回収フロンの再利用 新聞発表 6月25日 上野 雅史 坂中 遼平 松崎 翔太朗 河原塚 裕美
<記事要約> 三菱電機と旭硝子は、使用済みの家庭用エアコンから回収したフロンをフッ素樹脂にリサイクルするという世界初の事業に乗り出した。通常フロンは熱破壊処理されるが、この方法により通常の破壊処理費用の半額程度の価格で再生利用できる見込み。主にリサイクル対象とされるのは、温暖化効果の高い「R22」という指定フロンで1990年頃以降に生産された家庭用エアコンの多くに使われている。三菱電機は回収フロンの精製技術を、旭硝子は不純物が一定値以下のフロンなら樹脂原料として再使用できる技術を開発し、今まで困難とされていたフロンのリサ イクルに大きく貢献することが期待される。
<フロンガスとは> フロンはもともと自然界には存在しなかった物質で、人間によって発明されたと言われている。 フロンとはフルオロカーボンのことで、炭素、フッ素、塩素、水素の化合物の総称。 安定していて無害、不燃性の物質であり、その性質を生かして、スプレーの圧力剤、冷蔵庫・エアコン・自動販売機などの冷却剤、発泡ウレタンなどの発泡剤、精密機器・精密部品・半導体などの洗浄剤として使われてきた。
<フロンガスの落とし穴> オゾン層の破壊 温室効果 有害なアンモニア等に代わる理想的な冷媒、消火薬剤として 使われてきたフロンガス →しかし、1970年代になって欠陥が指摘されるようになった・・・ オゾン層の破壊 温室効果
オゾン層破壊 地上から約20kmの上空にある、有害な紫外線を遮断するという非常に重要な働きをする オゾン層。そのオゾン層をフロンガスに含まれる塩素が破壊してしまう。 温室効果 地表に近い大気中に溜まったフロンは二酸化炭素などとともに地球から放射される熱(赤外線)を吸収する温室効果を持っている。
<フロンガスの規制> オゾン層の保護のためのウィーン条約 : 1985年 オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書 : 1987年 特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律(オゾン層保護法) : 1988年
<フロンの分類> 分子構造上大きく3つに分けられる。 CFC HCFC HFC →「特定フロン」 →「指定フロン」 →「代替フロン」
<フロンの分類> 特定フロン(CFC) オゾン破壊係数、地球温暖化係数が共に高い。 →モントリオール議定書により1989年規制開始、 オゾン破壊係数、地球温暖化係数が共に高い。 →モントリオール議定書により1989年規制開始、 1995年生産全廃 指定フロン(HCFC) 特定フロンより遥かにオゾン破壊係数が小さい。 →モントリオール議定書により1996年規制開始、 2020年に生産全廃となる予定。
<フロンの分類> 代替フロン(HFC) オゾン破壊係数が0。オゾンを破壊しないフロンと して今後主流となる見通し。 オゾン破壊係数が0。オゾンを破壊しないフロンと して今後主流となる見通し。 →しかし、温室効果があるため京都会議で規制 対象に含まれることになった。
<各種フロンの比較> 家庭用エアコンに使われるフロン オゾン層 破壊係数 地球温暖化係数 特定フロン R12 1 8500 0.055 1700 代替フロン R410A 1730 ※ オゾン層破壊係数は「R12」を1、地球温暖化 係数はCO2を1とした係数。
<冷媒フロン廃棄量の見通し>
<フロンの現状> 特定フロンの生産は既に全廃され、指定フロンもまた2020年に生産全廃が予定されているため、現在は指定フロンから代替フロンへの切り替えを進めている段階。 しかし、代替フロンはコスト高になるため現在売られている家庭用エアコンの約半分はなお指定フロン(R22)を採用している。
<フロン回収の背景> 今まで日本のフロンの回収率が悪いとされていたが、2001年の家電リサイクル法、フロン回収破壊法の制定(後者は2002年より本格化)により、フロン回収率が伸びることが期待される。このように制度的な地盤が整ったことが、企業における技術開発の促進、やがては今回の低コスト&温室効果ガスがゼロ!という画期的な技術の開発につながったのではないか。
<従来のフロン処理方法> 再利用 →回収冷媒の約半分が精製の後に再利用 されている。 加熱破壊 →確実にフロンを破壊することができるが、 →回収冷媒の約半分が精製の後に再利用 されている。 加熱破壊 →確実にフロンを破壊することができるが、 CO2排出を0にすることはできない。 産業廃棄物となるCaCl2やCaF2も発生。
<新しいフロン処理方法> 回収した冷媒を樹脂原料として再生利用
<フッ素樹脂とは> →炭素とフッ素で構成された樹脂上物質 性質・・・高温にも安定で、水もよくはじき、耐薬品 性や電気絶縁性も高い。 性や電気絶縁性も高い。 用途・・・半導体、電子部品、光ファイバー、家庭 用調理器具のコーティング、構造物の 外装材
<回収フロンのフッ素樹脂化の利点> ~加熱破壊処理との比較~ 通常の破壊処理よりもコストがかからない。(処理価格は半額程度) 温室効果、オゾン破壊効果を無くすことができる上、熱破壊処理時のような産業廃棄物も出ない。
<回収フロンのフッ素樹脂化の利点> 新規R22からフッ素樹脂を作るよりも、安価にできる見込み。 ※ いずれの方法で作られたフッ素樹脂も質に違いは無い。
<まとめ> 今回の「回収フロンのフッ素樹脂化」というリサイクル技術の開発によって、指定フロンが削減でき、地球温暖化効果の大幅抑制につながることが期待される。 この画期的な技術が三菱電機、旭硝子の2社にとどまらず広く認識されれば、低コストによるリサイクルが進み、更なる技術革新の促進につながるのではないか。
<参考資料> http://www.suga-kogyo.co.jp/techno/g-07/31094_0.html http://www.shirakami.or.jp/~sasaki-reito-tec/page059.html http://www.jasmec.go.jp/kankyo/h14/panf/fc/index.htm http://www.pref.chiba.jp/syozoku/e_taiki/kanshi/flon/flon.html http://www.nedo.go.jp/get/project/pro01/1_09/seika12_pdf/i.pdf http://www.nedo.go.jp/get/project/pro01/1_09/1_09pdf/h12_09.pdf
The End