ラーネマの「貧困」 貧困の定義と測定 キーワード 絶対的な貧困:生存に必要な物資を確保できない貧困。基礎的ニーズの不足。最低生活水準は「貧困線」の線引きとなる。 相対的な貧困:社会の一般生活水準よりも低位。 ①社会的に見放され・遠ざけられ、隠蔽される層(質的な測定) ②所得階級の最低4分位置又は平均賃金の60%以下(定量的な測定) 「伝統社会」=この文脈では、途上国の農村社会。ここに「近代的」な 生活価値をもっているはず、国際市場は完全に浸透していない前提のある表現。
ラーネマの「貧困」 貧困の定義と測定 つづき ラーネマの「貧困」 貧困の定義と測定 つづき 4.「ニーズ」 筆者によると、「ニーズ」ということは欠乏を指摘するだけではなく、 先進国による開発計画の裏づけとして、様々な意味を持つし、様々 な目的を持つ定義づけである: 「ニーズの査定」(p230)。 「ニーズ」があるというように特定された国で、 先進国の経済測定方法によるその国の輸出志向経済のための製造 業、運輸、資源開発などの部門への援助が決定される。 誘発されるニーズ(p228下)。贅沢品を欲しくさせる他人の消費水準・ 方式の影響により「誘発」されてからあらたな「ニーズ」を感じること。 「貪欲な性質を持つニーズ」(p233上)にも相当する。 上記の定義づけの困難が残す問題点: ニーズの問題化(p233上に、「ニーズ…の問題設定」) 「貧困の近代化」 (開発批判者 イヴァン・イリィチの言葉)
「貧困」の測定、「貧困」への対策の問題点 5.干渉主義(外からの干渉)。貧国、悲惨な状態への救済や援助。 が、その国の現状に適合しない援助の問題が発生することが可能。 用語の定義付け(繰り返し) ※GDP=国内総生産。経済全体総産出額 (原材料他の中間投入物 の価格額を引いた)。生産者、企業、政府、非営利団体の創り出した 付加価格の総計。支出面から測定したもの。 ※ GNP=国民総生産。集計生産物に基づいている、国内総生産 (上記のGDP)+海外よりの要素所得(海外への要素外貨を引く)。 ※一人当たり所得:(一国の)経済全体の「所得」を人口数で割る。 国の消費や貯蓄で利用可能な所得(=「可処分所得」)の測定。 (有斐閣経済辞典)
貧困 相対的な貧困:考察点 1.周囲の地域や住民と比べるとものに事欠く。 先進国や豊かな国の中にも相対的貧困があるし、 途上国の生活水準格差にもある。 UNDP及び日本外務省による豊かな国の例: 日本、北欧などの中にある社会層格差。 途上国の例:比較的に近代化されているタイ、ガーナ。日本と比較すると、貧困国。本国の隣国と比べると、富裕国。 個々人の比較で、そして時代の流れに連れて、「貧困」の水準が異なるからこれらにも「相対的な貧困」が当てはまる。
UNDPの貧困 ※ UNDP(=国際連合開発プログラム) 貧困とは、教育、仕事、食料、保健(医療)、飲料水、住居、 エネルギーなど最も基本的な物・サービスを手に入れられ ない状態のことである。 極度の、あるいは絶対的な貧困とは、生きていくうえで最低 限必要な食料さえ確保できず、尊厳ある社会生活を営む ことが困難な状態を指す。 世界中で12億以上の人々が1日わずか1ドルで生活しています。20億人以上が1日2ドル未満で生活し、8億5,000万人以上が日々の食べ物にも事欠く毎日を送っています。
貧困と先進国と途上国との関係 “伝統社会”(理想論を含む定義) 1.農村社会(「国家」にならずにただの「社会」) 2.前近代社会(「国家」にならずにただの「社会」) 3.“価値観”が金銭的な価値観だけではない 4. 自己消費のための生産に従事する。 (“自己”=コミュニティ)国際市場のための余剰生産・換金 作物生産ではない
その上、伝統社会の定義にどのような観念があるのか? 伝統社会の定義 つづき 農村社会・主に農業に従事する社会 その上、伝統社会の定義にどのような観念があるのか? 伝統社会にあるはずの要素: ・村落の形式 ・伝統的な社会組織(大家族、共同体、互助団体など) ・自給持続可能な生活 ・国際社会との関係がうすい。が、国際市場との関係が深くなる状態。自ら(国際)市場との関係を決める位置にない。 ・有利・不利を共同体内で耐える・解決策を探す
貧困とその解釈 誘発された「ニーズ」 途上国の例:先進国からの誘いがある場合、 先進国の余剰生産物の購入。これに、国政府も、伝統的な 共同体も、個人も誘われる。 先進国でのことば:「隣家に負けぬ暮しをする」
貧困の定義 IV 社会という場と時空による貧困への感覚とその違い 社会・共同体の生活と価値観の違い 時代の流れに起源を持つ違い 社会・共同体の生活と価値観の違い 時代の流れに起源を持つ違い 地域や共同体の昔からの感覚と、 外との関係が始まってからの感覚の違い (ラダク人の例p227)
ラーネマの「貧困」 貧困の定義と測定への批判 典型的な定義の四つの次元 物質性 p224~225 主体の感覚 p225~226 外から見た貧困 p226 さまざまな貧困感覚に対する社会文化的時空の影響 p226~227
貧困の定義と測定:例1:「GDP」 相対的な貧困の測定・世界銀行からのデータ.単位=米ドル GDP=国内総生産 2000年度現在 国のGDP 11 国 1人当りGDP (購買力に変換された) 国のGDP タイ 6,600 121Billion (1210億) ベトナム 1,950 154.4Billion(1544億) 日本 27,200 3.45兆円 シンガポール 24,700 106.3Billion(1063億)
※相対的な貧困率の順位は、貧困率の低い国が1. 貧困の測定:例2:「相対的な貧困」 国家間の物質的な格差 地域間の物質的な格差 相対的な貧困率の測定 順位 1人当りGDPの測定 順位 カナダ 20% 2 $875B(8千75億) 5 ドイツ 13% 1 $2,17T(2.17兆) 2 メキシコ 29% 5 $920B(9千20億) 4 ロシア 26% 4 $1.2T(1.2兆) 3 アメリカ合衆国 24% 3 $10T(10兆) 1 情報源線:LIS 1990年代中旬 所得の中央値の60%以下 ※相対的な貧困率の順位は、貧困率の低い国が1. 12
貧困の定義 I 「物質性」による貧困の定義: 「貧困」としての物質的な欠如・物の欠如もあるが、 「貧困」としての物質的な欠如・物の欠如もあるが、 概念としての貧困とは違う。「貧しさ」として感じとられたときに、初めて「貧困」という言葉に込められた特定の意味を帯びる (p225下)。 が、否定的に感覚する自分の貧困を 越えるために、“「有力」のある人(権力者)との結びつき”に依存する p226上 疑問点:貧困が物質的な貧困だけであれば、人間の 満足や保障をどのように測定するのか? そして、非物質的な富裕も欠如もあるといえるが、 何になるのであろうか?
貧困の定義 II 貧困の感覚は個人にもよる、社会にもよる 2.主体の感覚と貧困の状況 貧困の感覚は個人にもよる、社会にもよる 「貧困者」の自己感覚は、自分たちの意志や力とは別に動く状態、境遇による貧困(“どうしようもない貧困”) 選択された貧困:「有形資産からの解放」、宗教のための貧乏など 有力な者への依存関係(権力者又はパトロンへの依存)
(先進国の)社会における貧困への「答え」: 貧困の定義や対策 III (先進国の)社会における貧困への「答え」: 「干渉」する:経済構造の調整(改革)・技術移転・ ダム建設・保健医療の改善などの、 援助、慈善、教育の水準化などの活動を他国で行おうとする。 2.干渉しない・関係をつくらない。無視する。 疑問点:このリストに欠けている、異なる関係が 考えられるのか?
ラネーマによる グローバル化・経済化の定義 I グローバリゼーションの前 低開発地域のインフラ状態 伝統による自給自足可能な社会 特徴がある地域と村の生活 地域の経済的な利益の ための労働・職業 貧困者・貧困者ではない者が同じ共同体に所属する意識 後 先進国のインフラ状態 近代化しているニーズ 普遍的で同質化された 生活 国内外の経済的利益のための経済活動・雇用構造 (輸出経済、工業化) 貧困層への差別 (学校、病院、雇用制度、政策による)
途上国の「経済化」 利点 生み出された富と欲求は、 恒常的な欠乏、欲望の満たされない状態に置く 大量生産・多様な生産 必要なインフラが入手 できる(医療設備、教育施設、交通機関など) 正式な雇用構造 必需品のニーズや誘発されたニーズに応える経済活動 解決策が求められる点 生み出された富と欲求は、 恒常的な欠乏、欲望の満たされない状態に置く インフラや化学物質から生じる問題を解決する方法はない 生活費は恒常的に高まる 工業生産が充足できないニーズが増え、経済的な価値がつかない活動の価値が低下する