意思決定支援,成年後見制度利用促進・円滑化法と障害者差別解消法について

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意思決定支援,成年後見制度利用促進・円滑化法と障害者差別解消法について            2016年12月3日       全国権利擁護支援ネットワーク副代表 岡山高齢者・障害者権利擁護ネットワーク懇談会副代表 NPO法人岡山未成年後見支援センターえがお理事長 NPO法人岡山意思決定支援センタービーユー理事長            弁護士 竹内俊一       

一.権利擁護とは何か? エンパワーメント 意思の尊重 パターナリズム ケア

二.意思決定支援ガイドライン(案)の概要 ~厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課地域生活支援推進室~  厚生労働省による意思決定支援ガイドラインはまだ発表されていないが,案が公表された。 1 意思決定支援の定義          知的障害や精神障害(発達障害を含む)等で意思決定に困難を抱える障害者が,日常生活や社会生活等に関して自分自身がしたい(と思う)意思が反映された生活を送ることが可能となるように,障害者を支援する者(以下,「支援者」という)が行う支援の行為およびしくみをいう。

2 意思決定を構成する要素 ① 障害者の態様(好み,望み,意向,障害特性等) 2 意思決定を構成する要素 ① 障害者の態様(好み,望み,意向,障害特性等) ② 意思決定の内容(領域) ⅰ生活の領域(食事,更衣,移動,余暇等) ⅱ人生の領域(住む場所,働く場の選択等) ⅲ生命の領域(健康上の事項,医療措置等) ③ 人的・社会的・物理的環境等(関係者が本人の意思を尊重しようとする態度で接しているか等)

*Mental Capacity Act 2005を参考に5点をあげる。 3 意思決定支援の基本的原則 *Mental Capacity Act 2005を参考に5点をあげる。 ① 能力を欠くと確定されない限り,人は,能力を有すると推定されな ければならない。 ② 本人の意思決定を助けるあらゆる実行可能な方法は効を奏さなかったのでなければ,意思決定ができないとはみなされてはならない。 ③ 人は,単に賢明でない判断をするという理由のみによって、意思決定ができないとみなされてはならない。 ④ 意思決定能力がないと評価された本人に代わって行為をなし,意思決定するにあたっては,本人のベストインタレスト(最善の利益)に適するように行わなければならない。 ⑤ そうした行為や意思決定をなすにあたっては,本人の権利や行動の自由を制限する程度がよりなくて済むような選択肢がほかにないか,よく考えなければならない。

   4.意思決定支援における合理的配慮 ① 本人の年齢,障害の態様,特性,意向,心情,信念,好みや価値観,過去から現在の生活様式等に配慮する。 ② 意思決定支援を行うにあたっては,内容についてよく説明し,結果を含めて情報を伝え,あらゆる可能性を考慮する。 ③ 本人の日常生活,人生および生命に関する領域等意思決定支援の内容に配慮する。 ④ 本人が自ら参加し主体的に関与できる環境をできる限り整える。 ⑤ 家族,友人,支援者,法的後見人等の見解に加え,第三者の客観的な判断が可能になるしくみを構築する。 →IMCAの創設も射程に入れるのかどうか?

5.意思決定支援における留意点 (1)意思決定と情報    5.意思決定支援における留意点 (1)意思決定と情報 (2)情報提供の留意点 ①本人への情報提供については,支援者の態度・方法・技術によって大きく異なることを理解すること。 ②できるだけわかりやすい方法・手段にて情報を伝える等5項目 (3)意思決定支援における最善の利益の判断 事案の決定については,どちらか一つということでなく二つを融合して一つ高い段階において決定を図ること

  6.ガイドライン(案)の概要(各論) (1)障害福祉サービス事業所等における意思決定支援の考え方 ①意思決定支援と代弁者 支援者,基幹相談支援センター相談員 ②日常の支援場面における意思決定支援 ③大きな選択にかかる意思決定支援 意思決定支援会議の開催 (2) 意思決定支援の しくみ ① 意思決定支援の責任者の配置 ② 意思決定支援計画の作成

(2) 意思決定支援のプロセス ① アセスメント ② 意思決定支援計画の作成 ③ 意思決定支援の実施→実践をフィードバックして知見を集積し,整理することにより意思決定支援の標準化を図ることも重要である。 ④ 実施状況の把握(モニタリング) ⑤ 意思決定支援実施の評価とフォロー (4)意思決定支援会議の開催 (5)職員の知識・技術の向上 (6)利用者と保護者等に対する説明責任等 (7)意思決定支援における連携 (8)意思決定支援における危機管理    

三.意思決定支援のスキルアップに取り組むNPO法人岡山意思決定支援センタービーユーシステム 支援者 本人 相談・助言等支援 ビーユー支援員 報告 育成・研修 支援 ビーユー支援員 育成研修部会 事務局 ビーユー支援員 支援検討部会 報告 監督 理事会 ビーユー適正化 第三者委員 総会

四.意思決定支援の考え方を成年後見実務に活用する場合の問題点~選任過程の問題点も 成年後見制度上の自己決定の範囲 同意権・代理権の範囲 本人の意思の尊重 (民法858条) 意思決定支援 補助 保佐 後見

五.成年後見制度利用促進法・円滑化法施行 1 成年後見制度利用促進法   利用促進会議開催  →委員構成の特徴と社会的ネットワークのあり方  →岡山高齢者・障がい者権利擁護ネットワーク懇談会(通称岡山ネット懇)も取り上げ,検討。 2 円滑化法   郵便物の転送および死後事務の法的根拠   残された課題としての医療同意

六 障害者差別解消法~2016年4月施行 1概要~障害者権利条約を受けて (1)不当な差別的取扱いの禁止 行政・事業者→法的義務 (2)合理的配慮の提供義務の設定 ①行政・雇用主→法的義務      ②それ以外の事業者→努力義務,   なお担当大臣から,報告徴収,助言・指導,勧告により実効性を担保する試みだが?

2.合理的配慮義務の要件 (1)障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において →合理的配慮義務の発生要件ではなく,実現プロセスの要件 →本人自らの意思を表明することが困難な場合→意思決定支援の領域 (2)その実施に伴う負担が過重でないとき →経済的財政的コスト・業務遂行に及ぼす影響を考慮 →誰が決めるのか? →立証責任はどちらが負うか?

3.障害者差別解消支援地域協議会の設置 (1)設置目的 ① 障害を理由とする差別に関する相談 ② 紛争の防止,解決の取組を推進すること ① 障害を理由とする差別に関する相談 ② 紛争の防止,解決の取組を推進すること (2)しくみ ① 関係する機関のネットワーク  行政担当部署・保健所・福祉事務所・学識経験者・事業者・NPO法人等 ② 地域全体での主体的な取組の実践

七.まとめ ~行政・司法をつなぐ社会的ネットワーク 1 インフォーマルな社会資源の活力を活かす社会的ネットワークの取り組みとしての岡山ネット懇モデル  →その成果としての総社市・瀬戸内市・美作市等の  権利擁護(支援)センター 2 ネットワーク成功の決めてとしてのリスペクト   すべての人および団体に対等の立場をとること 以上