金属歯冠修復物にできる皺襞 -その3- H26年12月7日 愛知学院大学歯学会
「金属歯冠修復物にできる皺襞」の演題で H23年12月4日、H26年6月8日に発表した。 その後、新たな知見が得られたので追加報告する。 前回の概要は
咬合応力の歪みが起こり 皺襞が現れたと考えた 咬合応力の歪みが起こり 皺襞が現れたと考えた しかし、歯ブラシでしか出来ないと思われる皺襞が義歯で見つかった。 初期の段階では凸凹の無い紋様が現れ 歯ブラシでは出来ない現象と思われる 電顕による画像では塑像面の中に 歯ブラシによる滑択面が見られた
皺襞のでき方には 「歯ブラシ説」、「咬合応力の歪み説」 があるのではという概要である その後、歯科理工学講座にて歯ブラシによる 摩耗試験と引っ張り試験を行った
歯ブラシによる摩耗試験 [実験条件] 歯ブラシ:ペリオIIM(サンスター) 歯磨剤:Colgate® Total® Pro Gum Health Toothpaste 1g/10ccの懸濁液、300グラム荷重で6万回 (6年間) (英国規格型歯ブラシ摩耗試験機を少量の歯磨剤で使えるように改造)
K-metal 磨耗試験の皺襞 鶴田准教授のコメント 側面は真っ黒になり 黒ずんでいる 研磨傷は歯磨で削られる
実物の皺襞 金銀パラジウム合金 磨耗試験の皺襞 鶴田准教授のコメント 金属が硬いので 摩耗量が少ない
実物の皺襞 金合金 磨耗試験の皺襞 鶴田准教授のコメント 波のようにシワが 押し寄せてくる感じがない
引っ張り試験 紋様の出現 皺襞の出現 破断する
@歯ブラシによる磨耗試験では 歯ブラシ単独で皺襞ができる事が証明された (全体にすり減ると思っていたが・・・・) しかし不規則である事や 波のようにシワが押し寄せてくる感じがない。 @引っ張り試験では 紋様が成長して皺襞が出現してくる事が証明された。 <鶴田准教授によると> 「疲労破壊の代表的な様式の「すべり変形」が起こっているのでは」とコメントを頂いた。また「一般的にすべり変形はごく微細な領域で生じるが、同じ力が繰り返されることで、目で見える変形となり波状に観察される可能性がある」とのコメントも頂いた。
CAE技術者のための情報サイト より
「歯ブラシによる摩耗」と 「咬合応力の歪みによるすべり変形」 により皺襞が出現すると考えれば、 いろいろな皺襞も説明がつく
67歳 男性 69歳(2年1ヶ月後) 72歳(5年4ヶ月後) 77歳(10年後) CR充填研磨時のバーの傷 虫歯 67歳 男性 69歳(2年1ヶ月後) CR充填研磨時のバーの傷 虫歯 72歳(5年4ヶ月後) 77歳(10年後) バーの傷+歯ブラシによる皺襞だった
42歳 アマルガムにも見られる 歯ブラシによる皺襞と考える 37歳 男性
67歳 女性 81歳(13年11ヶ月後) 製作時 すべり変形+歯ブラシ による皺襞と考える 咬合力
75歳 女性 すべり変形による皺襞と考える 歯ブラシによる皺襞と考える
72歳 女性 73歳 初期の段階の紋様 74歳 75歳 凸凹に成長し、歯ブラシで増大
まとめ 1、歯ブラシの摩耗による皺襞 2、咬合力の歪みによるすべり変形の皺襞 3、すべり変形による紋様や切削傷などが、歯ブラシにより増大された皺襞 等が存在すると考える。 今までに、Tooth Wear (咬耗、摩耗、酸蝕、Abfraction) Metal Wear (咬耗、摩耗、皺襞)を観察してきた結果、成因等の概要を理解することができた。 今後、これらの知見を臨床の現場に役立てたいと思っている。
ご静聴ありがとうございました 鶴田准教授には歯ブラシによる摩耗試験および 引っ張り試験やコメントを頂き感謝申し上げます