、 ジッタを小さく見積もれるため、開口が比較的 広くても実用になるとみられ、加工が楽になる。 また、光量の増加も期待できる。

開発の課題 HX⇒低真空、VUV⇒高真空 軸受がエアベアリングなのでガス源になるので、 その流入を抑える。 SPring-8のtw:900ns、PFのtw:300ns 許容される開口時間が短いので高回転化もしく は大径化とともにスリット幅wを小さくする。 予算の制約が厳しい(SPring-8で使われているも のをそのまま買う程度の予算での開発) HX(硬X線)は、物質の透過性が高いが、VUV/SXは透過性が低く、空気にも吸収されるため高真空が要求される。 HX 4keV程度以上      4keV=0.3nm以下の波長 VUV/SX 4keV程度以下 SPring-8はPFに比べて周長が長いので、開口時間の許容長さが長い。 PF周長187m:624ns SPring-8周長:1,436m:4800ns

エアベアリング概念図 高真空 真空槽(TMP) SR(VUV/SX) 高速回転&細いスリット スリット回転体 Vacuum (RP) 差動排気を介してBL真空(10-7Pa)に接続 高真空 開口許容時間300ns程度 真空槽(TMP) SR(VUV/SX) 高速回転&細いスリット スリット回転体 Vacuum (RP) Air out Air in Air out SPring-8のX線BLでは実績のあるエアベアリング

エアベアリング排気試験 エアベアリングを排気チェンバーにつけてTMPで排気を行った。 3.5×10-3Paまで排気できた。 図1 試験概念図 エアベアリングを排気チェンバーにつけてTMPで排気を行った。 3.5×10-3Paまで排気できた。 これに差動排気をつければ、BLに接続できると判断できた。 試験中、中間排気部のコンダクタンスで真空度が変化したため、中間排気部を強化するとより、高真空化できると推測し、ベアリングに改造を加えた。

スリット回転体の設計 スリット回転体は、SPring-8のφ125mmからφ200mmと径を大きくし、回転数を下げても外周の線速度を稼げるように設計した。 それでも、50~70μmとスリットを細くせざるを得なかった。 また、HXと違いVUVでは、薄い土手で遮蔽できることから、土手を薄くし、遠心力を軽減するため、軽量化するように設計した。 細いスリットは加工も難しい。

動バランス試験 動バランス試験をメーカーの方で行った。 SPring-8の物の製作の時の経験があるので、問題なくできた。 高速回転試験では、真空排気したうえで、設計回転数である20,000rpmに達した。 2011年12月に急に予算が付いて製作できることになり、急いで製作をした。

実用試験 中間排気部の改善をおこなったが、ほとんど真空度は改善しなかった。 そのため、フィルターを使って試験をすることになった。 差動排気を設計すると3mm角程度のピンホールを設計せざるを得ず、すると、アライメントが問題になるため、フィルターを用いた。 VAT ICF70 窓付きミニゲートバルブ用のフィルター (LUXEL社製) Al 薄膜 (メッシュに保持) 約 500Å (確か炭素 K 端領域の光で透過率70%程度) 2 枚で 30 万円 (税抜き) 受注生産品なので納期はそれなりにかかる

試験結果 実験装置を付けて、回転を上げたところ、振動が大きかったので、エアの圧力を調整したところ、エア切れが起こった。 ベアリングが固着しディスクがロックした。

反省点 完全に停止したのを確 認してから圧力を調整 すべきだった。 減圧弁や流れているエ アを確認する圧力計を 準備すべきだった。 圧力調整をレバー状の ON/OFF用のバルブで 行うべきではなかった。

まとめと今後の課題 エア圧降下は高速エアベアリングでは致命的。 修理とバッファとなるタンクときちんとした減 圧弁、それとインターロックを構築することが、 次に必要なことだと考えられる。 予算の制約が厳しくても、その辺を削っては、 かえって高くつくことになりかねない。 長期的には、真空の問題を解決できる磁気軸受 けのパルスセレクターを開発したい。