信頼の構造 原 謙治 2004/10/13
「信頼の構造」 山岸俊男著、 1998出版 本の目的 信頼とは何かを実験を通じて明らかにする 信頼と社会の関係を考える 3つのパラドックスの謎を解く 信頼と社会の関係を考える
第1のパラドックス 省略 安心と信頼についてです
第2のパラドックス 「常識」では 実験では 日本は信頼社会 アメリカは契約社会 日本のほうが一般的信頼レベルが高そう アメリカ人の方が人を信頼しやすかった なぜ?
第3のパラドックス 他者一般を信頼する傾向が強い人 「常識」では この「常識」を覆した。なぜ? 「騙されやすいお人好し」ではない 信頼に値する行動をとるかどうかを正確に予測できる 「常識」では 賢い人は簡単に人を信用しない 他人を信用しやすい人は世間知らず この「常識」を覆した。なぜ?
実験内容 参加者は実験用冊子を渡される 実験用冊子 参加者は予め「高信頼者」と「低信頼者」に分けられている 相手の信頼を裏切って利己的行動をとることのできる15の場面を記載 登場人物の各場面での行動を予想 場面情報とは別に登場人物に関する情報もある 「Aさんは人の親切に対してお礼を言わない」 「Aさんは列に割り込んだ」、etc 参加者は予め「高信頼者」と「低信頼者」に分けられている
実験結果
信頼についての概念整理図 信頼とは多義的な言葉 白いのは情報依存的信頼 自然の秩序に対する期待 能力に対する期待 安心 人間関係的信頼 道徳的秩序に対する期待 相手の意図に対する期待 信頼 人格的信頼 個別的信頼 信頼性 カテゴリー的信頼 信頼とは多義的な言葉 白いのは情報依存的信頼 一般的信頼
信頼の概念整理(1/2) 信頼性 自然の秩序に対する期待 能力に対する期待 安心 信頼される側の特性 太陽は東から昇る あのパイロットなら飛行機は落ちない 安心 孫悟空は三蔵法師に逆らえない
信頼の概念整理(2/2) 人間関係的信頼 個別的信頼 カテゴリー的信頼 一般的信頼 他人は殺しても相棒は守る 人格者であることを直接知っている カテゴリー的信頼 ~県民に悪い人はいない 一般的信頼 てがかりのない人を信頼する度合い
やくざ型コミットメント関係 社会的不確実性の高い環境で特定の相手と関係を継続する コミットメント関係 特定の相手と継続する関係
コミットメント関係 特定の相手と継続する関係 恋人型 好意に基づく やくざ型 打算に基づく
やくざ型コミットメント関係 社会的不確実性の大きい環境 例 特定の関係の内部で社会的不確実性を高めようとする 商品の品質を売り手しか知らない環境 “関係が断たれるリスクを背負ってまで粗悪品を売らないだろう”という期待に基づく関係
取引コストと機会コスト 取引コスト 機会コスト コミットメント関係は取引コストを節約するが、機会コストを生み出す 取引をするために必要となるコスト 騙される可能性も含める 機会コスト 別の取引相手を選んでいればより多く得られたはずの利益 コミットメント関係は取引コストを節約するが、機会コストを生み出す 機会コストが大きくなればコミットメント関係を破棄すべき
信頼するということ 新たな関係を結ぶには「信頼される」ことと「信頼する」ことが必要 たとえより良い相手がいてもその相手を信頼できなければ無意味
日本社会 日本ではコミットメント関係が強く、他人を信頼する必要がない すでにある関係を守ることが道徳規範 安心を得やすい 新たな関係を結ばないので信頼できるかの 正確な予測能力が不要 予測能力に自信がないのでとりあえず 信頼しない 信頼社会ではなく安心社会 各要素が密接に関係
アメリカ社会 アメリカでは新たな関係を結びやすい 知らない人にも公平に接するのが道徳規範 結果的に利益が上がりやすい 新たな関係を結ぶために信頼できる人かの予測能力が必要 予測能力に自信があるので信頼しておく 各要素が密接に関係
「信頼の構造」のまとめ 信頼と社会とは密接な関係がある 経済性を追求すると高信頼社会になる? 信頼ゲームが使えそう 高信頼社会において信頼を得るためのツールの必要性 信頼ゲームが使えそう 被分配者の選択 2人共1000円を得るか 分配者に3000円委ねるか 分配者の選択 分配の機会が与えられた時にいくら分配するか