在宅医療とは 入院・外来に次ぐ『第三の診療体系』 入院 外来 在宅 ・定期的な居宅での診療(診察) 慢性疾患の重症化予防、健康維持管理 ・定期的な居宅での診療(診察) 慢性疾患の重症化予防、健康維持管理 ・通院不可能(居宅希望)の患者対応 重症疾患、在宅ターミナルケア ・地域における診療連携体制の構築 病院・訪問看護・介護者などとの連携拠点 在宅
在宅におけるチーム医療 チームの中心には患者が位置し、 その最も重要な一員となる 患者 医療・介護関連企業 (メーカー・卸) 在宅療養 支援診療所 訪問看護 ステーション 居宅介護 支援事業所 訪問診療 ケアプラン 作成 訪問看護 メンタルケア 家族 患者 訪問介護 訪問入浴 薬剤の管理 配達 検査・入院 薬局 居宅介護 サービス事業者 病院
在宅での終末期(ターミナル)ケア 終末期を過ごしたい場所 自宅での最期? 終末期医療に関する調査 厚生労働省 H16 9.6 22.9 21.6 26.7 10.5 8.0 その他 すぐに入院 (一般病棟) すぐに入院 (緩和ケア病棟) 自宅療養し、最期は入院(一般病棟) 自宅療養し、最期は入院(緩和病棟) 最期まで 自宅療養 自宅での最期? 日本ホスピス・緩和ケア振興財団 H18 20.0 63.3 9.0 7.3 分からない その他 自宅で過ごしたいし、 実現可能と思う 自宅で過ごしたいが、困難と思う 自宅では 過ごしたくない
本邦における全死亡数と死亡場所の年次推移 在宅看取りの現状:札幌市 本邦における全死亡数と死亡場所の年次推移 全国 総死亡数 1,083,796人 病院・診療所 892,919人(82.3%) 自宅 132,702人(12.1%) 札幌市 総死亡数 13,105人 病院・診療所 11,272人(86.5%) 自宅 1,281人(9.7%) 厚生労働省 人口動態統計より
在宅ターミナルケアの経験 (H18.4~H19.12) 症例 期間(日数) 疾患 初診時 治療(麻薬など) 死亡 在宅 実診療 PS 現症 在宅ターミナルケアの経験 (H18.4~H19.12) 症例 期間(日数) 疾患 初診時 治療(麻薬など) 死亡 在宅 実診療 PS 現症 80 M 133 22 前立腺癌 3 歩行不可 病院 83 M 7 4 肺癌 意識混濁 オキシコンチン 72 F 8 胃癌 デュロテップパッチ モルヒネ静注 自宅 78 M 2 膀胱癌 下顎呼吸 在宅酸素 77 F 49 15 子宮癌 50 M モルヒネ持続皮下注 胸水排液 73 F 12 歩行困難 食欲不振 腹水排液ドレナージ 71 M 50 23 大腸癌 IVH管理 サンドスタチン
73歳女性 子宮癌 現病歴 平成18年6月に市立札幌病院にて子宮癌の診断。手術と術後化学療法を施行されていた。 73歳女性 子宮癌 現病歴 平成18年6月に市立札幌病院にて子宮癌の診断。手術と術後化学療法を施行されていた。 平成19年に入って再発を確認、腹水と下腿浮腫も出現し、放射線照射も受けたが憎悪傾向にあった。 9月の時点で積極的治療は困難と判断、本人と家族より自宅で過ごしたいとの希望があり、在宅医療を開始となった。 現症 癌性腹膜炎:悪性胸腹水あり ほぼ臥床がち、長期の会話や坐位で腹痛出現 食事は一回に数口程度
診療前カンファレンス(病院) 準備 ・経過や病状 ・本人と家族の意思確認 ・内服や点滴 ⇒オキシコンチン:20mg/2× デカドロン・ハイペン・ノバミンなど ・必要な看護・介護体制の確保 (訪問看護・看護相談室) ・使用薬剤や機器の調整 ・本人や家族への対応相談 準備 CV ポート カフティ ポンプ ・IVH:薬剤と輸液、ポンプ、ルートセットなど ・その他:尿カテ・腹水ドレーン ・訪問スケジュールの確認 (訪問診療・訪問看護) ・麻薬(内服・注射)の準備 IVH 腹水 ドレナージ 尿カテ
9.10 退院・在宅医療開始 10.2 死亡 在宅日数:23日・実診療日数:12日 PS=3 PS=4 食事可能 疼痛なし 食欲低下・腹痛 経口摂取不能 傾眠 30mg/3× オキシコンチン:20mg/2× デュロテップパッチ 2.5mg モルヒネ持続皮下注 4mg デカドロン:2mg (9/6~) 在宅酸素 カンファレンス 9/6 病院 9/12 自宅 9.10 退院・在宅医療開始 10.2 死亡
経過のまとめ ・在宅を開始した直後から、疼痛が軽減して食事も可能となり、全身状態に改善傾向が見られた。 ・10日目頃より疼痛と食欲低下が見られ、徐々に全身状態は憎悪したが、比較的穏やかに経過していた。 ・疼痛憎悪に伴い麻薬を増量して傾眠となったが、最期まで高度の苦痛を感じさせずに看取りを迎えることができた。
在宅ターミナルケアとは 意義 『自分らしく生きる』 をサポートする 目的 ・疼痛の緩和 WHO方式に基づく疼痛緩和 薬剤や器材の進歩 薬剤や器材の進歩 ・QOLの向上 生活環境の整備 IVHやドレーンでの生活補助 ・最期の時間 住み慣れた自宅での生活 家族とのコミュニケーション 『自分らしく生きる』 をサポートする 意義
方法はひとつではない 本人の意思 家族との充分な話し合い、本人との会話(日常会話) あえて予後説明や病状説明をせず、『良いイメージ』のみでも 家族との充分な話し合い、本人との会話(日常会話) あえて予後説明や病状説明をせず、『良いイメージ』のみでも 『家に帰ってこれてよかった』⇒家族からの情報 疼痛管理 入院時よりも疼痛緩和を積極的に(副作用を恐れない) 気持ちを大事にすること ⇔ 気持ちを読みとること 家族への対応 家族としての思いを受け止め、起こりうる状況を説明する 『できることだけで良い』
・病気(致死的な病) ⇒ 決して幸福なことではない “すくなくとも不幸ではない” ・病気(致死的な病) ⇒ 決して幸福なことではない しかし ・最後まで自分らしく ・愛する家族に見守られながら ・苦痛なく ・人生の最期を迎えることは 果たして『不幸』なことでしょうか?
在宅でのターミナルケア(注意点) 入院の利点 ・病態把握と対応 ・家族の負担減 入院の欠点 ・生活の制限 ・集団の中の自分 在宅の利点 ・病態把握と対応 ・家族の負担減 入院の欠点 ・生活の制限 ・集団の中の自分 在宅の利点 ・自分らしさ ・家族との時間 在宅の欠点 ・病状対応や治療 ・家族の負担増 ・急変時の対応と準備、積極的な疼痛緩和 ・本人と家族の負担やメンタル面の軽減 ⇒ 『死』を見つめることへの恐怖感・罪悪感
緩和医療 全人的な苦痛の軽減 をサポート 積極的な疼痛緩和 全人的苦痛 Total pain ・薬剤やメンタルケアでのサポート 身体的苦痛 癌性疼痛 全人的苦痛 Total pain 心理的苦痛 社会的苦痛 不安・怒り 人間関係 スピリチュアルペイン 積極的な疼痛緩和 存在意義 ・薬剤やメンタルケアでのサポート ・鎮静や副作用を恐れない ・患者の気持ちを『聞く』だけでは不十分 ⇒『読み取る』努力を・・・一方で『押し付けない』ことも重要
在宅医療での工夫 ・診療後のアンケート (家族・訪問看護) 『家族』 ・最期を看取ることができ、満足 (家族・訪問看護) 『家族』 ・最期を看取ることができ、満足 ・神様がプレゼントしてくれた最後 の時間 『訪問看護』 ・医師との連携やコミュニケーショ ンが重要 ・ひとつとして同じ症例は無く、 すべてを大切に取り組むこと 簡易の疼痛スケール+病状経過板 主に家族へ記入を依頼し FAXにて診察前に服薬状態や 疼痛の程度を確認する
より良い診療の提供のために 患者を中心としたチーム医療、医療連携 在宅ターミナルケアの情報発信 医療技術向上 + 精神的な支えとして