室蘭製油所 水素化分解装置(HDC) 火災調査概要

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冷媒回路のしくみ<ヒートポンプを分解すると>
第2章 機械の強度と材料 機械の必要条件 ★壊れない ★安全である ★正しく機能する そのためには・・・ ★適切な材料を使う
No.2 実用部材の疲労強度           に関する研究 鹿島 巌 酒井 徹.
AEによるしきり弁漏洩評価 しきり弁の漏洩の評価
今後の予定 7日目 11月 4日 口頭報告レポート押印 前回押印したレポートの回収 口頭報告の進め方についての説明 講義(4章),班で討論
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This issue sponsored by Messages for Manufacturing Personnel
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ポンプ軸受け部の管理 ① 1.軸受け点検 日常点検では軸受け部の損傷防止のため潤滑油の管理以外に、触手による滞熱、振動診断、聴診棒による音響の診断等で管理する。
低温物体が得た熱 高温物体が失った熱 = 得熱量=失熱量 これもエネルギー保存の法則.
断熱Low-Eガラスが冬期の自然室温に及ぼす効果
機械の安全・信頼性に関するかんどころ 機械製品に対する安全要求と設計方法 一般財団法人 機械振興協会 技術研究所.
【補足】 流出防止対策 実施のポイント解説 今回の豪雨災害の概要.
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本時の目標 電気機器の構造と回路図を用いた表し方を理解する。
今後の予定 7日目 11月12日 レポート押印 1回目口頭報告についての説明 講義(4章~5章),班で討論
建設工事保険 (1)工事物の物的損害  工事着工から工事完成の引渡しまでの間に工事現場で発生した自然災害や不測かつ突発的な事故により保険の目的(工事の目的物、材料等)に生じた損害につき保険金をお支払いする保険です。 (2)第三者賠償責任 事故が発生した際、その付近の第三者に対し、人的損害、物的損害を引き起こし、法律上賠償責任が生じた場合、その支払いについてもこの保険をお使いになれます。
1社あたり4分として、パワーポイント2枚以内とする 項目は「企業概要」「開発・設計機器等紹介」「アピールポイント」の3つ
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ポンプ軸封部の管理 1.軸封部 セルフ・フラッシングは、触手によってフラッシングラインの表面温度から内部流体が流れているか確認する。
13 室内空気環境 ○気温、気湿:アスマン通風湿度計 ○カタ冷却力:カタ温度計(カタ係数÷カタ温度計が38℃から35℃に下降するまでの時間)
火災爆発防止の取組 ラベル表示を活用した労働者の教育推進事業 平成28年度厚生労働省委託事業 ラベル表示を活用した
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23 造波機構における水位計の製作 1 はじめに 4 再現性の低下要因の実験 水位計の再現性の向上を目的としている. 2 実験装置
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室蘭製油所 水素化分解装置(HDC) 火災調査概要 2006年3月13日(月) 室蘭事故調査委員会

発災装置の位置 発災装置

発災ポンプ概略図 第1蒸留塔塔底油ポンプ (8DG-2A) 破損面

HDC概略フローと発災部位

発災のメカニズム 昭和57年の設置当初より、ドレン配管の硬度が高く、 「硫化物応力割れ」で亀裂が進行 亀裂が外部へ貫通し、微量の重油が保温材へしみ出し 運転の進行に伴いポンプ内部の重油温度が210℃を超え、 酸化・発熱・蓄熱の繰り返しで温度上昇 自然発火温度の410℃を超えた 亀裂が拡大・外部床面に漏洩し、火災発生 13:07 火災発見 発災部上部の配管の一部が焼損、火災拡大

発災の原因 漏洩(中圧ドレン配管破損)のメカニズム 着火のメカニズム   ➢ ドレン配管(3本)の硬化         硬度Hv460 (通常硬度 : Hv170~250)                           Hv : ビッカーズ硬度(硬度の測定方法・単位)   ➢ 水分と硫黄および応力の複合作用       ⇒ 「硫化物応力割れ」により3本中の1本が破損 着火のメカニズム   ➢ 原因は自然発火   ➢ 保温材の介在による特殊な機構での自然発火         酸化・発熱・蓄熱の繰り返しで自然発火

着火のメカニズム 着火要因 ◆保温材の介在による特殊な機構での自然発火 ①裸火、②電気火花、③高温物体、④落雷、⑤静電気、⑥自然発火   ①裸火、②電気火花、③高温物体、④落雷、⑤静電気、⑥自然発火   ➢ ①~⑤は発災時の状況から可能性なし   ➢ ⑥自然発火の可能性        ・内部重油温度 250℃        ・自然発火温度 410℃ 通常では自然発火しない ◆保温材の介在による特殊な機構での自然発火 【高圧ガス保安協会の断熱に関する基準(KHKS 0802(2005))にも記載】 開始温度210℃ 重油の 保温材への しみ出し 酸化・発熱 自然発火温度 に到達 (繰り返し) 火災 蓄熱

再発防止策 (1)既存機器の硬度点検の実施 硬度が高いことが懸念されるポンプの硬度確認 (実施済み) (2)ポンプ製作時の硬度確認    ・ ポンプ製作検査基準に、硬度測定を明確に記載する    ・ 硬度測定結果を確認する