A practical project for the international environmental cooperation

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A practical project for the international environmental cooperation 国際環境協力への実践プロジェクト A practical project for the international environmental cooperation プロジェクト履修学生:  孫 楊、仲村 慎一、 キョウ 秀民、柏木 信明、呉 迪、 プロジェクト担当教員:  王 青躍     関連学外組織:  上海大学、 国立環境研究所、上海市疾病予防控制センター 他 テーマ   都市部微小粒子状物質の挙動とその変異原性調査      Investigation on behavior and mutagenicity in urban fine particles プロジェクト No.9 は じ め に 実験方法  黄砂などが長距離輸送されることにより越境汚染問題が懸念されており、今後、その対策を講じるためには日本と中国と連携して共同調査研究を行い、その状況を把握していく必要がある。本研究では、生体への健康影響に着目し、中国上海市の微小粒子状物質の化学性状を定量的に捕集・計測し、その変異原性を評価し、都市大気中の微小粒子状物質の化学組成とその変異原性影響について調査した。 Ambient fine particles attribute to SPM which are mainly contributed by automobile exhaust source have been reported to cause serious health effects. In this project, investigation of atmospheric environmental and technology interchange were conducted by cooperated assistant professor Lu shenlin at shanghai University. Collected filters were brought on Japan and analyzed Mutagenicity,Carbon and PAHs. 中国・上海市 (2009-2010年度)PM2.5の捕集: 地点および期間(Winter): 上海市(都市部道路端)2009年1月16日~1月19日 捕集時間:24時間(19時~翌日19時まで) 地点および期間(Summer): 上海市(都市部道路端)2009年8月6日~8月8日 吸引流量:1130 L/min 2. 炭素成分の分析 石英繊維フィルターの上に捕集した試料は一部を8 mm φのポンチを用いてくり抜き、熱光学式炭素分析計 (DRI Model 2001 OC/EC Carbon Analyzer)を用い、OCおよびECの分離・定量を行った。また、昇温プログラムにはimprove法を用い、分析中に生じるOCの炭化分を反射光により補正した。 3. イオン成分の分析 石英繊維フィルターにて捕集した試料は、超純水5 mlで30分間超音波抽出し、PTFE製のディスポーザブルフィルター (ADVANTEC, DIMIC-13HP, 0.20 mm)用いて濾過した。抽出液については陽イオン(Na+、NH4+、K+、Mg2+、Ca2+)および陰イオン(F-、Cl-、NO2-、NO3-、SO42-)をイオンクロマトグラフ (Dionex, DX-100)により分離・定量した。 4. 金属成分の分析 石英繊維フィルターで採集したサンプルはXGT-5000装置にてX線放射分析法を用いて、多元素同時分析を行った。8 mm φでデータ取り、1.2mmプローブでマッピングし、サンプルの金属成分の7元素成分を定性した。 捕集装置:  PM2.5 Thermo Graseby-Andersen 5. PAH成分の分析 加熱脱着-GC/MS法を用いて、環境大気中において主に粒子相で存在している4 - 6環の8種類のPAHs{benzo[a]anthracene (BaA), chrysene (CHR), Benzo[b]fluoranthene (BbF), Benzo[k]fluoran-thene (BkF), Benzo[a]pyrene (BaP), Indeno[1,2,3-cd]pyrene (IcdP), Dibenzo[a,h]anthraxcene (DahA), Benzo[g,h,i]perylene (BghiP) }を測定対象とした。 6. 変異原性の分析 石英繊維フィルターで採集した微小粒子について、Salmonella typhimurium TA98株 (フレームシフト型変異の検出)およびTA100株 (塩基対置換型変異の検出)に対し、S9 mix± の条件下におけるマイクロサスペンジョン法により変異原性を調べた。 Ames試験について: 微生物を用いた変異性試験は初期過程である変異細胞が生成するイニシエーション (initiation)過程を検出できることから、本研究はフレームシフト型変異 (TA98菌株)、塩基対置換型変異 (TA100菌株)及びニトロアレーン類 (YG1024菌株)の検出菌株を併用して、変異原性の有無を確認した。 結果と考察 Table 1. The concentrations of organic carbon, element carbon, major ions, elements, total 8 PAHs, and mutagenicities in fine particles 各組成成分の結果:金属成分におけるS/K比はTable1示したように(S/K Shanghai Ratio: 8.3 , 9.0 , 6.8)から今回調査した上海市のサンプルは化石燃焼からの影響が大きいと示唆された。イオン分析の結果から上海市の自動車排ガス粉じんの影響が顕著であり,今後の大気質の変化を追跡して行く必要がある。炭素成分の分析結果から上海市のOC/EC比は1.40, 0.73, 0.77となり、8PAHs結果では、5環PAHsの占める割合が66 ~71% 最もと高く、BkFの割合(21~22%)は一番高かった。 Shanghai (PM2.5) 090116 090117 090118 average Carbon (μg /m3) TOC 8.23 10.3 8.14 8.89 TEC 5.86 14.18 10.52 10.19 TC 14.09 24.48 18.66 19.08 Ion (μg /m3) NH4+ 3.84 7.98 8.31 6.71 K+ 0.42 0.92 1.19 0.84 NO3- 8.54 17.79 17.27 14.53 SO42- 5.60 10.73 13.00 9.77 Element (%) S 3.39 8.78 9.01 7.06 K 0.41 0.98 1.33 0.91 S/K 8.27 8.96 6.80 8.01 The total of 8 PAHs (ng /m3) 29.71 46.65 26.58 34.31 PAHs/OC 3.61 4.53 3.27 3.86 Revitalization of mutagenicity        (rev. /m3) TA98/S9- 83.71 95.50 98.57 92.59 TA98/S9+ 55.61 85.88 90.68 77.39 TA100/S9- 41.95 82.10 69.21 64.42 TA100/S9+ 43.56 58.65 47.35 49.85 Organic material of mutagenicity        (rev. /mg-oc) 10.17 11.60 11.98 11.25 6.76 8.34 11.14 8.71 5.10 9.98 8.41 7.83 5.29 5.69 5.82 5.61 変異原性の測定結果: BaPなどのPAH はTA100株のS9mix の添加により変異原性を示すため、今回はTA100株のS9mixを添加条件下の結果から、各PAHの変異原性の計算値は測定値への寄与率から各成分の変異原性強度を示唆される。計算結果による上海市強い変異原性と見られた。BaP > BbF > BkF > DahA の順に変異原性の寄与率に見られている。PAH、硫黄酸化物や黄砂等の共存物質が,大気内反応やヒトの疾病にどのように関連しているか調査する必要である。上海市のBaP寄与率は今回測定した8種のPAHsの寄与率の6割(55~61%)に占め、一方、BaP成分の総変異原性の寄与率は上海で僅2~4%と低く、大気浮遊粒子状物質中の変異原性にはより大きく寄与する他の汚染物質の存在が示唆された。 Fig.1. Ames testing results list (2009) SH116:Shanghai1/16, SH117:Shanghai1/17, SH118: Shanghai 1/18. Table2. Contributions of PAHs to total indirect-acting mutagenicity of urban fine particles in Salmonella typhimurium TA100 strain with S9 mix PAH Abbr. M.W. Mutagenicity PAHs concentations Mutagenicity of PAHs Contributions of PAHs (g/mol ) (rev./nmol) (10-3 nmol/m3) (rev. /m3) (%) Shanghai 090116 090117 090118 Benzo[a]anthracene BaA 228.3 10 5.26 0.25 8.10 0.053 0.002 0.081 0.12% 0.00% 0.17% Chrysene CHR 1 8.26 25.46 13.50 0.008 0.025 0.014 0.02% 0.04% 0.03% Benzo[b]fluoranthene BbF 252.3 34 17.42 33.51 6.11 0.592 1.139 0.208 1.36% 1.94% 0.44% Benzo[k]fluoranthene BkF 14 25.94 40.17 14.66 0.363 0.562 0.205 0.83% 0.96% 0.43% Benzo[a]pyrene BaP 64 28.31 37.63 1.812 2.408 0.938 4.16% 4.11% 1.98% Indeno[1,2,3-cd]pyrene IcdP 276.3 3 11.37 18.22 10.47 0.034 0.055 0.031 0.08% 0.09% 0.07% Dibenzo[a,h]anthracene DahA 278.3 20 2.88 4.71 3.42 0.058 0.094 0.068 0.13% 0.16% 0.14% Benzo[g,h,i]perylene BghiP 16.65 22.97 1.12 0.017 0.023 0.001 Total of 8PAHs 116.09 182.93 72.03 2.936 4.310 1.547 6.74% 7.35% 3.27%  2) Mutagenicity of urban fine particles in TA100 strain with S9 mix (rev. /m3, air) 090116: 43.56 090117: 58.65 090118: 47.35 1) Contribution of PAH to total indirect-acting mutagenicity = (Mutagenicity factor of PAH * Measured concentration of PAH) /Measured mutagenicity in particles おわりに: 観測期間において、菌株、S9mixの添加の有無に係わらず、変異原活性 (rev./m3)はすべて陽性を示した。上海市都市大気中PM2.5の変異原性とPAHsとの関連性があると考えられるが、粒子組成分析から自動車排気やバイオマス燃焼など、いくつかの発生源の影響を示唆する結果が得られた。また、二次生成粒子は、自動車排ガス等に含まれる炭化水素が光化学反応により粒子化したものがあると考えるため、今後はその健康影響の調査および解析を行う予定である。 【参考文献】 1. Keiichi Arashidani, J.JPN.soc.atmos.Environ, 42(2) 143-161, 2007. 2. Hayakawa Kazuiti, Medical Journal, 127, 429, 2007. . 3. Lu Senlin, Yao Zhenkun, Atmospheric Environment, 42,7205-7214, 2008.