「リゾーム」 ドゥルーズ、ガタリ そして今田高俊 現代文明論 第7、8回 「リゾーム」 ドゥルーズ、ガタリ そして今田高俊
今田高俊の文明概念 文明とは独自の人間観・科学観・社会観ならびに技術観によってもたらされる政治・経済・文化の諸形式のことである。(『意味の文明学序説』4ページ) 「文化のみならず、経済や政治の営みから技術の在り方まで含む包括的なものである。」(同上)
4世紀にわたる近代文明形成 ルネサンスや宗教改革など人間観の組み替え 科学革命による科学観の樹立 市民革命による社会観の転換 産業革命による技術観の確立 4世紀余の長い期間 (今田、意味の文明学序説、4ページ)
機械文明から有機体文明へ 近代文明=機械文明 物質とエネルギーに基礎を置く 効率的で機能的な社会装置 ↓ これからの新たな文明=有機体文明 生命とエコロジーに基礎を置く(バイオテクノロジー、生命や環境の意味論、生と死、環境との共生、人間の尊厳などの存在の意味論)
ヒエラルキーからリゾームへ 20世紀までの文明の構造:ヒエラルキー(階層構造) これからの文明 : リゾーム(根茎) これからの文明 : リゾーム(根茎) 「情報化と意味を文明論的に議論するには、ネットワーク社会ではなく、リゾーム社会の視点が不可欠。」(今田、32頁)
図解雑学「構造主義」ナツメ社より
新たな社会編成の原理 新たな社会編成の原理=リゾームをネットワークに差し込む原理=ポストモダン社会誘導の原理
リゾーム 精神分析における臨床経験から生まれた概念(ドゥルーズ、ガタリ)→【千のプラトー】参照 スキゾ(分裂病)分析のための概念 支離滅裂なシステム←統合と秩序を前提とする機能システム 二分法(正常/異常、秩序/混沌、正気/狂気など)では捉えきれない、「どちらでもあり、どちらでもないシステム」 差異の運動体
リゾームから考えられる 社会編成の4つの原理 リゾームから考えられる 社会編成の4つの原理 全体としての特徴:自在システム(めちゃくちゃ、筋道が通っていない、支離滅裂) 1)自在結合の原理 2)脱管理の原理 3)偶必然性の原理 4)自生的秩序の原理
自在結合の原理 「あらかじめ決められた地位や役割に従って人と関係を結ぶのではなく、興味関心や問題意識を共有できる相手と自在に結合することをあらわす。」(34頁)
これから 「近代文明によって形成された機能的な人間観の問い直しに始まって、科学観の問い直し、社会観の問い直し、ひいては新たな技術観のそれにまでおよぶはずである。」(39頁) 参考:フーコー『言葉と物』
脱管理の原理 アンチコントロール 全体を管理するセンターの存在を認めない(35頁) 参考:パノプチコン←ミシェル・フーコー『監獄の誕生』新潮社
偶必然性の原理 「ある事象がどのように起きるのかは偶然性に支配されるが、その事象が起きることについては必然性に支配されるという性質のことである。」(35頁)
自生的秩序の原理 「上からの計画管理によって秩序が形成され維持されるのではなく、要素のシナジー(協同現象)によって自発的に秩序形成がなされることをあらわす。」(35頁)
差異の運動 これまでの暗黙の前提 統合、同一性=望ましいもの 分裂、差異=避けるべきもの いま 同一性は差異性によって再生産されるべき 統合は分裂によって再生産されるべき 両者の結婚→ダイナミズム(システムの活力と自己組織化の源泉)
近代文明の脱構築 「リゾームは、既存の伝統的(近代的)な意味体系に割り込んで、それらを脱機能化し脱構造化する運動を展開する。」(36頁) 生成変化 条理空間の脱分節化
生成変化(devenir) 「生成変化(becoming)とは、自分以外の他者ないし他の存在に「なる」ことである。」(37頁)
条理空間の脱分節化 「条理空間の脱分節化は、家父長主義から帰結する管理社会を脱構築する橋頭堡である。」(38頁)
「規則を社会運営の中枢原理とする構造の文明からは支配が帰結し、 制御をそれとする機能の文明からは管理が帰結する。」 「これらに対し、差異の自省を社会運営の中枢原理とする意味の文明のもとでは支援が重要になる。」(同上)