総合周産期母子医療センターにおけるフォローアップ体制の整備 -フォローアップ率への影響要因-

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総合周産期母子医療センターにおけるフォローアップ体制の整備 -フォローアップ率への影響要因- フォローアップ班 分担研究者 河野由美 研究協力者 三科潤、本間洋子、渡辺と よ 子、佐藤紀子、 佐藤和夫、清水正樹、平澤恭子、鍋谷まこと、石井のぞみ、永田雅子、岡田洋一、米本直裕

フォローアップ体制の構築 平成16年(2004年)度研究「総合周産期母子医療センターにおけるハイリスク児フォローアップ体制の調査」 統一プロトコールを使用 26% フォロー率 超低出生体重児 3歳80%, 6歳70% 極低出生体重児 3歳60%, 6歳45% 心理士による発達・知能検査実施 40%

アウトカム指標のための統一プロトコールでのフォローアップ健診の提案 対象: 総合周産期母子医療センターを退院した 出生体重児1500g未満のすべての児 方法: ① ハイリスク児フォローアップ研究会健診 用紙(3歳用)に従う. ② 新版K式発達検査法を行う. ③ 3歳~3歳半頃に実施する

統一プロトコールによるフォローアップ実施の可能な施設数の変化 実施見込み 50 2 実施可能 ( )はK式検査 2 40 7 30 4 46 (42) 40 (36) 20 11 26 25 10 10 2004年度から全国の周産期ネットワーク班の施設での統一プロトコールによる3歳時のフォローアップを推奨し実施のための整備をおこなってきた。実施可能な施設数は年度ともに増加し、現在48施設で実施可能(見こみ)となっている。他に総合周産期センターに相当する4施設でも実施可能である。 2004年   38施設 2005年  48施設 2006年 1月  48施設 2008年 1月 2009年 1月 総合 施設総数 62施設 75施設 総合相当 施設数 4 施設

統一プロトコールによるフォローアップ実施の可能な施設の割合の変化 % 100 回答無し 90 80 実施困難 70 実施見込み 60 50 40 実施可能 30 20 10 しかし、総合周産期センターの指定施設数は増加しており、現在75施設に至っている。統一プロトコールでフォローアップ実施可能な施設の割合でみると2008年と2009年では65%前後でほぼ同率であった。新規に総合に指定された施設ではNICUでの人手確保も不十分なことが多く、フォローアップ体制を確立するためには、十分な人的、経済的バックアップが必要である。 2004年   38施設 2005年  48施設 2006年  48施設 2008年 62施設 2009年 75施設 2003年出生 VLBWI 3歳予後調査 2004年出生 VLBWI 3歳予後調査

VLBWIデータベース登録症例の3歳時予後調査 調査施設 2003年出生児 2004年出生児 総合施設38施設 同等施設4施設 総合施設48施設 同等施設4施設 周産期ネットワーク データベース 登録施設 39施設 51施設 3歳予後 データベース 登録施設 27施設 (69%) 24施設 (47%) 2008年12月末

VLBWIデータベース登録症例の3歳時予後調査 調査症例 2003年出生児 2004年出生児 周産期ネットワーク データベース 登録症例 2297例 2777例 246例 (10.7%) 259例 (9.3%) NICU死亡  生存退院 2051例 2518例 3歳予後 データベース 登録症例 903例 (44.0%) 829例 (32.9%) 2008年12月末

2003年出生登録対象のフローチャート 39施設 n=2297 I 群 27施設 data回収 n=1701 II 群 12施設 NICU死亡 n=173 生存退院 n=1528 NICU死亡 n=73 生存退院 n=523 退院後死亡 n=22 3歳時生存 n=1506 Follow群  Follow dataあり n=903 Drop群  Follow dataなし n=603 予後評価例 n=1098 64.5% 発達検査DQあり n=665 発達検査DQなし n=238

フォローアップ率への影響 Question 1. 予後データの回収率は施設要因に影響されるか 2. 予後データの回収率は施設ごとの登録児の要因に影響されるか 3. 予後データの回収率は登録児の要因に影響されるか 施設規模要因 新生児病床数 N病床数 MF病床数 Dr数 Ns数 新病床/Dr数 N病床/Dr数 新病床/Ns数 N病床/Ns数 施設特徴 設立母体:公立 地域:関東 外科疾患対応あり フォロー体制 心理士あり フォロー体制あり 登録児要因 data登録数 出生体重 在胎期間 NICU死亡率

I 群とII群の施設比較 I 群(回収) 27施設 II 群(未回収) 12施設 p 施設規模 新生児病床数 35 17-113 29 I 群(回収) 27施設  II 群(未回収) 12施設 p  施設規模 新生児病床数 35 17-113 29 15-55 0.23 NICU病床数 12 9-33 13.5 6-21 0.92 MF病床数 9 0-25 6 0-12 0.02 Dr数 3-10 0-10 0.73 Ns数 42 32-74 40 18-72 0.37 新病床/Dr数 3.25-22.6 4.67 2.57-11.0 0.11 N病床/Dr数 2.25 1.13-6.60 1.82 0.86-3.75 0.63 新病床/Ns数 0.78 0.53-1.43 0.75 0.50-1.10 0.56 N病床/Ns数 0.26 0.17-0.42 0.3 0.20-0.38 0.16 施設特徴 設立母体:公立 44.4% 7 58.3% 0.42 関東地域 11 40.7% 2 16.7% 0.13 外科疾患対応あり 25 92.6% 10 83.3% 0.38 フォロー 心理士あり 15 55.6% 4 33.3% 0.18 フォロー体制あり 13 48.1% 75.0% Median (min-max) or n (%) 3施設は2004年度分は回収

I 群とII群の施設所属登録児比較 I 群(回収) II 群(未回収) p 施設毎の Data登録数 64 29-100 39 13-141 I 群(回収)  II 群(未回収) p  施設毎の Data登録数 64 29-100 39 13-141 0.03 出生体重(g) 1046 238-1510 1064 292-1500 0.94 在胎期間(w) 28.9 20.9-39.3 29.0 22.0-40.2 0.69 NICU死亡率(%) 8.1 0-22.9 13.3 0-21.2 0.27 Median (min-max) BW,GA, 死亡率は施設毎の平均値のmedian (min-max)

フォローアップ率への影響 Question 1. 予後データの回収率は施設要因に影響されるか 2. 予後データの回収率は施設ごとの登録児の要因に影響されるか 3. 予後データの回収率は登録児の要因に影響されるか biological factor birth weight gestational age light for dates sex (male) congenital anomalies multiple gestation perinatal factor outborn caesarian section prenatal steroid neonatal outcome death in NICU IVH cPVL HIE CLD at corrected 36wks PDA ligation ROP treated

I 群とII 群の登録児の生物学的背景、周産期要因の比較 n=1701 n=596 p birth weight 1026±303 1027±301 0.99 gestational age 28.9±3.3 28.9±3.4 0.69 light for dates 610 35.8% 227 39.0% 0.58 sex (male) 893 52.5% 308 51.7% 0.73 congenital anomalies 93 5.8% 47 7.9% 0.07 multiple gestation 423 24.9% 188 31.5% 0.00 Out-born 215 12.6% 92 15.4% 0.08 caesarian section 1098 64.5% 417 70.0% 0.68 prenatal steroid 615 36.2% 193 32.4% 0.10 death in NICU 173 10.2% 73 12.2% 0.13 IVH 216 12.7% 76 12.8% cPVL 55 3.2% 23 3.9% 0.48 HIE 18 1.1% 6 1.0% 0.91 CLD at corrected 36wks 252 16.2% 99 16.6% 0.81 PDA ligation 72 4.2% 20 3.4% 0.35

出生登録対象のフローチャート 39施設 n=2297 I 群 27施設 data回収 n=1701 II 群 12施設 data未回収 NICU死亡 n=173 生存退院 n=1528 NICU死亡 n=73 生存退院 n=523 退院後死亡 n=22 3歳時生存 n=1506 Follow群  Follow dataあり n=903 Drop群  Follow dataなし n=603 予後評価例 n=1098 64.5% 発達検査DQあり n=665 発達検査DQなし n=238

I 群の登録児のフォロー群ドロップ群の生物学的背景、周産期要因の比較 n=903 n=603 p birth weight 1022+282 1115+282 0.0001 gestational age 28.9+3.1 29.7+3.1 light for dates 302 37.8% 219 38.5% 0.809 sex (male) 480 53.2% 316 52.4% 0.793 congenital anomalies 29 3.5% 27 4.6% 0.274 multiple gestation 220 24.4% 152 25.2% 0.71 out born 91 10.1% 96 15.9% 0.001 caesarian section 578 72.4% 405 71.2% 0.611 prenatal steroid 338 37.4% 216 35.8% 0.526 IVH 95 10.5% 52 8.6% 0.228 cPVL 26 2.9% 22 3.7% 0.402 HIE 4 0.4% 8 1.3% 0.058 CLD at 36wks 157 19.6% 82 14.4% 0.006 PDA ligation 40 4.4% 20 3.3% 0.277 ROP with Tx 108 19.7% 78 13.0%

フォローアップ率への影響 1. 施設要因のうち、MFICU病床数と施設の出生時データ登録数(1500g未満の入院数)にのみ差を認めた。Dr. Ns数やフォローアップ体制の有無(2004年の調査時)等など他の要因とは差を認めなかった 2. データを回収、未回収の施設の登録児の生物学的要因、出産時の要因や新生児期の合併症の頻度に有意な差を認めなかった → I 群の結果はII群もあわせたネットワーク施設全体の結果と考えることができる 3. データを回収した27施設の中でフォロー群とドロップ群では、フォロー群の方がより出生体重、在胎期間が小さく、CLD、治療されたROPの合併率が高率で、新生児期より重篤であった児がフォローされていた → 予後データは小さく、重篤であった児がより多く含まれているため、障害の合併率などは真の値より高率になっている可能性がある → ドロップ例の重篤な合併症の発生率はフォロー例より低いと考える

フォローアップ率の向上 フォローアップ体制があっても困難 ドロップ例への対応 個々のフォローアップはできていても。。。 データ記入などデータ管理の問題 医療秘書            フォローアップコーディネーター 行政と連携した場合のデータ管理 ドロップ例への対応 より大きな出生体重、在胎期間で合併症がない例 イベントフリーとみなして解析? 郵送法などによるアンケート調査? 低年齢時の結果の転用:信頼性?

予後の評価~対象と割合 登録例 1000名 生存例 フォロー例 登録例 死亡 90名 ドロップ 300名 退院後 死亡 10名 障害あり 100% 100% 死亡 90名  90% 100% 90% 90% 80% ドロップ 300名  80% 80% 70% 退院後 死亡 10名  70% 70% 60% 100% 障害あり 120名  60% 障害あり 120名  60% 90% 50% 生存 910名  50% 80% 13% 50% 70% 20% 12% 40% 40% 40% 60% 障害なし 480名  フォロー600名  30% 50% 30% 30% 40% 20% 20% 20% 30% 20% 10% 10% 10% 10% 0% 0% 0% 0%

脳性麻痺(CP)の合併率 (2003年出生の3歳児) 在胎期間 出生 登録数 n 死亡率 % 3歳 フォロー数 CPあり CP合併率 対登録数 対フォロー数 ~24w 202 36.6 91 13 6.4 14.3 25,26w 285 13.3 165 23 8.0 13.9 27,28w 375 7.7 216 6.1 10.6 29,30w 372 5.9 211 14 3.8 6.6 31,32w 263 6.0 131 3 1.1 2.3 33w~ 204 7.8 89 2 1.0 2.2 total 1701 11.4 903 78 4.6 8.6 死亡*:NICU死亡+退院後死亡

DQ<70(発達遅滞)の割合 (新版K式発達検査、2003年出生の3歳児) 在胎期間 出生 登録数 n 死亡率 % 3歳 フォロー数 合併率 対登録数 対フォロー数 ~24w 202 36.6 91 21 10.4 23.1 25,26w 285 13.3 165 30 10.5 18.2 27,28w 375 7.7 216 24 6.4 11.1 29,30w 372 5.9 211 19 5.1 9.0 31,32w 263 6.0 131 3 1.1 2.3 33w~ 204 7.8 89 7 3.4 7.9 Total 1701 11.4 903 104 6.1 11.5

出生体重別の死亡率と障害合併率(27施設) 登録数 <750g 379 <1000g 398 <1500g 924 total 1701 # 死亡 114 (30.1%) 37 (9.3%) 44 (4.8%) 195 (11.5%) 脳性麻痺* 24 (6.3%) 25 (6.3%) 28 (3.0%) 77 (4.5%) 新版K式検査結果 DQ70~84 DQ<70* 34 (9.0%) 41 (10.8%) 63 (15.8%) 29 (7.3%) 83 (9.0%) 33(3.6%) 180 (10.6%) 103 (6.1%) 失明(両/片眼)* 9 (2.4%) 2 (0.5%) 1 (0.1%) 12 (0.7%) 補聴器* 3 (0.8%) 1 (0.3%) 2(0.2%) 6 (0.3%) 上記*のいずれか 61 (16.1%) 46 (11.6%) 53 (5.7%) 160 (9.4%) てんかん 8 (2.0%) 6 (0.6%) 23 (1.4%) 在宅酸素療法 17 (4.5%) 4 (1.0%) 27 (1.6%) 呼吸器感染の反復 18 (4.7%) 7 (0.8%) 33 (1.9%) 予後データを回収できた27施設の登録症例1701名を出生体重により750g未満、750~1000g、1000~1500gの群に分けて死亡および障害の合併率を示した。これまでの予後に関する報告では、予後調査ができた児のみを対象としているため死亡率を含めた検討が行えなかったが、本研究では出生時からのデータベース登録により、死亡を含めた検討が可能になった。各出生体重群の死亡またはMajor handicapの合併率は750g未満が46%, 750-1000gが21%, 1000-1500gが11%であった。 %はいずれも登録数(全出生数)に対する割合、# 死亡には退院後死亡を含む 

過去の超低出生体重児の予後調査結果との比較 1995 2000 2003(今回調査) 超 極 施設数 146 180 27 症例数 757 790 423 480 脳性麻痺 14.3% 16.3% 11.5% 5.8% 総合発達評価 新版K式検査結果 境界/DQ70~84 異常/DQ<70 14.9% 18.2% 19.6% 22.9% 16.5% 17.3% 6.9% 失明(両/片眼) 1.9% 0.6% 2.6% 0.2% 補聴器 2.1% 2.4% 0.9% 0.4% てんかん 3.8% 3.7% 4.0% 1.3% 在宅酸素療法 5.0% 呼吸器感染の反復 8.1% 4.4% 6.1% 1.5% これまでの超出生体重児の全国調査の結果と本調査の結果を比較した。ここでは、3歳予後調査が行えた児を対象症例として割合を求めた。発達の評価方法が異なるため発達の遅滞、境界の割合がやや異なっていた。また本調査ははじめて全国の1000-1500gの出生体重児の3歳予後を明らかにした。超低出生体重児にくらべ明らかに障害合併率は低いが、新版K式発達検査で遅滞、境界の判定がそれぞれ6.9%, 17.3%認めていたことから、この体重群の児であっても発達のフォローアップが必要なことを示唆している。 %はいずれもフォロー数(生存退院の予後調査例)に対する割合