国際会議報告会 Small Ionized and Neutral Structures in the Diffuse Interstellar Medium Socorro, New Mexico, May 21-24, 2006 物2 天体核 D2 井上 剛志.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
Advertisements

X線で宇宙を見る ようこそ 講演会に 京大の研究
第5回 分子雲から星・惑星系へ 平成24年度新潟大学理学部物理学科  集中講義 松原英雄(JAXA宇宙研)
佐野孝好 (大阪大学レーザーエネルギー学研究センター)
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
ブラックボックスとしてモデルをみると、本質を見逃す。
宇宙年齢10億年以前におけるSMBHの存在 遠方宇宙の観測で宇宙10億歳(z~6)未満で10億M⦿程度以上の活動銀河核中のSMBHの存在を確認 赤方偏移 z SMBH質量 [M⦿] URAS J ~2×109 M⦿ 宇宙7.5億歳(z~7)
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
若い超新星残骸の衝撃波-分子雲 相互作用モデルとCTAに向けた予言
2.2.1 Transport along a ray The radiation transport equation
X線による超新星残骸の観測の現状 平賀純子(ISAS) SN1006 CasA Tycho RXJ1713 子Vela Vela SNR.
衝撃波によって星形成が誘発される場合に 原始星の進化が受ける影響
星形成銀河の星間物質の電離状態 (Nakajima & Ouchi 2014, MNRAS accepted, arXiv: )
第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
加藤真理子1、藤本正樹2、井田茂1 1) 東京工業大学 2) JAXA/ISAS
第11回 星・惑星系の誕生の現場 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
DECIGO ワークショップ (2007年4月18日) 始原星の質量、形成率、連星度 大向一行  (国立天文台 理論研究部)
原始惑星系円盤の形成と進化の理論 1. 導入:円盤の形成と進化とは? 2. 自己重力円盤の進化 3. 円盤内での固体物質の輸送
H2O+遠赤外線吸収 ラジオ波散乱 微細構造遷位 ラジオ波 赤外線 X-線 H3+ 赤外線吸収 γ-線 塵遠赤外発光 再結合線
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
ガンマ線連星LS 5039におけるTeVガンマ線放射とCTA
「Constraining the neutron star equation of state using XMM-Newton」
輻射優勢円盤のMHD数値実験 千葉大学宇宙物理学研究室 M2 松尾 圭 Thu.
反応性流体力学特論  -燃焼流れの力学- 燃焼の流体力学 4/22,13 燃焼の熱力学 5/13.
宇宙大規模プラズマと太陽コロナの比較研究
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義1 銀河を構成する星、星間物質(ガス、ダスト) 1. 太陽系から銀河系へ空間スケール 2
相対論的衝撃波での粒子加速 プラズマの不安定性による磁場の生成と粒子加速について 国立天文台 加藤恒彦.
輻射圧駆動風の臨界点ついて 非相対論的領域 Radiatively Driven Spherical Wind Critical Points and Curves Nonrelativistic Regime 福江 純@大阪教育大学.
Damped Lya Clouds ダスト・水素分子
数値相対論の展望        柴田 大 (東大総合文化:1月から京大基研).
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
Taurus-Auriga association
HⅠ輝線を用いた 高銀緯分子雲の観測的研究
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
SAX J1748.2−2808 からの 3 つの鉄輝線と593 秒周期の発見
銀河風による矮小銀河からの質量流出とダークマターハロー中心質量密度分布
磯部洋明 京都大学花山天文台 波動加熱勉強会 2004年2月23日
棒渦巻銀河の分子ガス観測 45m+干渉計の成果から 久野成夫(NRO).
高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡
実習課題B 金属欠乏星の視線速度・組成の推定
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
論文紹介 Type IIn supernovae at redshift Z ≒ 2 from archival data (Cooke et al. 2009) 九州大学  坂根 悠介.
21世紀COE外国旅費補助・ 成果報告会 C0704 宇宙物理 PDF 松田 有一.
重力レンズ効果による画像の変形と明るさの変化
天の川銀河研究会 天の川銀河研究会 議論の種 半田利弘(鹿児島大学).
2次元系における超伝導と電荷密度波の共存 Ⅰ.Introduction Ⅱ.モデルと計算方法 Ⅲ.結果 Ⅳ.まとめと今後の課題 栗原研究室
星間物理学 講義2: 星間空間の物理状態 星間空間のガスの典型的パラメータ どうしてそうなっているのか
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 2 銀河スケールのダスト、ダストの温度、PAH ほか
Primordial Non-Gaussianity in Multi-Scalar Slow-Roll Inflation
Numerical solution of the time-dependent Schrödinger equation (TDSE)
宇宙の初期構造の起源と 銀河間物質の再イオン化
ーラインX線天文学の歴史と展望をまじえてー
九州大学 猿渡元彬 共同研究者 橋本正章 (九州大学)、江里口良治(東京大学)、固武慶 (国立 天文台)、山田章一(早稲田理工)
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
星間乱流の謎に迫る 長島雅裕(天体核) あらすじ ・星間分子雲は乱流状態にある(と考えられている) ・どうやって維持しているのか、長年の謎
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
MHD Simulation of Plasmoid-Induced-Reconnection in Solar Flares
宇 宙 その進化.
星間物理学 講義 3: 輝線放射過程 I 水素の光電離と再結合
大学院ガイダンス(柏キャンパス) 2011年6月11日 岸本 康宏
銀河系内・星形成・系外惑星 系内天体の観点から
スターバースト銀河NGC253の 電波スーパーバブルとX線放射の関係
ようこそ Hot Universe へ Fes. 馬場 彩 Contents X線天文学とは?
COSMOS天域における赤方偏移0.24のHα輝線銀河の性質
ブラックボックスとしてモデルをみると、本質を見逃す。
シンクロトロン放射・ 逆コンプトン散乱・ パイオン崩壊 ~HESS J は陽子加速源か?
国際会議成果報告 Structure Formation in the Universe
教育学部 自然環境教育課程 天文ゼミ 菊池かおり
すざく衛星によるSgr B2 分子雲からのX線放射の 時間変動の観測
Presentation transcript:

国際会議報告会 Small Ionized and Neutral Structures in the Diffuse Interstellar Medium Socorro, New Mexico, May 21-24, 2006 物2 天体核 D2 井上 剛志

会議の概要 Outline of This Talk 1.星間媒質における小スケール構造と 我々の星間媒質進化モデルとの関係 テーマ:星間媒質(イオン化媒質、中性原子媒質、分子ガス媒質)     における小スケールの構造について 場所:ニューメキシコ州、ソコロ(アレーオペレーションセンター) 開催期間:5月21日~24日 参加者:米(7割)、豪、英、仏、蘭、印、韓、メキシコ、            日本(井上、犬塚(京大理)、長島(長崎大)) 全66名 観測家7割、理論家3割で C.Heiles教授、E.Jenkins教授、D.Cox教授、 R. Reynolds教授等、星間媒質研究における指導的専門化が多く参加した  *懸案事項となっていた収録については会議後に出版が決定されました Outline of This Talk 1.星間媒質における小スケール構造と     我々の星間媒質進化モデルとの関係 2. 会議で発表を行った研究について

アレーオペレーションセンター @ニューメキシコ州、ソコロ(空港のあるアルバカーキから南約100 km) Very Large Array ソコロの西約100 km 直径 25 m のアンテナが27個並ぶ 最大 36 km まで広がる

Interstellar Medium (星間媒質) 星間媒質がどのようなプロセスで進化して星になっていくのかは理解されていない Hot Ionized Medium 希薄な電離ガス : T ~ 106 K Warm Medium 中性の星雲間ガス: 大質量星周りの電離領域: 恒星風、超新星 T ~ 104 K 輻射電離 星 重力収縮 Cold Neutral Medium HI 雲: T ~ 100 K 分子雲: T ~ 10 K 観測された星間物質の相図(Myers1978)

WNM と CNM n [cm-3] P [K/cm3] WNM : CNM : WNM 不安定 CNM 104 加熱源 : External Radiation Field, CR 等 冷却源 : 輝線放射・・・Ly-alpha, C+ fine structure, 等 冷却損失 加熱利得 正味の冷却関数:                 [ erg/cm3/s ] 加熱,冷却が釣り合う輻射平衡状態: P [K/cm3] WNM : 冷却優勢 CNM : WNM 不安定 CNM 104 CNMとWNMは安定に等圧下で共存可能 加熱優勢 n [cm-3] 10-1 101-2

Tiny Scale Atomic Structure とは 近年発見された 10-4 pc(数10 AU)スケールの非常に小さな CNM 電波観測 : 水素原子の 21cm 線 (超微細構造)の吸収線を見る Very Long Baseline Array Quasar 1秒角 角度分解能 ~ 20 ミリ秒角 (~1-10 AU) Single dish telescope Pulsar TSAS はどの方角を見ても普遍的に存在する (Heiles 1997) 星間雲の新しい population ?

TSAS の性質 TSAS HI cloud size ~ 10-4 pc size ~ 1-10 pc density ~ 105 cm-3 density ~ 102 cm-3 temperature ~ 100 K temperature ~ 100 K TSAS は非常に小さく、typical なCNMより圧力が高い状態にある nT [K/cm3] = P/kB 107 TSAS こんな小さなものをどう作る?? 104 HI cloud 10-4 100-1 Scale [pc] 我々の星間雲形成モデルでは自然に形成できる

我々の考える星間雲形成モデル n TSAS ? 超新星衝撃波を引き金とする熱的不安定でCNMを形成する P CNM WNM Inutsuka, Koyama & Inoue 2005 超新星衝撃波を引き金とする熱的不安定でCNMを形成する n P CNM WNM 冷却優勢 加熱優勢 衝撃波圧縮 熱的不安定 不安定のScale : ・・・Field length ~ 10-4~-3 pc ~ 104 yr ・・・ 冷却時間 << Shock の寿命 ~ 1 Myr Shock による CNM 形成の Simulation (Koyama & Inutsuka, 2002) 密度高 3 2 1 Shock 面 密度低 -1 Log n TSAS ?

私が発表した研究について 星間雲(HI雲、分子雲)における乱流状態 一般に考えられている星間雲、星間乱流像(1相モデル) WNM 問題点: 星間雲の観測に見られる輝線幅は音速に比べて優位に大きい 星間雲は超音速の乱流状態にあると考えられている 一般に考えられている星間雲、星間乱流像(1相モデル) WNM 問題点: CNM 乱流の起源が謎 超音速乱流は衝撃波散逸によりすぐに decay 1-10 pc

私が発表した研究について 我々の考える星間雲、星間乱流像 ・・・ 小さなCNMがWNMの中に幾つも埋まっていてそれらがランダムに運動する Field length ~ 0.1 pc Simulation by Koyama & Inutsuka 2006 この“乱流”状態はCNMとWNMの遷移層(黄色部分)の不安定によって駆動されているように見える 遷移層の安定性について研究を行った

遷移層の種類 非摂動状態・・・簡単のため定常で plane parallel な geometry T WNM CNM x P n Zel’dovich & Pikel’ner ’69, Penston & Brown ’70 非摂動状態・・・簡単のため定常で plane parallel な geometry T 遷移層(熱伝導による厚み)~0.1 pc WNM CNM x 輻射平衡状態は van der Waals の状態方程式に似た形 Maxwellの面積則に類似の条件 P 冷却優勢 ・・・静的な2相構造 Condensation ・・・WNMからCNMへCondensation Saturation 加熱優勢 ・・・CNMからWNMへEvaporation Evaporation n

遷移層の種類 非摂動状態・・・簡単のため定常で plane parallel な geometry T WNM CNM x P n 定常流 Zel’dovich & Pikel’ner ’69, Penston & Brown ’70 非摂動状態・・・簡単のため定常で plane parallel な geometry T 遷移層(熱伝導による厚み)~0.1 pc 定常流 Condensation WNM CNM x 輻射平衡状態は van der Waals の状態方程式に似た形 Maxwellの面積則に類似の条件 P 冷却優勢 ・・・静的な2相構造 Condensation ・・・WNMからCNMへCondensation 加熱優勢 ・・・CNMからWNMへEvaporation Evaporation n

遷移層の種類 非摂動状態・・・簡単のため定常で plane parallel な geometry T WNM CNM x P n 定常流 Zel’dovich & Pikel’ner ’69, Penston & Brown ’70 非摂動状態・・・簡単のため定常で plane parallel な geometry T 遷移層(熱伝導による厚み)~0.1 pc 定常流 Evaporation WNM CNM x 輻射平衡状態は van der Waals の状態方程式に似た形 Maxwellの面積則に類似の条件 P 冷却優勢 ・・・静的な2相構造 Condensation ・・・WNMからCNMへCondensation 加熱優勢 ・・・CNMからWNMへEvaporation Evaporation n

安定性解析:2つのアプローチ 長波長解析: 短波長解析: y y flow flow x x 遷移層の厚みよりも十分長い波長の揺らぎを考えて遷移層を不連続面近似 等圧近似、ただし遷移層の厚みや熱伝導の効果を考慮 y y 遷移層 遷移層 CNM WNM CNM WNM flow flow x x

長波長解析の結果と解釈 Evaporation :不安定 Condensation:安定 不安定のメカニズム 遷移層で flow が曲がる CNM WNM Flux 保存側: Momentum保存側: flow の集中部で圧力が高まり  遷移層を押して不安定 不安定の成長率 成長率は波数に比例    小 scale ほど不安定 不連続面近似のため特徴的な scale 無し   厚みを考慮した解析が必要

長波長解析の結果と解釈 Evaporation :不安定 Condensation:安定 不安定のメカニズム 遷移層で flow が曲がる WNM CNM Evaporation 不安定 Flux 保存側: Momentum保存側: flow の集中部で圧力が高まり  遷移層を押して不安定 不安定の成長率 成長率は波数に比例    小 scale ほど不安定 不連続面近似のため特徴的な scale 無し   厚みを考慮した解析が必要

長波長解析の結果と解釈 Evaporation :不安定 Condensation:安定 不安定のメカニズム 遷移層で flow が曲がる WNM CNM Condensation Flux 保存側: Momentum保存側: flow の集中部で圧力が高まり  遷移層を押して不安定 安定 不安定の成長率 成長率は波数に比例    小 scale ほど不安定 不連続面近似のため特徴的な scale 無し   厚みを考慮した解析が必要

短波長解析の結果 Evaporation 遷移層の分散関係 短波長解析の結果・・・熱伝導の影響のより不安定性は遷移層                の厚みのスケールで安定化される 赤線:長波長解析 青線:短波長解析 緑線:近似無しの解析で     得られると期待され    る分散関係 最も不安定なスケールは厚みの2倍程度 Evaporation 遷移層の分散関係

まとめ CNMとWNMの遷移層の安定性を線形解析の手法で調べた Evaporation の場合、遷移層は不安定 不安定の成長時間 星間媒質の Dynamical timescale ~ 1-10 Myr 乱流を駆動・維持するのに十分! 星間乱流の駆動メカニズムの候補となる不安定性を発見した

会議での発表 会議初日最後のセッション J. Slavin : 星間媒質のダイナミクスを考える上で熱伝導は重要だ。 だけど誰も熱伝導を考慮した研究を行っていない!? 直後に発表した我々の研究は熱伝導をちゃんと考慮している為、インパクトのある発表になりよい宣伝になった。